飲まなきゃやってられんわ、こんな教室。   作:薔薇尻浩作

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早く無人島まで書ききりたいなぁ。と思いながら初投稿です。
ちょっと五月一日は長くかかりそうです。話が進まないんだよなぁ……。
中間テストはサラッと流せそうなんだけども。


良い子のみんなー? 茶柱劇場、はーじまーるよー!!

 

 「はい。取り敢えず午前中は欠席で。午後からは登校するつもりですが、体調によっては。その際はまた連絡してポイントも送金します。はい。ええ……はい。分かりました。失礼します」

 

 

 カラスの行水の如くササッとシャワーを浴びて下着一枚にバスタオル姿で俺がリビングに戻ると、丁度神室が電話している姿が見えた。

 通話先はAクラスの担任である真嶋か、職員室の誰かだろう。どうやら俺の指示通りに今日の午前中をまるまる欠席する旨を伝えてくれたらしい。

 俺の下らない凡ミスに巻き込んだ事については真に汗顔の至りではあるが、ヤッちまったもんは仕方ない。

 こういう時はミスった後のリカバリーこそが最も大事なのだから。

 

 

「無事に電話は済んだかい。真澄くん」

 

「あんたに言われた通りに……電話はした、けど……」

 

 

 バスタオルでワシャワシャと髪を拭きながら俺が尋ねると、神室は未だ眠気が残ったような瞳で俺に視線を合わせて静かに答えた。

 のは良いのだが、何やら俺の身体を見て瞠目したかと思えば痛ましいモノを見たかのような表情で苦しげに目を逸らしてしまった。

 

 はて? 前世の中年ボディーなら兎も角としてハリソン少年の男の娘ボディーはそこまで見苦しいモノでは無い筈なのだが?

 

 

「……本当に、昨日はごめんなさい」

 

 

 と、俺が首を傾げる直前になって、ようやく今の俺の『身体の色』が変わっている事を思い出した。

 神室の白い肌にも負けない輝きを見せていたハリソン少年の白無垢の肌。正確には首から下にかけて上半身部分なのだが、その範囲だけ、まるで花畑のように色鮮やかな模様が刻まれているのだ。

 赤、青、紫とカラフルなその鬱血痕の原因は言うまでも無い。

 癇癪を起こした神室による、些か常軌を逸したレベルで情熱的だったキスマークの痕跡だ。

 

 

「うん? 気にしないでいいってば。昨日も言ったじゃないの。真澄くんみたいな美人な娘から迫られるなんて御褒美みたいなものなんだから」

 

「でも……そうは言っても。よりにもよって、女に酷い目にあったアンタに……私、コレじゃ性犯罪者と変わらないじゃない」

 

「うーん。真澄くんは、アレだね。真面目と言うか、純粋と言うか」

 

 

 ベッドの上で膝を抱えて俯いて、すっかり落ち込んでしまった様子を見せる神室。

 俺はゆったりと彼女の隣に腰掛けて、取り敢えず頭を撫でてやった。

 

 もしも前世で豊富な女性経験でもあったなら、ここで気の利いた言葉でも掛けつつ何処までもクレバーに抱きしめてやる事も出来たのかも知れないが、生憎そこまでモテるタイプの人間では無かった訳で。前世での女性経験の九割は風俗嬢だったし。

 ましてや情緒不安定がデフォルトみたいなところがある女子高生の心情なんか、無駄に歳食っただけの残念なオッサンが理解る訳も無い。

 

 とは言え、俺としては神室が落ち込んでる姿なんか見たくは無いのだ。

 どっちかと言うと、いつものツンツン神室にすっかり慣れてしまった身としては、早くいつものツンデレさんに戻って欲しい。

 

 

「昨日も言ったと思うけどさ、年頃の女の子が完璧に自分の情緒や衝動をコントロール出来るなんて思っていないよ。恋人になる。って決めた時点でそこら辺は了承してる訳なんですよ、俺は」

 

「でも……」

 

「デモもストも無いの。そもそも本当に嫌だったら俺だってちゃんと口に出して言うし、態度にも示してる。俺はまだ真澄くんの全部を知ってる訳じゃないけども、少なくとも今知っている君の全てを好ましいと思っているから、こうして隣に座っているんだよ?」

 

「……うん」

 

 

 神室の声が涙ぐんでいるのは果たして俺の拙い慰めの言葉に効果が有ったのか無かったのか。

 あ〜……それにしても、下手したら自分の子供よりも歳下の女子高生相手にこんなシチュエーションで言葉をかける羽目になるとは。いや、前世では未婚だし子供なんか居なかったけど、年齢的にね?

