トウホウテンセイイブンロク   作:まめ三等兵

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10.病院 後編

 

 

 病室を出たところでワードッグがすぐに呼び止めた。

 

 

 

「待て、そういや忘れてた」

 

「忘れもの?」

 

 

 

 病室に戻ったワードッグは、ベッドのところまでくると、

 

 

 

「とどめさすの忘れてたぜ。死んだフリしても無駄だ、出てこい」

 

 

 

 と言いながら棒武器でベッドのフレームをコツコツと叩きはじめた。

 

 

 

「……」

 

「往生際が悪いぜ。こっちは3人いて全員武器持ちで戦える。諦めろ」

 

「……」

 

「チッ……このやろーーッ!?」

 

 

 

 ワードッグがベッドの下を覗きこんだタイミングで、小さい影がものすごい速さで飛びでてきた。

 

 それはワードッグの傍をすり抜け、スピードを保ったままレミリアたちの方に向かってくる。

 

 

 

「レミリアくんッ!」

 

 

 

 トウマが慌てて攻撃態勢に入った。

 レミリアもナイフを前に構え臨戦態勢をとる。

 

 

「待って待って待って待って殺さないでーっっっ! やめてやめてやめてやめて助けてーっ!!!」

 

「っ!?」

 

 

 

 その小さな影は、甲高い声で助けを懇願しながらレミリアたちの前で空中静止した。

 

 正体は、全長30センチほどの娘の悪魔だった。

 青いレオタード姿に、肘まで覆う長い手袋、そして腿下ほどのストッキング。

 そして背中からはトンボのような透けた羽が生え、ショートの赤い髪に愛らしい顔だちが特徴である。

 

 レミリアたちもここまで何度か対峙している。

 

 

 

「どうして殺すのー! ワタシ何にもしてないーっ! 武器おろしてーっ!」

 

 

 

 娘の悪魔は泣きべそをかきながらレミリアとトウマを説得する。

 

 と、その背後から棒武器を振り上げるワードッグの影が伸びてきた。

 娘の悪魔は『ひっ』と短い悲鳴をあげ、レミリアとトウマを見比べたあと、レミリアの背中に慌ててしがみついた。

 

 

 

「えっ……ち、ちょっと」

 

「助けてっ! もうずっとおねがいしてるのにーっ! 戦いたくないーっ! どうしていきなり殺そうとするのーっ! 助けてよーっ!」

 

 

 

 そこにワードッグがやってきてレミリアに声をかけた。

 

 

 

「なにボーッとしてんだ、ヤレよてめえ」

 

「……。戦う気がないって言ってるわ」

 

「だからどうした、そいつは悪魔だ」

 

「って、言ってるけど?」

 

 

 レミリアは背後に向かって言葉をかける。

 

 

 

「な、なによその理由ーっ! 悪魔をころしてへいきなのー!? ていうかそいつだって悪魔じゃんっ! ていうかアンタ悪魔の癖にどうして悪魔狩りみたいな真似するのよーっ!」

 

「ずいぶん癪に障ってくれるじゃねえか。オレは悪魔じゃねえ、てめえらのボスにこんなひでえ見た目にされた人間だ。だからオマエら悪魔は皆殺しだよ」

 

 

 

 そう言うと、ワードッグは人差し指でレミリアを手招いた。

 だがレミリアは後ろに引っ張られる。

 

 

 

「ちょっと待ってーっ! ボスってだれーっ! ワタシにボスなんていないーっ! 知らないあいだに悪者にしないでーっ!」

 

「どうでもいい。おい女、はやくそいつよこせ」

 

「ねーっ! ワタシほんとになにもしてないー!」

 

 

 

 するとトウマが娘の悪魔に声をかけた。

 

 

 

「ではキミは、どうしてここにいるんです」

 

「だってここに来れたんだもんっ! それだけだもん理由なんてないっ!」

 

「僕たちはここにくるまで、あなたの仲間とさんざん戦いました。人間を襲う以外にここにいる理由が?」

 

 

 

 トウマはズイとレミリアの背後に迫った。

 

