シャングリラ・フロンティア〜死にゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:マンデラカタログ
〜作戦会議の時〜
「ウェザエモン戦での問題点「その1」戦闘開始直後、ウェザエモンを除く戦闘エリア内の全キャラクターに対し「レベルを上限50にする」スキルが発動すること」
「上限50……!?」
「「レベルは問題じゃない」ってそういう事かよ!?」
「マジか……」
またレベル縛りかよ……ていうか、こっちの方が縛りキツいぞ……
「ウェザエモンのレベルは200」
「200!?」
「つまりレベル差150の強制、だからこそプレイヤースキルが鍵となる」
「あぁ……」
「低レベルのキミたちには都合がいいでしょ?カンストするまでレベル上げする必要が無いんだから……とはいえ……レベルが50にすら達していないのは問題外、だから頑張ってレベリングしてね」
このままだと、俺が今装備している「致命魂の首輪」の効果(取得経験値が半分になる)のせいでかなり効率が悪くなるな……後でシナリオ進めるためにログインしよ。
〜現在〜
「レベル50かー…レベリングに最適な隠しエリアがこの神代の鐡遺跡とやらにあるらしいけど、どれぐらい時間かかるんだかなぁ」
「それなりにはかかるんじゃないか?」
「やってみないとなんともだしね」
俺&ダブリュア、サンラク&エムル、そしてオイカッツォの5人は永い年月の経過によってその役割を放棄したであろう扉を潜くぐり、神代の鐵遺跡へと足を踏み入れるのだった。
「なんか別ゲーみたいだ」
「すっげぇ近未来感」
「色んなところが光ってるであります!」
「黒い板がぐいーん!って動いてますわ!」
「ああいう動くオブジェクトってバグるとおもろい挙動するよなぁ」
「一回その眼球丸ごと洗浄して、そのクソゲーフィルター洗い落としてきなよ」
多分そんな事してもこいつのクソゲーフィルターは残ると思うんだが……面倒くさくなりそうだから言うのやめとこ……
「ってかさ、この雰囲気どっかで見た気がするとおもったら「ブレイヴ・ギャラクシー・ファイター」のラスボスステージだ!」
「「ちょっと知らないゲームですね……」」
「全世界で評価されたSF格ゲーの金字塔なんだけどなぁ」
「そんな神ゲー俺らが知ってるわけないだろ」
「そうそう」
格ゲーじゃないか、俺が知ってるわけないだろいい加減にしろ! 死にゲーならある程度知っているけど、全くの別カテゴリの特定ゲーム内における特定ステージとか知ったことじゃないという。
「ところでカッツォ君、お幾つになられました?」
「レベル?25」
「あ〜らまだ20代でらっしゃったのお若いw、ちなみに俺31w」
「まぁ、精々死なないように頼むよw」レベル33
「言うほど大して変わんないでしょうが!」
「つまりオイカッツォさんは、か弱くて心配ってことですわ?」
「賢いなエムルは」
「違うって!ほら変な勘違いされた!」
それにしても、こういう滅んだ系のエリアは個人的に好きだな。
元々は金属のみが空間を構成するはずだったその場所はかろうじて文明こそ維持しているものの、風化によって生じた天井の亀裂から日光が差し込み、征服欲旺盛な植物がこのSF空間にまで根を伸ばしているという……ん?
「サンラク!カッツォ!なんかこっちに来てる!」
「「ッ!」」
周りの景色に見惚れていたらUFOの三角形版のようなエネミーが落下してきた。
どうやら久しぶりのパーティプレイではしゃぎ過ぎていたらしい。少しばかり周囲への注意力が散漫になっていた。
「そこらに浮いてる板に敵も紛れてんのか?」
「罠じゃないだけマシだな」
「2人は手を出さなくていいよ。たとえレベルが低くても…戦えるのがシャンフロでしょ!」
そう言うなりカッツォは、自身の拳を合わせ赤いオーラを拳に纏って飛び出した。
「手伝わなくていいんでありますか?」
「まぁ、大丈夫だろ」
三角UFOは突っ込んで来たオイカッツォを敵と認識したのか、フリスビーよろしく回転しながらオイカッツォへと突っ込む。
「レペルカウンター……!素直な動きだ、カウンター練習用のエネミーかな?」
しかし、オイカッツォのレペルカウンターによって空中でグラついた三角UFO。そしてカッツォは真下に潜り込むように肉薄すると、重力に真っ向から逆らうかのように拳を振り上げる。
「クラッシュアッパー!」
「おぉ、一撃」
「全然お強いですわ!」
「な?大丈夫だったろ?」
「はいであります!流石お2人のご友人!」
ただの素手によるアッパーではないだろう。あの赤いオーラがなんらかのバフを与えていることは明らかだが、一撃で体力全損か。
結局なんなのかよく分からないまま、三角UFOはポリゴンとなる。
「その赤いオーラはなにかのバフ?」
「うん、筋力と耐久力に補正が入る【拳気「赤衝」】って魔法」
