ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution   作:D-delta

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第二十二話 遺物たちの変わらぬ戦い

 過去から未来まで戦いという変わらない行為。

 その過程でバーンズは消え去り、次の死神が現れた。

 片方を殺し尽くすまで終わらない。彼らの最後の戦いは本題に入る。

 

「次の死神、来たよ」

「ちょっと来るのが早いんだけど?」

 

 バーンズに続いて霧山たちの前に現れる死神。

 スキャンモードでの解析で死神の名を見透かす。

 

 2/R.I.P.2/T

 

 スキャンした結果、コックピットモニターに現れる機体名。

 二つ目の死神部隊。その二番機。

 死神〝T〟の機体である。

 

≪手間は掛けない。コマンダーモジュール作動≫

 

 そして死神〝P〟も使った、霧山に首輪を付ける装備。

 確実な方法として大型ヘリに輸送されたまま死神〝T〟も使用する。

 

「くぅ……っ」

 

 作動したコマンダーモジュールによって敵味方の表示を強制的に変えられる。

 コックピットモニターに映る死神は味方と表示され、霧山と共にいるフレイドとアルスは敵の表示になる。

 

「俺は……」

 

 システムはフレイドとアルスを敵として認識。機械的な処理で霧山に二人を殺せと使命を植え付ける。

 

「敵を……!」

 

 しかし霧山にとって二人は大切な仲間、友人だ。

 システムがなにを植え付けようと、殺すべき相手じゃない。

 

「違う、敵は俺が選ぶ!」

 

 だから霧山は自らを縛るシステムを無理にでも振り払った。

 殺意をコントロールする生身の理性。大切な人を殺したくない人間的感情。

 管理者に操られる機械、システムの言いなりになる人形をやめた。

 システムが植え付ける使命を否定し、システムが味方として認識する死神に自らの意思で敵意を向ける。

 

≪機体に縛られた人形如きが……人間に戻ったか≫

 

 これでコマンダーモジュールはもう霧山に通用しない。

 

≪ならば別の手を使うだけのこと≫

 

 霧山たちを確実に殺す別の手段。

 その発動がたった今実行される。

 

「こちら司令部! 敵機が中枢に侵入、援護を!」

 

 死神部隊が第23支部系列の基地を統括する指揮系統中枢に到達した。

 このまま指揮系統中枢を破壊されてしまえば依頼は失敗に終わるだろう。

 

≪聞け、イレギュラー共≫

「イレギュラー? 俺たちのことか?」

「今度はなにさ、全く」

 

 そんな状況下で死神〝T〟は霧山たちに話しかける。

 

≪お前たちに選択肢を与えてやる。この場で全員揃って戦い、司令部の心臓を破壊されるか。それとも人員を司令部中枢に割いて戦うか。好きな方を選べ≫

 

 命を大事にして依頼を失敗に終わらせるか、命を危険に晒してでも依頼を成功させることに賭けるか。

 死神は二つの選択を提示する。

 

「そんなの決まってる!」

 

 それに対して霧山の回答は既に決まっていた。

 

「全員で生きて、揃って戦う! それだけだ!」

 

 霧山が選んだのは依頼を失敗してでも命を大事にすること。

 

「そうそう。アタシたちは全員で生きてこその傭兵ってね!」

「そういうことだ。悪いな、死神。お前たちを前にして命を危険に晒すほど金の亡者じゃないんだよ」

 

 フレイドもアルスも同じ回答。

 霧山たちの選択は定まった。

 

≪ふん、金に貪欲で下賤な傭兵たちだと見くびっていたな。ではやり方を変えよう≫

 

 戦力を分散してやろうという死神の思惑は崩れた。

 だから次の手段に移り、死神〝T〟のタンク型ACが大型ヘリから投下。霧山たちがいる戦場に降り立った。

 

≪作戦変更。ここからはシンプルな殺し合いだ、イレギュラー共!≫

≪作戦変更了解。UNACの援護でつまらなかったところだ。二機ずつでどうかな?≫

≪構わん。こっちはタンクとUNACをやる≫

 

 そこにもう一人の死神の声。中量二脚型ACが空を駆けながら凄まじい速度で接近してくる。

 

「もう一機、見たことある奴が来るよ」

「あの機体……港湾基地で見た奴か!」

 

 霧山とフレイドにとって見覚えのある機体。港湾基地で暴走UNACを撃破した死神だ。

 死神〝T〟の投下に合わせて到着する。

 

≪ようやく理想の戦いが出来る。楽しませてもらおう≫

 

 もう一機の死神。狙いを霧山とフレイドに定めて高速接近。

 

「来るよ!」

「やっぱり構えもしないで撃ってくるのか、クソッ!」

 

