シャングリラ・フロンティア〜死にゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:マンデラカタログ
「真化」とは
極めて優れた名匠ともなれば、ただ優れた武器を製作するだけではない。ただより優れた武器に強化するだけでもない。武器に宿る
微妙に公用語が混ざったなんちゃって広島弁のビィラックの言葉をまとめると、大体そういうことらしかった。
「ヴォーパル……「致命」を冠する武器は、強者への挑戦をこそ記憶するけん。ワリャが今まで戦こうてきた記憶と、ワリャがオヤジに渡した強者のカケラを混ぜぇその形を変えるんじゃ」
「へぇ……」
ヴァッシュが金槌を致命の鋸剣に叩きつけるたびに、火花と同時に魔法陣が浮かび上がる。それは吸い寄せられるように致命の鋸剣へと吸い込まれていき、そしてまた新たな魔法陣が火花と共に生じる。
「……い夜空に……の炎……」
「歌?……むぐぅ」
「しー、であります(小声)」
「ok(小声)」
「………」コクッ
なんかビィラックが頷いたけど……何で?
そんな疑問を抱いている間にもヴァッシュ師匠は金槌を振り続ける。
「昏い夜空に、炉の炎。
火花は生まれ、闇が舐め取る。
踊る金槌、歌う鉄。
トンカラカンと、コンキンカン。
お前は刃、お前は力。
土より出でて、木を焚べ、火を育み、金を鍛えて、水にて冷やす。
世界は巡り、しかして停滞とまる。
金より鉄を、鉄より鋼を、鋼より刃を、刃より剣を。
明ける夜空に、剣の輝き。
光を映し、闇を切り裂く。
踊る剣に、歌えや世界…………」
…………スゲェカッケェ、CVが極道の親分みたいな渋い声だからこそできるこの迫力。もしこれが顔面触手宇宙生命体みたいなロリボイスなら、俺は耳を塞ぐだろう。
今にも泣き出さんばかりの勢いで震えるビィラック程ではないが、俺は確かに感動した。
「説明を求む(小声)」
「あれはおと…オカシラの「鉄打ち唄」であります。ビィねぇはあの歌が大好きなんであります(小声)」
分かります。俺も鍛冶の歌とか、渋いNPCのセリフとか大好きだからな。俺とビィラックは仲良くできそうだ。
「おう、出来たぜ」
「本当ですか!?」
死にゲーの渋い声のNPCを思い出していたら、どうやら武器が出来たようなのでヴァッシュの方へと向き直る。
「致命の鋸剣は此処に真なる名ぁと姿を得た。その名も兎鳥【鷹】だ」
「おぉ……!!」
ヴァッシュ師匠が俺へと手渡したそれは、鋸が付いた剣というかなり猟奇的な見た目は完全に姿を変えていた。それはまるで聖剣を想わせる輝きを放つと同時に、凄まじいオーラまで放っている。
「す、凄いオーラでありますね……」
「師匠、これは?」
「こいつぁ、力と技の両方を合わせ持つ……「蛇腹剣」ってやつよ。しかし武器としての形ごと変わっちまうのは久しぶりだぁ」
「蛇腹剣……」
少なくとも今現在の攻略サイトでは聞いたことのない名前だ。
「コイツが放ってるこのオーラなんだが……おめぇさんなら身に覚えがあるんじゃあねぇかい?」
身に覚え?一体何だ?
泥掘りはまず無いとして、偽竜か?確かに素材として使ったけど、戦ってた時の威圧感はここまでのモノじゃなかった………だとすると……
「………ジークヴルムですか?」
「…フッ、正解だぜ。この武器はアイツの逆鱗に少しでも傷を付けたわけだからな、その残り滓がこのオーラを生み出してるんだろうよ」
ビィラックの言葉を借りるならジークヴルムの逆鱗にちょっとだけ傷を入れた時の記憶が入ったってことか……少なくとも今の俺じゃ扱うのは難しいだろうな…
そう思いながら受け取った武器をインベントリに入れ、アイテムウィンドウを表示して詳細を確認する。
剣形態:兎鳥【鷹】
蛇腹剣
天を羽ばたく剛翼を思わせる頑強な剣。致命兎の魔法が込められたそれは、真の姿を未だ陽光の届かぬ闇の向こうにて眠っている。
・自身よりレベルの高い相手と戦闘する場合、自身のHPが減っていない状態で攻撃に成功すると次の攻撃の威力とクリティカル威力に補正がかかる。
鞭形態:兎鳥【鷹】
蛇腹剣
獲物を逃さぬ鉤爪を思わせる鋭利な剣。致命兎の魔法が込められたそれは、真の姿を未だ陽光の届かぬ闇の向こうにて眠っている。
・自身よりレベルの高い相手と戦闘する場合、HPが減っている状態で攻撃を成功させるとHPを回復する。
この武器の装備時、特殊状態「B.I.G.0」を付与しHPが最大の際に過剰回復することで特殊状態「B.I.G.0」のゲージが蓄積するようになる。
・必要ステータス「STR60」「DEX75」「TEC60」
「なんじゃこの神武器!?」
…………落ち着け、まずは必要なステータスだ。別に世界でまだ誰も解いたことのない数式を解けなんて言われてるわけじゃない。単純な算数の問題なんだ。必要ステータスの合算値が195で、今の俺の該当ステータスの合計が112で?引くことの83で?1レベル上がる毎に5ポイントだから5で割って大体17…………今の俺のレベルが33だから……レベル50から装備可能だな。
「……」
「ハッ!アラジオ殿が固まったでありますぅぅぅ!!」
予想していたとはいえ、やっぱり装備して性能を確認してぇよ……
一方その頃、とあるコンビニにて…
「アラジオから「遅れるかも」ってメールが来たわけだが……頼むから大遅刻だけは勘弁してくれよ?」
これから大遅刻をする者がエナドリと缶詰めを大量に買っていた。
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