シャングリラ・フロンティア〜死にゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:マンデラカタログ

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あけましておめでとうございます!
これからもめっちゃ気分ですがこの作品をよろしくお願いします!!


刹那に思いを込めて 其の十二

 

 墓守のウェザエモン。

 ほぼ全ての攻撃に対して怯み無効……所謂スーパーアーマーを持っており、さらには戦術機馬【騏驎】による撹乱、僅かな間しか観測できなかったとはいえ自壊をトリガーとする第3形態の存在からペンシルゴンは「時間経過によるウェザエモン自身の自滅」こそが攻略方法であると当たりをつけていた。

 

(最初の10分はウェザエモンから生き延びる、次の10分は騏驎にメンバーを割いて双方の合体阻止、そして全体攻撃をトリガーにウェザエモンに攻撃が通るようになるから攻勢に転じる……成る程こういう流れだったわけね)

 

「なんか狂人じみた笑い声が聞こえるんだけどあいつら大丈夫!?」

 

「高笑いが聞こえている間は大丈夫でしょ」

 

 実質無敵状態に等しい第2段階までのウェザエモン相手では活かすことができなかった追加効果付きの攻撃スキル。それが解禁された事で2人の生存率は上がっている……とペンシルゴンは見立てている。

 アレら(・・・)は逆境であればあるほどモチベーションとプレイヤースキルが跳ね上がる手合いだ。

 

「サンラク君も言ってたけど、こいつとウェザエモンを合流させたら多分詰む。ウェザエモンに攻撃が通るならこいつにもダメージが入るようになった……と思う」

 

「少なくとも2人掛かりで倒すような敵じゃないよね」

 

 墓守のウェザエモン本体が人型エネミーの臨界であるとするのなら、今の騏驎は極めてシンプルな……強敵としてのデザインだ。

 

「何回か殴ってみたけどさ、どうやらダメージが普通に入るみたいだよ。カッチカチだけど」

 

「……一応言っておくけど、危険を冒してまで倒す必要はないんだよ。ヘイトを稼いで死ななきゃ私達の役割は及第点」

 

「及第点…ね。でも……」

 

 そう言うとオイカッツォは「縄傀儡【蛇】」を発動し、麒麟の肋骨のような部位を縛りつける。

 

「どうせなら、満点取りたいよねぇ!ってうわぁ!?」

 

 しかし麒麟がオイカッツォの持つ縄を掴み、ブンブンっと振り回された後地面に叩きつけられHPが0になる。

 

「はぁ…全くこの3人は……」

 

 そう言うとペンシルゴンは再誕の涙球をオイカッツォに投げて蘇生する。

 

「やっぱ無理か…!びくともしない…!!」

 

「なら、コレあげる」

 

 そう言いながらペンシルゴンは、随分と寂しくなったインベントリから僅かに残ったアイテムを取り出す。

 

「はい」

 

「何これ?」

 

「「魔魂丸薬(イヴィル・フォース)」15分間だけ使用者のステータスを向上させることができる。現在のとオイカッツォ君でも実質レベル99ぐらいの能力になるんじゃないかな」

 

「レベル99!?何その神アイテム!?そんな隠し玉があるなら早く出してよ!」

 

 麒麟の攻撃を防ぎながらペンシルゴンが答える。

 

「酷い副作用(ペナルティ)があってね!昔私も使ったことあるけど、色々酷かった…!!」

 

副作用(ペナルティ)…」

 

「そりゃあ私だって散々やられてウンザリしてるんだ。満点取りたいんでしょ?だったらリスクを取る覚悟は「はむっ」…え?」

 

 ご丁寧に3つ用意された黒い丸薬の1つを受け取ったオイカッツォは躊躇うことなくそれを口の中に入れる。

 

副作用(ペナルティ)?問題ないね。スクラップにして花丸満点取ろうじゃんか!」

 

 そしてオイカッツォはその黒い丸薬をガリッという音と共に噛み砕いた。

 

「うおお!?な…なんか色が反転して見える…?耳も聞こえにくくなってるような……」

 

「他にも嗅覚や味覚もおかしくなってるはずだよ」

 

「これが副作用(ペナルティ)?まぁ…ちょっと変な感じだけど、想像してたより全然ましだね」

 

「いや…やばいのはそれらじゃなくて…30秒毎にレベルが1ずつダウンしていくんだよ」

 

「はぁあ!?レベルダウン!?」

 

 実質的な「30レベル消費」という重い制約を代償に、15分間限定で小学生でも最強になれる禁忌のドーピングアイテム。

 

「先に言えよぉぉぉ!!『デロ〜ン』あ、下がった」

 

「言う前に食べちゃうんだもん。因みに私は天秤の残りで能力アップ」

 

「おおーい!!」

 

