ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution   作:D-delta

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今回は戦闘回
いつもよりちょっと長いよ


第十五話 荒波の中の死神

 基地に近付く轟音と発砲音。目視で見える大きい土煙。

 

「近いな」

 

 四人はUNACという荒波を待っている。敵の進攻ルートで待ち構えながら。

 

「死神部隊は味方だと思う?」

「分からない。港湾基地で現れた死神部隊は助けに来たというよりも、隠れていたところをなにかの事情でUNACを倒すことになったっていう感じだったから」

 

 霧山の質問にフレイドは答える。

 死神部隊の目的が分からない以上は味方になってくれるという期待は出来ない。

 

「小僧共、来たぞ」

 

 前方の曲がり角に土煙が接近。全員が目視出来る範囲に暴走したUNACの集団が姿を現す。

 

「あれ? 死神部隊がいない?」

 

 しかしそこに死神部隊の機影はなかった。

 

「まさか姿を消した?」

「まぁ気になるけど、今は目の前に集中した方がいいんじゃない?」

「そうだけど……」

 

 霧山もフレイドも姿を消した死神部隊を気にするが、今はアルスの言葉通りに接近中の暴走UNACの集団を相手にする方が先である。

 

「仕方ない。今は目の前の敵を片付ける、行くぞ!」

 

 死神が消えた、押し寄せる暴走UNACの荒波。

 霧山たちは荒波に挑む。

 

「斬る!」

「こちらも行こう」

 

 先行する霧山機とユキムラ機。距離は既に敵の射程距離。

 暴走UNACのハンドガンとパルスマシンガンの閃光が最初に戦場に走る。一機二機と暴走UNACが攻撃を始めていくと次第に弾幕が形成されていく。

 

「斬る、斬る、そのために……!」

「一撃離脱を狙う」

 

 それに対して霧山機はグライドブーストとハイブーストを併用した高速機動、人機一体の反応速度で敵弾を回避。ユキムラ機の方は一度のハイブーストで加速した慣性を活かし、周辺の建物で射線を切って敵弾をやり過ごした。

 そのまま二機は反撃に移る。

 

「斬ったぁ!」

「まずは二機」

 

 最高速度を保った高速機動で敵弾をすり抜けての斬撃。敵の目が霧山に向く一瞬を狙ったヒートパイルでの一撃。

 一瞬の内に二機を撃破。片方は斬撃で上半身が地に落ち、片方は上半身が吹き飛んだ。

 

「よし、こういう時のためにシールドを持ってきたんだ。援護する、こっちで敵の気を引くぞ!」

 

 敵を撃破した霧山機とユキムラ機はすぐに敵中から離脱。

 そこでフレイド機は暴走UNACの集団にライフルとプラズマミサイルを撃ちながらKEシールドを構えて前進。敵の視線をなるべく引き付け、霧山機とユキムラ機が再度一撃離脱をしやすくするためにアシストする。

 

「次のアプローチでアタシも一気に行くよ!」

 

 フレイド機が気を引いている後ろでアルス機はエネルギーを温存しながら徐々に暴走UNACの集団に接近。

 霧山機とユキムラ機と同じタイミングで攻撃するのに備える。

 

「小僧、左から行け。こっちは右から行く」

「うん。敵集団を挟むよ」

 

 左右に分かれる霧山機とユキムラ機。暴走UNACの集団を挟み込むように動く。

 

「次、斬る!」

「ここで一気に減らす」

 

 二度目の一撃離脱。

 霧山機とユキムラ機は挟み込んだまま一気に接近、左右から敵中の中に飛び込んだ。これに合わせてアルス機も一気に前に出て正面から敵中に飛び込む。

 

「斬った!」

「四機目」

 

 飛び込んでの斬撃と強烈な一撃。再び一撃必殺で二機を撃破。

 

「さぁ全部スクラップにして、アタシの手で魔改造してやるわー!」

 

 同時にアルス機も攻撃開始。オートキャノンとハイスピードミサイルの高火力で正面の敵を瞬時にスクラップ化。

 そのまま嵐のように流れてくる敵弾をタンクの重装甲で受け切り、次の敵をスクラップにする。

 

「俺も飛び込む!」

 

 フレイド機も敵中に飛び込み、シールドで敵弾を受けながら敵一機に接近。ライフルからヒートハウザーに変更、その火力を浴びせてから流れるようにブーストチャージで敵を蹴り飛ばして撃破。

 

「戦術を変える。こちらは援護に徹する」

 

 ユキムラはヒートパイルの温存を目的としてハンガーユニットのハンドガンへと武装を切り替え、アルス機とフレイド機の援護を開始する。

 

「斬る、斬る!」

 

 全員が敵中で戦うのに合わせて霧山も一撃離脱から戦術を変更。

 敵をかき乱すように、最大加速で流れるように次から次へと敵を斬り付ける。

 

「今ので十機目! このまま、この調子!」

 

