ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution   作:D-delta

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第十一話 変わる日常

 防衛対象の港湾基地を襲撃したシリウス艦隊の迎撃。

 敵AC部隊の壊滅と二隻のセントエルモの破壊によって作戦は成功した。

 彼らは勝利を得た。港湾基地の防衛隊が通信越しに歓喜を上げる。

 

「特務隊、よくやってくれた。貴官らの多大なる助力に感謝する」

 

 霧山たち特務隊に送られる防衛隊指揮官の感謝の言葉。そこから次から次に感謝の言葉が来る。

 そうやって基地内は勝利の歓喜に包まれた。

 

「流石だ、霧山。やはりその力、ゆくゆくはヴェニデの……」

 

 歓喜に乗って霧山に送られる、バーンズの感動と拍手。

 

「はぁ……バーンズ指揮官はこれだ。指揮官に代わって通達、全機帰還するぞ」

「待て、UNACが動いている」

 

 しかし歓喜と拍手の後ろで人の乗らないUNACは人の手を離れ始める。

 

「UNACが動いている? 誰かUNACを確認しろ」

「了解」

 

 バーンズ率いる特務隊の大型ヘリ群の内一機がUNACの様子を見るのに近付く。

 赤く灯る機械の目。近付く大型ヘリのパイロットと目が合った。

 

「っ――」

「攻撃! 自軍UNACから攻撃です!」

「味方ヘリ撃墜!」

 

 始まるのは意図的な誤射、敵意を持った攻撃。

 UNAC三機から集中砲火を受けた大型ヘリは墜落する。

 

「バーンズ指揮官! まさか力を示すだとか、そんなことのために我々まで……!」

「いや、これは私ではない。こちらで制御を試してみる」

 

 UNACの暴走。大型ヘリ一機だけでは飽き足らず、次の味方大型ヘリを狙って近付く。

 その間にバーンズは制御を試みるが「制御出来ない?」と告げる。

 

「バーンズ! 今度はそっちでなにやってんの?」

「UNACが暴走した。各機は対処しろ」

「暴走?」

 

 既にUNACは人間の手を離れた。

 なにをどうしようとも人間の制御下に戻らず、無差別に敵対してくる。

 

「どうして急に暴走なんか……」

「フレイド行くよ。機体は、あの機械たちを敵と言っているんだから」

「そうだな。とりあえず対処するぞ、霧山」

 

 霧山とフレイドは暴走するUNACに対処を開始。

 大型ヘリを執拗に追いかける、その背後に接近。攻撃を仕掛けようとした時――

 

≪このタイミングでか、つまらん≫

 

 暴走するUNACの一機が接近中の霧山たちとは違う方向からの攻撃で撃破された。

 

「今の一体なんだ?」

「フレイド、右前方の岩陰。よく分からない奴がいる」

「あ、あの機体……!」

 

 岩陰から現れる赤と黒の機体。

 グライドブーストにハイブーストを織り交ぜた高速機動でUNAC二機に急接近。そのまま左腕部の三日月状のレーザーブレードで二機目を斬り溶かす。

 

「死神部隊!?」

 

 死神部隊と称された部隊のAC。通常のACと違い、大幅に改造されたショルダーユニットのキャノンとオートキャノンで最後のUNACを粉砕する。

 これで暴走したUNACは全滅。沈黙した。

 

≪しかし彼の力はしっかり見ることが出来た。最初期の失敗作とはいえ、予測よりも力を発揮している。その理由は解き放たれたから、か……≫

 

 死神部隊のACがUNACを撃破したと思えば、今度は霧山機をじっくり見つめる。

 

≪いずれ分かるだろう、剣豪よ≫

 

 そして撤退。死神は誰にも聞こえない独り事を口にして去っていく。

 

「バーンズ指揮官……死神部隊に、UNACの暴走、一体どういうことなんです?」

「私にも分からない、フレイド」

「それは本当ですか? こっちは命からがらなのに、あんな正気じゃない行動をして……!」

「本当だ。今起きた現実以上に分かることはなに一つない」

 

