ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution   作:D-delta

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第十二話 脱走

 UNAC暴走の背後で動く財団。

 変わろうとする世界。

 変わろうとする日常。

 世界が誰かの望む破滅への変容を遂げようとする中、霧山とフレイド、アルスの三人はバーンズ率いる特務隊とヴェニデからの離脱を急ぐ。

 

「二人共、機体の整備も弾薬も万全だから、すぐ乗り込んで脱走しちゃおう」

「了解、姐さん」

「うん」

 

 そそくさと格納庫へ来た三人。

 機体の整備や弾薬の補充は万全で整備員はもちろんのこと、格納庫内にいるのは一人しかいない。

 

「どこへ行く気だ?」

 

 その格納庫内にいる、たった一人――ユキムラは静かな格納庫内に声を響かせて問う。

 

「おじいちゃん」

「じいちゃん、悪い! 俺たちは……!」

 

 ヴェニデ離脱を直接は言わないフレイド。

 ユキムラはその言動から察して「付き合おう」と一言だけ告げた。

 

「おじいちゃん、俺たちと来るの?」

「あぁ……気がおかしくなった指揮官の下で死ぬくらいなら小僧たちと共に戦って、今まで竹鉄槍と共にしぶとく生き残ってきた人生の最後を飾ろうと思ってな……」

 

 語られる心境。

 言葉は続いて――

 

「好きなように生き、好きなように死ぬ……かつて言われた言葉だ。だから自分の選んだ道に迷いはない。小僧たちはどうだ?」

 

 三人に向けられた最終確認。

 それに対して三人は即座に首を縦に振り、迷いがないことを言葉にせず示した。

 

「では行くとしよう」

 

 後は全員揃って基地から去るだけ。

 ユキムラも含めた四人は誰の許可もなく自身の意思でそれぞれのACに乗り込み、機体を起動する。

 

「各機、機体チェック。どう?」

「行けるよ、アルス」

「右に同じく!」

「旅立つには良い日だ」

 

 全機異常なし。機体も武装も万全な状態で正常に稼働出来ている。

 

「よーし、全機戦闘モード起動! データリンク忘れずに!」

 

――AMS作動 メインシステム 戦闘モード起動

 

 戦闘モード起動と同時に作動するAMS。

 そのAMSを通して、再び機体システムが霧山の殺意を最高潮に引き上げる。

 

「斬る、じゃない……今は!」

 

 相反する自己意識と植え付けられた使命。操縦桿を握る手がどうするかを迷う。

 今の目的はこの基地を出ること、ヴェニデを離脱すること。頭の中に巡る敵の発見と殺害は今やるべきことではない。

 

「大丈夫か、霧山!」

「まさかAMSってのにやられた? 返事出来る?」

 

 通信越しに聞こえてくるフレイドとアルスの声。二人の機体が先に動いているのに対して、霧山は自分の意思だけで殺意と使命に逆らって動けない。

 

「俺に、命令をくれ」

 

 だから機械が命令を受けて動くように、他人からの命令を欲した。

 

「命令?」

「殺すのを抑えている、今の内に……」

「特殊システム、AMSってのせいか……分かった! ここを脱出する、俺と一緒に行くぞ!」

「ありがとう。行こう!」

 

 聞こえてくる友の声、フレイドからの命令。

 それが機体システムから流れてくる殺意も使命も全て抑えて、霧山の手も機体もようやく動く。

 

「脱走経路は? いつもの縦穴からだと姐さんのタンクじゃ上昇力キツそうだけど」

「ふん、そういう時のために別の出入り口があんのよ。付いてらっしゃい!」

 

 そうしてアルス機を筆頭に格納庫を出て、全機揃って基地の通路を駆ける。

 出撃の命令もなにもない時にACが動いている。通路を駆ける霧山たちのACに違和感を覚えた兵士たちは途端に警報を鳴らした。

 

「バレたね」

「バレても突破するだけだ」

 

 鳴り響く警報は無視。鳴らされたところで脱走中の霧山たち四機のAC以外に出動出来る戦力は大型ヘリくらいしかおらず、地下という閉所では動けない。

 

「ここ、迎撃用の出撃ハッチ! 開けるから待ってて!」

 

 そして迎撃用と称された出撃ハッチに到着。

 出撃ハッチ開閉の端末を操作しようと、アルスは機体を降りる。

 

「霧山、姐さんの援護をする。寄ってくる奴を片っ端から殺していけ!」

「任せて」

 

 アルスは壁面に固定された端末を操作。出撃ハッチの開閉作業を行っている姿はまさに無防備。しかもそこに銃火器で武装した兵士たちが寄ってくる。

 

「来た!」

 

 システムが敵と認識した基地の兵士たちの前に霧山機は飛び出す。

 対して基地の兵士たちも霧山を敵と認識。銃口を向けてくる。

 

「斬る」

 

 既に味方ではなく互いに敵。

 男性だろうが女性だろうが遠慮はなく、晴陽に搭載された実体ブレードで生身の兵士を真っ二つにして斬り殺していく。

 

「相変わらず、すげぇ……」

 

 一人、また一人と真っ二つ。巻き上がる血でべっとりと壁を汚す。

 フレイドの援護が必要ないほど次々死体が出来上がっていった。

 

「オッケー! 出撃ハッチ開くよ!」

 

 端末の操作を終えた。アルスは機体に戻り、地下から地上へと続く出撃ハッチが開く。

 

「霧山、行くぞ!」

「分かった」

 

 見える地上の光。

 ハッチから刺し込む光に照らされながら霧山たちの機体は地上へ駆ける。

 

「こっからは暴走してる野良UNACがいるかもしれないから気を付けて!」

 

 そして地上へ出た。

 太陽が照らす地上。後ろから追いかけてくる者はない反面、地上では謎のACが単機で基地の近くをうろついている。

 

「噂をすれば、か……?」

 

 すかさずスキャンモードで対象をスキャン。

 

「噂をすればだったな」

 

 スキャンの結果、うろつくACはUNAC。この機体も暴走しており、霧山たちを発見すると銃口を向けながら接近してきた。

 

「敵だよね?」

「敵だ、やっちまえ!」

「斬る!」

 

 フレイドの指示を受けて霧山は暴走UNACに攻撃開始。

 敵に一気に接近、敵弾が発砲された一瞬を狙って背後に回り込み、加速したまま敵の背面に斬撃を当てる。

 重たく鋭い一撃。暴走UNACが元から損傷していたのもあり、たったの一撃で稼働を停止させた。

 

「斬った」

「良くやった、流石だぜ!」

「これくらいは簡単だよ」

 

 褒められ、霧山に段々と嬉しいが混ざる。気分が良い。

 感情をもっとフレイドの前ではたくさん出したいという気持ちも強くなる。

 

「お邪魔も片付いたことだし、行こっか」

「姐さんには当てがあるの?」

「当てなんかないよん! ただ単に独立傭兵として再出発ってだけ!」

「あ、そういえば姐さんは元々独立傭兵だったね」

 

 脱走の後は無計画。

 ヴェニデを抜け出し、行き当たりばったりの傭兵生活に早変わり。

 しかし生き残る手段は知っている。

 

「とりあえずは傭兵としてがんばろう! アタシが一人の時と違って、今度はみんなと楽しくね!」

 

 傭兵としての仕事をこなすこと。

 それが生き残る手段。

 生き残ることに力を尽くす新しい日常が始まる。

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