 稼働限界で制御を失い、残骸となって転がっていく敵。

 アルス機とユキムラ機の集中火力、フレイド機と霧山機が一瞬で叩き出す重い一撃で急速に敵の数が減っていく。

 

 その後ろで黒い死の影が揺らめく。

 

≪やはりカタログスペック以上と見るべきか、霧山一刀≫

 

 四人が戦う戦場に姿を現さない死神の呟き。

 霧山の力を今一度見極めている。

 

≪失敗作でありながら、失敗作とさせた危険な存在に近付いていくとは……≫

 

 そして死神は実行に移った。

 

≪イレギュラー≫

 

 谷の上から姿を現す死神の機体。

 

 2/R.I.P.2/P

 

 霧山たちが戦っている戦場に降り立つ。

 

「ちょっとなんか来たよ!」

「死神……」

「死神部隊か。でも前に見た機体とは違う、今度はなんだ?」

 

 邪魔な暴走UNACを武器腕のブレードで斬り倒す死神。

 軽量二脚で素早く、腕部それ自体が実体ブレードのA11 Vendettaを振るい、次から次へと暴走UNACを斬り裂いていく。

 

「速い、死神も……!」

 

 これで暴走UNACの減りは更に加速。最後の一機は霧山機が撃破し、十機以上いたはずの暴走UNACはあっという間に全てが残骸と成り果てた。

 

≪邪魔者は消えた≫

「後はアイツだけ」

 

 暴走UNACを全滅させた次は霧山たちと死神のお互い。

 出来上がった残骸たちの中で霧山と死神〝P〟の機体は目を合わせる。

 

≪霧山一刀≫

「話した……なんで俺の名前を?」

≪首輪を付けさせてもらう≫

「っ!?」

 

 首輪を付けると言い放れた直後、霧山機のコックピットモニターの表示が乱れ、今まで抑えていた感情がかき乱され始めた。

 

「敵が、違う! 俺は……!」

「霧山? どうしたんだ!」

 

 変えられていく感情。変えられていく敵味方の表示。

 死神を見れば味方表示になっている。

 

「フレイド……っ!?」

「まさかまたAMS? 霧山、大丈夫か!?」

 

 助けを求めてフレイドたちを見れば、その表示は敵になっていた。

 

≪お前もゾディアックと同じ機体。コマンダーモジュールの適用範囲内だ≫

 

 霧山と晴陽のシステムを強制的に変えさせるもの。

 それは死神〝P〟が作動させたコマンダーモジュール。外部から強制的に適用範囲内の機体にデータリンクを行って監視下及び指揮下に入れ、機体の敵味方識別の操作も出来る装備。

 

「違う、ダメだ! 斬らない、斬っちゃダメなんだ!」

 

 今はフレイドたちが敵の表示。殺さなければならない。

 でも殺したくはない。殺す相手ではない。

 だから抵抗する。生身の理性で機体システムが引き出してくる自分の殺意を抑え込む。

 

≪かつての管理者が望み、しかし望み通りにはならなかった最初期モデル。命令がなければ勝手に動き、識別されていなければ構わず殺す。そんな不良品の人形が人間に戻った途端にこれか≫

 

 抵抗する霧山を見つめる死神〝P〟の目。

 霧山を従えさせることが出来ると思いきや、実際は違う。

 

≪イレギュラーになるというのなら殺すだけだ≫

 

 だから殺すことにした。

 システムに抵抗して動けない霧山機に瞬時に接近、武器腕ブレードで得物を持つ両腕を斬り落とす。

 

「霧山!」

 

 誰よりも早く助けに行くフレイド。ライフルを撃ちながら接近するも、死神の刃は止まらずに霧山機の両脚を斬り落とした。

 これで霧山機はもう動けない。

 

「クソ! 離れやがれ、死神!」

≪他人に対して命を懸ける。絵に描いたような献身だ≫

 

 霧山が殺される一歩手前で死神へ勢いのあるブーストチャージ。しかし素早い死神は即座に後方へとハイブースト、渾身の蹴りは当たらないが、霧山から離れさせることは出来た。

 

「俺は、俺と同じ存在を救えないけど……それでも友達くらいは救ってみせる!」

 

 シールドを前方に構えて、ライフルからヒートハウザーに変更。

 身を削ってでも霧山を守る気でフレイドは死神と見合う。

 

≪だが大して力もない。イレギュラー諸共死んでもらう!≫

 

 視線を霧山機からフレイド機へ変え、死神は一気に接近。

 フレイド機がヒートハウザーとプラズマミサイルを連射しようとも的確に回避され、武器腕ブレードが振るわれる。

 

「どれだけ切り刻まれようとも……!」

 

 最大加速で振るわれる切れ味の鋭い斬撃。それを咄嗟に防御してシールドを身代わりにする。

 

≪盾を身代わりにしたか≫

 

 一撃にしてシールドは割れ、破壊。後は本体の装甲のみ。

 

「やられっぱなしじゃない!」

 

 反撃のブーストチャージ。今度はより深く踏み込んで蹴る。

 それでも結果は同じ。死神は冷静にハイブーストで距離を一気に離し、ブーストチャージを不発に終わらせた。

 

