まんが日本バーンブレイバーンばなし   作:PureFighter00

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鬼退治メンバーが揃うぞ


忠犬(後)

スペルビアはイサミの様子を伺っている。

 

「一宿一飯の御恩、忘れませぬ。白米をお恵み頂けるなど、望外の喜びでございました……」

「なぁ、スペルビア。君は元から空腹を感じることがあったかい?」

「いえ、この様な事は初めての事。馬力を出す為に【ルル】を含む事はございましたが……」

「なぁ、ブレイバーン。君も昔は少食だったんじゃないか?」

「? 昔はドングリとか食べてたよ? 要る?」

リスかよ……とも思ったが、どうやらブレイバーンはこの山で採取生活をしていたらしい。

「この山を逃げ出して別の山行ったとき、物凄く寂しくてお腹が減ったんだ……」

ブレイバーンのエネルギーは「勇気」だ。彼は人の近くに住んでいれば人が日々の生活で発揮する「勇気」を摂取して生きて行ける。

例えば困難な開拓を始める時、例えば若者が恋する相手に告白をする時。

人間はそれと気付かず日々勇気を発揮している。戦う事だけが勇気じゃないさと荒野の七人のチャールズ・ブロンソンなら言うだろう。

ブレイバーンは特に勇気に特化しているが、デスドライヴズも基本的には人々が発する感情を食べる。スペルビアは傲慢や高潔を食べるはず……だからルル太郎──いや、未来戦士ルルか──とはウマが合ったのだが……

「鬼を恐れて、勇気が足りなくなったのかね?」

「スミス、お前はどうだった?」

「ATFは勇気の結晶みたいなものだったからな。そりゃあ──いつも満腹さ」

イサミはスミスのちょっとした嘘に気がついた。お前あの時クーヌス混じりだから「愛」にも飢えてただろ。腹は膨れても【満たされなかった】よな? その──部分の間、今なら判るぞ!(だがそれがスミス、ハードボイルド野郎だ顔)

 

「でねでね、お腹空かせてた時に優しい人に会ったの! イサミみたいな!」

「え? 俺?」

「大きなお饅頭みたいな人! フワフワの何かに包まれた餡子をくれたんだ! 美味しかったなぁ……」

イサミはブレイバーンが何を食べたか理解している。そりゃあお前が好きなものばかり詰まっているからな。あ、クーヌスが混じってないから愛は雑味か……いや、これがクーヌスを取り込めた理由になるのか?

「……きっといつか、その餡子が役に立つ日も来るさ。良かったな、ブレイバーン」

微笑むイサミに少し視線を落とすブレイバーン。スミスは妙だなと訝しんだ。

イサミはブレイバーンの言葉を大事に反芻した。そうか「俺は彼に似ていた」か。そうか、そうか……俺がスミスに惹かれたのは、本質が同じだったからなんだろうなぁ。

薪を足しながらスミスが尋ねる。ルル太郎はクラッカーに出来るだけオレンジジャムを乗せて頬張る作業に没頭中だ。

 

「ところでスペルビア。君はなんで鬼ヶ島から出てきたんだ?」

「分かりませぬ。何か……こう……いやなのです。愚か者とお笑いください。私は自らの武芸に誇りを持つ強者と推して参りあいたかったのです」

 

まぁ、満たされなかったのだろうなとイサミは見当を付けた。デスドライヴズ……いや、鬼か。デザイン的にイーラ辺りではないかと思うが、配下の人々を敢えて抑圧して怒りを誘う。強い怒りに飲まれた人々は傲慢さや高潔さを失う。スペルビアは満たされない。

想えば、ブレイバーンとスペルビアがハワイに現れて推して参りまくったのも当然だ。そこには勇気と高潔さがあった。それに惹かれて2人はハワイに来たのだろう。最初にイーラが来た世界線もあったに違いない。

俺たちは運が良かった。

 

「イサミ殿は、何故この吉備の地に?」

「──この身が果たすべき使命を果たす為に。あと、出会うべき人々と出会う為に」

 

ふぅむとスペルビアは思案する。この貴人の使命とは何か。このお方は「何のために生まれて、何をして生きるのか」を何故ご存知なのか。

 

「果たすべき使命とは?」

「吉備の皆を喜ばせる事さ。人々の笑顔を守りたい」

「何故故に、それを?」

「人は楽しげに微笑む方がいい。俺はそれが好きだ」

「──それが──それが我が身を焼く結果を招こうとも?」

「ああ。俺が幼き日に憧れた英雄は炎の中から生まれた。身を焦がしてね」

スペルビアは居住いを正した。

「手前、見ての通り鬼で御座います。戦いの中で喜びを感じ、その中で死ねればと思う戦鬼で御座った。イサミ殿から見れば手前は敵で御座ろう。例え素っ首叩き落とされても拙者あの粥の味を思いつつ黄泉比良坂を降りましょう。私は気持ちの良い男に討たれたと誇りを胸に」

「いや、別に殺しはしないが?」

「何故に御座いますか! 貴方はこの地を解放しに来たのではありますまいか!」

「そう、お前も含めて解放したい。俺は案外欲張りでな。鬼だろうが猿だろうがルルだろうが救いたい」

「ルル、救われる! そしてルルもみんな救う!」

スミスは今すぐイサミを押し倒したくなった。イサミは日一日、1分1秒が過ぎる毎に好きな男に成長する──来年辺り、まともに見たら鼻血が出てしまうのではないか──

 

「お願いがございます、イサミ・アオ殿! 拙者些か武芸には自信がございます! 醜い鬼ではございますが郎党の末席に御加え戴けぬでしょうか! ただ一振りの槍となります──いや、奴婢や犬でも構いませぬ!

この傲慢のスペルビア、命を賭けて貴方様の使命を果たすお役に立ちとうございます!」

 

「……傲慢は、要らないな……」

「ガビっ!」(そんな……!)

「おいおい、アオ三尉……」

「ピガガピーっ!」(酷いよそんなの!)

 

(さっ……三位だと……間違いない、イサミ殿はヤマトの……)

 

「高潔のスペルビアの名をやろう。宜しく頼むぞ、スペルビア!」

「あっ……ありがとうございます、イサミ殿!」




【さんい】
三尉だと自衛官の階級。少尉に当たる。
三位だと律令制の場合、従三位と正三位に分かれるが、従三位以上が公卿。とっても偉い(スペルビアは勘違いしてる)
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