まんが日本バーンブレイバーンばなし 作:PureFighter00
妙なとこの描写凝ったらかなり紙幅を使ってしまった。
前後編に分けます。
四月馬鹿ボンド【前】
ブレイバーンが奇妙な事を言い出すのはいつも通りの通常運行。デフコン4ぐらいの変わらぬ毎日であったが、それにしては今日のブレイバーンは些か異常だった。
それは鍋と言うにはあまりに大きすぎた。 大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。 それは正に鉄塊だった。
「ブレイバーンフライパーンだ、イサミ」
全長3mのフライパン……ブレイバーンサイズとしても些か大柄なそれをまるでドラゴンころしの様に構えるブレイバーンを呆れて見上げる自衛隊隊員たち。
「30mmぐらいなら防弾出来そう……」
「……そ……それで、何を……」
「サタケ隊長、貴方はチャーハンという物をご存知か?」
「……勿論、知ってるが……」
「私も、ATFの皆の為に腕を振るいたくなったという事だ! さぁイサミ、私の中に入って一緒に鍋を振るい、チャーハンを空高く舞い上がらせよう!」
呆れ顔だったイサミの顔が珍しくTV本編1話序盤の顔に戻る。
「ブレイバーン、本気なのか?」
「私はいつも本気だぞイサミィっ!」
喜色を浮かべて微笑むブレイバーンが拳を握る。
「……で、コンロは?」
ブレイ・ガガーン
「野外炊具2号のバーナー部を配置したら……」
「火力維持にはどれぐらい必要か計算してくれ」
「安全のために各バーナーは断熱して……」
「練馬と朝霞に協力支援要請だ!」
実の所、陸上自衛隊は訓練された野外調理のプロである。彼らは最新式の野外炊具2号を用いて、被災した国民に温かな食事を提供するプロなのだ。ブレイバーンのトンチキ極まるアイデアは陸自隊員の謎の魂に火を付けた。(尚、銭湯を作る事にも長けている)
更に、東北出身者の叡智が輝く。
彼らは「名前を出すと色々面倒な汁物」を巨大鍋で作る経験を積んでいる。最大サイズと目される「鍋太郎」は直径6.5m、重量4トン。ブレイバーンフライパーンを軽く超えてくる。
「2028年にTS運用が始まり、民間へのデモンストレーションとして鍋作った事がありまして……」
ミユがTSを知り、自衛隊を目指すきっかけになったニュースだ。それまで(整備にはサラダ油を使うなどしていたが)ショベルカーを用いていた作業が人型の重機に変わったその絵を見て、東北方面での特殊機甲群志願率は爆上げした。調子に乗り広島と大阪でお好み焼きや巨大たこ焼きを作った翌年は特殊機甲群志願者は定員の20.48倍にまで急上昇。
奇しくも、ブレイバーンと似た事を未来に生きる陸上自衛隊は既に経験していたのである。(【本社】広報部の佐官の趣味であろう)
一方、ブレイバーンとイサミは格納庫の片隅で大量のウエスを鍋に入れてシャカシャカとフライパーンを動かしていた。
「何故、ウエス……」
「生米や塩は官品だからな。一粒たりとも無駄には出来ない。税金を浪費する事は許されないんだ、ブレイバーン……」特に自衛官は。
「随分、フライパーンの扱いは上手いようだが?」
「日本のTS乗りは基地際やデモンストレーションでTSでの調理をやらされるんだよ。俺はオムレツ2級とお好み焼き1級を持ってる……」
おもむろにイサミはブレイバーンの持つ箸を器用に扱い、干してあるバスタオルをフライパーンに投入、繊細に鍋と箸を操り濡れたバスタオルを卵焼き風にまとめた。
「なっ……ジャパーヌのアーミーは実弾訓練もせずにそんな練習を……」
「弾は高いし、外したら厄介だ……」
「その割にはイサミ、君は演習で……」
「……何処で見てたんだ? 習志野式だよ」
「それは……?」
「必ず当たる位置まで接近して、相手の目を見てにっこり微笑んでからぶっ放す。この練習方法なら無駄弾を使わずに済む」