 

 こんな事なら前世でも風俗だけじゃなくてキャバとかガールズバーとかにも、もっと通ってキャスト相手に口説き文句でも聞いておけば良かったかも知れない。

 最後に行った営業先の近くにある神奈川県北部の某セクキャバは普通に未成年が働いていたらしいし。

 

 まあ、ぐだぐだ考えてるけどアレだ。

 時代錯誤と言われようが昭和生まれの俺としては、こんな言葉しか出て来ない。

 

 

「まあ、こう言う言い方は変かも知れないけどさ。俺から言わせて貰えば、自分の女の面倒見るのは男の甲斐性として当然の事なんだから。それに、ほら。何となく真澄くんだって察してるだろうけど、俺は年齢の割に中身はかなり歳食ってる自覚もあるし」

 

「……それは、理解ってるわよ」

 

「うん。まあつまり、何が言いたいかって言うとだよ。大人の男として頼ってくれたりだとか、多少の我が儘を言われたりだとかは、オッサンからすれば、むしろ大歓迎ってワケなのだよ? 真澄くぅん」

 

「バカじゃないの」

 

 

 戯けたような俺の台詞にようやく肩の力が抜けたのか、神室は掠れた声に笑いを含ませながらもゆっくりと俺の肩に凭れ掛かって来た。

 可愛い女の子は泣いているより笑っていた方が良いに決まっているのは不変の真理である。空元気かも知れないが取り敢えずは持ち直してくれたようで何よりだ。

 

 

 ……それは良いのだが、内心で俺は自分で言った事にも関わらず神室から中身は歳食ってると思われている事に地味にダメージを受けていた。

 まさかハリソン少年の中身がアラフォーのオッサンだとはバレていないだろうが、やはり言動から滲み出る加齢臭は消す事が出来ないのだろうか。

 

 

「斯くなる上はボディーシャンプーを変えざるを得まいか。加齢臭対策のやつとかに」

 

「また変なこと言ってるし」

 

 

 やっぱり飲酒が原因か? でも今後もストレスが蓄積するであろうDクラスでの学生生活を考えると、永遠の友である酒を手放すのは考えられないし。

 

 と、まあ。そんな下らない事を考えつつ。  

 泣いたカラスが何とやら。とばかりに未だ腫れぼったい瞳を何故かジトっと半目に薄めて俺のことを見つめる神室の視線が地味に気になりつつも、ボンヤリとした時間を過ごしていたその時。

 ベッドサイドに置いてあった携帯端末が唸るような音を立てて震え出す。

 着信の報せだ。表示されている名前は、つい先日登録したばかりの『長谷部 波瑠加』のものである。

 

 

「長谷部はちゃんと俺の要望通りに電話をかけてくれたみたいだな。なによりだ」

 

「嗚呼、そう言えば、あんたがシャワー浴びる前に誰かと少しだけ電話してたわね。長谷部って確か、昨日の交渉事の時に付き添いで来てた娘?」

 

「そうそう。あの碧髪の女子が長谷部ね。朝のホームルームが始まる直前に通話をかけて、そのまま繋ぎっぱなしの状態にしてくれるよう頼んでおいたのさ。これで俺達はDクラスのホームルームの様子を部屋に居ながらも優雅にリアルタイムで視聴出来るってワケ……あ、画面は無いから視聴って言い方は違うか」

 

 

 先日の交渉が上手くいったおかげか、俺の携帯の連絡先に『佐倉』、『長谷部』、『三宅』の新たな三名の名前が登録された。

 元々、水泳の授業中に長谷部と友人になったのは完璧な偶然だったし、何だかんだタイミングを逃したせいか連絡先の交換に至っては無かったので個人的には有り難いイベントだったと言えよう。

 

 単純に可愛い女の子の連絡先が増えたこと自体が嬉しい点を否定するつもりは無いが、やはりクラス内で気安く連絡を取り合える友人や知り合いが居ると非常に便利だ。

 現に、今回のような不測の事態で助かっている訳だし、いざという時に備える意味でもクラス内で親しい人間は何人か作っておいた方が便利だろう。

 

 今後は貴重な常識人枠でもある『三宅』や、金の鉱脈予定の『佐倉』とも交流を深めておきたいところである。

 

 

「ねぇ。あんたって、あの長谷部って娘と仲良いわけ?」

 

「うん? クラスで唯一まともにお話できる娘だね。ほら、一昨日までは根暗ボッチのクソ陰キャだったから友達なんて居なかったし」

 

「ふぅん……」

 

「長谷部以外だと、三宅や佐倉は実質的に昨日の交渉が初対面みたいなもんだしなあ」

 

 

 そう言えば佐倉からは先日の交渉の対価として、『妙なお願い事』を頼まれたりもしたのだが、アレは一体どんな意味があったのだろうか?

