組分け帽子をぶん投げた後に踏み付てやりたい(八つ当たり
突然だが、ちょっとの間でいいので、いい歳したオッサンの戯言。というか質問を話半分にでも聞いて、答えを考えて欲しい。
問い・人は平等であるか否か。
まあ、うん。アレだ。記念すべき『ようこそ実力至上主義の教室へ』第一巻の冒頭である主人公、綾小路の独白である。
曰く、昨今の現実社会は平等、平等と訴えて止まない。
男女の間は常に平等であるべきだと叫ばれ、その差を無くそうと躍起になっている。
女性の雇用率を上げよう、専用車両を作ろう!! ……まあ、実社会において男女雇用均等法なんて、ほぼほぼ有名無実と化しているし。女性専用車両も良いけど平等を詠うなら男性専用車両も作ってくれ。と痴漢冤罪に怯えるサラリーマンの悲痛の声は無視されているのだが。
はい。話を戻して。
障害者ですらも、差別するべきではないとして『障がい者』と言葉を改めるように世論は働きかけ(ぶっちゃけあんま効果は無かった気がするけども)、今の子供達は人は皆、平等であると教え込まれる。
果たして、それは本当に正しい事なのだろうか?
……いや、まあ、あんまり長く引っ張ってもアレだから個人的な意見をさっさと述べてしまうと、思いっきり間違ってると思うのだ。
故に、まあ。最初の質問に解答すれば、大体の人間はこういう結論になるのが必然では無いだろうか?
問い・人は平等であるか否か。
答え・平等では無い。
と言うか、そもそもの話。平等だとか不平等だとかの質問を大真面目に投げかける事。それ自体が、どこか情けない『甘え』や無駄な『期待』を含んでいる気がする。
いや、原作主人公である綾小路はホワイトルームとか言う児童虐待と言う言葉が生温いレベルの地獄のような施設で半ば監禁されて育ってきたので、情緒や心の発達と言う面では未熟であるし、加えて年頃の男子高校生と言う点も踏まえて考えれば、こう言った思春期特有の何処か斜に構えたような厭世観に染まった言葉を大真面目に受け取って考え込んでしまうのも無理は無い。
とは言え、少なくとも世界中で見ても非常に高い世界平和度指数を誇る我が国、日本に四十と数年間を生きてきたオッサンから言わせて貰えば、こんな質問をすること自体が。何というか、少し烏滸がましい事ではないだろうか?
そんな苛立ちすら感じるのは俺という人間が狭量な小者だからなのだろうか。
ほんの少し視野を広げてネットの海で調べてみれば誰だって理解る筈だ。
世界中には家もなく、家族もなく、満足な医療福祉施設もなく。
ただ生きる事。
生存して命の営みを送る事だけ。
それすら満足に出来ない人間が、世界中の其処彼処にいるのだから。
何時ぞやネットで流行った「お前それサバンナでも同じこと言えんの?」と言うワードを思い出す。
つまるところ、「お前それ発展途上国でも同じこと言えんの?」と言うやつだ。
文字の読み書きが出来るのは一部の上流階級のみ。
まともな水道すら設置されておらず。
福祉や保障と言った言葉の存在すら知らず。
歪な土着信仰のせいで未だに魔女狩りと言う根拠無き私刑が行われたり。
蚊に刺されれば病に陥り、蝿に集られれば身体に寄生され、蟻に食われれば皮膚が腐る。
果たしてそんな過酷な国に生を受けた人間と、日本で平和に生きて来ながら「平等とは云々」とブツブツ屁理屈垂れてる人間が。
『平等』とでも言いたいのだろうか?
もちろん現代の日本でだって不平等はそこら中に広まっている。
子供は親を選べない訳だから、この平和な日本においても育児放棄された子供や痛ましい児童虐待を受けて育つ子供達だって数多くいるだろう。
様々な理由から片親だったり、両親が居なかったり、親戚にすら疎まれ孤児院に預けられたり。そのような環境で育った人間もいるだろう。
彼らは果たしてごく普通の一般家庭で、ごく普通に愛された子供と『平等』などと言えるだろうか。
金の問題だってある。大企業を束ねる経営者の息子に産まれた人間と、借金まみれの貧乏人の息子が平等だと。冗談でもそんな恐ろしい事が、果たして言えるのだろうか?
