アグネス先輩!よろしくお願いします!~コンパス新人隊員の華麗なる(?)日常~ 作:クスクス
ほのぼの日常回です。こういうのが無限に摂取したい…!
本当は休暇編は一つに収めたかったんですが長くなったので区切る事にしました。
「おお…本当に砂時計みたいですね!」
どんどん大きくなってくるアプリリウス市を見ながら私はちょっと感動していた。
話には聞いていたし、戦争の時にはあれを撃て!なんて喧伝されていたけれど…実物を見るとその大きさと宇宙で人が暮らしている事にやはりびっくりしてしまう。
「別に珍しいものでもないでしょ…これだから田舎者のナチュラルは…」
私の隣で端末をいじりながら興味なさそうに返事をするアグネス先輩。
とりあえずマウントを取りたがるのは先輩の癖のようなものである事がわかっているので私も苦笑してコロニーの見物に戻った。
そう!私が乗る戦艦「ミレニアム」は2ヶ月間の軌道上パトロールを終え、母港のあるアプリリウス市に入港するところなのだ。
パイロットの私達も入港と同時に少し休暇が与えられる事になっている。
当然ながらミレニアムの作戦行動中はネットも見る事が出来なかったので、今の私は飢えている!ユーラシアで流行りのドラマも見ないと行けないし新作アニメに映画も!
ユーラシアに残した友人達ともSNSで会話しないと!
1日中部屋でごろごろしてネット漬けになるのもいいなあ…
でもアプリリウス市観光もしたいし…
貴重な休みを外出すべきかごろごろすべきか?それが問題だ…などと唸っていると突然アグネス先輩が口を開いた。
「あんた明日は1日空けておきなさいよ」
「えっ何でですか?明日は部屋で1日ごろごろする予定なんですけど」
今まさに私の脳内ではごろーごろごろ派が「映画やアニメはねえ!持ってて嬉しいコレクションじゃないんですよ!高い金を出して買ったのは見るためでしょ!」と大勝利したばっかりだったんですが…
「隊長から頼まれてるのよ…あんたプラントに来るのは初めてなんだから面倒みてくれって。まったくせっかくの休暇にいい迷惑だわ…」
「ああ!それでさっきからアプリリウス市の観光案内を見ていたんですね!」
さっき端末がちょっと目に入ったのでなぜプラント在住の先輩が観光案内を?と疑問に思っていたのだがどうやらこのためだったらしい。
アグネス先輩の顔が一気に真っ赤になる。
「勘違いするんじゃないわよ!これはたまたまよ!たまたま!というか人の端末を盗み見するんじゃないの!」
そこはマナー違反なので素直に謝罪する。
でも隊長に頼まれたとはいえ貴重な休暇を割いてくれるなんでやっぱり先輩は優しい人だ。
「ありがとうございます!私すっごく楽しみです!」
「ああもう離れなさい!明日はこのスケジュールで行くから!時間厳守よ!」
私の端末に明日の予定表を送信してアグネス先輩は歩き去ろうとする。
そこにルナマリアさんがやってきた。
「アグネス!あら、それにリズも!ちょうどいいところに。ねえ明日空いてる?」
「何よ急に。山猿とくっついて人生終わっちゃったあんたとは違って私達には輝かしい未来があるのよ。山猿カップル同伴でどこかに行く気はないの。」
しっしと犬を追い払うようなジェスチャーをするアグネス先輩。
「そんな言い方ないでしょ!…それに明日はシンは隊長と一緒に仕事なのよ」
そんなアグネス先輩に苦笑しつつ少し寂しそうな顔をするルナマリアさん。
その瞬間アグネス先輩が得意そうな顔になる。
「ふぅん?…その分だとルナ、あんたにもまだ真っ当な人生を歩める可能性が残されているのね。いいわ!ついてきなさいよ!」
…親友のカップルに対してこの言いぐさ。さらにカップルにちょっと距離ができた瞬間の良い表情といいこの先輩性格が終わりすぎである。
…でも良い先輩だし大好きな事に変わりはないけど!
