透き通った青春に背を向けた灰色   作:らんだ

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お待たせしました。
週末にドラゴンズドグマ2をプレイしておりました…

今回から対策委員会編に入ります。
既に話が進み銀行強盗した後です。

ツカサがいる事で少し本編とは違った方向に…?


Vol.1 対策委員会編
悪魔たちのアイスブレイク


快晴。

 

照りつける日差しがツカサを焼く。

ツカサにとって嫌いな天気の一つ…と言うより彼女は全ての天気を平等に嫌っている。

 

晴れていれば日差しに、曇っていればその陰鬱さに、雨ならば服が濡れるから、雪ならば寒いと。

 

大体の人はそれを聞いて、ツカサを面倒な性格の持ち主だと思うだろうし、それ以上の事は聞かないだろう。

 

怒りの矛先をこちらに向けられたい者などいやしない。

 

しかしただ一人、面と向かって聞いた猛者がいたと言う。

 

「キキキッ!なら、火の雨が降ったらお前は何と言うんだ?」

 

と。

 

──────

 

「それで、情報とはなんだ?」

 

部屋に入るなり、座ることもなくとっとと話せと言わんばかりに話し始めるツカサに、マコトは手に持ったグレープジュースを揺らしながら返す。

 

「キキキッ! まずは席につけ。立ったままでは話にはならないだろう」

 

顎で席を指すマコトにツカサは「何とも偉そうな」と返しながら深く腰掛けた。

 

「どうだ、万魔殿の椅子は」

 

「お前の椅子の方が座り心地が良さそうだな」

 

「それは当然だろう。万魔殿の議長であるマコト様が座る椅子だぞ?」

 

「腰が痛いし、尻も痛いから場所を交代しないか?」

 

「ダメに決まっているだろう!」

 

(随分と面白い顔をする奴だ。何も今に始まった事ではないが)

 

羽沼マコトとの付き合いは、ヒナより短いがそれでも随分と長く……二人三脚でやってきた案件ならヒナより多い。

 

最も碌な体験をしていないが。

爆発に巻き込まれたり、服が汚れたり、せっかく建てた建物が倒壊したり…

だが、最後はキチンとツカサが儲かる様に終わっている。

 

(終わり良ければ何とやら。だが、こいつの場合は過程がな…)

 

正直なところ、立場は違えど同じ組織のトップかと疑問に思うことすらある。

 

計画という名の無計画さ、理論とは到底呼べない暴論、反省のしないその様…いや、最後はツカサも同じではあるが。

 

だがマコトとツカサはある意味では同じだ。

『目的の為ならば手段を選ばない』という点においては。

 

そして、ツカサ以上に特定の対象に対しては執拗である。

妥協などなく。

 

何事もやり通せば立派である、とはよく言ったものだが羽沼マコトはそれを体現した人物であるとも言えるだろう。

 

だからこそ、ツカサはマコトを認めているのだ。

もしマコトがクーデターで引きずり下ろされたならば、彼女を擁護して戻そうとするだろう。

 

無論、相手がヒナで無ければだが。

 

それくらいこのゲヘナには必要不可欠な存在だ。

ヒナ無くして治安は無いが、マコト無くしてゲヘナが回っていかないというのも事実。

 

適当さがあるものとないものには天と地ほどの差がある。

ツカサがマコトに対して劣る部分でもある。

 

「で、いつ話し始めるんだ?」

 

「キキキキッ! …まあ、待て。何事も順序があるだろう」

 

「あるな。そして、それを決めるべきは私だ」

 

「その傲岸不遜な態度、正しく我が万魔殿の外部コンサルタントとして相応しい!」

 

「勝手に肩書きを作るな…そして、無理やり万魔殿に含めるな」

 

何故私が奇天烈な集団の一員などと…

とゴネながら出された飲み物を飲む。

 

「どうだ、美味いだろう?」

 

「70点、ぎりぎり合格かどうかのラインだな」

 

「そんなわけあるか! 人気の農園が作ったブドウを使ったジュースだぞ!?」

 

「人気の農園というラベルで買われているだけだろ、それは…」

 

「ラベルだと…?」

 

「世の中の大半は評判とやらに左右される。ネットで話題になったから、あの会社の製品だから、ある人が使っているから……己で価値を判断せず、他人に委ね粗悪品でもこれはいいものだと思う。ま、それで製品を売ってる側が言うセリフではないがな」

