ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution   作:D-delta

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第二十一話 力の体現者

 誰が力の体現者であるか。誰が黒い鳥であるか。

 それを決めるための戦い。その者を殺す戦い。

 霧山たちと死神たちの最後の戦い。その序章は始まった。

 

「斬る!」

 

 戦場を最高速度で駆ける霧山機は刃を(きら)めかせる。

 武器腕ブレードの刃に映るのは死神となったバーンズ機。システムに引き上げられた殺意を殺すべきバーンズに向けて、敵弾を避けながら突っ込む。

 

≪私の隣で私の理想となっていれば良いものを……!≫

 

 彼我の距離は数秒で縮まり、後少しでバーンズに刃が届く。

 その時に一機のUNACが割り込んできた。

 

「俺と同じ奴!」

 

 割り込んできたUNACは霧山の前のACと同じ機体構成。

 敵のBD-0 MURAKUMOの刃が霧山機を映し、霧山を模したUNACは霧山と同じタイミングで斬る動作をした。

 このままでは斬り合いの末に相討ちになるだろう。

 

「くっ……!」

 

 だから霧山は斬り合わずに後退。突撃から一転して素早くフレイドたちのいる後方まで一度退く。

 

≪フ、良い判断だ。それでこそ私が憧れた強者というもの≫

 

 そこからすかさずスキャンモードに移行。

 エネルギーの回復を早くしつつ、敵をスキャン。

 

「俺たちの偽物。フレイドとアルスと……俺か」

 

 コックピットモニターに表示される、敵の情報と敵の名。

 UNAC FRD――フレイドの前のACと同じUNAC。

 UNAC ALS――アルス機と同じUNAC。

 UNAC KIR――先ほど割り込んできた霧山の前のACと同じUNAC。

 

 そして2/R.I.P.4/Bというバーンズの機体。

 

≪これから君たちの代わりとなるUNAC、力の体現者として相応しい私のヴェニデが形となった機体。良い出来だろう?≫

 

 ヴェニデが形となった機体。

 それは力の体現者としてバーンズの憧れる一人、セサル・ヴェニデの乗機に似た機体である。

 

「セサル・ヴェニデの機体に似せちゃってさぁ、作り物のアタシたちと一緒に歴史の人物になろうっての?」

「俺たちのこと引きずってんのかよ、バーンズ指揮官!」

 

 フレイドとアルス。

 UNACを伴って一度退いた霧山と共に前に出てくる。

 

≪もちろん引きずっている。私は霧山のみならず君たちにも力の体現者としての憧れを抱いた。ユキムラの老兵である故の経験に基づく力、アルスの技術力で機体の強さを格段に伸ばす力、フレイドの感覚で兵器を使いこなす力、そして霧山の常人を超えた最強で圧倒的な力、君たち全員に力の体現者を見出したのだ! それを君たちは……!≫

 

 バーンズの熱弁。次第に声色が怒りに染まり、霧山のみならずフレイドとアルスにも銃口が向く。

 

≪つまらん思いやりに、仲間意識と仲間との慣れ合いなどと……強者には相応しくないことに染まってしまって!≫

 

 自らの理想とならない怒り。

 その怒りのままにバーンズ機は両腕部の武装を投げ捨て、背部の大型武装――オーバードウェポンを起動。

 

≪もはや君たちが力の体現者となるつもりがないのなら、このヒュージブレードで君たちを倒し、私が代わりに力の体現者となる!≫

 

 フジツボに似た突起を持つ外殻が稼働し、右腕部に巨大な筒のようなものを固定。

 オーバードウェポン――ヒュージブレードが起動した。突起とブレード発生器から強大なエネルギーを(ほとばし)らせ、天にエネルギーの刀身が上がっていく。

 

≪さぁ死に伏せろ!≫

 

 振り下ろされるヒュージブレード。

 大気を裂き、大地を焼き尽くす暴力の炎刃。まともに当たれば焼き尽くされるものを霧山たちは左右に分かれて回避。

 それを皮切りに互いの射程内に互いを入れて撃ち合いが始まった。

 

「あのオーバードウェポン、噂に聞くヒュージブレードってやつ。あれを抑えないと相当厄介だよ」

「アルス、バーンズは俺がやる」

 

 霧山が狙うは一撃必殺の武装を持つバーンズ機。

 

「よし、じゃあ姐さんは俺と他を潰して霧山を動きやすくする!」

「オッケー、偽物をスクラップに変えちまうわ!」

 

 フレイドたちはそんな霧山が動きやすくなるように他の機体を狙う。

 

≪霧山を向かわせてくるか。良い判断を下したな。それでこそというものだ!≫

 

 グライドブーストにハイブーストを重ねた高速機動で霧山機はバーンズ機に接近。

 対してバーンズ機も霧山機に接近。オーバードウェポンの使用でリミッターを外した超出力でハイブーストを何度も重ねて加速していく。

 

「今度こそは斬る」

≪やってみろよぉぉぉぉ!≫

 

 両者の距離は100m内。

 両者共に更に加速、一気に距離を詰めて仕掛ける。

 繰り出されるのは加速によって増大した勢いと重量をぶつける斬撃とブーストチャージ。

 

「――っ!」

≪!?≫

 

 重く鋭い一撃がぶつかり合い、斬撃によってバーンズ機の脚部の一部が破損、ブーストチャージによって霧山機の左腕部の関節にダメージが入った。

 