「そ、そんなこと言われたってーっ! ワタシはなにもやってないもんっ! ひとくくりにしないでよーっ!」

 

 

 

 娘の悪魔はレミリアにしがみついて離れようとしない。

 背中ごしに震えているのが伝わってくる。

 レミリアは小さくため息を吐くと、

 

 

 

「そっちから危害を加えないなら戦う必要もないわ。さっさと行ってちょうだい」

 

 

 

 と言った。

 

 

 

「おいてめえッ」

 

「もう行きましょ。絶対に許さないのは院長、あなたをそんなにした、私たちをここに連れてきた。……はやく倒しに行こ」

 

「ーーチッ」

 

 

 

 ワードッグはレミリアを睨みつけながら床に唾をはくと病室から出て行った。

 

 

 

「さ、行ったわ、だからいいかげん離れて欲しいんだけど」

 

 

 

 娘の悪魔はレミリアから恐る恐る離れる。

 彼女のほうがよほど警戒してるようだ。

 

 

 

「たすかったぁ……ワタシここにずっと隠れてたけどさー、もうアイツ無茶苦茶なんだもん。よくあんなの手なずけたよねー。……あっ♪ そうだ♪」

 

 

 

 娘の悪魔はレミリアたちの目の前でクルクル舞いこう言った。

 

 

 

「ね? ワタシを仲魔にしない? こういう時ってさー、アンタたちみたいなニンゲンといたほうが安全ねのよねーっ」 

 

「……悪魔が悪魔を裏切って人間の仲間になるの?」

 

 

 

 レミリアの疑問に娘の悪魔は頬を膨らませた。

 

 

 

「なによそれーっ! もうハッキリ言っちゃうんだからー! そんな見た目してるのにダサいんじゃないのーっ! 悪魔が人間の仲魔になるのが流行ってるのーっ! 言っとくけどねー! ワタシこれでもけっこう人間に誘われてきたんだからーっ」

 

「ふーん、で、最後は殺すのね」

 

「なっ、ひっどーいっ! どうしてそういうこと言うのーっ!」

 

「だからここにいるんじゃないの?」

 

「ひどーいっ! せっかくワタシから誘ってるのにーっ! あのねー! 仲魔ってそんな軽いもんじゃないんだからねーっ! サマナーと悪魔は恋愛よりも重いのーっ」

 

「……」

 

 

 

 レミリアは無言のままトウマに視線を送り意見を求めた。

 トウマは肩をすくませると、

 

 

 

「任せますよ。あんがいこれが、キミの特別な力だったりするかもしれませんね」

 

 

 

 と言った。

 

 

 

「わかったわ、一緒に来て。でも安全じゃないわよ」

 

「やったーっ! 大丈夫きっと安全よっ! だってあんな凶暴なワンコ手なずけたんだからっ!」

 

「……」

 

 

 

 娘の悪魔はクスクス笑いながらレミリアの視線上に浮かんだ。

 

 

 

「じゃ、あらためて♪ ワタシは妖精ピクシー、やさしくしてね……あれ? アンタあれは?」

 

「あれ?」

 

「あれよー、えっとー……あ、コンプよコンプ」

 

「こんぷ? なんのこと??」

 

 

 ピクシーは『あれれ』と繰り返しながらレミリアの周囲をぐるぐる飛び回る。

 

 

 

「えー、コンプがない。ワタシを誘ってきた人たちはみんな持ってたのにー。あれがあったら信用してもらえるのにー」

 

「なかったらダメなものなの?」

 

 

 

 ピクシーは少し悩んだが、

 

 

 

「まいっかっ、じゃ普通についてくねっ」

 

 

 

 といってレミリアの腕にしがみついた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「君は私が作ったプログラムを持っているんだな。役に立っているかね?」

 

 

 

 2階への階段に差し掛かったときである。

 何者かにレミリアは呼び止められた。  

 ふと横をみれば、扉の開いている病室の中、鉄格子の向こう側に車椅子の男がいた。

 声の正体は彼のようであったが、ボソボソと小さい声であったため、詳細には聞き取れなかった。

 しかしレミリアは返事する。

 

