アグネス先輩!よろしくお願いします!~コンパス新人隊員の華麗なる(?)日常~ 作:クスクス
眼前に深淵の宇宙が広がる。そこにどうしても恐れを感じるのは私がずっと地球育ちだからなのだろうか?今度アグネス先輩にも聞いてみようか…コクピットの中でそんな事を考えていると通信が入った。
整備兵の皆さんからだ。
「ギャンを搭載した分の重量バランスは修正済みだ!今度は頑張ってきなよお嬢ちゃん達!」
「助かります~❤みなさんの整備のお陰で安心して戦えます❤」
それに割り込んだのは私のレイダーの上に載っているギャンのパイロット…アグネス先輩だ。普段と口調違いすぎません!?と突っ込みを入れたくなるが整備兵の皆さんには好評のようだ。歓声が伝わってくる。
「ほら…あんたもお礼言いなさいよ」
接触回線で私にだけ聞こえるようにアグネス先輩が小声で注意してくる。
「はっはい!ありがとうございます!頑張ります!」
せっかく整備してくれたのにお礼も言わないのは失礼だ。
私も慌ててお礼を言うと整備兵の皆さんも笑顔になる。良かった。
ほっと胸をなでおろすとオペレーターからの通信が入った。
「演習開始まで3分!レイダーMKⅡ及びギャンは発進準備に入ってください!」
「いい?作戦通りにやるわよ!…私を振ったあの男をもう一回堕としてやるわ」
後半は小声だったが幸運な事にばっちり聞こえてしまった。
あの優しそうなキラ准将とアグネス先輩の間に一体何があったのだろう。
まさかの三角関係!?いやいやラクス総裁がいるのにそんな…
非常に気になるが今は深入りできない。了解と返すにとどめた。
発進位置へと移動するのに伴って整備兵の皆さんとの通信も切れる。
最後に整備兵の皆さんがサムズアップするのに合わせてアグネス先輩は指ハートで答えていた。
さすがだ…
アグネス先輩のプロ根性に感動していると機体が甲板の上に出る。
いよいよだ…静かな興奮が身体に広がってくる。そして発進許可が出る
。
「レイダーMKⅡ及びギャン発進どうぞ!」
「リズ・グレイ、レイダーMKⅡ発進します!」
「アグネス・ギーベンラート!ギャン出ます。」
カタパルトの加速で打ち出されるのに合わせてスロットルを開く。
やはり重い…!そんな事を考えると頭上から凄まじいプレッシャーを感じる。
機体…!機体の事ですよ…!と心中で言い訳しつつ軽く機体を左右に振ってみる。
特に問題は無いようだ。連合製のレイダーは当然ギャンを乗せるようには出来ていない。整備兵のみなさんの整備の賜物だろう。後でお礼を言わないと…!
後方を振り返ると母艦ミレニアムから流星のような弧を描いてMSが発進するのが見える。
そして…速い!あっという間に私たちを追い抜いていった。
シン先輩のデスティニーだ!
