怪しさMAXの陰陽師は、むしろ一級陰陽師になりたいようです。   作:S・DOMAN

3 / 4
少しだけ書き方が変わりました


3

 

 

勇者ヒンメルの誕生から103年。冬。中央諸国、飲み干したコップを洗いながら。

 

 

 『寒いから洗い物お願い』と仰ってフェルンに洗い物を押し付けていたフリーレンだが、今は焚き火に当たりながら毛布に包まっている。ちなみにドーマンはツッコミを入れた後どこかに消えてしまった。猫は気紛れなのだ。

 

 

「フリーレン様。明日こそは洗い物お願いしますね」

 

「明日もお願いぃ…」

 

「ちょっとフリーレン様?流石に怒りますよ?」

 

「だって寒いんだもん…」

 

 

 ぐずって頭まで布団を被るフリーレンには威厳なんて微塵もない。本当に、こうしていると見た目相応の子供にしか見えないのにとフェルンは思う。

 そんな彼女もやはり手が冷たくなってしまうので、自分の分も手早く済ませて拠点に戻ると、ドーマンがミノムシみたいになったフリーレンの口に歯ブラシを突っ込み歯磨きをしていた。

 

 すかさず杖を取り出し先を頭に向ける。

 

 

「『魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』」

 

 

 放たれた光線は、心なしか戦闘に用いるものより太く感じた。実はフェルン、師であるフリーレンの助言を仰ぎつつ、ゾルトラークを自分用に改造しているのだ。

 普段使いに優れた速射性に優れる白タイプ、殺意多め魔力消費多めの必殺技系黒タイプ、他にも赤やら青やら時代が違えばそれだけで大道芸人として食べていけそうなぐらいの膨大な作例を用意しております。

 今回ドーマンに放たれたのはしっかり黒い。いつもの二割増しで黒い。光線がドーマンを飲み込み胴と上腕を消し飛ばした。

 

 

「ンン!?フェルン殿!?流石に今撃たれるとフリーレン殿が危のうございますぞ?」

 

「……はっ。すみません、なんだかつい出ちゃいました」

 

「フリーレン殿。ハイター殿……いったいどこで育て方を間違えたというのですか…」

 

「というかドーマン様。なにもそこまでしなくてもいいと思います。歯磨きまでサボり始めたらフリーレン様が本当にダメ人間になってしまいますよ」

 

「いえ、実は拙僧昔手慰みに犬を飼っていた時期がありまして。その時の経験で他者の歯を磨くのも、まあ多少は?できますので?」

 

「うあー。わふぁふぃはいぬのかわぁいなの(私は犬の代わりなの)?」

 

「いえいえそういう訳では決して!ただ何かこう、フリーレン殿を見ていますとなァ。何だかよくわからぬ気がムクムクと湧き上がってくるような…」

 

「『魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』」

 

「ン゙ン゙ン゙―――」

 

 

 この半裸ゴリラは突然何を言い出すんだ。フリーレン様の教育に悪いでしょうが。そうしてフェルンが息を吐いた次の瞬間には、吹き飛ばされた上半身が元通りに回復していた。

 肉が増殖したり、徐々に再生していく訳ではなく、何もなかったかのように一瞬で元通りになる。何度見ても訳の分からない再生力だ。

 

 

「ぐじゅぐじゅ……ぷっ。よくやった、フェルン。今のゾルトラークは良かったよ」

 

「ンフフフフ!撃つのがあと数秒早ければちゃあんと『核』を撃ち抜けていたのですが!まあまだまだ時間はありますので、明日以降気長にやるのが宜しいかと」

 

「……あの、ドーマン様。先ほど胴体を吹き飛ばした時頭が落ちずに宙に浮いていたんですが」

 

「なんと?不思議な事もあるものですなぁ」

 

 

 まただ。

 フェルンも魔法使いの末席に座る者として、どうしてもドーマンの扱う魔法の詳細が気になる時がある。ですが、聞いてみてものらりくらりと躱されて、結局詳しい内容は分からないままなのだ。

 彼が頻繁に使用する『姿を隠す魔法』などであれば魔導書もどこかにあるのだろうが、『死んでも復活する魔法』なんてものは少なくとも現代には存在していない。だが実際、ドーマンは何度身体を吹き飛ばされても、身体を構成する核を撃ち抜かれない限り死なない……さながら魔族のように。

 そんな神の御業にも等しい魔法が現存していたら、教会なんて必要無くなってしまうだろう。

 

 そんなに凄い魔法がドーマンに扱えるなら、ご長寿仲間のフリーレンにも扱えるのではと最近思うようになっているのだが、生憎というか幸運なことにと言うべきか、フェルンはフリーレンが復活する場面を見たことが無い。だが確かに、目の前で吹き飛ばされたフリーレンが出来の悪い映画のフィルムのように復活するのを目の当りにしたらショックで数か月寝込む自信がある。うーん……やっぱり習得してないのかも?

 うん、たぶんそうだ。「ああいう魔法は趣味じゃないんだ」とか言ってそうな気がするし。

 

 というかそもそも、フリーレン様が死ぬような状況なんてイメージできません。一対一なら現代の魔法使いでは太刀打ちできないでしょうし。

 

 

「フリーレン様ってなんでこんな変な人と旅をしてるんでしょうか…」

 

「置いて行っても勝手についてくるんだよ…」

 

「ストーカーじゃないですか!?」

 

「ヒンメル達と会う前からそんな感じだからさ、もう慣れたよ」

 

「嫌な慣れですね…」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。