シャングリラ・フロンティア〜死にゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:マンデラカタログ

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龍に憧れた贋作

 

 範囲攻撃の密度が上がる。だが段階的に密度が上がるということは前段階の上位互換……即ち、範囲攻撃にいくらかの共通点があるということ。

 

「着弾数……プラス3! 発光からの着弾時間に変化無し! いける!」

 

 回避スキルを使うまでもない、互いに重複しないよう必ず魔法1つ分の隙間を作る範囲攻撃など、安全地帯がそこら中にあるようなものだ。

ステータス画面を開く余裕さえある、俺を狙って降り注ぐ雷を回避しきった俺は次の攻撃……ホーミング性能は飛び抜けて高いが当たり判定が小さいため回避も楽な茨攻撃を避けながら偽竜のすぐ側まで肉薄する。

 

「わざわざ近づいてやったんだ!ほら、その気持ち悪い腕で殴ってこいや!」

 

 やっぱり挑発はスキル無しでもできるのだろうか?俺の挑発にモンスター側がノッてくる印象が強い。

 ほぼ死体の身体を軋ませながら、その異形の腕をしならせて近接攻撃を行う。

 

「3…2……1…………ここッ!」

 

 若干の調整を加え、タイミングに合わせて全力のバク転。俺の頭が地面に最も近くなる瞬間……天地が逆転し、走高跳びのような体勢でその勢いのまま薙ぎ払われた偽竜の腕を紙一重で避け、羽毛のようなものを掴む。

 

「はっはぁーっ! 冴えてるな俺の脳細胞!」

 

 こちらからの攻撃が通じないのはともかく、向こうが物理攻撃をする以上その身体に触れる事自体は可能なはずだ。少なくとも偽竜はゴースト系のような非実体ではない実体を持つモンスターであり、俺の手は確かに偽竜が内包していたコアを掴んでいた。

 遠距離職ガン有利はまだ分かるが、近距離職完全ゴミ化はないだろうと試してみたが成る程、近距離職はこれ(コア)を狙えってか

 

こんなもん(コア)を持ってるってことはさぁ……ここから光弾とかユニビームとかのエネルギーを生み出してるんじゃないか?」

 

『………!!』

 

「ほぉ」

 

 ヴァッシュ師匠が何かを呟いた。

 俺の意図をAIが理解したのか、偽竜の首を即興の足場にしてコアを奪い取ろうとする俺に抵抗せんと、偽竜は身体に生えた植物でコアを縛りつける。スカスカな身体のSTRなど、それも見るからに死体なステータスと思しき奴のそれなど大したことはないとタカを括っていたが結構粘る。だがな……

 

「持っててよかったポイント貯金!」

 

 ステータス画面、ポイント割り振り、STR。

 綱渡りじみた芸当であったが、偽竜が俺を振り払うのではなく核コアを取られまいとしたのが運の尽き、空けた片手でステータスを弄り、両手でコアを奪い取る。

 知ってるか、昨今のゲームの中には敵の内臓を奪い取れるものもあってな……

 

「致命攻撃は死にゲーの醍醐味ぃ!」

 

 ナイハンにおける一番大事な要素で鍛え上げられたモツ抜きテクをナメんなよ! コツは揺らして抉る!

 

 偽竜の腹からコアを奪い取り、華麗に空中で一回転して体勢を整え着地……ちょっと落下ダメージが痛い…

 それはともかく、ニヤリと偽竜に笑いかけてやれば、やはりコアが弁慶の泣き所だったらしい。先程までの攻撃地獄はどこへやら、悲鳴……そう間違いなく俺を格上とする格下の悲鳴を上げながら偽竜は身体を折り曲げ核へと手の様なモノを伸ばす。

 

「1つアドバイスだ、もっと肉を食え」

 

 MPとか俺の貧弱なそれと比べてトリプル、いやクワトロスコアくらい差がありそうなのに力比べで負けるって強Mobとしてどうなん? コイツの敗因はバリアタイプの近距離無効じゃなかったことだな。

 まぁ、弱者は弱者らしく逃げ回ってやるよ。逃げるは恥だが役に立つ……ってな。

 

「………つかコレ、おっも…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名は体を表すものだ。どんなバックストーリーがあるのかは知らないが偽竜……「竜の偽物」とはまさにこのことだな。

 

 どうやら魔法ではなく種族的能力だったようで光弾程の凶悪さはないにせよ、棘の蔓を放ってきた時は冷や汗ものだったが、慣れてしまえばただの作業。

 こちとらバランス型、文字通り地に足ついて根っこまで張った奴に捕まるような速度はしてない。

 

 しかし、その追いかけっこは意外な形で終わることになる。

 

『…………』

 

「ハァ…ハァ……なんだ?」

 

 先程まで暴れていた偽竜が突然動きを止め、俺の方に顔を向ける。

 

 

 

 

『……S…ie……g…………』

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 偽竜がSieg……ジークと言葉を話した瞬間、身体がポリゴンとならずにその場で崩壊していく。

 すると、それを見届けていたヴァッシュ師匠が門の上から下りてきた。

 

「まさかコイツを倒しちまうとはなぁ。確かに見せてもらったぜ、おめぇさんのヴォーパル魂をよぉ」

 

 だからヴォーパル魂って何?

 大体察しはついているが、一度口頭かテキストで説明してもらいたいものだ。足元でワーワー騒いでいるダブリュアはとりあえず置いといて……俺はヴァッシュ師匠をまっすぐ見据える。

 

「コイツはおめぇさんが今持ってるコアが本体でなぁ…無くなったらこうして崩れちまう」

 

「えぇぇぇ……」

 

 な、なんという致命的な弱点……つかこれが本体って……えぇ……

 

「まぁ、どんな形であれ条件は達成したわけだしな。おめぇさんをラビッツの【名誉国民】に認定してやるよう。それと、そいつ(コア)はそのままおめぇさんが持っておきな」

 

「は、はい……」

 

 なんかスッキリしない終わり方だな………

 

『ユニークシナリオ「兎の国からの招待」をクリアしました』

『称号【ラビッツ名誉国民】を獲得しました』

『アクセサリ【致命魂の首輪】が消失しました』

『NPC「魔法剣兎ダブリュア」が正式にパーティに加入しました』

『ユニークシナリオEX「致命兎叙事詩(エピック・オブ・ヴォーパルバニー)」を開始しますか?はい・いいえ』

 

 あー……今の俺にはちょっと情報過多ですぅ。




 偽竜の炉心核
 偽竜の絶大なエネルギーを内包した不思議な温かさを持つ心臓部。
 偽竜という種に自我は無く、ただの「なりそこない」として生まれた。
 しかし、天に輝く黄金を目にした時、確かに熱を帯びたのだ。
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