ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution   作:D-delta

17 / 27
今回はちょっとした伏線回


第十六話 残された者たち

 銃声の響かない戦場。

 それまで戦っていた暴走UNACは全滅。戦闘の途中で乱入した死神はユキムラと共にこの世を去った。

 倒れた者はみんな、物言わぬ残骸となって戦場に転がる。

 

「姐さん、じいちゃんの方をお願い! 俺は霧山を機体から引っ張り出すから!」

「任された!」

 

 戦闘は終わった。

 戦場に残された者は自分のやらねばならないことを行う。

 

「霧山! 聞こえているか、聞こえているなら返事をしろ!」

 

 フレイドからの通信。機体システムによって敵と表示された者の呼び掛けてくる声。

 

「フレイド……俺は、ここだ……」

 

 頭の中で暴れる敵を殺す使命と殺したい感情を抑えながら助けを求める。

 

「生きているな、霧山! 今助け出すから待っていろ!」

 

 そう言ってフレイドは機体から降り、霧山機のコックピットハッチに迫った。

 助けに来てくれる、その姿は尚も敵として表示されている。

 

「ハッチは……ここか!」

 

 そしてフレイドの手によって霧山機のコックピットハッチが開かれる。

 生身の目に映るフレイドの姿。そこに敵の表示はない。

 

「霧山、俺の手を掴め! 引っ張り出してやる!」

 

 最初に会った時と同じ差し伸べられる手。

 

「……っ!」

「来い!」

 

 霧山はその手を掴み、晴陽という名の人形の檻から引っ張り出される。

 

――AMS強制停止 システムを通常モードに移行

 

 コックピットから離れたことでAMSは停止。それまで霧山の頭の中で暴れていた殺意は大人しくなり、いつもの起伏の少ない薄い感情が戻ってくる。

 

「フレイド」

「ん? どうした?」

 

 しかし最初に会った時よりも霧山の中には特別な感情があった。

 

「ごめんね。助けてくれてありがとう」

「気にすんなよ。俺たち友達だろう?」

「そうだね」

 

 その特別な感情は友情という人間としてはありふれた感情。心を許せて、充実する一瞬を感じ取れて、人間らしく心が動く。

 

「よし、じいちゃんの方に行こう」

「うん!」

 

 二人は自分たちの機体から離れてユキムラの方へと向かう。

 ユキムラの竹鉄槍は依然立ったまま静止。アルスは自機の腕を上げ、腕と武装を伝って竹鉄槍の上へと移動。コックピットハッチの開閉作業をやる。

 

「姐さん、どう?」

「今開くよ、待ってな!」

 

 アルスの言葉通り、数秒して竹鉄槍のコックピットハッチが開く。

 

「ふん……まぁそうだよね」

 

 開けば予想通りと言わんばかりの反応。

 コックピット内がどうなっているかを確かめるため、霧山とフレイドもアルスのバルカンドラッヘの腕と武装を伝って竹鉄槍の上に移動。

 

「二人も見てみな」

 

 アルスに促され、竹鉄槍の上に上がってきた二人の目はコックピット内へ向けられる。

 コックピットの中にあるもの。

 二人の視界に映るのは血で汚れたコックピット内、流血しているユキムラだ。

 

「じいちゃん、生きてる?」

 

 フレイドが声を掛け、ユキムラの顔の前で手を振る。

 反応はない。微動だにせず、時間が止まったように静かなままで動かない。

 二人もユキムラの死を確信する。

 

「おじいちゃん……俺が殺してしまったのか」

「あまり自分を責めるなよ、霧山。それにさ……」

 

 ユキムラは死神と戦って死んだ。今まで生き残ってきた人間がコックピット内で死体になっている。

 でもフレイドが見た、ユキムラの死に顔は苦しんでもなく悲しんでもなく――

 

「じいちゃんは満足気な顔で死んでやがるよ」

 

 口角を上げて笑みを浮かべていた。まるでやるべきことをやり遂げ、悔いがないかのように。

 

「おじいちゃん」

「じいちゃんの墓、ちゃんと眠れるように作ってあげないとな」

「うん。俺もやるよ、じいちゃんの墓を作るの。おじいちゃんが戦ってくれたおかげでアルスもフレイドも、俺も生き残っているから、生き残った俺たちで墓を作ってあげないと……」

 

 死者への弔いとせめてもの礼のため、二人はユキムラの墓を作ることにした。

 

「アタシは機体に戻って作戦の続きしてるから、そっちは任せたよ」

「はーい。なにかあったら言って、姐さん」

「はいはーい」

 

