やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
キラ「どこが?」
「ば、馬鹿な……」
呆気なく、何の良いところもなくギナは負けた。
「確かに腕は良いけど、俺はクルーゼ隊、バルトフェルド隊、モラシム隊とザフトの宇、地、海のエース部隊と戦ったパイロット。経験値なら世界トップだ! 所詮お前は、井の中の蛙だな」
「だ、黙れェ! もう1回だ!」
その後、何回か繰り返されたが、ギナが勝てることは無かった。無様な踊りだったぜ。
「う、嘘だ……。この私が……」
「フッ、男をワカラセてしまったぜ」
失意体前屈をしているギナの横で、キラが前髪をファサってしていた。
「なんだァ!? 面白そうなことしてんじゃねぇか!」
そこに能天気そうな声が響いた。
「ッ!? ロウ・ギュールと劾・叢雲だと!?」
やってきたのは、外伝アストレイの主役ロウと劾だ。
「話は聞いたぜ? ナチュラルOSのデバッグと量産型の改良だろ? 面白そうじゃねぇか!」
「俺の方は、スケイルシステムの使用感だったか?」
ロウはオーブ来るのわかってたし、劾もどうせ近くにいるから呼び寄せたのだ。おら、3色アストレイ揃い踏みで、新型作るんだよ。
「もう、量産型の【M1アストレイ】は見た?」
「おう、見たぜ! お前は、さっきの模擬戦のパイロットだよな」
「キラ・ヤマトだ。実はM1を強化した少数量産機を作りたい。手伝ってくれないか?」
キラの言葉に、ロウは頷いた。
「任せろ! 腕が鳴るぜ!」
「契約では俺もアドバイザーをすることになっていたな。では、報酬の【ブルーフレーム】のオーバーホールを頼む」
早速仕事に取り掛かるということで、未だに落ち込んでいるギナを引きずりながら移動した。
◆◆◆
会議室に着いたところで、ギナが暴れだした。
「ふざけるな! まだだ! 私と戦え! キラ・ヤマトォ!」
「いや、これから新型アストレイ、名前はそうだな【M2アストレイ】の設計詰めるから。続きは明日な」
駄々っ子を嗜めるような態度に、ギナはヒートアップ。
「そんなものはどうでもよい! 私と戦え! 私が世界を統べるに相応しいことを証明してくれる!」
いい加減うるさいギナに、キラがキレた。
「うるせえな! 中二病か! そんな大人修正してやる!」
「グハァ!」
キラの鉄拳が、ギナを殴り倒した。
「それは私のセリフだろう!」
「口答えするな! おら、もう1発!」
「とびた!」
謎の奇声をあげて、ギナは倒れ伏した。お前はもう少し、大人になった方が良いよ。
「さて、【M2アストレイ】の話を進めよう」
しれっと会議を始めるキラ。
「【M2アストレイ】はM1の生産ラインを流用したいから、可能な限り共有パーツを使う」
物量はオーブの泣き所だからね。
「コンセプトとしては、先祖返りして【ストライク】のような換装タイプを目指す」
要はオーブ版【105ダガー】である。C.E.と言えば換装だ。
「バックパック、肩、下腿部を換装対応に変更しようと思ってる。後は駆動系とかジェネレータを強化して」
「換装か! 楽しくなってきたぜ!」
「なるほど、様々な装備に換装した【ブルーフレーム】のデータが活きるわけか」
流石はC.E.のプロとジャンク屋のプロと傭兵のプロ。話はスムーズに進んだ。
◆◆◆
やっぱ3色トリオがいると話が早い。ロウは技術力があって、劾は経験があって、ギナは立場がある。
キラがアイデアを出し、ロウが試作、劾がテスト、ギナは立場とコネで必要な物を揃える。最強やんけ。
【M2アストレイ】は、あっさりと試作が終わった。【M1アストレイ】の性能を向上させつつ、換装機能を持っている。他の変更点として、コックピットのある胴体まわりをフェイズシフト装甲にしている。やはり、生存率は大事。
この間、ギナは毎日キラに勝負を挑んでいたが、ついぞ勝つことはできなかった。
そして、M1のテストと並行してM2のテストが行われる。今後は実機でデータを集めつつ、細かな改良をしていくことになるだろう。
そして、キラとロウが揃っていたので、空いた時間にシュミレーターを改良。より、高精度で高難易度の物が完成した。