 

 そんな事を考えながら俺は端末を操作して通話状態へ。すかさずミュートとスピーカーをオンにした。

 こちら側の音声は一切聴こえないが長谷部の音声。つまりDクラス内のホームルームの様子はしっかりと伝わる筈だ。

 

 

「さてさて。Sシステムのネタバラシが始まる運命の日の幕開けだ。ポイントを全て吐き出した不良品諸君は今から始まる茶柱劇場にどんな反応をするのか高みの見物と行こうじゃないか!! ポップコーンとコーラが無いのが残念だがね!!」

 

「あんたって本当、顔に反比例する勢いで性格悪いわよね」

 

「ありがとう。最高の褒め言葉だよ、真澄くぅん」

 

「褒めて無いから」

 

 

 ますます神室の放つジト目の湿度が高まる事を感じつつ。

 俺は携帯端末のマイクの音量を上げると、次第にDクラス内の喧騒の声が煩いぐらいに聞こえて来た。

 

 

『ポイントまだ入って無いんだけどー最悪ー』

 

『ったく、とっとと振り込んでくれよな。今朝だってジュース買えなかったし』

 

『そう言えば何時に振り込まれるかは聞いてなかったよね』

 

『サエちゃん先生も気が効かねーよなー。昨日の内に教えてくれりゃーいいのによー』

 

 

 うん。何と言うか、会話の質が非常にDクラスらしくて何よりである。

 どうやら誰一人として、毎月10万ポイントが振り込まれる事を疑ってはいないようだ。

 

 

 「ちなみに真澄くんや。Aクラスは何ポイント振り込まれてた?」

 

「94000ポイント。履歴見たら日付けが変わった瞬間に振り込まれてるから間違いないわよ」

 

「ほほう。失点がたったの6000ポイントだけとは、流石は優等生揃いのAクラスだ。我等が不良品クラスとは文字通り、雲泥の差ってやつだね」

 

「いや、流石に学級崩壊している所と比べられても困るわよ」

 

 

 然もありなん。神室の言葉に頷きながらも原作知識について振り返ってみる。

 

 各クラスのCPについて、Aクラスは940。Bクラスは650。Cクラスは490だった筈だ。

 俺という異物が神室を巻き込んで割と好き勝手やっていたので原作からポイントがズレる危険性も考慮していたのだが、この調子なら大丈夫そうだ。

 ちなみに以前、神室が二日酔いで欠席した際は俺がポイントを支払って出席扱いにして貰っている。お値段はなんと一日2万ppt。高い買い物だった。

 

 

『あ、サエちゃんせんせー来たわ』

 

『……なんか、顔怖くない? 体調でも悪いのかな?』

 

 

 チャイムの音を背景に、ガラガラと扉が開く音が響き、ヒールが床を打ち鳴らす音も聞こえて来た。

 どうやら主演女優『茶柱 佐枝』の御登壇のお時間がやって来たようである。

 ちなみにDクラスの生徒諸君からは思いっきり舐められているので、まるで友達を呼ぶかのような扱いで佐枝ちゃん先生と呼ばれていた。尤も、そんな雑な扱いを許されるのは今日までだろうが。

 

 

『せんせー。ひょっとして生理でも止まりましたかー?』

 

 

 ……ああ、うん。今の如何にもお調子者と言った声色は間違いなく池の声だな。

 いや、まあ。確かに原作でもこんな台詞言っていた覚えはあるけども。実際に聞くと普通に引くぞ?

 デリカシー云々と言うレベルから逸脱しているし、普通にセクハラで訴えられたらどうしようも無いレベルの失言だ。

 

 

「こいつ死ねばいいのに」

 

 

 うん。気持は分かる。気持は分かるから落ち着いてくれ神室。

 真隣からそんなマジトーンで殺意を乗せた冷たい声で呟かれると普通に怖いんだから。いや、俺に対して言っているわけでは無いのは分かってるんだけど美人の冷たい声って無駄に怖いんだってマジで。

 

 

『これより朝のホームルームを始める。が、その前に何か質問はあるか? 気になることがあるなら今聞いておいた方がいいぞ?』

 

 