 原因の分からない暴走。目的不明で戦場に現れる死神部隊の出現。

 力を見たいがために正気でない行動をしたバーンズを疑い、追及したとしても、分かるのはなにも分からないということだけ。

 

「まずは帰還だ。このUNAC暴走と死神部隊の出現を戦略統括局に報告しなければならない」

「なにも分からずか……了解です、指揮官」

 

 状況は変わり行く。

 霧山たち特務隊は帰還を急ぐ。

 

  ※

 

 UNAC暴走から数日。

 状況は変わった。

 港湾基地防衛でのUNAC暴走と同様の暴走は各所でも起きており、これまで三大勢力間の争いで積極投入されていたUNACの運用は停止。暴走するUNACの対処と暴走の解析が急がれていた。

 

「姐さん、そっちはどう?」

「んー三大勢力間で共有されたUNAC暴走の報告を要約すると、どうやら財団から供与された三大勢力用のUNACだけが暴走しているみたい」

「まさか財団が仕掛けたってこと?」

「かもね? 暴走しているのが財団供与のUNACだけだし、供与元の財団はだんまりを決め込んでるから」

 

 一つの端末画面を二人で見るフレイドとアルス。第23支部特務隊でも共有されたネットワーク上の情報を集め、暴走したUNACの原因を調べていた。

 

「フレイド、アルス、お水」

「おっ悪いな、霧山」

「おほー助かる」

 

 霧山が持ってくるペットボトルに入った水。

 フレイドとアルスは受け取り、水を飲んで頭を冷やす。

 頭を冷やせば、また頭を使いながら手を動かした。

 

「さてさて、どこか良い情報は……あ、ユーラヌスって子が暴走UNACのことでなにか情報出してる」

「そのユーラヌスはなんて?」

「サイトに飛ぶからちょっと待ってよ」

 

 アルスはタッチパネル操作で情報端末の画面を動かし、サイトにアクセス。

 そうして画面上に出てくるのは前置きの挨拶分と財団供与の三大勢力用UNACのオペレーション図。図の中にある制御チップで問題のある部分が赤丸で囲われていた。

 

「なるほどね」

「どういうこと?」

「右に同じく」

 

 アルスが理解する一方で霧山とフレイドにはよく分からない。

 

「解説にさっと目を通したけど、この赤丸で示されたこれ、UNACの暴走を促す時限式のウイルスだってさ。つまり財団が供与したUNACのオペレーションは毒入りだったってこと」

「じゃあ財団供与の三大勢力用UNAC以外は大丈夫ってこと?」

「そういうことみたいね。このユーラヌスって子のUNACとか、財団以外で組まれた独自のオペレーションのUNACはどこも暴走してないから」

 

 文面のみの解説に口での解説を重ねて、霧山もフレイドも仕組みをようやく理解。

 UNAC暴走の原因が財団と呼ばれる技術提供者だと確信もする。

 

「んじゃ原因も大体突き止めてこれたし、これバーンズに報告してくるわ」

「俺も行くよ。バーンズ指揮官、最近おかしいし」

「……俺も行く。念のために」

「はいはい。じゃあみんなして行くよ」

 

 バーンズを警戒し、三人全員で報告をしに指揮官室に出向く。

 

  ※

 

 指揮官室にて。

 三人固まって指揮官室に居座るバーンズと対面。

 

「UNAC暴走の仕組み、原因と思われるものの特定の報告ご苦労」

 

 アルスの口から全て説明され、バーンズはいつもの淡泊な様子で労いを告げる。

 

「あいよ。じゃあアタシたちはこれで失礼――」

「待て。丁度良く霧山を連れて来たのだから、私と霧山を二人きりにさせてもらないか?」

 

 また様子のおかしい一面が現れだした。

 それまで淡泊な様子だった表情に笑みが浮かぶ。

 

「霧山になにをする気です?」

「なにも。ただ話すだけだ」

 

 警戒するフレイド。バーンズは腹の内になにか隠している。

 