 

「あなたも捕まったんですね、悪いんだけど、今すぐは助けられません」

 

 

 

 薄い笑みを浮かべた車椅子の男は、ワードッグとピクシーを一瞥すると、ふたたびレミリアに視線を戻す。

 

 

 

「ほぅ……私の作ったプログラムを持っていないのに従えているのか」

 

「……っ! プログラムってまさか……あなたがアレを作ったんですか?」

 

 

 

 車椅子の男はレミリアの質問にすぐに答えず、語りはじめた。

 

「私はスティーブン。かつて私は、瞬間移動装置ターミナルシステムの開発をしていた。ところが実験中に偶然悪魔を呼び出してしまったのだ。私は悪魔をなんとか倒したが大ケガをしてしまった。その苦しい経験から悪魔を仲魔にすることができるプログラム……悪魔召喚プログラムを作ったのだ。ターミナルが魔界へ繋がったことを知ったゴトウという男が悪魔を呼び出して操ろうとしている。私は悪魔召喚プログラムを大勢の人に送った。悪魔を操れる人を増やして悪魔の無秩序な氾濫を止めようとしたが使いこなすのは難しいようだ」

 

 

 

 話を終えたスティーブンは車椅子に取り付けられた小型PCのキーボードを叩き始めた。

 

 レミリアもトウマも言葉を失った。

 いまの話が本当だとしたら、こんなことになった原因は、目の前の車椅子に乗った銀髪の彼ではないかと。

 

 まるで他人事のようにサラサラと経緯を話すスティーブンに、心の処理が追いつかないレミリアとトウマ。

 

 

 

「ざけんなてめえッッッ! じゃあてめえのせいで俺はッッッ!」

 

 

 

 レミリアとトウマより先に反応したのはワードッグだった。

 ワードッグは棒武器で鉄格子を何度も殴打する。

 

 

 

「ワードッグ、もう少し話をさせて」

 

「うるせえッッッ! あいつも絶対ぶっ殺してやるッ! てめえこっちこいオラッッ!」

 

「ワードッグくん、ちょっと待ってください」

 

 

 

 トウマがワードッグの腕を掴む。

 

 

 

「邪魔すんなブッコロスぞッ! そもそもてめえ気に入らねえんだ触るんじゃねえッ」

 

「いいからよく見てくださいあの方を、信じるんですか? 彼の話を」

 

 

 

 ワードッグは荒い息のまま、鉄格子の向こうの車椅子の男をいま一度観察した。

 

 スティーブンは薄笑いのままブツブツとうわ言を漏らしPCのキーボードを叩いている。

 

 

「ーーケッ、とっくにドタマ弄られてたのかよ……」

 

 

 

 ワードッグは病室を後にする。

 トウマはレミリアを促した。

 

「レミリアくんも、いまは先へ」

 

「……そうね」

 

 

 

 レミリアは車椅子の男にすこしだけ後ろ髪を引かれながら病室を後にする。

 背後からスティーブンが声をかけてきた。

 

 

 

「私の悪魔召喚プログラムを受け取っているなら必ず使いたまえ。キミならば大きな力にできるだろう。リスクも効率も、いまの状態とは雲泥の差になる」

 

「……」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 レミリアたちは2階院長室前の廊下から角をふたつ曲がったところにいる。

 

 ここにくるまでの間で、レミリアは悪魔との戦いにずいぶん慣れてきた。

 しかしそれは死を恐れなくなったわけでも、戦闘技術が急激に上がったわけでもない。

 

 矢継ぎに出現する悪魔と対峙するごとに、レミリアは一刻もはやく家に帰らなければという焦りが色濃くなっていくのだった。

 そしてそれはトウマも同じだった。

 

 角から様子を伺いながらトウマがワードッグに声をかける。

 

 

 

「ワードッグくんの言うとおりです。これまで以上に強い圧力が……たしかに、これはもう人間じゃないな……」

 

「だから言ったろ。オイ、それより女」

 

「?」

 

「コバエが飛んでるぜ」

 