 戦闘は終わっても、まだ作戦は続いている。

 アルスは自機のコックピットへ戻り、機体は動かさず防衛隊16からの通信の対応を行う。

 

「一緒に持ち上げる、行くぞ」

「うん!」

 

 その間に二人はユキムラの死体を竹鉄槍から引き出し、バルカンドラッヘを足場にして地面へと死体を降ろしていく。

 

「よし」

「お墓は自分の機体の近くが良いよね?」

「そうだな。俺、自分の機体持ってくるから少し待ってて」

「うん。待ってるよ」

 

 こうしてユキムラの弔いは進み、作戦も進んで、時間もまた進んでいく。

 

  ※

 

 数時間後。防衛隊16の基地にて。

 

「こちらハートマン、作戦完了。脱走兵共、ご苦労だった」

「脱出だけして報酬忘れないでよ?」

「もちろん忘れていない。報酬は私が直々に渡す。輸送ヘリのところへ来い」

「あいよ!」

 

 基地に残る輸送ヘリはハートマンが乗り込む予定の一機だけ。脱出作業は既に完了し、基地はもぬけの殻。

 ハートマンの通信に応じたアルスは機体に乗り込んだまま残り一機の輸送ヘリへ向かう。

 

「来たよ。報酬は?」

「これだ。確認してくれ」

 

 輸送ヘリの横に来たアルス機。

 基地から出てきたハートマンと取り巻きの兵士たちが報酬の入ったアタッシュケースを四つ地面に置いた。

 アルスは早速機体から降りて駆け寄り、置かれたアタッシュケースを開く。

 

「お、いいね。全部で400000Auかな?」

「そんなところだ」

 

 アタッシュケースの中身は報酬である金塊。

 太陽光に照らされ、キラキラと金色に輝く。

 

「まぁ君たちが示した実力ならば、もう一度ヴェニデに入ることで更なる報酬と高い地位を頂くことも可能だろうが……どうだ?」

「やめとく。変な指揮官の下で働くのはもうヤダもん」

「変な指揮官?」

「アタシらが元いた特務隊の指揮官よ。名前はバーンズ・コールドっていうんだけど」

「ふむ、バーンズ・コールド指揮下の特務隊か……」

 

 ヴェニデ再加入の誘いを断った末、ハートマンはなにか意味ありげな反応をする。

 アルスは気になって「なにかあったの?」と尋ねた。

 

「君たちが所属していた特務隊は既に壊滅している」

「え、マジ?」

「本当のことだ。バーンズ指揮官からの脱走報告がされた後、すぐに死神部隊の襲撃を受けて基地は機能を失い、バーンズ指揮官は行方不明となっている」

 

 霧山たちが元いた特務隊は既になくなっていた。しかも死神部隊の襲撃によって、である。

 

「また死神部隊……」

 

 今回の作戦でも死神部隊は出てきた。

 なにかの目的を持って接触、戦闘してくるのはアルスでも察せるが、それ以上はなにも分からない。

 

「とにかくだ。これで作戦は完了、報酬も渡した。そろそろ我々は行かせてもらうよ」

「あ、待って! 脱出ってことはこの基地を放棄するんでしょう?」

「そうだが?」

「じゃあこの基地貰っていい?」

「好きにしろ。施設設備はそのままにしてあるから、他は自分たちで揃えることだ。では失礼……」

 

 ハートマンはそれだけ言い残して取り巻きの兵士たちと共に輸送ヘリに乗り込む。そのままハートマンを乗せた最後の輸送ヘリは離陸し、基地から離れていった。

 

「さぁて仕事は終わったし、三人のところへ……じゃなくて霧山とフレイドのところに戻ろう」

 

 自分で言って、ユキムラが死んだことに今一度気付く。

 後悔なく死んだユキムラを見た瞬間はただ死んだ事実を認めたが、今までいたはずの人間が消えた喪失感を感じると胸を締め付けるような感情が湧き出てくる。

 

「……やっぱキツいなぁ」

 

 次は誰が死ぬ?

 仲間から死人が出て、そんな考えたくもないことまで感じてしまう。

 

「二人はちゃんと生きていてほしい……」

 

 そして霧山とフレイドには死んでほしくないという願望。

 アルスは死人の墓を作る二人を遠くから見つめる。いずれ二人が死人として墓に入る可能性を不安に思いながら。




V系の通貨Auがずっと気になってたけど、考察で金塊なのでは?ということを知った
確かに元素記号でAuって金だものね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。