 

辛口評価を下しつつも、さらに飲む。

やはりこう、美味いともまずいとも言えない微妙な味が口の中に広がり渋い顔をするしかない。

 

「クククッ……味音痴にはわからんだろうな」

 

「……なんだと?」

 

「キキキッ。気に入った店のことごとくを美食研究会に爆破されたお前の『評判』など当てにならんのを忘れていた!」

 

ツカサは自分に対する無礼を決して許しはしない。

しかし、そんな中でも例外的にある程度の無礼が許される人物が現状では5人ほどいる。

特にこの目の前にいる『愛すべき馬鹿』はかなりハードルが低くなっており、ツカサの寛大さを示すにはいい存在だ。

 

とはいえ、今の発言は到底許されるものではない。

 

『気に入った店が高確率で美食研究会に爆破される』

『美食研究会は美味しい店は爆破しないらしい=万理ツカサは味音痴』

 

等と言う、根も葉もない事実、もはや誹謗中傷だ。

 

いや、前者は事実である。

しかし、彼女たちの口に合わなかったからツカサが味音痴なわけではない筈だ。

 

「…フッ…アッハッハッハッ!! 随分と…ハッハッハッ! …ゲホ…あぁ、咽た。…私が…味音痴?」

 

だが、ツカサは激怒するでも無く大笑いした。

下手をすれば廊下…いや建物外にも響くほどの大声で。

 

マコトとツカサのもう一つの共通点。

それは、笑うとかなりうるさい。

並んで笑うと、下手をしたらツカサの方がうるさいのかもしれない。

 

滅多に大笑いすることがないからこそ、余計にその異質さが目立つ。

普段そこまで笑わない人が大きな声で笑う。

それ自体はいい意味に聞こえるかもしれない。

 

だが、ツカサの微笑みや笑いというのはもう一つの意味を持つ。

彼女の目を見るべきなのだ。

 

その笑みは「本当の笑い」か「脅し」なのか。

 

「マコトよ」

 

「…? なんだ」

 

「親しさと言うのは調子に乗ってもいい、という免罪符ではない」

 

先ほどまでの微笑んだ顔のままだったが、確実に空気は一変していた。

先ほどまでが暖かい春の気候であるとするならば、今は冬。

 

レッドウィンターの寒さなど比べ物にならないこの空気は、氷獄の類か。

マコトはある噂を聞いた事がある。

 

『万理ツカサは銃を抜く事は滅多にない。考えを改めさせるのだ』と

 

と。

分からせた方がいいだろうにとマコトは当時思っていた。

しかし、この圧でよくわかる。

 

『選択の自由はある。その後は知らんがな』

 

と言っているのだ。

 

それほどの戦闘能力がないと本人が豪語しているが、誰も彼女が戦った所を見た事がない。

この銃社会キヴォトスを言葉の弾丸だけで切り抜けてきた、マコト自身もそれを知っている。

 

だが、自ら受けるまではその威力を知らなかった。

所詮は言葉だ死に至る事などないと高を括っていたマコトにとって今放たれている一撃は威嚇射撃ではあるが十分な効果を齎した。

 

「……」

 

「それで、私の『評判』についてだが…」

 

「そ……それよりどうだ! シャーレの件について、話をしようじゃないか!」

 

「だからいつも言っているだろう。雑談とは他愛もない話に留めおけと。いつか、イブキが大きくなった時に煙たがられないといいがな」

 

満足したかのようにツカサはそれ以上、追求せず『凶器』を収めた。

マコトはそれを怒りが静まったと解釈したが少し違う。

 

ある意味ではツカサを諦めさせたのだ。

 

『羽沼マコトは馬鹿だが、馬鹿ではない』

 

一見すると何を言っているのか分からないこれは、マコトを知る人物たちなら肯定するだろう。

馬鹿な事をやらかすが、頭が馬鹿ではない。

『愛すべき馬鹿』と言った所だろうか。

 

ツカサもその評価に同意している。

それこそが羽沼マコトなのだ。

余り言い過ぎて変わってしまうと面白みにかける。

 

ツカサは右手で先を促す。

 

