やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
つまり、うちのキラくんにもそんだけの時間がある。それだけオーブが強化出来るな。
翌日、M1のテストをしていると、ミナが現れた。
「喜べ、あの戦闘機、『トキ』の予算が降りた」
あまりのスピードに、エリカが驚いた。
「え、もうですか!?」
「既存兵器の延長でメリットが多いからな。それに、年寄りには機体名もウケが良かった。……懐古主義の老人どもめ」
何やらミナも思うところがあるようだが、キラは気にしない。オーブにそんな時間は無いのだ。
「なら、人を集めてください。詳細を詰めましょう」
「既に声はかけてある」
そこから始まる会議。開発部の人や、軍部の人、現場のパイロットまで呼んで、喧々諤々の大騒ぎだ。
ただ、大前提として全員が、新型戦闘機の開発に乗り気だった。なら、後は各部の調整だけだ。
「まさか、オプション装備の草案まで用意していたとはな」
会議後、ミナが呆れたようにキラを見た。
「換装システムはオミットしましたが、戦闘機にオプション装備をつけるのは常識でしょう」
【スカイグラスパー】はその点、宅配便に特化しているので戦闘機としての汎用性は低い。
「増槽やミサイルなら兎も角、『アグニ』を小型化するのは驚かされた」
「ムウさんが有用性を証明しましたからね。なら、操作性向上を目指して小型化して、砲数も2門にしてバランスも取りやすくすれば安全性が増します」
『アグニ』の火力は、戦闘機が持つには過剰だからね。多少、威力や射程が下がっても小型化して操作性を向上させた方が良い。目指せ、空飛ぶアグニ軍団。
「【トキ】が軌道に乗ったのなら、次です。海中の戦力をどうにかしないと」
「なに? まだ、やるつもりか? お前は合格だ。私の部下にしてやるぞ?」
まだまだやる気満々なキラに、ミナは首を傾げた。
「俺の目的はオーブを守ること。ミナさんの部下になったのは、その手段にすぎないですよ」
こんなところで休んではいられない。戦わなければ、生き残れない!
「どうせアストレイの水中用のテスト装備あるんでしょう? データ見せてください」
「スケイルシステムがあるわ」
エリカがモニターにデータを出した。劾がテストをした、スケイルシステムのデータだ。
「うーん、スケイルシステムは凄いですけど、素体がM1だと限界がありますね。発泡金属は軽くて機動性が上がりますけど、水中には適さないので」
やっぱ、水中は特化型だって。ガンダムのお約束だから。
「水中は専用機作った方が良いですね。取り敢えず、俺がOSを調整すれば、現時点でも性能は上がる筈なので、それで凌いでデータ集めて新型作りましょう」
どう頑張ったって、海はフォビ族のゲシュマイディッヒ・パンツァーには勝てないよ。
「海中はこれでよし。あと、M1の発展型を作りましょう」
「発展型? M1はあなたのお陰で、量産に値する性能に届いたと思うけど?」
キラの提案に、エリカは首を傾げた。
「【M1アストレイ】は、【ジン】よりも機動性に優れ、小型の携行ビーム兵器もある。【ジン】を仮想敵にするなら、十分と言えるでしょう。しかし、ザフトもそのうち新型を出すでしょう。それを見越して、発展型を作ります」
そのうち【ゲイツ】が生えてくるから。【ゲイツ】はビーム兵器も持ってるし、【M1アストレイ】よりは、性能は上だろう。
「【M1アストレイ】をエース向けに、性能強化します。少数量産のイメージです」
「確かに必要ではあるだろう。だが、そんなに仕事を抱えて大丈夫か?」
ミナが、キラを心配そうに見る。
「大変ですが、オーブの未来がかかってます。アラスカから帰ってからとか悠長なことは言ってられません」
「フム、オーブで1番現実を見れているのは、お前かも知れないな……」
見えているのは、現実じゃなくて未来です。
◆◆◆
「父さん! 母さん!」
学生組は、両親との面会を行っていた。涙ながらの再会だが、そこにキラとフレイの姿は無い。
フレイは両親がいないし、キラは断った。そのことが、トールの心に一抹の影を落とす。
(キラ、俺は……)
それでも今はと、心配をかけた両親に笑顔を向けた。その裏で、トールはある決意を固めた。
