あと、大体この前後で先生はイオリの足を舐めてます
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また、この夢だ。
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あの日からずっと誰かを殺す。
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この果ての無い血溜まりも、そこから湧き出る無数の手も、全て全部自分が殺した手だ。
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だから、殺さないと。
この手に引き摺り込まれない様に、ずっと殺し続けないと
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それ以外出来ない。
右手は銃が縛り付けられ、左手は弾丸で埋まってる。
だからもう殺す以外出来ない。
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あれ? でも、なんで殺さないといけないんだっけ?殺したらいけない筈なのに、なんで私は殺さないといけないんだっけ?
――考えるな
ああ、そうだ。考えたらいけないんだ。
人殺しに考えるなんて許されない。
考えるな。
恐怖も
痛みも
罪悪感も
何もかも無視して、意思を、思考を、運動神経を、全て全部使い潰して殺せ。
そして、大切な人すら殺せ。
お前はもう殺しているから、今更躊躇うな。考えるな。
――あれ? 大切な人って誰?
周りを見ても誰も居ない。何も聞こえない。
聞こえるのはこの声
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――
――
――
誰かが居た筈なのに、何も思い出せない。
――ラン、どうしました?
――ラン、また魘されてるのか
――ラン、相変わらずっすね
――本当に大丈夫なんですか
――■■先輩、■■■■■■■
この人達は一体誰なんだろう?
――
――考えるな
――■■■■
――ラン■輩
――ラン先輩!
私を呼び止める君は誰なの?
「ラン先輩!!」
「ひえっ?!! ……コハル?」
「もう、全然起きないから心配しましたよ」
「ご、ごめん」
「ほら、ツルギ先輩達が呼んでましたから、早く早く」
「う、うん。じゃあ、行ってくる」
のっそりと起き、そそくさと押収品管理室を後にする。
何か夢を見ていた様な気がする。ランはどんな夢だったか思い出そうとしたが、結局思い出せない。
「コハルはなんて言ってたっけ? ……ああ、委員長が呼んでたんだ」
ツルギの顔を思い出し、視界の縁に滲む黒い靄が消えるとランは委員会室へと歩き出した。
「あれ? 委員会室って何処だっけ?」
だが、ツルギ達が居る委員会室への道順を思い出せない。
ほぼ毎日通っていた筈の場所。大切な、■したくない人達が待っている場所の筈なのに、何故かそこが朧気になっている。
「えっと……」
ぼんやりと廊下で立っていると、後ろから呼び掛ける声があった。
「ラン、どうしたっすか」
「あ、イチカ。いや、ちょっと忘れ物をしたような気がして」
「まったく、相変わらずぼんやりしてるっすね。書類は全部提出されてたっすよ」
「ああ、じゃあ気のせいかな」
カロンと、ランタンが軽い音を立てた。
多分、気のせいだ。
ほら、イチカを見たら思い出せた。
「しかし、急な呼び出しっすね。私を含めて、委員会の主戦力全員っすよ」
「そうなんだ」
「あれ? ランは何も聞いてないっすか」
「うん、コハルに起こされてそのままだから」
「また寝てたっすか。最近、よく寝てるっすね」
イチカの記憶だと、ランは以前からよく寝ている。
突然、寝落ちする事もあったが今程ではなかった。
以前、それとなく救護騎士団のセリナに問うてみたが、それらしい症状には当たらないとの事だが、あまりに目立つ様なら診断を受けてほしいと言われた。
しかし、あの時は少し焦った。話終えるかどうかのタイミングでミネがひょっこり現れ、ランの状態がバレるところだった。
――本当なら診察してもらうべきなんすけど……
あの時、イチカは思わず誤魔化してしまった。
疑われはしたが、ランの名前は出さずに自身が最近異様な眠気に襲われると、話を濁してアドバイスを貰い場を納めた。
納めはしたが、ミネの勘は妙に鋭い。
というか、疑わしきは根こそぎ救護する。
度々入院するランに、ある程度の目星はつけているだろう。
――怖いんすかね
隣を歩く長身。誰が見ても異様と言うだろう体躯と、顔と全身に刻まれた傷。
なのに、見た目と違いぼんやりとした優しい性格。
その彼女に、何か異常があると判る事が怖い。だから逃げた。
逃げたところで現実は変わらない。ツルギやハスミは様子見をしているが、イチカは今すぐにでも診察を受けさせて、現状を確認するべきだと考えている。
そして、その結果次第では……
「イチカ?」
「……どうしたっすか?」
「いや、目が本気の時みたいに開いてたから、何かあったのかなって」
「あー……、この前の出動でちょっと考え事があったんすよ」
「なんだっけ? またへなちょこヘルメット団だっけ」
「いやいや、へっぽこヘルメット団すよ」
度々問題を起こす集団の話をしながら、二人はツルギ達が待つ委員会室へ向かった。
イチカにはオレルドかマーチスみたいな役回りをしてほしい