ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution 作:D-delta
夕日の空。戦いで荒れた大地に穏やかな風が吹く。
「おじいちゃん、ちゃんと眠ってくれるかな」
「きっと大丈夫さ。どこでも寝られるじいちゃんだし」
出来上がったユキムラの墓。霧山とフレイドのお手製で、一人で寂しくないように武装や内装をそのままで残した竹鉄槍を寄り添わせている。
基地に刺し込む夕日の光が、そんな竹鉄槍と石積みのユキムラの墓を照らす。
「二人共」
背後からの呼び声。
霧山とフレイドは振り返って背後のアルスへと視線を移す。
「姐さん? 長かったね、終わったの?」
「まぁね。報酬を受け取って、この基地も譲って貰った。今日からここがアタシたちの家になるから、必要なものを色々頼んでおいたのよん」
「なるほどね。それで戻ってくるまで長かったんだ」
「そういうこと」
戻ってくるのが夕方になった理由をアルスは告げ、ふと視線を出来上がった墓へ向ける。
「…………」
墓を見てもアルスはなにも言わない。
人生の終わりが形として残っているだけであり、弔いの気持ちよりも霧山とフレイドが死ぬ不安の方が大きくなる。
「機体とか色々整備するから作業手伝って。これから忙しくなるから」
「了解。もちろん手伝うよ」
「俺も手伝う」
だからアルスは視線を二人に戻し、今やるべきことを告げる。
今日から霧山たちの家となる基地。
入念な準備を行うため、アルスは二人を連れて整備に行く。
※
経つ時間。
輸送ヘリの往来とヴェニデやストーカーとの取引、機体の整備が続き、四度の夜を越えた先の朝。
ユキムラが死んでから五日後のこと。
「霧山、大丈夫か?」
通信越しに聞こえる、フレイドの声。
霧山は「大丈夫」と自機のコックピット内で返事をする。
「よし、じゃあ試しに戦闘モードで動かしてみよう」
「分かった」
――AMS作動 メインシステム 戦闘モード起動
「くっ……!」
込み上げる殺意。敵となる者を殺す使命。
でも今は、敵はいない。
「敵は、俺が決める」
そして霧山の意思でシステムに強制される意向を突っぱねた。
「ふぅ……」
頭の中を整える深呼吸。
システムが引き上げる殺意を理性で正し、冷静な頭で操縦桿を握る。
「行くぞ」
霧山は機体を動かす。
新しくなった四肢のパーツとそのままのパーツが混在する晴陽は素早く鋭利な反応と高い機体速度で大地を駆ける。
「霧山の機体、どう?」
「ちゃんと動けてるよ、姐さん。別のパーツにしてもAMSってのはちゃんと機能しているみたい」
遠くから見ているアルスとフレイド。
二人の目に映る霧山の機体は破壊されていない頭部とコア、内装をそのままにして、腕部を死神〝P〟が使用していた武器腕ブレード――A11 Vendettaに交換、斬り捨てられた脚部は新規で購入したL18 Fragrantへ交換されたものとなっていた。
「行ける。この機体ならもっと、もっと斬れる!」
そんな新しくなった晴陽で放置されたUNACの残骸を斬る。
前の実体ブレードと同じ切れ味でありながら前よりも確実に増した一撃の重さ。
そこまで速度を出していなくても、斬ったUNACを真っ二つにした。
「霧山、新しい機体の感想はどうだ?」
「やれるよ。前よりも、もっと……!」
新しい刃を手にして、霧山は高揚。
次の残骸を斬り付けて再び真っ二つにする。
「良好だな。姐さん、呼び戻す?」
「うん、そろそろ呼び戻して。次はUNACを試すから」
「了解。霧山、戻って来い」
フレイドの呼び戻しに応じ、霧山は「分かった」と返事をして戻ってくる。
次に試すのはUNACだ。
――AMS停止 メインシステム 通常モードへ移行
戻ってきた霧山の機体は停止。
霧山は機体のコックピットハッチを開き、武装を外された待機状態のUNACを見つめる。
「じゃあ次はUNACを起動させるよ」
アルスは手元にある情報端末からUNACを遠隔で起動。
メインカメラに光が灯り、機体を起こした。
≪U1、オペレーションを開始します≫
UNACが起動した。
起動して早々、敵を探しに辺りの索敵を始める。
「ビーコンセット」
情報端末から移動目標となるビーコンを設定。UNACはハイブーストを小刻みで繰り返し、移動目標へと素早く移動していく。
「へぇー……すごい、この前戦ったUNACと同じ機体じゃないみたいな動きしてる」
「でしょ? 同じオペレーション使うとまた暴走するから、お試しついでに結構弄ってみたの」
UNACの機体構成は防衛隊16の脱出支援で敵対した暴走UNACと同じ軽量二脚の機体。
しかし中身は違う。アルスの言葉通りに財団供与時のオペレーションから、軽量二脚の機動力を活かす独自の高機動型にカスタマイズされたオペレーションへと変えられていた。
「でも、まだまだ実験段階だけどね。今は消耗前提で実戦に出してどう動けるか、時間も掛けて調整していかないと」
動きなど見た目はよく出来ている。が、実戦は想定通りのものとはならない。
実戦でどう動けるかは未知数だ。
「じゃあ次に仕事入ったら早速投入だね」
「うん、おじいちゃんの代わりにはなれないから弾除けと援護役くらいの気持ちで有効に使っちゃって」
UNACの実戦投入が決まる。
ここから実戦向けの調整をしていくには実際に戦闘に投入してトライ&エラーを繰り返すしかないのだから。
「お人形さん」
これから新しく共に戦うUNACを見て、霧山は呟く。
そうして戦いへの準備は更に数日続いていった。