この時のツカサは油断していた。

流石にある程度の脅しをすれば本題を話すだろうと。

友の面倒な性格を踏まえた上で、大丈夫と考えていた。

 

逆にマコトは奮起した。

やられっぱなしは羽沼マコトとして相応しくない。

相手が誰であれ、万魔殿議長である羽沼マコトは遅れを取ることはないと。

 

「なんとだ、シャーレと言うのはあらゆる規約や法律による規制や罰則を免れる超法規的機関だそうだ! どうだ、驚いたか? キキ…キャハハハハハ!!」

 

誇らしげな表情で周知の事実を発表するマコト。

『我が生涯に一片の悔いなし』

と言いたいかの様に。

 

(死ぬ覚悟が出来ているようだな)

 

もはや救いようのない物を見るような目でマコトを眺めつつ、右手を懐…ショルダーホルスターへと伸ばす。

 

キヴォトスの人たちは大きな勘違いをしている。

ツカサは言葉を銃弾のように放つがそんなものは手を汚さないで済ませるための余興に過ぎない。

 

ツカサの心の内にある

 

『態々争う必要などない。考えを変えてやればいい』

 

『態々手を汚す必要はないが、汚す時ほど楽しいこともない』

 

二つの考え方は矛盾に見え、矛盾ではない。

 

ツカサには常に選択肢があるのだ。

・面倒だから部下に命じて痛めつける

・言葉で心を叩き潰す

・ストレス解消の為に、銃で撃つ

の3つ。そしてそれら全てを好きに選べるのは『勝ち組』の特権。

 

今だに大笑いを続けるマコトにツカサはホルスターから取り出したソレを向ける。

 

銀色で古めかし彫刻がされている事以外、大した装飾がされていないそれはキヴォトスの中でも珍しいリボルバー。

 

銃撃戦が頻繁に起きるキヴォトスで、リボルバーを持つなど『伊達や酔狂』か『支給品』のどちらか。

ツカサの場合はそのどちらでもない。

 

己の弱点を補う為には放たれる弾丸を強化する他ない。

そしてその特殊な弾丸を使用できるのが現状はリボルバータイプしか無かっただけの事。

 

もちろん、他の武器タイプも提案に上がった。

アサルトライフルならどうか、スナイパーライフルなら安定しますなど。

しかし、ツカサは社長である。

いくらキヴォトスとはいえ常に大型武器を持ち歩くのはナンセンスだ。

それにそんな物を持ち歩いて居ては、威嚇したいだけだ。

 

そういった設計者たちの独断と偏見。

その果てに出来たのがこのリボルバーというわけだ。

 

笑い続けていたマコトもようやく事の大きさを理解した。

あの『万理ツカサ』が銃を抜くという異常事態を。

しかも、肝心のツカサからは殺意など感じない。

まるでゴミをゴミ箱に捨てる時の様に何も考えていない。

 

しかし、その銃は違う。

明らかに異様な雰囲気を放つそれは向けられたも

のに寒気を与える。

 

『これはマズい』

 

と本能的に感じたのだろうか。

マコトはすぐに釈明を始めた。

 

「ま…待て‼︎今のはアイスブレイクの様なものだ。マコト様ジョークだ。ここは笑うところ、アイスを作る場所じゃない!!」

 

「マコト様ジョークねぇ……お前の行動の大半がジョークだろうが」

 

命懸けの釈明にしては随分と馬鹿馬鹿しいものだったが、ため息を吐いて武器を収めるには十分だった。

正直、撃ったところでツカサには大した利益がない。

だったら慌てふためく姿を見れただけで儲け物、もちろんツカサも武器を持っていると情報を与えることになるがまあ特に問題ないだろう。

 

「次はないぞ馬鹿者」

 

危機は去った。

致命的な崩壊は免れた。

 

「キシシシッ、緊張も解れただろう? それでだ、何と今シャーレの先生はアビドスにいるらしい!!」

 

「…皇帝の砂遊びの場所に?」

 

遂に来た。

ツカサが聞きたかった動向だ。

別に他の学園に赴いているというならそれでいい。

 

だが、アビドスは違う。

ツカサですら、進出するのを辞めたような場所…

つまり、カイザーコーポレーション、とりわけカイザーPMCの庭そのもの。

 

そんな場所に別の権力者であるシャーレの先生が赴いた。

 