 そんな神室の極寒の怒りはともかくとして。

 肝心の茶柱先生は池からのセクハラ発言を軽くスルーして生徒達に呼び掛けた。

 

 

『あの、今朝確認したらポイントが振り込まれて無いんですけど、毎月一日に支給されるんじゃなかったんですか?』

 

『本堂、前に説明した通りだ。ポイントは毎月一日に振り込まれる。今月も問題無く振り込まれた事は既に確認されている』

 

『えっ? いや、でも振り込まれて無いんですけど』

 

 

 ふむ。流石に一言一句を丸々暗記している訳では無いが、恐らくここまでは原作通りの展開だろう。

 ブツブツと「ジュース買えなかったのに」と不満の声を漏らしている本堂とやらの台詞にも何となく聞き覚え。否、見覚えがあった。

 

 と言うか本堂よ。ジュース一本買うポイントすら残って無いって……マジで一月で10万ポイント使い切ったのか。

 今一印象に残りにくいモブ顔のクラスメイトのまさかの散財に俺は背筋が凍りつくような薄ら寒さを覚えた。端的に言ってドン引きである。

 

 

「ポイントが振り込まれて無い。って勘違いしてるって事は、あんたの予想通りにDクラスはクラスポイント? とやらが本当に0ポイントって意味なの?」

 

 

 ドン引きしてる俺の隣で神室がそんな質問を投げかけた。

 真嶋先生と茶柱先生を脅し……じゃなくて平和的な交渉の末に報酬を頂いた際に、神室にはプライベートポイント(ppt)とクラスポイント(CP)の存在については説明済みである。尤もその名称については仮称と言う事にしてあるが。

 じゃないと、何で入学直後の新入生がそんな事まで知ってるのかと突っ込まれかねないので。

 

 

「まあ、真澄くんもご存知の通り見事に学級崩壊していたからねー。公立の底辺校並みの民度を誇るモンキーの群れに、国が運営している超がつくエリート学校様が毎月お小遣いをあげたくなるか。って考えたら御察しだよね」

 

「いや、まあ。確かにそう言われたら、そうなんだけど。それにしても毎月の収入が0って普通にヤバいんじゃないの?」

 

「うん。普通にヤバいね」

 

 

 一読者として阿鼻叫喚しているDクラスの面々の描写を読んでいる時は「大変だな〜」なんて呑気に考えていたが、慣れない一人暮らしを強制されている未熟なティーンエイジャーに対し、娯楽や息抜きに使えるお小遣いが零。と言うのは普通にヤバい。

 俺も原作知識が無く、自前で稼いでいる余裕が無ければ普通にパニくっていた事だろう。

 

 

「まあ、衣食住の面で言えば学生寮の家賃も生活費も無料だし、制服とジャージも予備を着回せば無問題。食堂には無料の山菜定食もあるし、スーパーやコンビニには俺達もよくお世話になっている無料食品の数々がある。

 死にはしないだろうね。少なくとも肉体的には」

 

 

 付け加えるなら無料商品は食品だけには限らない。ドラッグストアには風邪薬や生理用品が。ファストブランドを取り扱う服飾店や雑貨店には飾り気の無い肌着や下着等も取り扱っていた。

 日本国憲法でお馴染みの『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を害しない程度の生活を保障する『サービス』を提供しているのだろう。

 

 

「お前らは本当に愚かな生徒達だな」

 

 

 そんな事を俺が考えている間にも茶柱劇場はいよいよ盛り上がっていく。

 

 グツグツと煮え滾る様な憤怒か。それとも自らの古傷が疼く哀しみか。もしかしたら愚かな弱者を踏み潰す仄暗い愉悦も混じっているのかも知れない。

 先月まで見せていた茶柱先生のクールでありながらも大人の女性としての余裕が垣間見える優しげな声色はすっかり消え失せ、ドス黒く、冷酷な感情を孕んだ一言。

 

 

『は? 愚かって何すか? 急に』

 

『座れ、本堂。二度は言わん』

 

『さ、佐枝ちゃん先生?』

 

 

 先程までざわめいていたクラスの喧騒はすっかり消え失せ、茶柱先生の無慈悲な宣告が教室中に響いているのだろう。

 電話越しに音声のみを聴いている俺でさえ、思わず唾を呑むような緊張感があった。

 

 

『ポイントは間違いなく振り込まれた。このクラスだけ都合良く忘れられた、などという幻想、可能性は一切無い。解ったか?』

 

『いや、でも実際に振り込まれて無いし……なあ?』

 

 

