ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution 作:D-delta
傭兵としての最初の戦い。
霧山たちは自機のコックピットに戻り、モニター越しにブリーフィングが始まる。
「こちらはヴェニデ第23支部防衛隊16の副指揮官、ハートマン・アンダーソンだ。君たちに与えられる仕事は二つ。予定防衛地点にて暴走した多数のUNACの侵攻阻止、我々の基地脱出までの時間稼ぎとなる」
ハートマンと名乗る副指揮官からの通信。
そしてモニターに映る、送られてきた作戦データ。
谷の間に作られた基地と周辺の地形、敵の予測進攻ルートと予定防衛地点が表示される。
「作戦は我々の基地脱出を以て成功とする。以上だ」
「脱出に掛かる時間は?」
「状況は流動的だ。詳細と作戦中止の判断は君たちの現着時に伝える」
状況がどう変わるかは分からない。
だからフレイドの質問に対して詳細なことは伝えられなかった。
「ヴェニデから脱走し、傭兵となった君たちを使うのは不本意だが、今は選り好み出来る状況ではない。作戦の完遂を期待する。通信終了」
こうしてブリーフィングは簡潔に終了。ハートマンからの通信は切れた。
「これ、遅れると危険かも?」
「そうであろうな。事によっては壊滅状態の現場で得にもならない戦いを強いられることになる」
霧山とユキムラの危惧。それが現実になれば報酬が貰えない上に不要な消耗をしてしまうだろう。
「俺たちの報酬のためにも、善は急げだな」
「じゃあすぐ出発だね。行くよ!」
危惧を現実のものにしないために霧山たちは即出発。
機体のブースターを出力全開で移動。四人は作戦地域に向かう。
※
移動から約二時間後。
谷の間に存在する第23支部防衛隊16の防衛基地にて。
「第23支部防衛隊16、あなた方の助っ人傭兵でーす」
「こちらは第23支部防衛隊16のハートマン。来たか、脱走兵共」
霧山たちは作戦地域に到着。アルスが気軽に呼び掛け、ハートマンが厳格な雰囲気で答える。
「ハートマン副指揮官、状況は?」
「今は暴走UNACの進攻が緩やかで人手を脱出作業に集中出来ているが、我々は消耗している。次の襲撃が来れば到底耐えられないだろう」
フレイドの確認に答えるハートマン。
基地内には迎撃されたと思しきUNACの残骸がある。数は全部で四機。同時に防衛隊16の戦力である兵器の残骸もあり、UNACの倍以上を消耗していた。
「だから君たちを雇う。報酬はもちろん支払おう」
防衛隊16だけでは力が足りず、霧山たち四人を雇うことが確定。
「オッケー、雇われた! 全機戦闘モードで待機。敵が来たら仕事を果たすよ!」
「傭兵として再出発した一発目の仕事だ!」
「再びの傭兵。やってみせよう」
暴走UNACに備えて霧山たち全機は戦闘モードを起動。
――AMS作動 メインシステム 戦闘モード起動
「くぅ……敵を斬るだけじゃダメだ」
機体の戦闘モード起動と同時にAMSを通して再び殺意が高まる。
殺意のままに敵の斬り殺すだけでは誰も守れない。
仲間を活かし、守るためには連携することが大事。霧山はそれを分かっているが、意識が殺意に流されるのを止められない。
「フレイド! 俺に命令を、くれ!」
「またAMSに……霧山、命令だ。俺たちと連携して耳を傾けろ」
「……ごめん。ありがとう」
「別にいいさ。厳しくなって来たら、俺を頼れ」
「うん、助かる」
霧山の耳に届くフレイドの命令。すんなり頭の中に入ってきて、高まる殺意を命令で上書きしてくれる。
これで殺意に染まり切らずに頭を動かせる。
「フレイド、敵影は?」
「こちらでは見えないな。ハートマン副指揮官、敵の捕捉は?」
「遠方に一機から二機、敵影を確認。まだこちらには来ていない」
確認に次ぐ確認。結果、敵はまだ来ない。
「敵が来るまで暇になるね」
「暇のまま終わるなら、それに越したことはないさ」
「それもそうだね」
敵の来ない間に霧山とフレイドは雑談を始める。
そんな後ろで、基地から輸送ヘリ一機が飛び立った。
「今の機体で予定の半数が脱出。そのまま警戒せよ」
輸送ヘリは離陸後、作戦地域を離脱。
これでハートマンの言葉通りに残るは半数。大小ある様々なヘリに物資を積み込む作業はまだ完全に終わっていない。
「そういえば、フレイドはなんでヴェニデに入ったの?」
「あ、それアタシも聞きたい」
霧山とアルスが興味を持って聞く。
それに対してフレイドは「別に特別なことじゃないさ」とハッキリとした理由は言わない。
「言いにくい?」
「まぁ……言いにくい、かな。笑われそうだし」
なにか恥ずかしい理由で隠したがっている。
「笑わないよ」
「アタシも笑わないよ、絶対」
「じゃ、じゃあ言うぞ、ヴェニデに入った理由……絶対に笑うなよ!」
フレイドは二人の笑わないという言葉を信じて、ようやくヴェニデに入った理由を話そうと口を開く。
「俺は、俺の家族は、周りもみんな賤民だった。戦う力がなくて、戦闘に巻き込まれた時は兵士の誰からも助けてもらえなくてさ……戦闘から上手く隠れた俺以外みんな死んだ。だから俺は誰も助けない賤民たちを助けたいと思って、ヴェニデに入ったのさ」
力を手に入れて、自分と同じ境遇の力なき者を救う。
それがヴェニデに入った理由。
力ある者が支配し、力なき者から搾取するヴェニデの思想とは相容れない考えである。
「笑えるだろう? 賤民のみんなを助けたいと思いながらヴェニデに入るなんてさ……おまけに何年も戦闘が怖くて入るのを躊躇う始末だったんだぜ」
「笑わないよ。ACとか、力を手に入れるのに必要だったんだよね?」
「……まぁな。でも、もう諦めたことだ」
ヴェニデから離れた今となって賤民を救うなど夢のまた夢。
ヴェニデに所属していた時でさえ救う機会はなく、賤民を救うために反抗組織のエスパーダに入ったとしても、三大勢力の一つであるヴェニデと戦って生き残れる自信はフレイドにはなかった。
「こちらハートマン、基地に接近する所属不明機を確認」
「フレイド、所属不明機だって」
「敵か? ハートマン副指揮官、所属不明機とは?」
話を断ち切る唐突な報告。
霧山たち四人は頭を切り替えて会話を雑談から作戦中の確認に変える。
「違う、所属不明機ではない。噂に聞く死神部隊だ。攻撃を受けながら多数のUNACを引き連れている」
「死神部隊!? 死神部隊とUNACの数は?」
「死神部隊は一機、UNACは十機以上が存在」
死神がここに来る。しかも十機以上のUNACを連れて。
暇なひと時は一気に崩れて緊張が走る。
「どういうことだ、死神……港湾基地でもそうだ、なにが目的で来るんだ?」
なぜ港湾基地に死神部隊がいたのか。なぜここでこの基地に来るのか。
フレイドが呟いたところで目的は分からないままだ。
「まぁいい。全機行くぞ、防衛隊16の脱出に支障が出る前に片付ける!」
「分かった、フレイド」
「あいさー!」
「小僧共に続く」
フレイドを筆頭に全機で敵の進攻ルートに向かう。
死神が連れてくるUNACという荒波。
四人は押し寄せる死に挑む。
次回、荒波の中の死神
お楽しみに