(これは嬉しい誤算だ。まさか早々にカイザーとやり合ってくれるとは…)

 

「キシシッ、もっとあるぞ‼︎何と、先日ブラックマーケットでも目撃されたのだ‼︎どうだ、我が万魔殿の情報網は‼︎」

 

馬鹿でかい声で成果を誇りながら、いくつか写真まで出してきた。

ツカサはその中でも主犯格が逃走している写真を手に取り、近付けてその特徴を掴もうとした。

 

(覆面の集団に混ざるシャーレの先生…それよりもこの建物の並びは確か…)

 

「その歳で老眼か、ツカサよ。随分と老けてるな」

 

「黙って農家の搾り汁でも飲んでろ」

 

老眼については、否定は出来ない。

ツカサは同年代と比べてそう言った部分が老けているとも思う。

 

老け顔…と思ってはいないし、そう言われた事もないがその所作から大人と思われるし、イブキにお菓子をあげる様は優しいお姉ちゃんというよりは親戚のおばさんだと思われても仕方がないのかもしれない。

 

(確かブラックマーケットの闇銀行で騒動があったとか何とか言っていたな。随分と度胸のあると思ったが、なるほどぉ?)

 

「どうだ、興味が惹かれるだろう? 来てよかっただろう?」

 

そんなビジネスパートナーの自画自賛は放っておいて、ツカサは凄まじい勢いで情報を繋げて推測していた。

 

(先生を除けば5人…アビドスに行ってる中での出来事だ、このうち覆面の材質が同じ系統である4名はアビドスの生徒と考えて良いだろう。そして最後の1人はリーダー格…いや、覆面の材質が違い番号が手書き…つまりは急場のメンバーか。制服から見て恐らくトリニティ…トリニティ生でブラックマーケットに行く様な生徒…? …ああ、出てこんな。帰ったらメモを見直さねば)

 

全て見ただけの情報であり、憶測が正しいと言う証拠などは一切ない。

しかし、ツカサは己のセンサーに自信を持っている。

 

「…そろそろマコト様の偉大さに感謝し涙を流してもいいのだぞ?」

 

ツカサが写真を見てから微動だにしないため、放置され続けているマコトから『構え』の合図が出た。

 

(どうせこれ以上、考えても答えなどに行き着けないだろう。本社に戻ってからメモを見直して、それでも尚わからなければ優秀なトリニティ生に聞くまでだ)

 

「流石、偉大なるマコト様だ。このような情報をお持ちとはこれでゲヘナは千年安泰だ」

 

「…もう少し自然に褒める事はできないか?」

 

「喝采を求めるのは、馬鹿とピエロだ。お前はどちらでもないだろう?」

 

「む…それはそうだが…」

 

「報酬なら買ってきてやったプリンで満足しろ。イブキにお前がプリンを食った事を教えてやってもいいのだからな」

 

随分と横暴な態度だが、マコトも大した報酬を求めていたわけではない。

 

(キキキッ…あくまで『好意』を得る事が出来れば良い。マコト様の壮大な計画に、お前は必要なのだツカサよ)

 

「……それで、お前の本題は?」

 

「何?」

 

「無償で何かをくれる聖人君子ではないだろう? どうせ碌でもない事に巻き込みたいんだろう。早く言え」

 

万能な『好意』などそう簡単に得られるものではない。

マコトとは長い付き合いなのだ、碌でもない事を考えている時の行動くらいは把握しているつもりだ。

 

「キシシシシ…! 今はまだ早い。だが、お前には我が万魔殿の外部コンサルタントとして一仕事してもらう、それは確定事項だ」

 

「まさか…エデン条約に絡めと言いたいわけではないだろうな」

 

「そのまさかだ!」

 

ツカサは頭を抱えた。

エデン条約…内容を見れば万理製薬にとっても利のある話ではあるが正直ツカサは反対の立場だ。

 

二つの大きな力が互いにしのぎを削っている状態の方が互いに内部の問題が表面化する事も無くうまく切り抜けられる。

 

ツカサとて戦争をしろと煽てているわけではない。

『談合試合』をしていればいいのだ。

 

外敵の脅威が無くなれば、内の粗探しが始まる。

政治的な駆け引きや物理的な抗争…

特に面倒な交渉相手であるティーパーティで内紛など勃発した場合などは目も当てられない。

 

