やめてよね。俺が准将に転生しても同じように戦えるわけないだろ! 作:よみや
「ラミアス大尉! よくご無事で!」
マリューが着艦した【アークエンジェル】に近づくと、降りてきた船員の1人であるナタルが声をかけた。
「バジルール少尉! よく【アークエンジェル】を、お陰で助かりました」
マリューがナタルを労っていると、【ストライク】のコックピットが開き、キラが降りてきた。
「あーしんど、死ぬかと思った」
ヘロヘロになって降りてきたキラに、トールたちが駆け寄って、口々に声をかけていく。それに対して、ナタル他【アークエンジェル】の乗組員は、目を見開いている。
「へぇー、こいつは驚いた」
なんとも言えない雰囲気をぶち壊すように、軽薄そうな声が響いた。
「地球軍第7軌道艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉だ。よろしく」
「地球軍第2宙域第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」
挨拶が済むと、ムウがまわりを見回しながら話し出した。
「乗艦許可を貰いたいんだがね。俺の乗ってきた艦は落とされちまったし。……この艦の責任者は?」
その言葉に、ナタルの顔が曇る。
「艦長以下、主だった士官は戦死されました。よって、ラミアス大尉がその任にあると思われます」
「艦長が!?」
「生き残っているのは、私を除けば下士官のみです……」
ナタルの言葉に、マリューの顔がひきつる。マリューは本来ならば、【アークエンジェル】で副長という艦長の次に偉い立場になる予定だったので、この人事はおかしくないようにも思える。しかし、これには大きな落とし穴がある。マリューは技術将校として、新型機動兵器、及び新型特装艦の開発者の知見を生かす為に【アークエンジェル】に乗る予定だったのだ。そもそも【アークエンジェル】は、実戦配備ではなく新型のデータ収集をするはずだったのだから。よって、いきなり実戦で艦の指揮を取れと言われても困るのだ。テム・レイにホワイトベースの艦長やってねと言うようなものだ。
「とりあえず許可いいか? ラミアス大尉」
「はい、許可致します」
「あと、俺はGのパイロットになる奴らの護衛で来たんだが、あいつらは?」
「艦長との着任の挨拶の時に爆破を受けたので、共に……」
「そうか……。で、あれは?」
ムウが視線を向けた先には、話についていけずに不安そうにしている民間人たちがいる。1名は眠そうな顔しているが。
「見た通り《ヘリオポリス》の民間人です。襲撃の際、工場区にいて、助けられました。先ほどの【シグー】との戦いの前も【ジン】1機と戦い撃破しています。お陰で、最後のGは守ることができました。名前は、キラ・ヤマトと言います」
【ジン】を撃破したというところで、驚愕する船員たち。ムウは気にせず、キラの前まで歩いた。
ムウはキラを見つめると、何でもないような口調で言った。
「君、コーディネーターだろ?」
途端に、空気が張り詰めるように緊張する。ムウの後ろでは、マリューがこの野郎と言わんばかりにムウを睨み付けている。それに気づいたナタルは、ちょっと引いている。ちなみにキラも気づいているので、ちょっと笑いそうなっている。
「はい」
キラが答えると、船員の後ろにいた兵士たちが銃を構えた。キラとしても、黙ってて後でバレる方が揉めそうだから、このタイミングで聞くのは間違ってないけど、言い方ァとか思っている。
「なんだよそれは! キラがさっき戦ってるの見てなかったのかよ! どういう頭してんだよあんたたちは!」
トールが、キラの前に立って兵士たちに食って掛かる。友達の為に、銃の前に立つとか良い奴だ。やっぱり准将にとってトールって親友だったんだな。あと、サイとカズイもキラを庇うように、ムウの前に立っている。トールばっかり記憶に残ってたけど、君らもやる時はやってたんだね。
キラとしては、銃を向けられたこと自体は気にしていない。彼らからすれば、つい先ほど仲間たちがたくさんコーディネーターに殺されたのだ。過剰に反応するのもわからなくはない。
「銃を下ろしなさい」
「ラ、ラミアス大尉」
マリューが命じると、兵士が銃を下ろした。ナタルはマニュアル人間なので、こういう突発的な事態が苦手でオロオロしている。
「そう驚くこともないでしょう? 《ヘリオポリス》は、中立国であるオーブのコロニーですもの。戦火を避けて、ここに移ったコーディネーターもいるでしょうし」
「まあ、俺は1世代目ですしね。《ヘリオポリス》の前は、《コペルニクス》にいたし、《プラント》には行ったことないですよ」
1世代目とは、両親がナチュラルのコーディネーターのことだ。准将は3年前まで、月面都市《コペルニクス》に住んでいて、そこでアスランと兄弟のように過ごしていたのだ。
「いや、悪かったな。とんだ騒ぎにしちまって」
騒ぎの張本人であるムウが、悪びれない様子で言った。もうちょい責任感じてもいいのでは?