 視覚的にあまり健康的ではないモンスターの、例えデータでもあまり触りたくない部位アイテムを調合した魔魂丸薬によってやけくそドーピングを行なったオイカッツォは、2人の……厳密にはサンラクとアラジオが戦っている墓守のウェザエモンの方へと向かおうとする騏驎甲冑へと駆け出す。

 

「クッソ、これが終わったらレベル20からやり直しぃ……!? あーもう怒った、サンドバッグにしてやるから覚悟しろロボットめ!!」

 

 人型という形を得たが故に、人と同じ弱点を抱えた騏驎甲冑。その脚部が地面を踏みしめた瞬間に、オイカッツォは拳に緋色の光を纏わせ関節を狙う。

 

「赤、黒……足して緋色! 混合拳気【火緋彩】! んでもってインファイトからの……デュアルインパクト!」

 

 赤よりも濃く、黒よりも明るい緋色の輝きを放つ左拳のジャブが騏驎甲冑の膝関節へと命中する。しかしその程度で揺らぐ程騏驎甲冑は軟弱ではない。それはオイカッツォも承知の上、左で殴りつけた場所に浮かび上がる十字状のマークを今度は渾身の力を込めた右拳のストレートで打ち抜く。

 

 次の瞬間、騏驎甲冑の膝関節に無色無熱の爆発が如き衝撃が襲いかかる。流石の巨体も膝関節にここまでの負荷を受ければノーリアクションとはいかない、騏驎甲冑は膝かっくんでも食らったかのように不自然な動きで体勢を崩す。

 

「スイッチ!」

 

「はいよ!」

 

 スイッチを切り替えるように場所を入れ替わったオイカッツォとペンシルゴン。その槍の穂先が狙うのは……オイカッツォが狙った膝関節。

 

「その膝、砕け散るまでイジメ倒してあげるよ!!「日差しの穂先(スピアオブサンレイズ)」!!」

 

 ペンシルゴンが握る槍には既に複数のエンチャント、天秤の残りのポイントでの能力アップ、そして自前の付与したバフで強化が重ねられた状態で傷口を抉るようにダメージを受けた騏驎甲冑の膝関節へと突き出された槍が帯びるエフェクトは、槍系スキルの中でも最上位に位置する「日差しの穂先(スピアオブサンレイズ)」。叩き込まれた攻撃が追い打ちをかけるように熱量を解放するが、それでもなお騏驎甲冑の膝関節が破損することはなかった。

 

「ダメージは通ったけど、やっぱり硬いなぁ…!」

 

 騏驎甲冑の背から発射された2人をホーミングするミサイルを回避し、オイカッツォとペンシルゴンはそれぞれの手段でそれらを回避する。

 その隙に立ち上がった騏驎甲冑は見せつけるようにペンシルゴンへと掌を向けると、そこから莫大な熱量と破壊力を内包したレーザーを放つ。

 

「やばっ」

 

「ペンシルゴン!!」

 

 身を捻ったペンシルゴンを熱線が襲う。天秤の残りの効果もあってか驚く事に即死しなかったペンシルゴンではあるが、その左腕は今にもポリゴンとして解けてしまいそうなほどに不安定になっている。

 

「そぉい!!」

 

「ええええ!?何でいきなり自害!?」

 

 思考は一瞬、器用に右腕だけで槍の穂先を自身へと向け、躊躇う事なくペンシルゴンは槍を自身の腹へと突き刺す。

 なけなしのHPが全損し、ペンシルゴンの身体がポリゴンとなる……前に、オイカッツォが投げた蘇生アイテムによってペンシルゴンは全快状態で復活する。

 

「遅いよ全く…何してんの?」

 

「いやこっちのセリフだから!?」

 

「槍使いが片手で戦えるわけないでしょ?蘇生すれば元通り」

 

「せめて合図してよね!?」

 

 インベントリから使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)を取り出し、その中に込められた雷撃の魔術を器用に騏驎甲冑の膝関節に叩き込みながら、ペンシルゴンは槍を携え走り出す。

 

「拳気「赤衝」、ハイストレングス、剛力充躯(ごうりきじゅうく)、……転べ!」

 

 縄傀儡【蛇】によって縄が騏驎甲冑の足へと巻きつき、ありったけのSTR強化を付与したオイカッツォが縄を騏驎甲冑の進行方向とは真逆へと引っ張る。膝かっくんとはまた異なる、さながら足を引っ掛けられたように体勢を崩した騏驎甲冑がうつ伏せに転倒し、その隙に2人の攻撃が叩き込まれるがびくともしない。

 

「ああもう、火力も手数も何もかもが足りない!」

 

「1つ案があるけど……聞く?」

 

 騏驎甲冑の掌から放たれる拡散型のレーザー掃射を最低限の被弾で対処しながら2人は改めてそれぞれの得物を構え直した。

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