ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution   作:D-delta

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第十話 斬艦の刃

「敵戦艦接近!」

「全隊、なんとしてでも死守しろ!」

 

 二隻の戦艦――セントエルモの港湾基地への接近。基地の砲台がほとんど破壊された今、恐れなく最大船速で接近してくる。しかも一時撤退した二機の敵ACがそれぞれセントエルモの直掩として甲板の上に乗っている。

 

「敵、寄ってくる」

「まだ敵の方に行くなよ、霧山。奴らがもっと接近してきてからだ」

「んな悠長にしている暇はないと思うよ。ヒュージミサイルがまた打ち上がってるんだから」

 

 接近と同時にセントエルモの攻撃は止まらない。

 再び二隻からヒュージミサイルが打ち上がる。

 

「フレイド、アルス、避けて。そっちに行ってる」

「霧山に当たらないからって次は俺たちかよ!」

「ちょっ、タンクで回避って結構キツいんだけどぉ!?」

 

 フレイド機とアルス機は回避行動を取った。

 ヒュージミサイルは命中精度を接近と同時に上げている一方、誘導支援がなくなった今は強烈な誘導性能がなく、焦る二人に反して回避は成功する。

 

「危ねぇ! 姐さん、大丈夫?」

「こっちは大丈夫だけど……敵の戦艦、なんか港湾基地に突っ込んでくるよ」

 

 二隻のセントエルモは最大船速を保ち、もはや基地に着港してくる勢い。

 

「敵、取り付く気だね」

「でも取り付いて来たら攻撃のチャンスだ。寄ってきたことを後悔させてやろうぜ」

「そうだね」

 

 近距離戦闘に持ち込む気なのか、敵艦はヒュージミサイルの次弾は出さずに港湾基地に着港レベルで接近してきた。

 彼我の距離はもう陸に近く、ACで陸からジャンプすれば接近戦に持ち込めるほど。

 

「敵艦の野郎、ナメやがって!」

「歓迎してやれ!」

 

 ヒュージミサイルの攻撃から身を隠していた防衛隊の残存機が出て、迎撃開始。

 二隻のセントエルモと防衛隊の撃ち合いが始まる。

 

「始まったよ、フレイド」

「だな、霧山。味方がドンパチ始めちまったし、俺たちもやるぞ」

「分かった」

「ちょっとアタシも忘れないでよ」

 

 味方が戦闘を始めたところで霧山機とフレイド機はセントエルモへと接近。その後ろを追いかけるように足の遅いアルス機が付いていく。

 

「斬る」

「まずは直掩を無視して艦橋だ!」

 

 戦艦の頭たる艦橋を霧山とフレイドは狙う。が、それを易々と許してくれはしない。

 ハリネズミの如くセントエルモに多数搭載されたCIWSの矛先が二人の機体に向き、発砲される。

 

「くっ、なんて弾幕と衝撃だ!」

 

 接近を全力で拒む高衝撃弾のCIWS。接近するフレイド機を高衝撃弾の弾幕で一気に遠のかせる。

 

「斬れ、ないっ!?」

 

 霧山機も同じくCIWSにやられる。

 斬ろうとして通常のACよりも遥かに速い超機動を繰り出しても、セントエルモのCIWSはそれすら捉えて一気に遠のかせられる。

 

「二人共、ACと艦砲が向いてる! 早く立て直して!」

「霧山、一回下がれ!」

「もうやってる!」

 

 高衝撃弾に動きを固められ、距離を強制的に離されたところに向けられるセントエルモの艦砲――スナイパーキャノンとACの銃口。

 アルスの声で二人は即座に判断し、敵弾を浴びる前に周辺の建物に隠れて射線を切る。

 

「クソ……とんでもねぇ衝撃の暴力だった。あれ、どうするよ」

「俺の刃は届かなかった。斬るために、盾になる囮が欲しい」

「盾と囮? だったらUNACが使えるかも。バーンズに要請してみる」

 

 すかさずの要請。

 防衛隊の数は今も減り続けており、もたもたはしていられない。

 

「バーンズ、敵艦に有効打を与えられない。UNACの制御をこちらに回して。有効打を与えるための囮にする」

「ダメだ、アルス」

「は?」

「ダメだと言った」

 

 自分たちの命が危うく、任務が失敗するかもしれないという時に要請が拒否された。

 これにはフレイドもアルスも耳を疑う。

 

「どうしてです、バーンズ指揮官! あんたは俺らの命を預かる指揮官でしょ!?」

「フレイド、私は力がもっと見たい。だからUNACは後方に待機させる。助かりたいならば力を示せ」

 

 フレイドがなにを言おうと要請は拒否。通信は閉じられた。

 

「バーンズの野郎、この期に及んでマジで正気じゃねえ!」

「でもバーンズ指揮官は本気だよ、姐さん。力を示さないと生き残れない」

 

 UNACの制御を握るバーンズが拒否した以上、UNACを囮には使えない。

 それでもまだ選択肢はある。

 

「霧山、俺が囮になる。その間に敵艦を斬り倒してくれ」

「……必ず生き残ってね、約束」

「あぁ……必ずな!」

 

 フレイドに残った選択肢。それは自らの機体を囮にすること。

 UNACが使えないのであれば、こうするしかない。

 

「ちょっとぉ、アタシを忘れないでよね? 囮をやるなら一緒に行ってやるんだから」

「死ぬかもしれないよ、姐さん」

「アタシとフレイドはもうそういう仲でしょ? 隣で死ねるなら本望だよん」

 