そんな訳が無い。ほんの少し、周囲を見回せば。観察すれば。現実を直視すれば。
ほぉら、やっぱり。これを読んでいる貴方だって心の奥底では。脳の片隅では。
答えなんてとっくに理解っている筈だろう。
さて。勝手に問題提起しといて、勝手に自己完結してしまった点については申し訳が無い。
だけど、まあ。これだけはしっかりと主張しておきたかったのだ。
『世の中に平等なんてモノは存在しない』と。
平等と言う言葉が存在するのは、あくまで辞書の中だけなのだ。
産まれも。育ちも。能力も。見た目も。価値も。命も。
この世に存在する、ありとあらゆる全てのモノは平等なんて決して有り得ないのだと。
それは……そう。
きっと、『時間』でさえも。
木漏れ日のように柔らかく部屋を照らすカーテンから射し込む朝日の明るさに、俺はヒクリと瞼を動かし、やがてゆっくりと開いた。
「……朝、か」
初夏の爽やかな風が頬を撫ぜ、窓の外からは小鳥の囀りが耳を擽るのが何処か心地良い。
春爛漫と桜が咲き誇り幾つもの出会いと別離が産まれる、始まりの季節である四月はいつの間にか過ぎ去った。
ぽかぽかとした太陽がようようと煌めき出し、その輝きに共鳴するかの様に草木の青さが精彩を放ち、爽やかな緑の芳香を風に乗せる。
夏の初め。耳を澄ませば、いよいよ立夏の足音が聞こえ出してくる。
春を惜しみ、風薫る。
若葉が芽吹き、陽が燃ゆる。
そんな新たな季節がやって来たのだ。
「……ん?」
寝起き独特のぼんやりとした微睡みと覚醒の中間。だらりとした気怠さと、ふわりとした幸福感の最中に俺はふと、身体に触れている柔らかな感触と陽だまりの様な優しい熱に気付いた。
眦を無駄に整った手の甲で擦りながらも、微かに香る甘い芳香に誘われるようにして俺は隣に視線を向ける。
「あぁ。泊まってたんだっけか」
満開のあやめの華よりも色鮮やかな紫色の髪はまるで扇を開くかのようにして、しゃんなりと広がりシーツの海をさらさらと揺蕩っている。
水を掬うようにして一撫ですれば艷やかな髪の毛が俺の指を愛撫する。
蕩けるように波打ち、散りばめ、やがて渦を巻くようにして純白のシーツに落ちていく様は一種の芸術だ。
まるで真っ白なキャンバスを彩るように、寒々しいベッドの上を煌めくヴァイオレットに染め直しては彩っていく。
艷やかな流線形を描く紫の糸は一本一本が極上の輝きを放ち、どんな絹織物よりも滑らかな肌触りなのだから堪らない。
「やっぱ、いつ見ても美人だよなぁ」
肌は処女雪。抜けるように白くありながらも、どこかミルクのように滑らかな色彩が透けて見え、思わず触れてみたくなる妖しい光を放って見える。
蕩ける白い肌を彩る頬は、これまた柔らかく見事な桜色。
おまけに筋の通った鼻は彼女の不器用ながらも愛らしい性格そのものみたいにツンと尖っていて、これが微笑ましい。
小粒のベリーのように瑞々しくぷっくりとした唇も魅力的だ。その触感も、食感も。全てを知っている俺からすれば、ふと気付けば思わず魅惑の果実を味わいたくなる誘惑に駆られてしまう程。
藤色の睫毛に彩られた二つの紫水晶が今は薄い瞼に隠されているのが残念だ。
まるで作り物のように、全てが美しい。
女神のような。天使のような。そんな大袈裟な比喩ですら掛け値無し、一切の誇張にすらならない奇跡のような美少女が。
俺の隣で。俺の身体に抱き着くようにしてこうして眠っているのは、何の因果か俺のような外見詐欺の中身は中年男という怪しい存在と、お付き合いなるモノをしているからだ。
「……ぅん…………ん」
犯罪者仲間にして共犯者。
そして何より、愛しい恋人である美少女『神室 真澄』は、どこまでも無防備で、どこか幸せそうなあどけない寝顔を見せながら、すやすやと静かな寝息を立てながら俺の隣で眠っていた。
四月の最終日。つまりは昨日の事なのだが、放課後にDクラスの三名と行った交渉が上手くいった後の話だ。
端的に言ってしまうと、神室は俺の部屋に着くなり非常に激しい『癇癪』を起こした。
その過程で何故か俺の方がベッドに押し倒されたり、その勢いのまま口腔に舌を捩じ込まれて蹂躙されたり、ハリソン少年の身体の『後遺症』のせいで碌すっぽ力の入らない身体に唇を落としては、吸われたり齧られたり貪られたり……。
「あの時の真澄くんはエロかったなぁ」
と。まあ、ぶっちゃけて言うと俺は神室から犯されかけた訳だが、紆余曲折あって彼女の暴走は大事に至る前に落ち着いた。
ちょっと古い表現かも知れないがABCで言うならばAである。まあ、上半身は脱がされて割と好き勝手されたものの、下半身はノータッチであるので本番どころか前戯にすら至ってはいない。
結果的にはちょっと激しめのスキンシップに落ち着いた。と言ったところだろうか。
ところが。その後、神室が一体全体どういった思考に至ったのかは不明なのだが、今度は何故か激しく自己嫌悪の言葉を吐き散らしながら激しく泣き出してしまったのだ。
それを宥めて透かして落ち着かせる為、抱き締めたり頭を撫でたりキスをしたり。
ようやく落ち着いたと思ったら今度はぺったりと俺にくっついて離れない程に甘えて来たり。
結局はそのまま部屋に帰るのを彼女がイヤイヤと拒否した為、こうしてシングルベッドの上で二人して仲良く一夜を過ごす事になったのだ。