 

 

 ふいにワードッグは、レミリアの腕にしがみついてるピクシーに向かって棒武器を振り下ろした。

 

 

 

「ッ!? 危なっ! 危なーっ! な、なにするのこのワンコウッ」

 

「女、てめえこれはどういうことだ」

 

「この子が仲間になるって言うから」

 

「はぁあッ!? バカみたいに口車に乗せられて信用したのかよ、このボンクラ状況わかってんのか!」

 

「あなたの言うとおり、院長がこのあたりの雑魚とは違うっていうなら、仲間は多いほうが」

 

 

 

 ワードッグは牙を剥いてレミリアの前に立った。

 

「……俺とコバエは同じってわけだ」

 

「コ、コバエ……このワンコウ~」

 

 

 

 するとレミリアはピクシーを覗き込んだ。

 

 

 

「ピクシー、ちょっと静かにしててちょうだい」

 

「えーっ、なんかレミひどーっ」

 

 

 

 そしてワードッグに向きなおるレミリア。

 

 

 

「私、色々鈍いから。そんなの考えても見なかったわ。気に入らないのは分かったけど、せめて病院を出るまでは。あなたからみて、私たちなんとかなるの?」

 

 

 

 ワードッグは舌打ちして気まずそうにレミリアから顔をそらせた。

 

 

 

「ガキのくせに俺をガキ扱いすんじゃねえ、なだめてるつもりかよクソ。……ーーおいコバエ」

 

 

 

 ワードッグはピクシーに声をかけた。

 なにか企みを含んだような声色だった。

 

 

 

「へ? なに? な、なによその顔ー」

 

「俺たちの仲間なんだろ? だったらてめえ、院長室に真っ先に乗り込んで雷落とせ。てめえが雷魔法を使えるのは知ってる」

 

「えーっ! な、なんでワタシが真っ先にーっ」

 

「それができねえなら、てめえは院長のスパイってことで殺すだけだ」

 

 

 

 ピクシーは助けを求める表情でレミリアを見上げる。

 レミリアは無言でピクシーと視線を交わしたあと、

 

 

 

「いま私たちは助けを必要としてる。ピクシーが魔法を使えるのは私も知ってるわ」

 

 

 

 と言った。

 ピクシーは眉尻を下げた。

 

 

 

「で、でも1回しか使えないしっ、それにさっき回復するのに魔力使っちゃったからーーあれ? 魔力が回復してる」

 

「……魔力が回復してる?」

 

 

 

 ピクシーは自分の両手を不思議そうに見つめていた。

 するとトウマが口を開く。

 

 

 

「僕もです。力が戻ってる。それに身体の疲労感も全くない。……? ワードッグくん、キミ、いつのまに身体中の傷を治したんです」

 

「あのクソのおかげで俺は回復魔法が使えんだよ。ただ、これは俺じゃねえ……」

 

 

 

 レミリアは、いまだキツネにつままれたようなピクシーに声をかけた。

 

 

 

「ピクシー、とにかく今は魔法使えるのね?」

 

「え、うん……でもっ、あの中にいる奴たぶんヤバいよー、どうして逃げないのー」

 

「それが出来てたらとっくにそうしてるわ。お願い、1回でかまわない、1回撃てば、すぐに部屋の外に出てていいから」

 

 

 

 ピクシーは不安気にうなづいた。

 レミリアはそれを確認すると、角を曲がって院長室前に向かった。

 

 院長室前にくると、レミリアはみんなの顔を見渡した。

 そしてもう一度ピクシーに視線を送る。

 

 レミリアは勢いよく部屋に雪崩れ込んだ。

 

 中には初老の医者がいて、こちらを待ち侘びていたかのように不敵な笑みで立っていたーーが。

 

 

 

「ジオンガーっっ!」

 

 

 

 ピクシーは計画どおり、いきなり院長に向けて雷魔法を撃った。

 鼓膜を破りかねない雷撃音と共に、院長が身体から煙を噴かせ崩れ落ちる。

 

 

 

「よくやったわ! 逃げて!」

 

