シャングリラ・フロンティア〜死にゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:マンデラカタログ

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無理をするなら、ふんわり行こう

 

「シギィィィィィィィァァァァァァア!?」

 

「よっしゃあぁ!!」

 

 相当のダメージを叩き出したのか、絶叫を上げた泥掘り(マッドディグ)はのたうちながら沼に沈……むことなく、浅い沼で一度バウンドするとそのまま横たわった。ふと俺の脳裏に小さな違和感が生まれたが、それはすぐさまかき消されることになる。

 

「やった!やったでありますアラジオど…わぶぅ」

 

「まぁこうなるわべぇ」

 

 倒れた泥掘り(マッドディグ)に続くように俺とダブリュアが沼へと落下、落下ダメージ自体は紙装甲にしては体力の5分の1と然程でもないが、全身泥パックを強制的に体験させられる。

 

「あきゃぁぁぁぁぁ我輩の服ぅぅぅぅぅぅぅ!!!?!?」

 

「完璧だったぜダブリュア!ナイス杭打ち!!」

 

 あれだけデカい一撃が入ったんだあの様子からして流石に倒せたと…………………………

 

「あれ……?あいつどこ行った……!?」

 

 泥掘り(マッドディグ)がいない。いや、明らかに何か大質量が沼に沈んだ波紋はある、つまりまだ終わってない。違和感の正体は、そう言えばダブリュアが言ってた「ドーン」らしき行動を見てない、特殊行動? HPの残量がフラグ? 削りきれなかった、発動した? 沼全体が揺れてる、全体攻撃、即死………

 

「ふんっ!!」

 

「わちょ、アラジオ殿……!?」

 

 バラバラに散った情報を纏めるために思考以外のすべての動きを止めようとした体を無理やり動かし、多少雑だがダブリュアの手を掴んで沼から引っこ抜きながら沼の外へと放り投げる。次の瞬間、広い沼全域が突如として震えだし、俺の動きがシステムじみた強制力によって鎖で縛り付けられたかのようにその場から一歩も動けなくなる。

 くそ、もしかしなくても発動した時点で確定で食らうタイプの特殊行動か………AGIメタに加えてソロもメタってやがるのか…!?

 

「クソッ……!動けねぇ………!」

 

「アラジオ殿!下からであります!!」

 

「ッ!?」

 

 なるほど纏まったぞ。ズドーン、なる攻撃、泥の中を水の中を泳ぐように潜行するモンスター。

 数秒間とは言え沼から直立する事が可能である……ということ。

 

「これは………打ち上げ攻撃か」

 

 次の瞬間、足元が感覚が消失し、思いっきりかち上げられ俺は宙高く吹き飛ばされたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

泥掘り(マッドディグ)

 鮫の頭、四肢が異様に発達した土竜の胴体、そして鯰の髭・・・を持つ広義のキメラに分類されるこのエリアボス最大の特徴は体力が20%を切ることで発動する特殊行動である。

 地中深くに潜行し、沼を震動させる事で沼に足を踏み入れたプレイヤーの動きを強制的に止め、そして沼の中にいる者達からランダムに一人を真下から鼻先で思い切り吹き飛ばす。

 一人で挑戦した場合、沼の中にいると確定で攻撃を受ける上にかち上げられた高さから落ちる事でほぼ確実に落下ダメージでHPを全損させられること、沼に入っていなければソロでもこの攻撃を不発させることはできるが動きが制限されたこのエリアでダメージ調整と沼からの離脱を両立させることの困難さから、このモンスターはプレイヤー達から二つの名を渾されている。

 

 地形によるAGIへの露骨なメタっぷりと薄い装甲程度では難なく押し切ってしまうことから「軽戦士殺し」。

 そしてもう一つが、一人で挑めばほぼ確定で即死攻撃を受ける事から「ソロ殺し」と呼ばれる。

 

 

 

「ぐ…………おわぁぁぁぁあ!?」

 

 人に翼は無く、故に人は様々な手段を用いて空を飛ぶ。そして飛ぶと跳ぶの違いはと言えば、やはり自らの力で空に滞在し続けられる力があるか否かであり……今の俺は跳ぶにすら満たないぶっ飛ばされた状態だが……

 

(クソッ!こんなことならキャットウォーク残しとけばよかった!!)

 

 てっきりかち上げられた時点で死んだものだと思っていたが、どうもこの攻撃の本命は落下ダメージによる……落下死。

 

(流石に性格悪いって…!何がユートピアじゃ……!?)

 

 あの牙に噛まれて死ぬより悪意があるぞこの攻撃! どうする、高くかち上げられすぎて考える時間があるものの、次に地面と接触した地点が俺の死に場所だ。

 

(考えろ……どうする!? 落下死は何度も経験してるんだ!何か解決方法があるはず……!!)

 

 こちとら崩れる崖やら落下させてくる敵MOBと戦って来たんだ、せめて衝撃を和らげるものがあれば………あるじゃないか!!

 

「ダブリュア!」

 

「は、はいであります!」

 

「今から俺はこいつ目掛けて落下する!」

 

「了解でありま………ってえぇぇぇえ!!?!」

 

「だから、こいつの身動きを止めてくれ!」

 

「り、了解であります!うおぉぉお!【麻痺衝撃(パラライズインパクト)】!!」

 

「ギシャッ!!?!?」

 

 ダブリュアが泥掘りの方にジャンプして掴まり手から電撃を放つ。おかげで泥掘りが痺れて動きが止まった!

 

「よくやった!うおぉぉぉぉぉお!!」」

 

 

 

隕石落蹴(メテオ・フォール)」という落下エネルギーを利用した「攻撃スキル」が存在する。

自由落下による運動エネルギーを持った武器を下に構えたアラジオはダブリュアによって動けない「泥掘り」の頭上へと落下。

結果、本来なら大ダメージを受けるはずの「落下判定」を決死の「特効」であると判定された。

 

隕石落蹴(メテオ・フォール)」ならぬ、「擬似隕石落蹴(シュード・メテオフォール)」が泥掘りに当たりポリゴンが派手に飛び散った。

 

 

 

「………良しっ!やっぱり生き残れた!!」

 

「やったでありますね!アラジオ殿!!」

 

 落下ダメージで死にかけ(HP10)ではあるが、勝ったのは俺達だ!




 アラジオ君の落下対策講座。
その1、周りをよく見る。
その2、落下ダメージを軽減するアイテム、スキル、装備を持っておく。
その3、落ちても生き残る方法を考え続ける。
その4、成り行きでなんとかする。
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