そのままアグネス先輩が端末を操作する。ルナマリアさんにも予定表を送ったようだ。
そしてそのまま二人で相談を始める。
「ルナが来るならこの展望台は外して…久しぶりにこの店はどう?訓練生時代によくいったんでしょ?」
「あんたが寝取った彼ともね!それに初めてアプリリウス市に来るのにそこを外すのは可哀そうじゃない?」
「寝取られる方が悪いのよ!それにつまんない男だったからむしろ感謝してほしいぐらいね…でもあの子は初めて来るんだから確かにそこは外せないか…」
「あ、あの私はどこでも楽しいです!」
気を使わせては悪いと一応アピールはしてみるのだが…
ルナマリア先輩とアグネス先輩は顔を見合わせ
「いいのよ。むしろ私が割り込んじゃったんだからごめんね」
「私とルナでプランは完璧に組んでおくから。あんたはどっか行ってなさい」
そのまま追い払われてしまった…
まあ確かに目の前に私がいたらやりづらいかもしれない。
ここはお礼を言って退散する事にした。
帰航時に大がかりな機体の整備に入るからいくつか確認したい事があると整備兵の皆さんに言われていたのを思い出し、格納庫に立ち寄る事にする。
すると…キラ准将と見慣れない金髪の男性が話し込んでいるのが聞こえてきた。
「まったくこんな機体でデスティニーや准将のストライクフリーダムとある程度とはいえ渡り合えるとはリズ嬢の操縦技術には頭が下がります。そのままレイダーの諸元を流用しているからMAへの変形時のコントロールに無理が生じている!変形後の機体制御がこんなに不安定だなんてありえませんよ!エネルギー制御にも課題が残っている。高エネルギー砲を何も考えずに積んだせいで機体への負荷が大きすぎて機体全体のパワー配分がめちゃくちゃだ。他国とはいえこれを通した技術者たちの無能さには呆れかえりますよ。常々ここの技術者は無能だとおもっていましたがさらに下がいるとは…まったく人間の愚かさには際限がありませんね!」
「OSを弄るだけでは改善は…難しそうですか?」
「幸いアプリリウスには設備もそろっていますし…簡易な改修である程度は改善できそうです。」
「お手数ですがお願いします。OSは僕の方で直しておきますので後で改修後の諸元を教えてください。」
「しかし…准将よろしいのですか?お帰りにならなくて」
「僕がしてあげたいんです。アスランにはみんなに頼れって言われたけど…僕が何もしなかったせいで誰かが傷つくのはやっぱり嫌なんです。」
そこでキラ准…隊長が振り返る。
「隊長…すみません…盗み聞きしてしまったみたいで…」
仕方なく進み出る。
以前の演習では私のミスで全滅したのに休暇に浮かれていた自分の馬鹿さ加減を殴りたくなる。
「私のために隊長とそれに「ハインラインです」…ハインラインさんにもご迷惑をおかけしてすみません」
「気にしないでください。我々技術者にとってもこれは貴重な経験になりますから。最悪の設計を経験する事で自分達が手を抜くと何が起きるのか身をもって知るよい機会です」
「リズのせいじゃないよ。君が頑張っているのを僕はよく知ってる。だから…その手助けをさせてほしいんだ。それに休むのも仕事の内だよ」
「申し訳ありません!でもご無理だけはなさらないでください…」
キラ隊長はどうなんですか!と言いたかったけどそもそもこの事態を招いた元凶の私がいえる事ではない。
「うん。大丈夫だよ。そういえばリズは明日どこに行くか決めたの?バイクとか好きだったら良いコースがあるんだ」
キラ隊長は微笑んでそう言ってくれる。
そういえばアグネス先輩に私の面倒を見るように頼んでくれたのは隊長である事を思い出す。
「隊長!明日はアグネス先輩とルナマリアさんと街に出かける予定なんです。アグネス先輩に私の面倒を見るように頼んでくださったって…アグネス先輩から聞きました。ありがとうございます!」
そういうと隊長はきょとんとした顔をする。
「アグネスに?僕が?頼んだ覚えはないんだけど…」
えっと狐につままれたような顔でキラ隊長と顔を見合わせる。
「アグネス嬢の性格を考えるとアグネス嬢の嘘である可能性は98.7%。動機としては照れ隠しが3割。もし嫌われていて断られた場合の精神的ダメージを回避したい理由が5割、ちょっとしたいたずら心が2割と推測されます。」
まったく表情を変えないまま解説を始めるハインラインさん
アグネス先輩が私と一緒に出かけたいと思ってくれた…そのことでとても嬉しくなる。
そんな様子を見ていたキラ隊長は優しく微笑む。
「ごめん…余計なお世話だったみたいだね。さっきも言った通り僕たちの事は気にしないで。楽しんできてね」
そのあと、改修を手伝う事になった整備兵の皆さん一人一人にもお礼を言って回ったが
「嬢ちゃん達の機体を何もわかってない基地の連中にそのまま任せるわけにはいかねえだろ!もとからそのつもりだったから安心しな!」
と豪快に笑ってくれた。
ただお願いとして明日のお出かけの写真をいくつかシェアしてほしいと言われたので私の分は送ることを約束してアグネス先輩とルナマリアさんには許可が取れたら…という事にした。
約束した瞬間に歓声が上がったけど私なんかの写真でいいのだろうか…という疑問は尽きなかった。
なおアグネス先輩とルナマリアさんに相談したところ
アグネス先輩は
「ま、持たざるものに施すのも持つものの義務よね…送る分は私が選ぶから」
ルナマリアさんは「アグネス?あんまり過激なのはだめよ?少しだけね」という反応だった。
キラ隊長にハインラインさん、整備兵の皆さんには申し訳ないけど明日はめいいっぱい楽しませてもらおう!そしてその分もっと頑張ろうとそう誓うのでした。
アグネスが好きなんですけどあんまり良い子すぎるとただのツンデレになるし…嫌な部分を強調しすぎるのも違うなと思って…匙加減が難しい!
嫌われるよりはツンデレのほうがいいかと思ってそっち側に寄せています。
改めて原作の奇跡的なバランスを実感しますね。