そしてもう一機が遅れて発進する。こちらはルナマリアさんのブラストインパルスだ。
武装が重い分私たちよりも動きが鈍い。
「ルナは援護!リズとアグネスは俺に続け!」
「あんたに言われないでもわかってるわよ」
これはアグネス先輩。
「了解!…頑張ってねリズ、シン」
戦う時のルナマリアさんの凛とした声。
私も了解を返すと一気に加速する。
今回も敵役を務めるのはキラ准将のストライクフリーダムだ。
前方にどこか優雅さすら感じる動きのMSを探知する。
「来たわよルナ!」アグネス先輩がルナマリアさんに叫ぶ。
「わかってる!射線から離れて!」
私も機体を操作してデスティニーと散開し、射線を確保する。
ブラストインパルスから放たれる巨大なビームがストライクフリーダムを襲うが難なく回避されてしまう。
だが…貴重な隙が出来た。
「隊長!今日こそ俺は隊長を超えます!隊長が安心できるように!」
シン先輩のデスティニーが猛然と加速。フリーダムに襲い掛かる。
「うん…シン。期待しているよ」
戦場には不似合いなほど穏やかな青年の声。フリーダムのパイロット…キラ准将だ。
フリーダムはビームを回避すると翼を大きく広げた。
来る!一気に機体を乱数加速させる。
次の瞬間私がさっきまでいた場所をいくつかのビームの閃光が通過する。
ビームが宇宙を染め上げる様は美しさすら感じさせる…それが自分に向けられていなければだが。
ルナマリアさんの悲鳴。
フルバーストの主な標的はルナマリアさんだったらしい。
ディスプレイ上のブラストインパルスの表示が「中破」に変わり一瞬遅れて「撃墜」になる。武装の誘爆により戦闘不能と判定されたようだ。
さらに無数の青い流星がストライクフリーダムから放たれ、こちらに向かってくる。
それと同時にフリーダムが青い光翼が放つ。
そのまま紅い光翼を持つデスティニーと交錯し、激しく切り結ぶ。
紅と青の光翼が宇宙を舞う様は幻想的だった。
だが私もそれを見ている余裕は無い!
ストライクフリーダムから放たれた青い流星の正体は小型のレーザー砲塔…ドラグーンだ。それが私たちを殺そうと向かってくる。
「今度はやられませんよ!滅殺!」
ツオーンと背中に背負った高エネルギー砲を起動。ドラグーンを狙う。
背中の高エネルギー砲はある程度角度を操作できる優れもので、掃射する事ができる。
爆発が2つ!だが残りのドラグーンは上下に散開した。
思わず舌打ちしてしまう。
レイダーは上下方向に撃てる武装はない。
しかもMAに変形した状態ではスラスターが後部にまとまっているため宇宙では上下への機動性が劣るのだ。
「アグネス先輩!」
「わかってるわよ!」
上に回ったドラグーンをアグネス先輩がライフルで射撃する。
だが複雑に回避するドラグーンを中々捉えられないようだ。
「このっ!落ちなさいよ!」
緑の閃光がやっとドラグーンを捉え、爆発が起きる。
「やりましたねアグネス先輩!…っ!」
だが、その間に生き残りのドラグーンが射撃態勢をとっていた。
無数の光の檻に閉じ込められる形となったレイダーにいくつかの閃光が突き刺さる。
アグネス先輩が上からの砲撃はギャンのシールドである程度防いでくれるが下側からのものは回避しようがない。
致命傷にはなっていないが翼が吹き飛んだらしい。高エネルギー砲もその余波で使用不能に。
「アグネス先輩…!ここまでです!」
アグネス先輩に呼びかける。
「あんたにしてはよくやったわ!あとは任せなさい!」
アグネス先輩が温存していたスラスターを全開にして飛び立つ。
そのままビームアックスを抜くとドラグーンを一刀で切り捨てた。
ドラグーンが慌てたように後を追うが、ギャンの鞭に絡めとられて爆散する。
私もMSに変形してシールドの連装砲を使うが、中々命中させる事ができない。
それでも牽制にはなったようでドラグーンの応射も私とアグネス先輩を捉えたものはなかった。
3基になったドラグーンが後退する。
「私を無視するなあー!!」
それを追ってアグネス先輩が突貫する。
その先には激しく切り結ぶデスティニーとストライクフリーダム。
「強くなったね…シン!」
「まだまだあ!」
デスティニーはビームランチャーを失い、いくらか手傷を負っているが戦意は旺盛で対艦刀で激しく攻撃している。ストライクフリーダムは無傷だがデスティニーのパワーに押され気味のようだ。
「隊長!覚悟!」
そこにアグネス先輩のギャンが突っ込む。
「アグネス!?」
挟まれた形になったストライクフリーダムだがビームサーベルでデスティニーの攻撃をいなしつつ、再度ドラグーンを射出。ドラグーンのビームシールドでアグネス先輩の攻撃を防ぐ。
今が勝負どころだろう!