ただでさえ三頭政治などと言うツカサから見れば愚かな体制を敷いているのに、話のわかる相手が排除され話を理解できない分派が主導権を握ったと言う様な事態になればトリニティから手を引くことも検討するだろう。

 

そんな面倒ごとを齎しかねないエデン条約に関与しろと言うのだ。

 

「私は、政治的な事案からは距離を置かせてもらっている。ゲヘナ、トリニティ双方に利益がある結果になるといいなと心の底から願っているぞ」

 

「キキキ…そうはいかんぞ。外部コンサルタントとして同席してもらう」

 

「その外部コンサルタントとやらを引き受けた覚えはない」

 

「これは議長命令、ゲヘナの指導者としての命令だ! ツカサよ、いくら会社の長だろうとお前もゲヘナの一生徒。従ってもらうぞ」

 

マコトは嫌がらせをしたいが為に外部コンサルタントと言う肩書きを与えているわけではない。

ツカサの能力を評価しているからだ。

 

以前万魔殿の運営の事で少し相談した所、ツカサは嫌な顔をせず問題点と評価点をピックアップしわかりやすい資料を提出してきたのだ。

 

今でこそ社長のツカサだが、元は経営権を持ったコンサルタントの様な立場で今の会社の礎を築いた。

言うならば本職である。

 

その才能をマコトは万魔殿の為に活かして欲しいと考えている。

 

ツカサとしてもあまりこの提案を拒否し続ける物まずい。

風紀委員会の外部顧問を務めているという事は、天秤の傾きと捉えられかねない。

マコトはそれを分かって言っているのだ。

 

『万魔殿の事を大事に考えているよな?』

 

と。

 

だからこそ、ツカサも文句は言いつつも完全に拒否はしない。

問題はタイミングだ。

ツカサにとって最良のタイミングで加入したい。

それは今ではない。

 

「……前向きに考えるから少し待て。残念だがしばらくは忙しくなる」

 

本来ならばこれで引き下がるマコトではない。

しかし、今日はやけに静かにそして真剣な表情をして言った。

 

「ほう、遂に動くのか」

 

「……」

 

「キキキ…長かったな。初めてお前を見た時からその決断に至った日まで。ナニがお前をそこまで駆り立てるのかはわからんが、そうやって上を見続けている姿こそ万理ツカサだ! 志半ばで倒れても安心しろ、このマコト様が拾ってやろう!」

 

「…お前が?」

 

「そうだ、将来キヴォトスを征服するこの羽沼マコトの下で居られるのだぞ?」

 

『キヴォトスを征服』

 

それはツカサもある意味では同じ野心の持ち主だ。

過程と結果は違えど『キヴォトスを征服』したと言う文言は違わないだろう。

 

「それにマコト様と共にいれば貴様の尽きない強欲も満たされていくだろう!」

 

「強欲だと?」

 

「野心家だろう? そして常に上を見続ける強欲さを持っているじゃないか!」

 

「野心はあるかもしれんが、強欲じゃあない。いいか、野心とは強欲の事ではない」

 

その言葉をまるで自分に言い聞かせるかの様に呟いたツカサはそそくさとカバンを持ち、立ち上がる。

その姿は珍しくこの場から逃げる様に映った。

マコトもそれを止めるような真似はしない。

彼女にとっても一人の友が決めた事、虎視眈々と何かを待っていたツカサの選択というのは尊重されるべきものだ。

 

「マコト」

 

「…何だ?」

 

「目的が何であれ、勝敗は当人だけに意味が有る。私だけにな…お前には関係のないこと、関わらん方が身のためだぞ」

 

「キキキッ…」

 

ツカサはその言葉を残して、いつもより重いと感じる扉を開けて出て行った。

 

その扉をマコトは見つめて呟いた。

 

「お前もキヴォトスを欲しい事くらい、私は見抜いていたぞツカサよ。そこに至るまでの道は大きく違うようだがな」

 

同じ頃、扉から出たツカサも呟いた。

 

「お前は覇道、私は狭い道。だが、必ず最後にはぶつかる。私の物語の最期の敵がお前で無いことを祈るよ」




マコト様はヒナちゃん以外にはまともです。
人を見る目を持っていると思います。

そして現状では唯一、ツカサを振り回せる悪友でもあるのです。
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