≪だとしても次でお前も終わりだ≫

「まだ終わりじゃないんだよ!」

 

 終わりではない。フレイドだけが戦っているのではないのだから。

 

「アタシたちがいるってね!」

 

 アルス機とユキムラ機からの弾幕が飛ぶ。これで死神に回避を強要させながら装甲を少しでも削っていく。

 

≪なるほど、三機相手か。ではイレギュラー要素だけでも潰させてもらおう≫

 

 死神は状況に合わせてターゲットを変更。

 目の前のフレイドを殺すことから霧山にトドメを刺すことに集中。アルス機とユキムラ機が繰り出す弾幕の中を突っ込んで霧山目掛けて加速する。

 

「突破して小僧だけでも殺す気か。させんよ」

 

 霧山を守るためにユキムラ機はヒートパイルに武装を変えて前進。加速する死神の前に立ちはだかる。

 

≪相手にしなければいいだけのこと≫

「慢心したな、死神」

 

 死神はユキムラ機を避けて霧山に向かおうとした。しかしユキムラは死神が横に避ける一瞬を狙い、同じ軽量二脚のスピードで追い付き、ヒートパイルをその横腹に突き出す。

 

≪なんと……≫

「浅い。上手く逸らしたか」

≪上手い。ここにも危険な存在がいるか≫

 

 ヒートパイルの絶大な威力。直撃の寸前に上半身を逸らされて当たりを浅くされるが、絶大な威力の証明に死神の横腹を破損させた。

 

「後一発。こっちだ」

≪お前から殺してやろう≫

 

 死神はまたターゲットを変更。

 もう一人の強者。フレイドたちから離れるユキムラに狙いを付け、一対一に持ち込む。

 

「踏み込んで来い」

≪踏み込ませたいのだろう? 踏み込んでやるとも、別の角度からな≫

 

 ヒートパイルの片方は弾切れ。残るはもう片方だけで後一発。相手から踏み込んでくれればカウンターを決められるが、死神はハイブーストと着地した一瞬の旋回を駆使して回り込み、カウンターを許さない。

 

「考えが浅い。こちらにはこれもある」

 

 逆にユキムラもハイブーストと着地した一瞬の旋回を駆使。常に向き合う形となり、弾切れのヒートパイルから持ち替えたハンドガンとVTFミサイルで攻撃。

 射撃によって死神に圧を掛ける。

 

≪こちらに射撃武装がないと見て射撃戦に変えるなど考えが浅い≫

 

 もちろん死神はそれら射撃を回避。当たってもハンドガンの弾丸程度で、装甲で弾いていく。

 

「やはり当たってくれはしない。それならば……」

 

 まともに当たらない。弾切れは危険。であれば当てに行く。

 ユキムラ機は一気に加速、死神の間合いに踏み込んだ。

 

≪しびれを切らしたか。踏み込むということは自殺も同然≫

 

 死神はヒートパイルによる一撃を予測、回避後に斬撃のカウンターを狙った。

 しかし実際に繰り出されたのはヒートパイルではない。VTFミサイルだ。

 

「避けられまい」

 

 既に彼我の距離は10m内。読みが外れた死神は避けられずに直撃、VTFミサイルの高衝撃で機体が硬直する。

 

≪狙ったか。しかしこちらの間合いだ≫

 

 機体が硬直した次はヒートパイルが来るだろう。

 その前に死神は武器腕ブレードを振るい、寄ってくるユキムラ機を仕留めに掛かった。

 

≪勝った≫

 

 ブレードをユキムラ機のコアに深く斬り込み、コックピット付近に刃が届く。

 

≪いや、肉を斬らされたか≫

 

 だけどユキムラの狙いはこれだった。

 死神は策にハマってしまった。

 

「その骨と心臓を断つ」

 

 刃がコアに深く入ってしまった故に死神は武器腕ブレードをすぐに引き抜けず、ユキムラ機のヒートパイルに直撃。

 まさに肉を切らせて骨を断つ。

 

≪良い戦いだった――≫

 

 ヒートパイルの直撃を受けた死神の機体は上半身のコアが爆発四散。両腕のブレードが爆圧で天高く飛び上がり、その刃は大地に突き刺さる。

 これで死神は倒れた。

 

「ここまで長い命だったな、竹鉄槍。だがそろそろ身を引く頃合いだ……後は小僧共に任せる……」

 

 対して竹鉄槍は立ったままで静止。ユキムラは静かに戦いに倒れた。

 

「じいちゃん? じいちゃん!」

 

 遠くなるフレイドの声。

 倒れた二人。長く生き抜いてきた古強者の命と長い間眠っていた剣豪の死神はこの世を去っていく。

 

 そうしてこの場での戦いは終わった。

 霧山たちの命は一つ減り、その代わりに他三つは今日も生き残った。




リメイク前ではパイル持ちの老人は一矢も報いれなかったところを引き分けにした
その方が死に方に華がある
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