そして、マリューたちは面会を断ったキラに不安を募らせていた。
「キラくん、モルゲンレーテで寝泊まりしているみたいね」
「オーブの量産型モビルスーツのOS改良ですか。やはり、忙しいのでしょうか?」
「それだけならいいけれど……」
マリューは、キラのメンタルが心配だった。ナタルも表情を曇らせている。
「どこかで時間を作って会いに行きましょう」
◆◆◆
「……なんだこれは?」
モルゲンレーテにやってきたロンド・ギナ・サハクは、自分の目を疑った。
ギナの目の前では、露出高めの服を着た女性たちが闊歩していた。その先では、女性たちが1人の少年を囲い、キャイキャイ騒いでいた。
ギナの眉間に、青筋が浮かび上がった。ここは、オーブの心臓部。断じてキャバクラではない。
「これは、どういうことだ?」
声から込められた憤怒を感じ取ったのだろう。振り向いたエリカの顔には、焦りがあった。
「ギ、ギナ様! こ、これはですね」
そのエリカの格好も、非常に露出度が高いものになっている。
「私は噂の【ストライク】のパイロットの顔を見に来たのだ。それが、なんだこの乱痴気騒ぎは!」
凄く真っ当な怒りに、エリカはタジタジだ。
「そのパイロットの希望だ。その方が、作業スピードが上がると言うのでな」
奥から出てきたものを見て、ギナは真剣に自分の目を疑った。実は疲労で、幻覚を見ているのかと。
ギナが見たのは、もう1人の自分が露出高めのドレスを着ている姿だった。
「ば、馬鹿な。なぜ、ミナまで!?」
混乱するギナを、ミナは諭すように宥めた。
「功績をあげた部下に褒美は必要だからな」
ギナは目眩がした。
◆◆◆
ギナが落ち着いてから改めて話を聞くと、大量の仕事を抱えたキラ・ヤマトを労い、作業スピードを上げる為らしい。意味がわからん。
「いやだって、華やかな女性が職場にいたら、効率上がるでしょ? それが露出度高めの格好してるなら、尚更」
ギナは考えることを止めた。あのジャンク屋よりも合わないかもしれない。
「少し露出度が高い格好をするだけで、オーブの戦力が早く上がるのだ。するだけの価値はある」
ギナはミナの言葉で、無理矢理納得した。したことにした。
◆◆◆
ギナが来る前日。ミナは、ただの部下ではなく自らの右腕にしようかと考えているキラを労おうと考えた。
「キラ・ヤマト。今のオーブは、お前の作業が最優先だ。何か必要なものがあったら、遠慮なく言うといい」
ミナはキラの能力を認め、オーブの為にその能力を最大限に活かすことに決めた。
「なら、女ですね」
「……女?」
キラが至極真面目に答えた。
「俺は綺麗な女性が俺の為に、色々してくれると作業スピードが上がります」
「……そうか」
キラとミナ、2人の視線がエリカへと向いた。
「え?」
嫌な予感がしたエリカは、後ずさった。
「例えば、どんなことをして欲しいのだ?」
「そうですね。露出の高い格好で接待してもらうとか」
2人がズイッととエリカに近づいた。エリカは逃げられない!
「わ、私は既婚者ですよ!? 子供もいるんです!」
何とか逃げようとするエリカだったが、ミナは冷徹だった。
「オーブの未来がかかっているのだ。オーブが滅べば家族も滅ぶぞ」
エリカの逃げ道を潰しにかかるミナ。
「何、1人ではない。あの姦しい3人娘にもやらせよう」
「し、しかし」
「私もやろう。まさか、私がやるのに、自分はやらないとは言わないだろうな」
エリカは、観念したように膝をついた。
◆◆◆
「それで、キラ・ヤマトにそれだけの価値はあるのか?」
ギナが値踏みするように、キラを見る。
「取り敢えず、あんたよりは価値あるかな」
「なに!?」
キラが、わっかりやすい挑発をする。
「少なくともパイロットの腕は上だし、俺はOSもできるし」
「……いいだろう。模擬戦だ!」
ギナは、安い挑発を買った。こいつ、煽り耐性低すぎるんだよな。
「お互いM1でいいかな?」
「好きにしろ!」
そして、急遽始まる模擬戦。外では出来ないので少し狭いが、格闘武器に限定すれば何とかなる。
模擬サーベルを構えたギナが叫んだ。
「精々無様に踊ることだな!」
キラが悪い笑みを浮かべた。
オーブの地下は、なんぼ盛ってもヨシ!