そこに、毎日チョロチョロしているカガリをぶち込んでおいた。アストレイ3人娘と共に強制的に訓練させる。君ら将来死ぬから、死ぬ気で訓練しろ。
「ちょっ! カガリ様邪魔!」
「何だとぉ!」
「もー、下手っぴなんだから!」
「このシュミレーター難すぎ!」
儚くない声をあげながら、訓練するカガリ。明日どころか、いつでも会えそうだし。実家は古民家じゃなくて、豪邸だわ。
◆◆◆
順調に作業が進む中、ずっとキラの手伝いをしていたフレイが問いかけた。
「ねぇ、キラ。ご両親には、会わないの?」
原作でもあったことだ。キラは予想通りだと、予め用意しておいた答えを返した。
「今は会いたくない。まだ軍人だから。決意が鈍る」
「……私に遠慮してるの?」
「それがないとは言わない。でも、会っても辛いだけだし」
そう、今会うわけにはいかないのだ。
「そんなことないわ、キラくん」
そこに、どうにか時間を作ってマリューとナタルがやって来た。ムウ? 代わりに責任者として置いてきたよ。
「なんだここは? 風紀はどうなっているんだ?」
露出度高めの格好をしている者を見て、怪訝な顔をするナタル。あの、そちらのパイロットくんの趣味なんですけど。
「私が言えたことではないけれど、生きてアラスカへ辿り着く保証は無いの……。だからこそ、会うべきだと思う。ご両親の為にも」
「……」
マリューの言葉に、キラは沈黙を返す。それを見て、ナタルも口を開いた。
「今も君に負担をかけておいて、こんなことしか言えないのは情けないと思う。でも、会っておくべきだ。会えるうちに」
もどかしげなナタルの様子を見て、キラが答えた。
「朝、いつも通りに挨拶をして、家を出た。そして、そのまま軍人になった。人も殺した。……優しい親だった。一世代目のコーディネイターなんて、この時代育てるのは大変だったはずなのに、そんな素振りは微塵も無かった」
マリューとナタルが息を呑んだ。
「会って、何を言えばいいかわからない。だって、戦いは終わっていない。……これから、殺し合いに行きますなんて言えない」
キラは、准将と違い真実を知っている。両親が産みの親ではないことは知っている。だから、何でコーディネイターにしたのとは思わない。でも、記憶を取り戻す前の記憶や思いも持っているのだ。優しい両親に、准将と違い明確な目的があって戦っているキラは、自ら進んで戦っていることが後ろめたかった。血塗られた手を見られたくなかった。
マリューとナタルにとって、1番痛いところだった。
マリューとナタルの自認は、自分たちはどこまでいっても巻き込んだ側で、キラは巻き込まれた側だ。実はキラ自身は、戦うつもりがあったとしても。マリューとナタルが、できるだけキラに寄り添っていたとしても。戦争に巻き込んでしまったという自責の念は消えない。
優しい少年を命の奪い合いの戦場に引きずり込んだ。その十字架が消えることは無い。
言葉が出ないマリューとナタル。そこにフレイが割って入った。
「キラ、何を恐れてるの?」
「え?」
フレイが、戸惑うキラに詰め寄った。
「オーブに来てからずっとそう。何かに怯えて、ずっと焦ってる」
「……」
キラは、目を逸らした。
「だからずっと仕事をしてる。何かを忘れるように、振り切るように。ご両親に会いたくないのも、それを思い出すからじゃないの?」
フレイの言う通りだった。キラは恐れている。
キラは、この後の戦いを知っている。知っているからこそ恐い。誰が死ぬのか知っている。誰が死なぬか知っている。でも、原作通りになる保証は無いし、原作を上手く変えられる保証も無い。
原作における、大きなターニングポイント。それゆえ、些細な変化で大きく変わるだろう。
だって、原作は奇跡みたいなものだ。そっくり同じようになるわけがないし、同じでは意味がない。それでは親友が死ぬ。
どうすれば良いのか、どこを目指せば良いのか。キラの中でも、答えが出ていない。
兄弟同然に育ったアスランと殺し合いをするのに、両親に会いになど行けやしない。
世界の命運を分ける戦いが迫っているのだ。しかも、単純に勝てば良いものでもない。むしろ、どうしろというのか。
「……」
結局、キラは答えることができなかった。
閃光の刻が迫ってきたら、転生者はストレスで血を吐くと思う。なんだあのお祈りポイントは……。