アグネス先輩!よろしくお願いします!~コンパス新人隊員の華麗なる(?)日常~   作:クスクス

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前回に引き続きラクス総裁回です。


ラクスの休日

ランジェリーショップでラクス総裁と出くわすというまさかの事態に動揺を隠せないアグネス先輩とルナマリアさん。

 

そんな二人を見たラクスさんは苦笑すると先ほど私にしたのと同じように説明をする。

 

「びっくりしました…総裁もこういう場所に来られるんですね」

 

いち早く驚きから立ち直ったのはルナマリアさん。

 

「ええ…私も”キラの妻”として彼が喜んでくれるものを買いたいと思いましたの」

 

さりげなく”キラの妻”を強調するラクスさん。

その視線がちらりとアグネス先輩に向けられたのは気のせいではないだろう。

 

ぐぬぬ…という擬音がでそうなほど悔しそうな顔をするアグネス先輩。

 

「そ…それでは私達はこれで!かわいい後輩のリズに街を案内しないといけませんから~❤ほら…ルナも❤」

 

わざとらしい笑顔を作ると私とルナマリアさんの腕を取って店外に連れ出そうとするアグネス先輩。

 

「せっかくの休日にお邪魔して申し訳ありませんでした…皆さん楽しんでくださいね」

 

寂しそうな顔で私達を見送るラクスさん。

何事もなければそこで別れるはずだったのだが…

 

「ラクス様がいるって本当!?」「ラクス様~!」

 

店の外には思い思いの声をあげるファン達が黒山の人だかりとなっていた。

SPの人達が店内に入ろうとするファンを押しとどめている。

 

「ちょっと!なんなのよあれ!」

 

「相変わらずすごい人気ね…」

 

たまらず私達は店内に後退する。

戻ってきた私達を見て目を丸くしているラクスさんに事情を説明する。

 

「まあ…私のせいでそのようなことに…私から皆さんにお話しさせていただきます」

 

先ほどまでの一人の女性としての顔からプラントの歌姫の顔になったラクスさん。

でも…せっかくの休日なのにそんなの…あんまりだと思います!

「待ってください!ラクスさん!私に考えがあります!」

黙っていられなくなった私が計画を説明するとラクスさんは先ほどまでの少女の顔に戻って心からの笑顔を見せてくれたのだった。

 

…アグネス先輩が世界に絶望した顔をしているのは気にしない事にしよう。

 

 

 

 

「私…このような美味しい物初めて食べました!」

 

眼前に置かれた巨大なパフェに感激している黒髪の女性…変装したラクスさんが興奮した口調で言う。

 

「私もです!ラク…あうっ…ティリアさん!」

思わずラクスさんと言いかけて無言でアグネス先輩に頬をつねられる。

 

あの後…SPの人にウィッグと濃い色の伊達眼鏡を買ってきてもらい、アグネス先輩がラクスさんに化粧をして変装。

店の裏口を使わせてもらう事で無事に脱出に成功した私達は当初の予定通り人気のスイーツショップに来ているのだった。

 

 

それにしてもこうして見るとラクスさんも一人の女性なんだなと思う。

美味しそうにパフェを食べて幸せそうな顔をしているのを見るとほほえましく思う。

 

でもアグネス先輩とルナマリアさんはどうだろう…?そう思ってルナマリアさんを見るとウィンクしてくれた。きっと同じ気持ちなのだろう。

 

そしてアグネス先輩は…

 

ラクスさんにとうとうと恋愛の手練手管を披露している

……マウントとれるようになると本当に生き生きしますね先輩…

 

真剣な顔で聞いているラクスさんも面白い。

 

「アグネスったら…でもアグネスも総裁には感謝しているのよ」

 

そっとルナマリアさんが私にささやく。

 

ファウンデーション動乱の際、敵に寝返ったと嫌疑をかけられて軍法会議にかけられそうになったアグネス先輩を助けたのがラクス総裁なのだという。

 

「…それで軍法会議の場で総裁が

 

