シャングリラ・フロンティア〜死にゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:マンデラカタログ

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試練が始まる

 

 作戦会議を終えた俺はすぐにシャンフロにログインした。理由は今装備している致命魂の首輪の効果がかなり厄介だからだ。

 

「おはようであります!」

 

「おう、おはよう」

 

 あいも変わらずテンションの高い軍服兎に挨拶を返しつつ、俺は鉛筆戦士が言っていた言葉を思い出す。

 

 

 

〜作戦会議の時〜

 

「ちょっといいか?」

 

「ん?どうぞ」

 

「4人でやるって話だったけど俺、今NPCがパーティにいるんだよね……どうしよっか?」

 

「あー……実は俺も」

 

「サンラク君は例の兎ちゃんだろうけどアラジオ君もNPCがパーティにいるんだね」

 

「兎ちゃん?何の話?」

 

 うん?サンラクが兎のNPCを連れてる…………いや、まさかな………

 

「二人ともそのNPCが大事なら外した方がいいよ。シャンフロは……」

 

 

〜現在〜

 

(………一度死んだNPCは二度と復活しない、か……)

 

 死にゲーでもNPCが死亡した際は復活しないから気をつけているけど……改めて言われるとくるものがある。一応ダブリュアには伝えておこう。

 

「ダブリュア、今から大事な話をするからしっかり聞いてくれ」

 

「了解であります!」

 

「実は二週間後に墓守のウェザエモンとかいうのに挑むことになってだな、その時は一時的にパーティ解散するかも……どうした?」

 

 それを無理やり言語化するなら、「ビョッ!」「ゴヅン!」「ぼすっ」だろうか。

 つい先ほどどこかで見たような数秒のフリーズの後、ギャグのような跳躍力で天井に激突したダブリュアはベッドの上に落ちて、そして頭を抱えて悶絶し始めた。

 

「う、ううぇ、ウェザエモンでありますかぁぁぁッ!?」

 

「あ、あぁ」

 

「お、おとんに知らせてくるでありますぅぅっ!!」

 

「お、おい!?」

 

 どうしたんだ?なるべく早くこの首輪を外したいんだが……これは何かのフラグを踏んだか?

 

「……ゲーマーの直感だが、このイベントは逃してはいけない気がする」

 

 

 

 

 ダブリュアが「おとんが呼んでるであります!」と戻ってきたのは大体5分ほどしてからだった。

 なにやらパニック状態のダブリュアに連れられ、ヴァッシュの元へと行ってみれば、いつにもなく険しい顔をしたヴァッシュがそこにはいた。

 これは……何か地雷を踏んでしまったか? 好感度が下がるようなフラグを立ててしまったのならマズイ。

 

「おう……ダブリュアから話は聞いたがよう、お前さんの口から聞かせてくれや………あの死に損ないに挑むってぇのは……本当かい?」

 

「……はい、本当です」

 

 死に損ない……墓守って異名がある時点で何となく察してたがアンデットの可能性が高くなったな。だが、俺はユニークモンスターのことをそこまで多くは知らない。だからこそ、ジークヴルムの時もだったがやけにユニークモンスターについて詳しいヴァッシュの言葉は記憶に留めておこう。

 

「…おめぇさんも分かってんだろう? おめぇさんはまだ弱よえぇってことくらいよう」

 

「……はい…確かに「勝つ」という確信があって挑むわけではありません」

 

「なに?」

 

 落ち着け……落ち着くんだ俺……ここでうまく説得できれば優良な情報が手に入るかもしれない……NPCの説得は死にゲーで何度もしてきたんだ…俺ならできる。

 

「俺は……あくまでもサポートでして……メインとなるのは俺の友人です」

 

 まずは己の立ち位置の説明。墓守のウェザエモンに挑むことが私利私欲ではなく友人への助太刀であることを示す。

 

「今、ウェザエモンは…えーと……快楽殺人を行う集団を育成する為の道具としていいように扱われているようなんです」

 

 PK、って言っても通じるかどうか分からないから別の例えにしたが、流石にちょっと酷いかな? いやでもこれ以外に例えようがないし……実際外道だし……

 

「この挑戦の発案者はそいつらの中の一人ですが……そいつは墓守のウェザエモンを本気で倒すつもりです、その為にあらゆる手を尽くしている」

 

 じゃなきゃ俺もカッツォもサンラクもこの計画に乗ったりはしない。少なくとも、奴に渡され今はテキストファイルとして携帯端末に入っている「計画書」はギャグやネタで済まされるような作りではなかった。

 

「手を尽くして勝率は…………良くて4割程度、いや3割でしょうか……」

 

「そりゃあ無謀ってやつじゃねえのかい? 俺ぁ死にに行くことをヴォーパル魂と言った覚えはねぇぜ?」

 

「ご尤もです。しかしそいつは……いや俺も、協力する2人も負けるつもりはありません」

 

 ここが山場だ。演出はドラマティックに、言葉はロマンティックに。挑戦の二文字で済む説明を限界まで彩れ。

 

「俺も、協力する2人も……そいつの勝ちたいって心意気に力を貸すんです。機会は一度きり、勝っても負けてもこれが最後と言ってのけた彼奴に力を貸してやるのが………(ダチ)ってもんだと、そう俺は思ったんです」

 

「…………」

 

「ジークヴルムにも言われましたが、自分はまだ弱い……タマゴです。ですが、猶予は2週間……必ず間に合わせます。未だ孵らぬ雛鳥を大空を悠々と羽ばたく大鳥に変わるまで」

 

「………(ダチ)の為、か」

 

「っ!」

 

「……話を聞いた時ぁ、ヴォーパル魂を勘違いしたもんかと思ったがよ……おめぇさんの中のヴォーパル魂はくすんじゃあいねぇ。おめぇさんの覚悟、確かに俺等が見届けた」

 

 心の中の俺がくす玉とクラッカーをスタンバイしている、来たか? 来たか………?

 

「俺等はあいつらにゃあ手を出さねぇと決めてるんだがなぁ……可愛い娘の頼みもある、ちぃとばかし俺等も力を貸してやろうじゃねぇか」

 

パンパカパーン! とくす玉が割れて中から「祝! グッドコミュニケーション!」と書かれた垂れ幕が露わになり、紙吹雪の中でクラッカーが鳴り響いた。

 

「ありがとうございます師匠!」

 

「あぁ、だがまずはヴォーパルコロッセオで10体のモンスターと戦ってからだ。ダブリュア、案内してやんな」

 

「は、はいであります!」

 

 こうして俺はユニークシナリオを本格的に始めた。




 
 玉葱戦士と戦士の壺に鍛えられたコミュ力。畜生以外には効果抜群だ!
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