実際問題現実世界では、自衛隊は米軍からニンジャなんて呼ばれている。施設内への侵入・制圧訓練においてアメリカ側は突入開始と共にドアを蹴破り窓を割り果敢に突入するが、自衛隊は静かに静かに侵入して防御側が気が付いたら死亡判定を食らわせている。いつの間にか制圧されている。自衛隊内での訓練でも、気付かれぬ内に指揮官詰め所だかに手榴弾が置かれていて「爆破」と書いた紙が残されていたらしい。つまり人知れず防衛網を突破されて司令官爆発されていたのである。
実弾演習が出来ないから、射的ではなくスヌーキング能力を限界まで高める。射撃の巧拙が不要なまでに「外さない距離まで近付く」
(だから、イサミは演習時に……)
ブレイバーン(スミス内蔵)は理解した。碌に実弾演習も出来ない自衛隊だからこそ、実弾演習が不要な部分を呆れるほど練習したのだ。その意味でマリンコの様な実弾でカタを付ける戦い方とは別の「戦い方」に長じたのか。
鍋を振るうブレイバーンの腕は、どんどん精緻な動きを極めて行く。
練習開始から10分ほどで、フライパーンからウエスが落ちる事は無くなっていた。20分もするとウエスは残らず宙を舞い、優美な放物線を描いてフライパーンに着地する。着地後に滑らかにフライパーン上を滑る姿は、五点接地で衝撃を逃す空挺隊員の様でもある。
(私の身体が、私の身体以上に繊細な動きをしているっ!)
ブレイバーンが、また他人に聞かれたら誤解されかねない悦び方をしていた。戦闘機動時の荒々しくも繊細な操縦桿の動きに操られる感覚も爽快だが、この細やかな動きを繊細な操作で実現する感覚も良い。うっかりR-15とかR-18タグをつけ忘れたので詳細な描写は避けるが、それはブレイバーンの繊細なセンサーにねっとりとした「何かの炎」を灯す動きではあった。
「……なぁ……イサミ……その……休憩は……」
「まだまだァ!」
機械の様にフライパーンを振るっているイサミは手を休めない。勿論ブレイバーンは無機生命体故に疲れを覚える事はないのだが……ブレイバーンの脳裏は淡いピンクを通り越してサーモンピンク色に染まっていた。僅かに残ったクーヌス成分が身悶えてマイムマイムを踊り始めている。
レーティング指定していないから念の為申し添えるが、上記描写はあくまでチャーハン作りの練習シーンである【重要】
ブレイバーン内のタコメーターじみた何かがレッドゾーンに突入。そしてルイス・スミスは唐突に気付いた。【終われない!】
ヒトだった時はあるタイミングで終わる事が出来た。その先は無かった。
しかしブレイバーンの機構設計上、その【果て】はシステムに実装されていなかったのである(南無)
イサミは無慈悲に操縦桿を巧みに動かして鍋を振るう。45分25秒を過ぎてイサミは右に左に斜め方向にウエスを飛ばすテクニックを試し始め、その動きのアクセントにブレイバーンは嬌声を堪える羽目になる。
(ヒーローになるんだっ! 俺はヒーローにっ……っくっ!)
今やブレイバーンの目には、イサミがサディスティックな目で自分を苛む主人の様に見える。無論イサミにそんな自覚は無い。カタカタと震える膝の振動を伝えぬ様に、食いしばった口元を気取られぬ様にブレイバーンは耐えに耐えた。
「アオ三尉〜! かまどの設営始めますよー」
ミユ3 等陸曹の声に応えて、イサミが練習を止める。ようやく膝をつき、イサミを下ろしたブレイバーンの顔を怪しく眺めるミユ・カトウ。彼女の類稀なる【センサー】はブレイバーンの内情を本能レベルで察知した。
「お疲れ〜」
安堵した様な、それでいて名残惜しそうな顔をしたブレイバーンをミユ3 等陸曹がわざと元気に叩く。ブレイバーンは声にならない声を発してブレイサンダーに変形した。
大丈夫なのか、この描写?
ラードでも投入したのかな?(すっとぼけ)