オイカッツォが説明していると後ろからまたあの三角UFOが飛んで来たが、それを倒しながら自キャラの説明をしていく。
「職業は「
「ステ振りは?」
「体力と耐久力多めの……軽戦士ビルドって感じかな!」
全ての三角UFOを倒し終えると同時に自キャラの説明も終えた。
成程、ここら辺は格ゲーマーの考えだな。カッツォのゲームスタイルは基本的にダメージを前提とした戦い方だ、要約すれば「やられる前にやれ」と言ったところか、ちなみに俺は「死ななきゃどうにかなる」だ。
気づけば死にかけという危険性はあるが、ワンパンで屠られない限り、回復して再び攻撃を加えることが出来るからな、中々大きい。
「ちなみに俺は……」
「言わなくても分かるよ、サンラクは筋力・竣敏特化のペラッペラな紙装甲で、アラジオは体力、スタミナ多めの上質ビルドでしょ」
「俺はほとんど当たりだな、サンラクは?」
「
「ペラッペラには変わりないじゃんか!」
「「ヴォーパル魂全開ですわ(であります)!」」
「ヴォーパル魂?なにそれ?」
「「ヴォーパル魂はヴォーパル魂ですわ(であります)!」」
「多分伝わらねぇぞ2人共……」
俺もよく分かってないけど……
「えーと?この先のフロアから隠しエリアへ行けるのか」
俺たちは地図に書かれた通り、真ん中に穴の空いたプレートの左側を通って亀裂を飛び越し、四方が欠けたプレートに乗り、地下二階と三階の隙間へと移動しそこから先へ進む、という面倒くさいルートを進んだ。
「見つけた奴すげぇな! どういう頭してたらこんなルート見つけられるんだか」
「というかペンシルゴンが見つけたんじゃない?」
「そうだとすれば、流石というかなんというか……」
「最後は穴に飛び込め……か」
地図に書かれた行程通りに道とすら言えないルートを進み、俺たちの前に隠しエリアへの最後の行程として立ち塞がったのがこの大穴。
元々地下ということもあって完全に底が見えない穴に飛び込め、と言われればフルダイブのリアリティもあって少し怖気付いてしまう。
「実は俺達を遠回しに暗殺するためのドッキリでした〜とか無いよね?」
「あのペンシルゴンならやりかねないな……」
「そしたらお前、あの鉛筆女はケジメ案件よ」
「ケジメ!おと…カシラもケジメは大事って言ってましたわ!」
「そうだね〜」
「………そうなのダブリュア?」
「はいであります!ケジメは凄い大事であります!」
あの極道兎のケジメ……知りたいような知らない方が幸せのような、いやいや流石にゴア描写マックスな事はないだろうが……うん、これ以上は考えないようにしよう。
「下がどうなってるか分からないし、紙装甲の2人を先に行かせる訳にはいかないか」
「ふきゅ」
「ふにゅ」
オイカッツォはそう言うとエムルとダブリュアの頭をポンポンと撫でた。
「そんじゃ、ちょっと様子見てくるよ」
「悪いな」
「気を付けろよ」
そしてオイカッツォは「うっひぁー!」と声を出して躊躇うことなく大穴へと飛び込んでいった。
「優しくて強くて勇敢でカッコいい女の人ですわぁ」
「そうでありますね、エムルねぇ」
「「………あー」」
そうか、見た目と声がアレだし勘違いしても仕方ないか。特にやつのシャンフロのアバターはあざといくらいの女キャラだし。
「あいつ男だぞ?」
「「?」」
「あー…つまり、見てくれは女だが魂が男ってことだ」
「「……えええええ!?」」
元々リアルが中性的だからな、彼奴はプライベートなゲームではよく女顔のキャラや女のキャラを使って遊ぶ。なんでもねぇ二人妹一人という紅一点ならぬ黒一点? な家庭環境故にゲームを始めるまで趣味が女性的な物ばかりで……と、本人は遠い目をして語っていたことがある。
「「せ、生命の神秘ですわ(であります)……」」
「「世界は広いのだ」」
というかオイカッツォのやつが死んだかどうかをどう判断すればいいんだ? あ、フレ登録とかしてなかったな。疑問から関係のない事へと思考が移り始めたその時、穴の奥から小さく反響する音が。
「…………れー…………」
「お、何か言ってるな」
「とりあえず、ペンシルゴンの遠回しの暗殺ドッキリではなかったようだ」
てかなんて言ってるんだあいつ。
「「はよ来いヘタレー」だそうですわ」
「「…上等じゃねぇかぶっ殺してやるあの野郎!」」
「えっちょ、心の準備……ですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!?」
「吾輩もでありますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅう!!!?」
一切の躊躇いなく、ついでに言えばエムルとダブリュアの心の準備が整うまでもなく、俺はダブリュアをサンラクはエムルを剥がれないよう手で押さえながら穴へと飛び込んだのだった。