「はぁ……バーンズ、霧山にセクハラしたらぶっ殺すから。分かった?」

「そんなことはしない。誓おう」

 

 その言葉の全部を信じられない。

 

「霧山、アタシたち外で待っているから。ヤバかったらすぐ逃げて来てよ」

「気を付けろよ」

 

 だからバーンズに聞こえないようにコソコソと助言を残し、アルスとフレイドは指揮官室を出ていく。

 これで霧山とバーンズは二人きりだ。

 

「ようやく二人きりになれたな」

「うん」

「フ、君と話したいことはたくさんある。これまでの戦績、君の力、君と私とヴェニデの未来、様々だ!」

 

 普段の淡泊な様子から一変、バーンズは満面の笑みで高揚。身振り手振りで話し始める。

 

「エスパーダ部隊の迎撃、十二機のUNACを一人で相手取った時、今回の対艦戦闘、どれも君は素晴らしい力を発揮した!」

「俺は敵を殺しただけ」

「それでもだ! 君の力がなければアルスもフレイドも、この私も既に生きてはいなかっただろう。みんなの力があってのことじゃない。君の力があってこそなんだ!」

 

 高揚して語るバーンズに対して霧山は首を傾げた。

 

「分かってないのか? 君は素晴らしいんだ……そして君ならば、かつてのヴェニデ創設者たるセサル・ヴェニデに匹敵出来る! 再来となれるのだよ!」

「俺には分からない。別に匹敵する必要はないと思っている」

「なにを言っている、君ならば匹敵するんだよ! 君こそがヴェニデとなれるのだ!」

 

 バーンズの様子はまるで狂いを隠してきた狂信者。

 話に興味のない霧山の両肩を強く掴んで、話す口は力強さを増していく。

 

「君なら世界を、ヴェニデを正しき姿に戻せる。かつてセサル・ヴェニデが存命していた頃のように、その絶大な力で全ての人を従えるのだ。そして私は君のそういった力を見ることで人生に充足が生まれる。想像するだけでも最高の気分だ!」

 

 身振り手振りの話し方も次第に大袈裟になっていき、高揚が落ちることはない。

 正体を現したが如く常にハイテンション。

 冷静で淡泊だった様子は見る影もない。

 

「……俺はそろそろ戻るよ?」

「ダメだ! 君は大切な存在なのだからな!」

「俺が大切なのはフレイドとアルス、後はおじいちゃん。他はどうでもいい」

「どうでも良くない! 私の大切な存在となれ、霧山ぁ!!」

 

 バーンズの理想通りになろうとしない霧山。

 途端にバーンズは怒鳴り、理想通りになれと言わんばかりの怒りの形相で霧山を見つめる。

 

「バーンズ!」

「失礼します、指揮官」

 

 もちろん怒鳴り声は指揮官室の外にまで届いており、アルスとフレイドは異常を感じて指揮官室に入ってきた。

 

「霧山となにしてたのかは知らないけど、もう霧山連れてくから」

「それは私が許可しない! 彼には力があるのだから!」

「指揮官の許可がなくても霧山は連れて行きます。では失礼します」

 

 二人は霧山の手を引っ張り、バーンズの許可など無視して強引に指揮官室から退出。

 

「霧山、大丈夫か?」

「大丈夫。怪我もないよ」

「フレイド、霧山、ヴェニデから抜けよう。やっぱりバーンズの野郎は正気じゃないわ」

 

 そこからアルスはヴェニデからの離脱を口に出す。

 これに対して霧山は「いいね」とヴェニデ離脱に賛成。

 

「そうだね。あんな指揮官の下で働いていたら命が足りないし、霧山になにかあるのも嫌だしな」

「オッケー。じゃあ行こう」

 

 フレイドも離脱に賛成。三人の意思はヴェニデ離脱で固まり、そのままの足取りで格納庫まで急ぐ。

 戦いの日常は今まさに戦局と共に変わろうとしていた。




唐突なバーンズのキャラ変かと思いきや、伏線はあちこちに張ってあったりする
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