となって、毎日投稿になってしまった。
ゲリラ豪雨。
それは来るいくつかの動乱を予見させるかのように、そして窓を見つめる少女の心の中を映す鏡のようにに。
連邦生徒会との会談以降のツカサはこうしてゆっくり社長室に居る事はなかった。
各地に赴き指示を飛ばし、根回しをし決して漏れがないように徹底していた。
もう打てる手は全て打った。
人員も、根回しも、計画も完璧に整えただろう。
既にいくつかの部署は行動を開始している。
だが、肝心のツカサの心は荒れていた。
それは今だ見ぬシャーレの先生への警戒心か、後には引けないという事への迷いか、
失う事への恐怖か。
(嫌な気分だ。最後まで決心できないのは……)
無機質な左手に持つ無残にも一部が燃えてボロボロになったピンク色をしたクマのぬいぐるみに目を移す。
彼女が生まれたその日に買われた彼は、今日までのツカサの人生を見てきた生き証人。
彼には己の人生、その最期に至るまで見せてやるつもりだ。
(お前はいつも、純粋な目で私を見るなぁ)
感傷に浸らなければ心を保てないわけではない。
そんな柔なメンタルなど、持ち合わせていない。
ただ、どうしても一人で決断する時は必ず彼がいないといけない。
(そんな目を向けられる資格など捨てたよ、私は)
後には引けない。
万物は流れていくものだから。
流れる以上は止まる事など許されない。
流れに比例するように、彼の目はツカサに深く響くようになってしまった。
『それでいいの?』
『大丈夫?』
『一人じゃないんだよ』
そう訴えかけているようで。
もしかしたら、それは鏡だったのかもしれない。
だから最近はまじまじと見る事もなかった。
それでも、近くにはいた。
(私の願望なのか…)
『どこまでも、絶対に一緒だからね』
そう言ってくれたら、どれだけ楽な人生を歩めたか。
だが、彼は物言わぬ。
最も従順で、反抗的。
(いつも微笑んでいろよ。私の分まで)
温もりのある右手で彼を撫でる。
毛並みもボロボロだが、よく似ているではないか。
いつぞやの誰かに。
「お前は私を否定しないよな?」
返答などない。
変わらぬ表情でツカサを見る彼を見て、ツカサもまた微笑む。
そして意を決し、彼をデスクの最も然るべき位置に戻す。
「なら見せてやる。お前と見てきた中で一番の景色を。本当の意味での一番、頂点を掴んで」
全てを淘汰して上にのし上がって見せる。
例えその玉座が屍山血河の果てにあろうとも。
その過程で親しく接してくる者たちが犠牲になろうとも。
世は弱肉強食。
弱者は搾取され続けるのみ。
ならば、なるしかない。
誰かに。
強者に。
営業本部に号令をかけるために、電話へと手を伸ばそうとしたツカサより先に電話が鳴る。
催促の電話だろうか。
「私だ。催促のつもりなら…」
「社長、お忙しいところ申し訳ございません。万魔殿の羽沼マコト様から話があるから明日来てほしいとの事です」
「…は?」
「万魔殿の……」
「いや、聞こえているし意味も理解している。で、用件は?」
「言葉をそのままお伝えいたします。『お前が興味を持っているシャーレの動向で面白い話がある』との事で」
「…わかった。折り返して伝えろ。明日の昼間に行く、それからプリンの在庫はあるか確認しておけ」
「かしこまりました」
「あ、あと……決心はついたと皆に伝えろ」
「御意!」
受話器をおろし、深くため息をつく。
決心の事か、万魔殿の事か。
恐らくは両方だろう。
(高く付くんだろうな。だがまぁ、いいか)
そう思い、私用の携帯を取り出したツカサは明日要件がある方とは別のもう一人のトップにモモトークでメッセージを送る。
(『明日の昼間に万魔殿へ行く。無理難題に警戒しろ。できれば鉢合わせしないようにスケジュールも調整しておけ。既読を付けたら返信はいらない』……ま、これでいいな)
私用携帯の存在を知る貴重な存在に随分と事務的なメッセージを送ったツカサだが、これでもいいかと思う。
もう長い付き合いだ。
今更、可愛げのあるメッセージ等送ってもお互いに変な気分になるだけだ。
再び、『歴戦の相棒』に目をやりそして一人呟く。
「それにそんな姿を見せるのは、お前だけでいいな」
これにて、プロローグは終了。
本格的にツカサがその魔の手を伸ばし始めます。
とはいえ、全部のシナリオに介入するわけではありません。
基本的にはゲヘナ関係に出てくるイメージを持っていただけますと幸いです。
投稿頑張っていきます!