「レミ気をつけてーっ! アイツ本性みせてないーっ!」

 

 

 

 ピクシーはそう言い残し部屋から出ていく。

 トウマが魔法を撃ち、レミリアとワードッグがそれぞれの武器を手に院長に殺到する。

 

 倒れた院長の身体から噴出する煙は紫色に変色しますます大きくなり、どうやらそれは雷魔法のダメージによるものではない。

 人外であるのは明らかだった。

 

 

 

「チィッッ! クソがクソ悪魔の姿に戻っちまうッ! いまのうちに殺せッッッ!」

 

 

 

 煙で視界が遮られながら、ワードッグはやたら滅法に院長の後頭部を殴打する。

 レミリアは院長の喉元にナイフをさしこんだ。

 

 つぎの瞬間ーー。

 院長から強い衝撃波が走り、3人は吹っ飛ばされる。

 

 ただならぬ気配が院長室に充満した。

 初老の医者でしかなかった院長は、青い馬に股がり手に槍をもつ獅子の顔をした悪魔、堕天使オリアスに変貌していた。

 

 

 

「お、おのれ……ただの人間ではないな……よかろう、優秀なデク人形にしてやる……」

 

 

 

 元院長は槍を振りかざした。

 レミリアは一気に間合いをつめ跳躍して馬を駆け上がり、その勢いのままオリアスに体当たりをして自分もろとも馬上から落とした。

 

 床に倒れ込むレミリアとオリアス。

 運良くオリアスにマウントを取れたレミリアは、首元にナイフを差し込む。

 

 

 

「ュヌッ!」

 

 

 

 オリアスが奇怪な悲鳴をあげた。

 ワードッグが雄叫びをあげながらレミリアの前にあらわれる。

 

 

 

「そのまま頭を押さえつけろッッ!」

 

 

 

 レミリアは首元にナイフを深く差し込んだまま、もう片方の手でオリアスの白髪の立て髪を掴み床に押し付ける。

 

 ワードッグはオリアスの口に向かって、棒武器の先端を思いきり突き入れ、上から何度も何度も力を加えた。

 

 オリアスは苦悶を浮かべ槍を手放すと、ワードッグの棒武器を掴み、もう片手でレミリアの首を締め上げる。

 

 

「くっ……」

 

「我慢しろ離すんじゃねえッ! くたばれオラッ!」

 

「ッッガ! グゥウッ! ガガッ!」

 

 

 

 首元にナイフが刺さり、棒武器が喉元を貫通しようとしている。

 オリアスは相当な激痛と深いダメージを負っているがまだ力は絶えない。

 

 そこにトウマがレミリアとワードッグの間に飛び込んでくる。

 そしてオリアスの眉間に銃口を密着させ何度も何度も引き金をひいた。

 

 弾倉最後の弾が放たれたとき、オリアスの目から生気は完全に失われ、馬もろとも目の前から消えた。

 

 レミリアたち3人はほとんど同時に床に仰向けになった。

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……大事になる前に終わらせて良かったわ……ハァ、ハァ」

 

 

 

 

 皆んな獣のように息を荒げている。

 短期決着ではあったが、かつてない緊迫に息つく暇もなかった。

 床に倒れ込むワードッグが声をかける。

 

 

 

「ハァ、ハァ、やるじゃねえか、ハァ、ハァ、たいした度胸だ、ハァ、ハァ」

 

 

 

 レミリアは首を横に振りながら、

 

 

 

「みんないたから……じゃなかったらとてもあんな真似できないわ……ピクシー、もういいわよ」

 

 

 

 院長室の開いたドアから、ピクシーがヒョッコリ顔を覗かせた。

 

 

 

「終わっ……た?」

 

「ええ助かったわ、完ペキ」

 

「へへへーっ」

 

 

 

 ピクシーは軽やかに飛行するとレミリアの肩に座った。

 

 いつの間にか起き上がっていたトウマがレミリアに声をかける。

 

 

 

「レミリアくん、病院の鉄格子のロックは解除しました。はやくここから出ましょう」

 

「ええ、そうね」

 

 

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