「全く、真澄くんはアレだね。もう少し男に対する警戒心を持って欲しいね」
俺がそんなボヤキを零しつつも頭を撫でてやると、きっと心地良かったのだろう。何やらムニャムニャと寝言を立てたかと思うと、神室は頭を子猫のようにスリスリと俺の掌に擦り付けて来たのだ。
普段のつっけんどんな態度とのギャップが何とも、いじらしい。年相応を通り越して幼くすら見える、あどけなく無防備な姿に俺は思わず心が暖かくなり自然と口角が上がっている事を自覚した。
「さて、そろそろ起きるか」
神室を起こさないように小声で自分に言い聞かせながら背伸びを一つ。未だに寝惚けている自身の身体に心地良い刺激と覚醒を促すと共に、俺は枕元に置きっ放しだった携帯端末を手に取った。
もはや画面をまともに直視せず指先の動きだけでパスワードを解除できる程には、この便利な機械の操作には手慣れている。
仕事で必要だから。と、ヒィヒィ言いながらパソコンや端末機械の操作を苦戦しながら必死こいて覚えて居た頃が懐かしい程だ。
「あん?」
ポイント残高の確認。これはまあ、良いだろう。昨日、寝る前に確認した数値と全く変わっていない。
つまり原作通り、不良品の集積所たる我らがDクラスは0ポイントが振り込まれたと言う事だ。
うん。これは計画通りだから構わない。
構わないのだが……
「……ふぅ。再起動っと」
俺は溜め息一つ零すと、すかさず電源ボタンを長押しして端末を再起動させる。一時的に電源がシャットアウトしディスプレイが光を失った。
やれやれ。どうやら俺はまだ寝惚けているようだ。右手の指で輪っかを作るようにして眉間を揉み解す。
ジワリ。何となく、イヤ~な感じの汗が額を流れている気がするが、きっとそれは気の所為に違いない。
カーテンの隙間からは木漏れ日のような柔らかな陽の光が差し込み。
初夏の爽やかな風が頬を撫ぜ、窓の外からは小鳥の心地良い囀りが耳を悪戯に擽る。
五月の始まりに相応しい、素晴らしい朝だと言えよう。
「うん。大丈夫……そう、きっと大丈夫。さっきのは見間違いだから。寝ぼけてただけだし……それか端末の調子が悪かっただけだし」
ブルリ。とバイブレーションと共に携帯端末が再起動する。
俺は飛びつくような勢いでパスワードを解除し、祈る様な気持で画面を凝視した。
心臓の鼓動がやけに煩いし、自身の息が獣の様に荒くなっているのは気の所為だ。
焦りとか緊張とか。マジかよ嘘だろ本当に勘弁してくれよ夢なら覚めろよこの野郎と八つ当たり染みた祈りをいつの間にか捧げているのは、アレだ。気の所為だから。
爽やかな初夏に相応しくない脂汗が顔を濡らす感覚も気の所為! 気の所為!! 全部、気の所為だって言ってんだろうがこの野郎!!!!
「今日は駄目だよ今日だけは駄目なんだよお前五月一日って言ったら『よう実』の本番がようやく始まるマジで作品中でも一番大事な日なんだよ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……!!」
さて、話は急に変わるのだが。俺は普段、朝の6時30分に起きている。
じんわりと汗が染み出る程度に毎朝ストレッチを三十分程度こなし、寝癖を直すついでに軽くシャワーを浴びてサッパリと目を覚ます。
ゆっくり準備した朝御飯とモーニングティーを食した後に歯を磨き、着替えを済ませてから、本日の授業の予習を軽く済ませる。
学生寮から校舎まではそこまで距離がある訳でも無いが元社会人として当然、時間にはゆとりを持って行動する。とは言ってもあまりに早く着きすぎても動物園のように煩いDクラスでは落ち着いて読書も出来ない。
という訳で俺は8時30分に始まるホームルームに合わせて、8時00分には部屋を出ているのだ。
……もう一度言おう。
ホームルームは8時30分から始まるから8時00分には部屋を出てるのだ!!
「スリザリンは嫌だスリザリンは嫌だスリザリンは嫌だスリザリンは嫌だ……!!」
再起動時の御約束である企業のロゴマークが表示されたかと思うと、焦れったくなる程に時間を掛けてアプリのアイコンを初めとするお馴染みの画面が映し出されて行く……
現在の時刻……
8時18分。
「グリフィンドォォォォォォォォル!!!!」
「ふぇっ!? ……な、何よっ……?」
どう考えても遅刻です。
本当にありがとうございます。
五月一日。『ようこそ実力至上主義の教室へ』という作品の根幹にも迫る運命の日。
俺は普通に寝坊した。
あと飛び起きた神室に普通に怒られた。
五月に入ってから徐々に原作からズレていきます。
活動報告にも書きましたが、皆様のおかげで総合評価が15000ptを超えました!! 本当にありがとうございます!!
今後ともハリソン少年in中年のオッサンの活躍と神室の掛け合いをお楽しみ下さい!!
あとアンケートの結果、ハリソン少年はどっかでゴスロリ着てもらいます。 神室はバニーor逆バニー。
今後の展開について
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オッサン視点でストーリー重視
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他者視点重視。イベントの裏側を解説