 本堂が周囲に確認を取ったのだろう。恐る恐ると言った様子で何人かの生徒が同意する声が聴こえた。

 

 

『ははは、成る程。簡単な謎解きという訳だね、ティーチャー』

 

 

 と、ここで薄暗い雰囲気を嘲笑うかのような張りのあるテノールが響いた。

 声の主は唯我独尊自由人である高円寺であろう。

 

 

『なーに簡単なことさ、私達Dクラスには1ポイントも支給されなかった。という事だよ』

 

『はあ? 何でだよ。毎月10万ポイント振り込まれる。って佐枝ちゃん先生が初日に言ってたじゃねえか?』

 

『やれやれ、どうやら凡人の諸君と私では耳の作りが違うようだね。少なくとも私はそう聴いた憶えは無いのだが。そうだろう、ティーチャー?』

 

 

 自信満々と言った様子が声色から伝わる高円寺は今頃、机の上に脚を乗っけて不敵な表情を浮かべているのだろう。

 ついぞその方法は分からなかったが、原作でも彼は、Dクラスが貧乏暮らしを約束された五月以降もどこからかポイントを調達してきた事を示唆されていた。

 将来についても学校側にお世話になる気は更々無い御曹司にとっては、今のクラスメイトの醜態は暇潰しに丁度良い喜劇にしか映らないのかも知れない。

 

 

『態度には問題有りだが高円寺の言う通りだ。私は毎月一日にポイントが支給されると説明したがその支給額については一切触れてはいなかった筈だぞ? 全く……学校側はお前達に散々ヒントを与えてやったというのに自分で気が付いたのは僅か数人とは。嘆かわしい話だ』

 

 

 茶柱先生からのまさかの種明かしに再びDクラス中から津波のように雑多な声が沸き起こる。今までのざわめきと違う点は、その声の中に悲痛な悲鳴が混じっている事だろうか。

 

 

『先生、腑に落ちない事があります。振り込まれなかった理由を教えて下さい。でなければ僕達は納得できません』

 

 

 ここで声をあげたのは平田だろう。きっとクラスの代表として忽然と立ち上がり茶柱先生に相対しているのだろうが……まあ、残念ながら無意味だ。

 

 

『学校側としてはお前達の納得などどうでもいいのだが……まあ一応説明だけはしてやろう。

 遅刻欠席、合わせて98回。授業中の私語や携帯端末を触った回数391回。たった一月で随分とまあ、ここまでやらかしてくれたものだな』

 

 

 うん。そりゃ学校側もキレるわ。

 しかもこれ、多分あくまで学校側が把握出来ている回数を挙げただけだろうから、監視カメラの死角や教師の目が届かないところでやらかしている事を加味すれば、もっとえげつない数の違反行為をやってる事になる。

 うん。アレだ。何と言うか……

 

 

「想像以上に想像以下だったんだな。ウチのクラスって」

 

「良かった。私Aクラスで。いや、本当に」

 

 

 隣で冷や汗かいている神室の言葉は紛れも無い本心であろう。

 俺もAクラスが良かったなぁ。派閥闘争は面倒そうだけども。

 

 

『この学校ではクラスの成績がポイントに反映される。その結果、お前達は自らの怠惰と愚行により振り込まれる筈だった10万ポイント全てを吐き出した。それだけのことだ』

 

『入学式の日に直接説明したはずだ。この学校は『実力』で生徒を測ると。つまりお前たちは……』

 

 

 

 

 

「評価0のクズ。と言うわけだ」

 

 

 

 

 

 

 楽園からの追放。

 優しい夢から蹴り起こされた衝撃。

 あまりにも無慈悲な存在価値の否定。

 

 

 死刑宣告にも等しい茶柱先生の言葉に、Dクラスからは全ての音が消え失せて行く。

 

 そんな氷獄のように凍り付いた教室の様子を聴いていた俺達は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた、朝から飲むつもり?」

 

「ペットボトル一本分のシードルじゃ、ほろ酔いにしかならないからヘーキヘーキ。あっ、真澄くんも飲む?」

 

「……少しだけなら付き合ってあげる」

 

「流石だぜ真澄くぅん。あっ、グラス取って来るねー」

 

 

 

 酒飲みながらめっちゃ呑気にしていた(笑)

 




感想、高評価、お気に入り、誤字訂正。真に有り難う御座います!!
最近は感想返せてませんが、全部読んでますからね!!

週二くらいの目処で更新出来るように頑張ります!!

今後の展開について

  • オッサン視点でストーリー重視
  • 他者視点重視。イベントの裏側を解説
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