「俺は、ただ聞きたかっただけなんだ。ここに来るまで、テストパイロットたちのシミュレーションを見てきたが、あいつらは鈍くさ動かすのにも四苦八苦してたからな」
ムウは肩すくめると、マリューたちの方を向いた。
「で、これからどうする? 出港の準備は、どれくらいできてるんだ?」
「準備の途中でしたので、殆ど進んでおりません」
ナタルの返答に、溜め息を吐くムウ。
「そうか、ならなるべく急ぐしかないな。外にいるのはクルーゼ隊だ。すぐに仕掛けてくるぞ」
ムウの言葉に気持ちを切り替えたマリューが、艦長として指示を出す。
「まずは、物資の搬入を最優先とします。【ストライク】のパーツと、航海に必要な物を積めるだけ積みます」
マリューの言葉を受けて、準備を始める船員たち。それを見て、キラがマリューに声をかけた。
「マリューさん、必要なら【ストライク】で、物資搬入手伝いましょうか?」
「え?」
「まあ、俺にはどれが必要な物かわからないから、マリューさんから指示は欲しいですけど」
マリューは一瞬考えるが、今は少しでも人手が欲しかった。
「ありがとう、キラくん。お願いするわ」
「え、ラミアス大尉!?」
驚くナタルをよそに、マリューはきびきびと予定を立てていく。
「【ストライク】関連のパーツは、私が直接指示を出します。バジルール少尉は、艦で全体の指示を」
「は、はい」
「では、各員行動開始!」
◆◆◆
「で、実際どうする?」
ある程度作業の目処がたったところで、マリュー、ナタル、ムウの3人が集まって会議を開いていた。原作と違い工場区の近くなので、井戸端会議感がある。
「外に出るにしたって、戦闘になる。俺のゼロが間に合う、間に合わないにしろ、【ストライク】がないとキツいぜ」
「なら、フラガ大尉が【ストライク】に乗ればよろしいのでは?」
ムウの言葉に、ナタルが当たり前ではと言わんばかりに返答するが、ムウは冗談だろと言わんばかりだ。
「あの坊主が弄ったってOS聞いてないのか? あれは俺ってか、ナチュラルには到底扱えないぜ?」
「なら、元に戻させてから使えば!」
「元に戻したら、戻したでまともに動かないだろ。俺に鈍くさ出てって的になれってか?」
ムウの溜め息混じりの言葉に、ナタルも口をつぐむ。
2人の話を聞いていたマリューが、辛そうに口を開いた。
「やはりキラくんに、乗ってもらうしか……」
「しかし、民間人のそれもコーディネーターの子供ですよ!」
「そうは言ってもしょうがないだろ? 他に手はないんだから」
ナタルは反対のようだが、ムウの他に手がない発言に黙り込んだ。ナタル自身も代案は無いのだ。
そろそろバッテリー充電しないとなーと考えていたキラをマリューが呼び出した。
「どうしたんですか?」
「……えっと、その、脱出の際に戦力が必要で……。キラくんに【ストライク】に乗ってもらいたいの」
マリュー、ナタル、ムウが雁首揃えて何事かと思っていたキラは、ちょっと早いけど原作通りの展開にホッとした。ぶっちゃけキラとしても、【ストライク】に乗らなくてもいいよとか言われても困るのだ。だって、その場合【アークエンジェル】沈むだろうし。
「……一応言っとくと、俺民間人ですけど」
「しょうがないだろう。あれは君しか乗れないんだから」
キラとしても、【ストライク】に乗るのはやぶさかではない。准将になってしまった以上、原作に関わらないと絶滅戦争で世界が滅びるから。しかし、だからって原作をそっくりそのままなぞりたくはない。だって辛いし。
「しょうがないですか? 俺は、地球連合に加盟していないオーブの国民ですよ? 歴とした独立国であるオーブの国民を強制徴兵する権利は無いはずですよね」
キラの言葉に、マリューとナタルの顔色が悪くなる。実際これは国際問題になる。
「また戦闘が始まった時、今度はそう言って死ぬか?」
