シャングリラ・フロンティア〜死にゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:マンデラカタログ
白駒の隙を過ぐるが如し、平日の月曜日から金曜日はとても延々と続くのに連休の一週間はふと気づくと最終日……時間とはかくも残酷でかくも慈悲深い、そんな戯言を脳内で思い浮かべつつも遂にやってきたペンシルゴン主催、俺とサンラク、カッツォを巻き込んだチキチキ「墓守のウェザエモン討伐戦」が明日に迫ってきた。
今日は当日の確認の為に集まった。待ち合わせ場所はNPCカフェ「蛇の林檎」、何故ここにこだわるのかサンラクと聞いたところ、実はこの店のメニューは味覚制限が無い上にレッドネームプレイヤーも受け入れてくれる稀有な店らしい。
初心者はこんな場所知らないし、上級者はもっと先の街の同じような施設を利用するので、知名度の割には人が少ないという穴場スポットなんだとか。というか、だから毎回カッツォはここでケーキを注文してたのか。あ、サンラクも注文した。
「お味の方は?」
「んー、雑に甘い!」
「俺はこういう大雑把な甘味嫌いじゃないよ」
へー……気になるから注文しよ。
「はいはい……わざわざ朝集まってもらったのは他でもない、作戦決行における予定の再確認だね」
注文したケーキをムッシャムッシャとパクつきながらも、俺とサンラクとオイカッツォは予定の復誦を行う。
「とりあえず俺達はサードレマで待機、そんで11時半になった時点で樹海窟に行く……だろ?」
「今の俺達なら大体十五分あれば例の場所に着くから入り口前で待機」
「そして日付が変わるその瞬間が、決戦の時か」
何をどう便宜したのか、NPC店主たる強面のおっさんが揉み手で案内してくれた個室にて、俺達4人は絶賛悪巧み中だ。
レベリングは完了、スキルも整理し、武器防具も新調した。サンラクとカッツォは何やら隠し球を用意したと言っていたが、俺は俺のできることをやるだけだ。
さらに、呪いを有効活用したライブスタイド・デストロブスター釣りによってある程度スキルも鍛えた。そんな今の俺のステータスはといえば。
───────────────────
PN:アラジオ
LV:56
JOB:騎士(片手剣)
10,020マーニ
HP(体力):50
MP(魔力) :10
STM (スタミナ):70
STR(筋力):62
DEX(器用):80
AGI(敏捷):45
TEC(技量):60
VIT(耐久力):5(401)
LUC(幸運):50
スキル
・疾風突き
・獣化
・スケートフット
・ジャガーレッグ
・パリングプロテクト
・ ストライクシュート
・グレイトオブクライミング
・五艘跳び
・ハウンドステップLv.2
・マキシマム・ブーストLv.3
・撫斬りLv.2
・斬鉄
・旋風斬Lv.2
・オプレッションキックLv.6
・ベストステップ
・
・致命剣術【半月断ち】
装備
右左:
頭:灼滅に焼かれた壺兜(VIT+1)
胴:ジークヴルムの呪い
腰:命潮色の鱗腰(VIT+200)
足:命潮色の鱗足(VIT+200)
アクセサリー:無し
───────────────────
いやー、ビィラックには本当に頭が上がらないよ。レベリングの時にゲットしたライブスタイド・レイクサーペントとデストロブスターの素材を全部装備に変えてくれたんだから。
そして遂に装備を着ました!何とこの防具には回復量は少ないが自動でHPを回復する
どちらにせよ焼け石に水ではあるのだけど、最善を尽くすならば僅かでも努力はするべきだろう。様子見も兼ねて最初は泥鮫の牙剣で行く予定だが、場合によって装備は切り替えて行くつもりだ。
「だけど、1つだけ問題がある」
突然のペンシルゴンの発言に俺達は疑問を抱く。
「問題?」
「何かあったっけ?」
「3人ともレベル50以上にしたぞ?」
「…現状、ウェザエモンと遭遇する条件を知っているのは、私が所属している阿修羅会のみ。だから、ユニークモンスターの出会うだけで経験値が入るシステムを利用して彼らのレベリング兼対人の練習台にされている」
阿修羅会……あぁ、あの悪名高いクランのことね。どうやらサンラクは出会ったことがあるようで「アイツ等か…」と呟いている。
「リュカオーンやジークヴルムと違って決まった時間と場所で遭遇できるんだからレベリングの場としてはこれ以上ない存在だよね」
「問題ってのは、つまり……」
「このままだと、ウェザエモンと戦う新月の当日、既にユニークシナリオを受注している阿修羅会共とかち合うことになる……と」
「同じクランなんだろ?やっぱり協力とかは無理なのか?今回は引いてもらう…みたいな」
一応聞いてみたが「無理だね」とすぐに言いかえされてしまった。
「奴ら、倒すことにむしろ反対してるから」
「じゃあどうすんの?」
サンラクがそう聞くとペンシルゴンは注文していたジュースを一口飲んだ後、現状の阿修羅会について話しだす。
「阿修羅会ってさ、プレイヤーキルばかりやってるから皆んなに嫌われてるんだよね」
「だろうな」
「それで最近、PKを行ったプレイヤーは、ちょっと特殊な状態になるようアップデートされたんだ」
「特殊な状態?」
するとペンシルゴンは置いてあったブドウの束を持ちPKのシステムを説明し始める。
「PKが他のプレイヤーに倒された場合、懸賞金に加え、そのPKが持っていたアイテムや装備の所有権が倒したプレイヤーに移る。倉庫に預けていた物なども含め全てね」
「へぇ…」
そう言うとブドウの束を別の皿に置き、もともと置いてあった皿に落ちたブドウ一粒をペンシルゴンが摘む。
「阿修羅会の上位のPKとなれば相当なレアアイテムだって持っている。いわば、動く宝箱みたいな状態なんだよね、私達PKって」
何だか話がだんだんと不穏になってきた……
「だからPKキラーなんて奴らも生まれてくる。もちろん私達もシステムの穴をいくつか見つけたり、色々対策はしてるけど、根城ごと攻撃されたらそんなものは意味がなくなる。
そして、その根城の場所を当然私は知っている」
「オイオイ」
「マジ?」
「あぁ……」
これってつまり……そういうこと?
「もういらないんだよね、邪魔なだけの臆病者は。だから…」
そう言うとペンシルゴンは摘んでいたブドウに力を入れはじめ…
「阿修羅会、潰しちゃおうかなって」
ニコッとした笑顔で潰してしまった。
いや……怖すぎだろ……