私も再度MAに変形して襲い掛かる。
「アグネス先輩!」
「ちっしょうがないわね…」
ギャンから鞭が伸びてストライクフリーダムを絡めとる。
「ナイス!アグネス!」
シン先輩のデスティニーが対艦刀で迫り、私のレイダーのツオーンも狙っている。
万が一にも逆転など無いはずだ…なのに
「強くなったね…みんな本当に」
キラ准将の声はあくまで穏やかでうれしそうだ。
「だけど僕は負けない!僕にはラクスの愛がある!」
刹那、射出されていたドラグーンのビームがギャンの鞭に着弾。衝撃でアグネス先輩のギャンが態勢を崩す。そして残る2基のドラグーンが私の後ろに回り込み、スラスターを正確に射貫く。
「そんな…嘘!?」
私のレイダーが制御不能となり、ツォーンがシン先輩のデスティニーに向かう。
「うわっ!?」
シン先輩は見事に回避したがその隙を見逃すキラ准将ではなかった。
「今だ!」
ビームサーベルがデスティニーのコクピットを貫き、デスティニーが沈黙する。
「くっ…このおおお!」
態勢を立て直したアグネス先輩がビームアックスを振り上げるが、そこにはフルバーストモードのストライクフリーダムがいた。
「どうして私ばっかりいつもこうなるのよ~!」
アグネス先輩の悲鳴がむなしく宇宙に木魂し…本日の演習は終わったのだった。
「アグネス先輩…シン先輩…ごめんなさい」
「あんま気にすんなよ!あれは仕方ないって!避けるのに気を取られた俺も悪かったし」
「まあ…次から気をつけなさいよね」
「それを言うなら開幕で落ちた私も悪いしね…」
先輩方に格納庫で謝罪してブリーフィングルームに向かう。
皆さんは許してくれたが今回が実戦だったら私のミスで全滅していたのだ…もっと頑張らないと。
ブリーフィングルームではキラ准将が待っていた。
先ほどまでの鬼神のような戦い振りとこの華奢で儚さすら感じる人とがどうしても一致しない。
そして演習の講評が始まる。
この短時間でデータをまとめていたらしく、私たちのとった行動の成否や改善点が優しく、それでも容赦なく指摘されていく。コーディネーターの人たちはみんなこれほど優れた訓練をしているのだろうか…
連合が苦戦するはずである。
皆と一緒にメモを取りながらそんな事を考えていた。
最後にキラ准将から一人づつにこれまでの総括があった。
「シン、MS戦での技術は非の打ちどころがなかった…でも仲間との連携を磨けばシンはもっと強くなれるよ」
「はい!隊長!俺…みんなともっと強くなります!」
シン先輩はまるで褒められた犬のようで尻尾がぶんぶん振られているのが幻視できそうだ。
「アグネスはリズとよく連携出来ていたね。リズの事をよくサポートしてくれてありがとう」
「べ…別に当然のことをしているだけです…」
バツの悪そうな顔をしていたアグネス先輩だがキラ准将のほめ言葉に真っ赤になっている。
チョロい…先輩の新しい1面を見れてちょっと面白い。
「ルナマリアは優しいから自分の身をないがしろにしがちだから…ある程度は皆に頼っていいんだよ?まあ僕もあんまり人の事は言えないんだけどね…」
「隊長…そんな事…いえっ頼るようにします。特にシンにはね」
そう言っていたずらっぽく笑うルナマリアさん。
「ルナ!俺次は絶対ルナの事守るよ!」
そこで皆に小さく笑いが起きる。
でも確かにそうだ…今回はバッテリーを温存するために私は長距離での牽制はルナマリアさんに任せてしまったけど私の機体の高エネルギー砲も使って良かったかもしれない。
今度は提案してみよう。
「そして…リズ」
准将の声に身を固くする。
「今回は僕が利用しちゃったけれど…あの連携は見事だった。この短期間でチームの皆とよく息を合わせられたね。それと…ちょっとMSの動きが固いみたいだ。今度僕がOSを診てあげるね」
「はっ!閣下光栄であります!」
叱責されてもおかしくないと思っていただけに褒めてくれる上にOSを直々に見てもらえるなんて…
感激です!