ムウの言葉もまた真実だ。現状四の五も言っていられない。キラたちもシェルターがロックされていて避難できないし、【アークエンジェル】と一蓮托生なのだ。
「死ぬ。そうですね、例えば俺が【ストライク】で戦って死んだらどうなるんですか?」
キラからの何気ない風を装った質問に、マリューは息を飲んだ。
「マリューさんたちは軍人だから、2階級特進とか遺族年金とかあるでしょうけど、俺は? まあ、《ヘリオポリス》襲撃時に死亡とかの扱いになるのかな」
「それは……」
マリューは答えられない。そして、それがマリューの良心を苛む。それは、ナタルも同様だ。彼女はお堅いが、決して情が無いわけではないのだから。
「マリューさんたちは、職業軍人だ。それで、お給料をもらってる。でも、俺は? 俺は戦って、人を殺して、何を得るんですか?」
「キラくん……」
原作のようにできるから、能力があるからと、ただ戦わせられるのはごめんだと、キラはしっかりと釘を刺しておく。
「俺も死にたくはないです。だから【ストライク】に乗るのはいい。でも、対価は欲しい」
「なるほど、金か? 確かに、同じく戦ってる俺らに金が出て、自分に出ないのは不公平に思うだろうが。この場に纏まった金なんて無いし、あー全部終わってからって言ったら納得してくれる?」
唸りながらのムウの言葉に、キラは首を振った。
「正直お金はどうでもいいです。先にもらおうが、後にもらおうが、途中で死んだら意味無いですし」
「じゃあ、何だ?」
「俺、戦闘の後から昂ってしょうがないんですよ」
「おい、坊主まさか」
ムウがマリューとナタルを見た。
「滅茶ムラムラします」
「キラくん!?」
「女の人とロマンティクスしたいです」
「キラくんッ!?」
驚愕しているマリューを他所に、ムウが額に手を当てながら、頭痛を堪えるように言った。本当に頭痛がするのかもしれない。
「つまり、対価は体で払えって?」
「露骨に言うとそうですね。マリューさんとバジルールさんに払って欲しいです」
キラの言葉に、ナタルがまなじりを吊り上げて怒る。そりゃそうだ。
「貴様ふざけているのか!」
「大真面目ですよ!」
睨み合う2人に、覚悟を決めた様子のマリューが話し掛ける。
「キラくん、私だけではダメ?」
「ラミアス大尉!?」
マリューの発言に、ナタルは愕然としている。マリューは苦笑いしながら、ナタルを見た後、キラに向き直った。
「バジルール少尉は勘弁してあげて欲しいの、私ならいくらでも相手するから」
マリューの言葉は、事実上の合意だった。
「ダメですね」
「私じゃ魅力無い?」
「そういう意味じゃ。ただ、パイロットをやる以上、真面目にやらないと死ぬので、整備なんかも含めたら、俺が自由に使える時間って多くないと思うんですよ。そんな状況で艦長で忙しいマリューさんと時間合いますか?」
「それは……」
「だったら2人とも魅力的なので、時間が合うどちらかに相手して欲しいんですけど。それに、他国の民間人に体張らせるのに、バジルールさんは体張らないんですか?」
あからさまな挑発だったが、ナタルは逡巡の後、乗った。
「いいだろう、その話乗ってやる。ただし、ここまでするんだ【ストライク】や【アークエンジェル】が落とされたら、化けて出てやるからな」
「その場合、俺も死んでますよ」
「ええい、うるさい!」
ムウは、キラを大物とバカどっちだろみたいな顔で見ていて、マリューはあーあみたいな顔でナタルを見ていた。
それに気づいたキラは、ニヤリと笑い。ナタルは、帽子を深く被って目元を隠した。
うちのキラくんは欲望に忠実です。というかご褒美がないと准将に転生なんてやってられないです。
よくある神様転生で准将にしてやろうって言われて、喜んで転生するSEEDファンてどれくらいいるんだろう。私はちょっと嫌ですね。
まさに、誰もが望むだろう。君のようになりたいと!でも君にはなりたくないと!って感じですかね。というかモブでもコズミック・イラには行きたくない。