≪踏み込まなかったか。やるな!≫

「必殺じゃなくていい。フレイドとアルスがいるから」

 

 霧山が一撃で仕留めようと内側にもっと踏み込んでいれば斬撃のタイミングはブーストチャージより遅く、一方的に蹴られていただろう。

 それを損傷レベルの攻撃で済ませ、霧山は次の斬撃を見計らう。

 

≪でも君が仲間を頼るように私も仲間を頼らせてもらう!≫

 

 しかし次の斬撃の前に敵の斬撃が来た。

 

「俺と同じ……!」

 

 霧山を模倣したUNAC。KIRが霧山機の側面から飛び込み、実体ブレードの斬撃でコアの装甲に斬り込む。

 

「霧山はやらせないぞ!」

 

 フレイドの声と共に次に来るのはブーストチャージ。重量二脚であるフレイド機の重い蹴りがKIRを吹っ飛ばし、一撃で稼働限界にする。

 

「ありがとう」

「気にすんな、友達だろう?」

 

 霧山機の装甲に付いた傷。幸いなことにそれほど斬り込まれておらず、稼働に支障はなかった。

 

「二人共! そっちにアタシの偽物が行った!」

 

 それならば更に支障を与えようと、アルスと同じALSが霧山機とフレイド機に寄ってくる。

 

≪霧山……君さえ倒せれば!≫

 

 ALSから放たれるオートキャノンとハイスピードミサイルの弾幕。

 霧山機とフレイド機に回避を強要し、その間にバーンズ機がヒュージブレードのチャージを完了させる。

 

「あのデカいの、次が来る」

「ヒュージブレードが来るぞ!」

 

 最大までチャージされたヒュージブレードから溢れる多量のエネルギー。

 

≪私は力の体現者になれる。憧れが現実となるのだ!≫

 

 全てを焼き尽くす炎刃が振るわれる。

 今度は縦ではない。横一直線にである。

 

「げぇっ! やっば!」

 

 ヒュージブレードの炎刃に一番近いアルスはブースターを出力最大で機体を浮かし、急いで回避。すぐ下をヒュージブレードの炎刃が通り、機体の底面装甲が超極熱で焼け焦げていく。

 続いて味方UNACは元から高度を取っていて当たらないが、地上を駆けるフレイド機を模したUNACのFRDはまともに浴びて木端微塵に爆発四散。

 

「フレイド、上手く逃げてよ?」

「分かってる!」

 

 次に霧山機とフレイド機はグライドブーストで逃げ、それを追いかけるALSもFRD同様にヒュージブレードに巻き込まれて爆発四散。

 そのままバーンズのヒュージブレードは大地を焼きながら霧山を追いかける。

 

≪逃がさん!≫

 

 ヒュージブレードでずっと霧山を追い続け、速度の遅いフレイド機の後ろに迫ってくる。

 

「俺は逃げない」

 

 途端、霧山機はグライドブースト中にハイブーストを重ねてバーンズ機へと急加速。

 フレイドが焼け死ぬ前に決着を付けに行く。

 

≪面白い!≫

 

 詰められる距離。迫る炎刃。

 武器腕ブレードの刃にバーンズ機を映し、迫るヒュージブレードが霧山機とフレイド機を左端から徐々に焼いていく。

 

≪どっちが先に殺されるかな!≫

 

 先に攻撃が届くのはどちらか。

 

「勝負だ」

 

 ブースターを限界出力で噴かした末に機体速度が亜音速に近付き、両者の距離は即座に50m内。

 そして次のハイブーストで零距離となり、決着の轟音が響く。

 

≪やはりな≫

「…………」

 

 消える光。焼けた装甲。

 耐えられなくなった機体が何度も爆発を引き起こす。

 

≪黒い鳥。力の体現者≫

 

 爆発で吹き飛ぶ装甲。地に落ちる武装。

 

≪これでこそ力の極致に立つ者というもの≫

 

 爆炎に包まれて燃え尽きていく。

 

≪流石だ、霧山。やはり君こそ私が見たかった輝きだ――≫

 

 頭部を斬られ、誰も乗っていないコックピットを晒しながらバーンズ機は炎に包まれて倒れる。

 これ以上バーンズの声が来ることはなかった。

 

「さようなら、バーンズ。安らかに眠ってて(Rest in Peace)

 

 左肩部が溶けて変形、機体の左半身が大きく焼けた霧山機。

 機体を動かすのに支障はなく、武器腕ブレードを振り切った機体の姿勢を元に戻す。

 

「霧山、生きているか!?」

「大丈夫。生きてるよ」

 

 返事をして生きていることをフレイドに示す。

 

「姐さんは?」

「すんごく肝を冷やしたけど、ピンピンだよ」

「良かった……!」

 

 バーンズを倒し、全員生きている。

 しかし死神はバーンズだけじゃない。

 

≪ふん、力の体現者などと……≫

 

 大型ヘリに輸送されて接近してくる死神のタンク型AC。

 

≪イレギュラーを消すためにバーンズとやらを迎えて、奴の要望通りのUNACも作ってやったが、所詮は力に憧れているだけの人間だったか≫

 

 二機目の死神が来る。候補として選ばれた霧山たちに確実な死を与えるために。

 

≪まぁいい。イレギュラーの処理はさせてもらう、確実にな≫

 

 霧山たちにとっても死神にとっても、どちらかを全て殺し尽くすまで戦いが終わることはない。

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