シャングリラ・フロンティア〜死にゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:マンデラカタログ
偽竜、控えめに言ってかなりヤバい。何がヤバいって、「全部」と即答できるくらいヤバい。正直ジークヴルムと戦った方がまだ善戦できるくらいだ。
『Aaaaaaaaaa!!』
「うるせぇぇぇえ!!」
ほぼノーモーションで放たれる光弾(当然の権利のごとく追尾式ホーミング)を避けた先に、偽竜から放たれた明らかに刺さったら即死しそうな茨の鞭を掻い潜り、その後の耳元で爆竹が爆破したような轟音の絶叫と共に降る雷を避け、ただひたすら8分後の生存へとしがみつく。
クソが、オチかけた意識を無理やり引きずり戻して考えながら動かないとやられる。
まず大前提として、俺の攻撃の一切はアレに通用しない。ジークヴルムのようにスペックが違いすぎて歯が立たないとかそういうものではなく、相性の問題としてコイツはこれ以上なく近接殺しだ。
「コイツは多分、遠距離以外の攻撃は通らねぇ……!!」
開始数秒の間はまだ攻撃のチャンスがあった、故に遠慮なく攻撃を叩き込んだのだが、返ってきたのは鉄塊でも殴っているような不毛な感触。この手の類は大抵それ以外に手はない。
となればヴァッシュ師匠が設定したクリア条件……8分間逃げ延びる、という一見簡単そうなそれも、開始20秒で甘い考えは消しとばされた。
「あっぶねッ!?」
偽竜が不自然に喉を膨らませた数秒後に黒いゲロのようなものが噴き出してくる。畜生、また新しい攻撃だ。
この偽竜、兎にも角にも手数が多すぎる。全行動が常に初見殺しと言えばその厄介さが理解できるだろう。先程から一度も同じアクションを一度もしていない、常に違う行動をしてきやがる。
ただ救いがあるとすれば、偽竜は闘技場の中心から一切動くことはなく、繰り出される攻撃の数々の合間には確かにモーションとモーションとを繋ぐリキャストが存在していることだ。
少なくともあの茨の鞭に捕まりさえしなければ、5分くらいなら大丈夫なんだが……
(このままだと、はっきり言って詰む……!)
戦闘開始からまだ1分しか経過していないが、攻撃密度が最初とは段違いに上がっている。
しかも、さっきのゲロビームが地面に残ってるせいでこっちの行動範囲が狭くなった。
くそ、頭が痛い……何か甘いものが食べたい……まだ動く脳細胞をかき集めて考えろ。次に活かすにしたって情報は……いや。
「こんな条件クリアできず、死にゲーマーが名乗れるか!」
この程度、最初からボス戦をしなきゃいけない死にゲーと比べたら屁でもなぇんだよ!!
「こちとらウェザエモンの作戦会議の後でクソ眠いんだよ!だからさっさとクリアして……寝る!!」
疲れてるんだよ、俺。
となればどう時間を稼ぐか、それが問題だ。弱点部位以外のダメージ無効というかなりの高難易度、攻撃の密度はどんどん上がり、最終的には雨霰のごとく攻撃が広範囲になるのだろう。
全体攻撃ってのは分かりやすく強キャラを作るためには非常に便利なファクターであり、無論俺もそういった攻撃への対処は心得ているが……おっと危ない。
「雷みたいな攻撃の発生から大体1秒後……」
見たことのない攻撃とは言え、覚えておいて損はないだろう。それにこういったホーミングではない場所指定時間差攻撃はスタミナ回復のチャンスだ。
次はゲロ……来た!
「出せる技はこれで最後か?」
思い出せ、コイツの攻撃パターンを!
まず光弾、次に茨の鞭、雷、黒ゲロ、ユニビーム、瘴気の煙……!
そうか、冷静に考えたら規模が違うだけで大まかな攻撃のパターンは決められている……くそ、勝手にランダム選出の攻撃だと思い込んでいた! いつもならもっと早く気付けてたのに、カフェインを摂取したい。
このゲーム、こいつと戦う適正レベルプレイヤーを想定している調整として、全員が全員遠距離攻撃職になると仮定されてモンスターを作るか? 恐らくだが完全近距離職でも勝てないにしろ何らかの対抗は可能なはず。
「やっぱ、やるしかないみたいだな…」
見えたぞ攻略の糸口。