「閣下って呼び方はちょっとやめてほしいかな…隊長でいいよ。それにそんなにかしこまらないで。僕たちは…平和のために戦う仲間なんだから」
でもキラ准将はちょっと苦笑してそんな事を言ってきた。
准将といえば雲の上の存在だから馴れ馴れしくするのは軍隊としてはどうかと思うけど…平和のために戦う仲間かあ…
それはすごく良い!ちょっとアグネス先輩の事がわかってしまったかもしれない。
この優しい人のためなら何でもしてあげたくなる…そんな魅力がある。
それで本日のブリーフィングは終了となった。
「アグネス!リズ!この後時間ある?シュミレータで今日の反省を生かして練習しようと思うんだ!」
夕食を終えるとシン先輩が駆け寄ってきた。
「はい!やらせてください!」
私は元気よく答えたのだが…
「山猿に加えてバカがもう一匹増えたわね…私はやらないわよ。まったく隊長は本当に…」罪な男だわ…とアグネス先輩はそこだけ小声でつぶやいていた。
むう…つれない。
「アグネス先輩もやりましょうよ!私達は平和を守る仲間ですから!」
「リズもそれ気に入ったんだな!ほらアグネスもやろうよ!仲間なんだから!」
だが私達がしつこくまとわりついているとやがて根負けしたようで
「いい?ちょっとだけよ。…ルナ!あんたもそこで笑ってないで来なさい!隊長に次こそ吠え面かかせてやるのよ!」
参加を快諾してくれた。そしてアグネス先輩に言われたルナマリアさんは…どこか懐かしいものを見るような顔で微笑んでいた。
「今行くわ!さ…リズ行きましょ?」
そのあとはいつもの明るいルナマリアさんに戻ったけれどその表情は強く私の印象に残ったのだった
それと同じような顔を私は見た事がある。
失われた大切なものを振り返る時…エンディミオンクレーターで戦死したお父さんの遺品を慈しみながら思い出を語るお母さんも同じような顔をしていた。
きっと先の大戦で同じように馬鹿な事をして遊んだ仲間がいたのだろう。
これから先、誰一人欠けさせたくないなと私も思うのだった。
まずは私が強くならないと!!
初めて二次創作かいてるんですが楽しいですね…本当に楽しい!
次の話も来週日曜日には出したいですね。
次はほのぼの日常回の予定です。
あとはこの話でいくつか疑問に思われるかもしれない事に回答させてください。
・ルナマリアが即落ちするのはおかしくない?
はい…完全に話の都合です。というかインパルスがシルエット換装で何でもできるので生き残っている場合にとりうる戦略が多彩になりすぎて作者の手に余る…という事で即落ちしてもらいました。
・キラが強すぎない?
これは一応設定を考えてます。シンの種割れは怒りで感情が高ぶったり追い込まれた時に主に発現しますが、今回は演習かつ敬愛する隊長との戦いなので感情に余裕があり種割れまでいかなかった。一方でキラはある程度任意で種割れを使いこなせている
ので今回の演習でも種割れしてるのと映画本編後でラクスの愛バフがかかっているなら1VS3でも勝つかなと…。
・ルナマリアが主人公たちのじゃれあいを懐かしく見てるのはなぜ?
これはルナだったらレイとかハイネがいた時の事を思い出してくれそうだなあ…と思ってこういう描写を入れました。