その娘は蒼い鬼火と共にやってくる   作:ジト民逆脚屋

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ちょっと短いですけど、エデン条約編までの繋ぎという事で。
あと、大体この前後で先生はイオリの足を舐めてます


滲み出した結末

――Toten sie(殺せ)

――Toten sie(殺せ)

――Toten sie(殺せ)

 

また、この夢だ。

 

――Toten sie(殺せ)

――Toten sie(殺せ)

 

あの日からずっと誰かを殺す。

 

――Toten sie(殺せ)

――Toten sie(殺せ)

 

この果ての無い血溜まりも、そこから湧き出る無数の手も、全て全部自分が殺した手だ。

 

――Toten sie(殺せ)

――Toten sie(殺せ)

 

だから、殺さないと。

この手に引き摺り込まれない様に、ずっと殺し続けないと

 

――Toten sie(殺せ)

――Toten sie(殺せ)

 

それ以外出来ない。

右手は銃が縛り付けられ、左手は弾丸で埋まってる。

だからもう殺す以外出来ない。

 

――Toten sie(殺せ)

――Toten sie(殺せ)

 

あれ? でも、なんで殺さないといけないんだっけ?殺したらいけない筈なのに、なんで私は殺さないといけないんだっけ?

 

――考えるな

 

ああ、そうだ。考えたらいけないんだ。

人殺しに考えるなんて許されない。

考えるな。

恐怖も

痛みも

罪悪感も

何もかも無視して、意思を、思考を、運動神経を、全て全部使い潰して殺せ。

そして、大切な人すら殺せ。

お前はもう殺しているから、今更躊躇うな。考えるな。

 

 

――あれ? 大切な人って誰?

 

 

周りを見ても誰も居ない。何も聞こえない。

聞こえるのはこの声

 

――Toten sie(殺せ)

――Toten sie(殺せ)

――Toten sie(殺せ)

――Toten sie(殺せ)

 

誰かが居た筈なのに、何も思い出せない。

 

――ラン、どうしました?

――ラン、また魘されてるのか

――ラン、相変わらずっすね

――本当に大丈夫なんですか

――■■先輩、■■■■■■■ 

 

この人達は一体誰なんだろう?

 

――Toten sie(殺せ)

――考えるな

 

――■■■■

――ラン■輩

――ラン先輩!

 

私を呼び止める君は誰なの?

 

 

 

 

 

 

 

「ラン先輩!!」

「ひえっ?!! ……コハル?」

「もう、全然起きないから心配しましたよ」

「ご、ごめん」

「ほら、ツルギ先輩達が呼んでましたから、早く早く」

「う、うん。じゃあ、行ってくる」

 

のっそりと起き、そそくさと押収品管理室を後にする。

何か夢を見ていた様な気がする。ランはどんな夢だったか思い出そうとしたが、結局思い出せない。

 

「コハルはなんて言ってたっけ? ……ああ、委員長が呼んでたんだ」

 

ツルギの顔を思い出し、視界の縁に滲む黒い靄が消えるとランは委員会室へと歩き出した。

 

「あれ? 委員会室って何処だっけ?」

 

だが、ツルギ達が居る委員会室への道順を思い出せない。

ほぼ毎日通っていた筈の場所。大切な、■したくない人達が待っている場所の筈なのに、何故かそこが朧気になっている。

 

「えっと……」

 

ぼんやりと廊下で立っていると、後ろから呼び掛ける声があった。

 

「ラン、どうしたっすか」

「あ、イチカ。いや、ちょっと忘れ物をしたような気がして」

「まったく、相変わらずぼんやりしてるっすね。書類は全部提出されてたっすよ」

「ああ、じゃあ気のせいかな」

 

カロンと、ランタンが軽い音を立てた。

多分、気のせいだ。

ほら、イチカを見たら思い出せた。

 

「しかし、急な呼び出しっすね。私を含めて、委員会の主戦力全員っすよ」

「そうなんだ」

「あれ? ランは何も聞いてないっすか」

「うん、コハルに起こされてそのままだから」

「また寝てたっすか。最近、よく寝てるっすね」

 

イチカの記憶だと、ランは以前からよく寝ている。

突然、寝落ちする事もあったが今程ではなかった。

以前、それとなく救護騎士団のセリナに問うてみたが、それらしい症状には当たらないとの事だが、あまりに目立つ様なら診断を受けてほしいと言われた。

しかし、あの時は少し焦った。話終えるかどうかのタイミングでミネがひょっこり現れ、ランの状態がバレるところだった。

 

――本当なら診察してもらうべきなんすけど……

 

あの時、イチカは思わず誤魔化してしまった。

疑われはしたが、ランの名前は出さずに自身が最近異様な眠気に襲われると、話を濁してアドバイスを貰い場を納めた。

納めはしたが、ミネの勘は妙に鋭い。

というか、疑わしきは根こそぎ救護する。

度々入院するランに、ある程度の目星はつけているだろう。

 

――怖いんすかね

 

隣を歩く長身。誰が見ても異様と言うだろう体躯と、顔と全身に刻まれた傷。

なのに、見た目と違いぼんやりとした優しい性格。

その彼女に、何か異常があると判る事が怖い。だから逃げた。

逃げたところで現実は変わらない。ツルギやハスミは様子見をしているが、イチカは今すぐにでも診察を受けさせて、現状を確認するべきだと考えている。

そして、その結果次第では……

 

「イチカ?」

「……どうしたっすか?」

「いや、目が本気の時みたいに開いてたから、何かあったのかなって」

「あー……、この前の出動でちょっと考え事があったんすよ」

「なんだっけ? またへなちょこヘルメット団だっけ」

「いやいや、へっぽこヘルメット団すよ」

 

度々問題を起こす集団の話をしながら、二人はツルギ達が待つ委員会室へ向かった。




イチカにはオレルドかマーチスみたいな役回りをしてほしい
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