『アグネスは私の命によりキラを討ち、ファウンデーションでも護衛を務めてくれたのです!その責を問うというのならその責はすべて…ファウンデーションの企みを見抜けなかった私にあります!』

 

そう演説してくださったお陰で無罪放免になったのよ。

それまではアグネスも処刑されるかもしれないって『今までありがとうルナ…色々あったけど許してね』…ってしおらしかったんだから!」

 

アグネス先輩の声真似をしてころころと笑うルナマリアさん。

 

そんな私達を見たアグネスさんが「何話してるのよルナー!」と怒る。

 

それを見てみんなで笑いあう。

 

ファウンデーション動乱で遺恨が残らなかったことに私は心から感謝したのだった。

 

 

その後はプリクラ(なんとこの機械の発祥は前世紀らしい!)を撮ったり、ウインドウショッピングをしたりで時間はあっという間に過ぎていった。

 

途中で立ち寄った小物屋さんでラクスさんが「おそろいにしましょう!」と同じキーホルダーを買う事になったり、それに対抗心を燃やしたのかアグネス先輩が「仕方ないからあげるわ…これ」と何が仕方ないのかよくわからないままアクセサリーをプレゼントしてくれたりした。

 

へへ…家宝が二つ増えちゃいました!

 

 

「あっもうこんな時間…!アグネス時間大丈夫?」

 

「しまったわ…展望台に行こうと思ってたけどもう閉まっちゃうわね」

 

空の色が夕焼けに変わる頃、ルナマリア先輩がそんなことを言い出す。

 

頭を抱える先輩方を今日は本当に楽しかったから大丈夫です!となだめていると

それを黙って聞いていたラクスさんが口を開いた。

 

「でしたら…良い場所がありますわ!」

 

そしてラクスさんの呼んだ車に乗ってたどり着いたのは…

 

眼下に広大な湖が広がる。

ここはコンパスが要人を迎える時に使うゲストハウスなのだという。

黄昏時の空が湖に映えて美しい。

 

「喜んでいただけて嬉しいですわ。ここには庭園もありますの!リズさん…少しだけ二人で歩きませんか?」

 

そう微笑むラクスさん。

 

ルナマリアさんとアグネス先輩の方を見ると行ってきなさいと笑顔で送り出されてしまった。

 

「わあ!すごく綺麗ですね!」

庭園に入ると私達を迎えたのは無数の薔薇だった。

整然と植えられた薔薇が見事に咲き誇っている。

 

そんな私を見て微笑むとラクスさんはそのまま歩を進めた。

私もその後を少し遅れて続く。

 

「より美しく、より健やかに、他とは異なる色を。そのように心血を注いだ人達を…その努力を私も尊いと思います」

 

やがてラクスさんは静かに口を開いた。

いつしか私達は青い薔薇に囲まれていた。

自然界に存在しない…遺伝子組み換えで生まれた薔薇達。

少し先で薔薇園は終わっており…出口には淡い紫の薔薇が植えられていた。

 

恋人のように寄り添う2本の薔薇。

そして離れた場所に4本の薔薇が並んでいる。

その様はどこか墓標を思わせた。

 

「そして…そのようにして生まれた花も私は…美しいと思います。望まれた通りに咲き、人々を楽しませる。そのために懸命に生きているのですから」

 

慈しむように…憐れむようにそっと薔薇の花を撫でるラクスさん。

 

「ですが…」

 

とラクスさんは薔薇から手を離し、薔薇園の出口へと向かう

薔薇園を出るとそこには原種の花々と園芸用に改良された花が混在して植えられた花畑があった。

 

「整然とした薔薇園よりもこちらの方が私は好きなのです」

 

そういってラクスさんはこちらを見る。

 

「私も好きです!」

 

綺麗すぎる薔薇園よりもどこか自然を感じられるこちらのほうが性にあっている。

 

それに…どこかすがるようなラクスさんの目に背くことはできなかった。

 

同じですね!と二人で微笑みあう。

 