 でも囮は一人だけじゃない。アルスも囮になることを選んだ。

 

「小僧、嬢ちゃん、通信越しに事情は全て聞いた。この老いぼれの援護で囮を生かしてみせよう」

「じいちゃん!」

 

 そして囮だけではない。スナイパーキャノンを両腕部に持って戻ってきた、ユキムラ機が援護役になる。

 

「みんな揃ったね。じゃあ、斬り倒しに行こう!」

「おう、霧山!」

「オッケー!」

「うむ」

 

 役者は揃った。

 今度は四人全員で二隻のセントエルモに挑む。

 

「姐さん、片方の戦艦の気を引いて。その間に俺と霧山でもう片方を沈めてみせるから」

「あいよ!」

 

 一人一隻ずつで囮を決行。霧山機はフレイド機の方に付いていく。

 

「こっちは直掩機を仕留める」

「任せたよ、じいちゃん!」

 

 三人がセントエルモと撃ち合う前にスナイパーキャノンでの援護が放たれ、セントエルモの上に居座る直掩の敵ACに直撃。

 その後何度もスナイパーキャノンでの援護が続く間に、三人のACは身を隠しながらセントエルモに接近。彼我の距離は既に互いの射程内である。

 

「今だ、行け! 霧山、俺が盾になる間に……!」

「もちろん斬るよ!」

 

 アルス機とフレイド機はセントエルモの正面へと飛び出した。

 この囮の二機に対し敵は迎撃する。が、主砲の配置のせいでCIWSの射角が届かず、しかも直掩のACが邪魔で主砲が撃てないという状況。

 狙い通り以上の展開となり、直掩のACに迎撃されるフレイド機の後ろから霧山機が飛び出して敵艦の甲板に取り付いた。

 

「好機は掴んだ。後は小僧たちと共に押し込むのみ」

 

 霧山機が取り付いたのを見て、すかさずユキムラは援護。霧山機の目の前にいる直掩の敵ACにスナイパーキャノンを撃ち込み、撃破する。

 これで取り付いてきた霧山機にセントエルモは成す術がない。主砲たるスナイパーキャノンを撃とうとも直掩のACの残骸が邪魔して手も出ない。

 

「斬れる、今なら!」

 

 またとないチャンス。

 敵ACの残骸を押して盾としながら主砲との距離を詰めた。

 

「斬るっ!」

 

 主砲との距離はゼロ距離。盾にした残骸を三つある主砲の内中央の一つに押し付け、残る左右二つをその刃で斬る。

 

「斬り倒す!」

 

 主砲は機敏に動く霧山機に当たらず、成す術なく斬り付けられていくのみ。

 そうやって斬撃は繰り返されて主砲は中央以外全て破壊。正面が完全に無防備になった。

 

「正面が意外と手薄なんだな。だったら!」

 

 これをフレイドは見逃さずにセントエルモの船体にブーストチャージ。

 重量二脚の重量を乗せた蹴りと霧山の斬撃がセントエルモの船体を損傷させ、内部の弾薬が損傷の影響で誘爆。ダメージが各部にまで回って浸水が始まる。

 

「斬ったぁぁぁ!」

「よし、よし! 撃破!」

 

 セントエルモの各部で爆発。船体が傾いて沈んでいく。

 一隻目の撃沈である。

 

「次! 姐さん、状況は?」

「直掩は撃破したけど、こっちはもうキツイかも……!」

 

――稼働限界まで僅かです 回避してください

 

 データリンクで共有される、アルス機の損傷具合は危険域。

 これ以上被弾すればどうなるか分からない。

 

「アルスはもう下がって」

「姐さん、後は俺たちでやるから!」

「ごめん! 後退するわ!」

 

 アルス機は被弾しないように下がり、入れ違いでフレイド機と霧山機が前進。再び正面から残る一隻のセントエルモに挑む。

 

「霧山! さっきと同じように!」

「分かってる。任せて」

 

 やることは同じ。フレイド機が囮となり、霧山機がその後ろから飛び出す。

 そこからセントエルモの甲板の上に残ったままの直掩たる敵ACの残骸を利用。先ほどと同じように中央の主砲に残骸を押し付けて残る左右の主砲を斬る。

 

「もう一度!」

 

 左右の主砲の破壊。中央の主砲は残骸を利用して無力化。

 再び正面が無防備となり、ブーストチャージと実体ブレードでの斬撃でセントエルモを損傷させて、またも誘爆。

 しかし今度は各部で起きる爆発と振動が大きい。

 

「フレイド、爆発するよ」

「離れろ! 花火みたいになるぜ!」

 

 爆発に巻き込まれる前に行動不能のセントエルモから離れた。

 そして起きる大爆発。外側から見ても分かる連鎖的な爆発がヒュージミサイルの誘爆を引き起こし、二隻目のセントエルモは派手に吹き飛んで撃沈となる。

 

「ふぅ……なんとか、やれたな」

「みんなの力があってこそだね。俺一人ではたぶん無理だった」

「あぁ。霧山も含めて、みんなの力あってこそだ」

 

 残る敵は遠くの海上にいる輸送艦のみ。

 もちろん戦える力はなく、輸送艦の集団は撤退。地平線の向こう側へと去っていく。

 

「敵、撤退を開始。我々の勝利です」

 

 大型ヘリのオペレーターが告げる勝利。もはや敵はいない。

 だが、勝利を得た霧山たちの後ろで機械の目は赤く輝く。まるで血を求めるが如く。

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