 

「庭師の方に聞いたのですが…この花畑を維持するのはとても大変なのだそうです」

 

花畑に腰を下ろして休んでいるとぽつりとラクスさんがつぶやいた。

 

「より強く、より健やかにと選りぬかれた花が原種の草花の場所を奪ってしまったり…」

 

声は朗らかに…だが哀しげな眼で花畑を見るラクスさん

 

「その逆に原種の草花が園芸用の花に絡みついて枯らしてしまう事もあります。

庭園と原野にわかたれていればそのような事もなかったのに…このような花畑を望んでしまう私は…罪深いのかもしれません」

 

「じゃあ私も共犯ですね!」

 

…その悲しみをやわらげたくてつい大きな声を出してしまった。

 

「共犯?どうしてですか?」

 

ラクスさんが目を丸くする。

 

「私もこの花畑を綺麗だって思っちゃいましたから!それに…お花の事はよくわからないんですけど…」

 

そっと眼の前の花を指さす。

 

地味な色の小さな原種の花が艶やかな桃色の花によりかかるようにして生えている。

ちょうどお互いに支えあって海風ならぬ湖風に耐えているらしい。

 

「このお花たち…私とラクスさんみたいだと思いませんか?

この庭園に植えられなければ出会う事もなかったと思うんです。

確かに混ざり合う事は過酷で時には厳しい事もあると思うんです!

…でもこうして支えあう事もできる。

それは一人ぼっちで咲いてるよりとっても素敵な事じゃないですか?」

 

自分でも何を言っているんだろうと思う。

というか私ごときがラクスさんを支えるとか不敬にもほどがあるのでは!?

 

我に返ってとたんに恥ずかしくなって悶えているとラクスさんが私を抱き締めてくれた。

 

この華奢で優しい女の人に世界はいったいどれだけ重荷を背負わせているのだろう。

 

黙ったまま私を抱き締めるラクスさんの体温を感じながら私はそんな事を思った。

 

 

 

「ほらリズさん!こちらにいらしてください!」

 

あの後元気になったラクスさんに連れられて私は湖を見渡せる小高い丘の上に来ていた。

 

「湖が夕焼けに染まって…とてもきれいですね」

 

夕焼けに染まり刻々と色合いを変える湖を眺めながら私も呟く。

灯り始めた街の灯も湖に揺らめく。

 

隣に立っていたラクスさんがおもむろに身を離すとウイッグを取り、大切そうにしまい込む。

ウィッグに隠されていた艶やかな桃色の髪が黄昏の空に映えてまるで女神様のようだと思う。

 

そのまま湖を背にしたラクスさんが私に問いかける。

 

「見る時、見る人に応じて…湖は色を変えます。あなたの目にはどのように見えていますか?」

 

「えっと黄昏に染まってとってもきれいだと思います!」

 

あっなんか間違えたっぽい…

ラクスさんが笑顔のまま固まっている。

 

少し気まずい沈黙が流れたあと

 

「…そして私も時に応じて人に応じて変わってきました。プラントの歌姫…反逆者…そしてコンパス総裁。そのどれもが私です。あなたの目には…私、ラクス・クラインはどのように映っているでしょうか?」

 

ラクスさんが静かに続ける。

頬が赤くなってちょっと恥ずかしそうだ。

 

「歌姫のラクスさんにはとっても憧れていますし…コンパス総裁としてのラクスさんの事はとっても尊敬してます!」

 

でも…と続ける。

 

「私が一番好きなのは今日のただのラクスさんです!」

 

その時のラクスさんの笑顔をきっと私は一生忘れないだろう。




ラクスさんも弱音をはきたいときもあると思うんですよね。
そしてキラだけじゃなくて他の人にわかってほしい時もあるんじゃないかと…

なお湖問答はキラならノータイムで抱き締めて目をあわせて「僕の目に映る通りだよ。…ありのままのラクスだ!」ぐらいは言えると思いますが…

アホの子の主人公ちゃんには通じませんでした。
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