 大幅に改造されたショルダーユニットのキャノンとオートキャノンを一斉発射、霧山機とフレイド機に大幅な回避を強要させる。

 

「二人共!」

≪お前の相手はこっちだ≫

「チッ!」

 

 援護しに行こうとするアルス機を〝T〟はパルスキャノンとヒートキャノンで妨害、分断。アルス機とUNACを霧山機とフレイド機から引き離した。

 これで宣言通りの二対一。

 アルスとUNACは〝T〟と対する。

 

≪お前、アルス・ノインだったな?≫

「あ? アタシの名前がなにか?」

 

 問われる名前。

 

≪かつて人がゆりかごの中で過ごしていた時代にあった名家、ノイン家の者だな?≫

ゆりかご(クレイドル)……それがなにさ」

≪お前もまた遺物の一つ。あの時代を断片的にでも知っているのなら尚更生かしておく訳にはいかん≫

 

 かつて人が空に住まう時代。その頃から続く家の名を継いでいる、アルス。

 遺物の血を引く者。

 かつての悲劇。かつての破滅。かつての罪。

 誰にも知られてはいけない。知れば、力を求めて、もう一度破滅の道へと歩き出すだろう。

 

≪だからここで殺す、徹底的にな!≫

 

 二対一の戦いの始まり。

 その皮切りにアルス機とUNACに向けてパルスキャノンとヒートキャノン、両肩部から垂直ミサイルが放たれる。

 

「全く、話を聞いてたら先祖代々家の名を継いでるから生きてちゃダメとか、バーンズの下らない理想とかさぁ……!」

 

 タンク型ACならではの圧倒的な火力。アルスとUNACはすぐに回避するが、視界外から飛んでくる垂直ミサイルにはアルス機が被弾。

 タンク型ACならではの重装甲で耐えて、アルス機の損傷は軽微に抑えられる。

 

「そっちの都合のあれこれで人の生き死にまで縛るんじゃねえよ!」

 

 反撃開始。

 アルス機のオートキャノンとハイスピードミサイルの弾幕、UNACのバトルライフルとショートレンジミサイルでの援護が飛ぶ。

 

≪生き死にさえも縛ってこその秩序。自由は首輪が途切れない範囲、檻の中で定められた分だけあればいいのだ!≫

 

 この反撃を〝T〟は出来る限りの回避で被弾を抑えながら再び攻撃。

 次第に高火力と高火力が行き交う激しい撃ち合いになっていく。

 

「そんな不自由な自由、クソ食らえってんだよ!」

≪自由は混沌を生む。イレギュラーが生まれるのもそうだ、何重にも人を縛る秩序がこの世界には必要なんだ!≫

「いらねぇよ!」

 

 装甲を溶かすパルスキャノンの爆発。ヒートキャノンと垂直ミサイルの直撃。

 装甲を削るオートキャノン。弾かれるバトルライフルの弾頭。装甲を歪ませていくミサイル類。

 互いに火力と火力を打ち付け合い、消耗は加速する。

 

≪それこそイレギュラーの言動と証明! やはり死ね!≫

 

 二対一の火力勝負。アルス側が数で勝っているのに対して〝T〟は単体の火力で勝っており、火力負けしているアルス機は〝T〟の機体よりも先に稼働限界が迫っている。

 

「先にやられる!?」

 

 このまま撃ち合えば火力負けして死ぬ。

 それを理解した瞬間に敵や味方UNAC、コックピットの計器にも目をやって撃ち合う以外の方法を探す。

 

「ブーストチャージ、分散してからの挟撃、UNACでトドメ」

 

 口に出しながら頭の中でこの状況を打破出来る戦術を引き出し、それで勝てるかどうかを即座に脳内でシミュレート。

 

「ダメ、行ける、行ける!」

 

 火力負けをひっくり返すブーストチャージの一撃は没。敵と同じ脚部で下手をすれば逆にブーストチャージをぶつけられて死ぬ。

 結果、挟撃してUNACにトドメを任せることにする。

 

「ビーコンセット!」

 

 ビーコンでUNACを移動。アルス機はUNACの進行方向と逆を移動し、挟撃を実行に移す。

 

≪挟むか? そんなものに意味があるものか≫

 

 もちろん挟撃したところで〝T〟の狙いはアルス機から外れない。

 正面切っての撃ち合いは続く。が、挟撃したことで〝T〟の機体背部にもダメージが蓄積する。

 

≪挟撃など無意味。お前を殺し、脆弱なUNACを壊す。それだけで終わる!≫

「勝手に終わると思ってれば?」

 

――機体が深刻なダメージを受けています 回避してください

 

 アルス機のCOMが警告を告げる。

 稼働限界まで後少し。装甲が許す限り耐えられるだけ耐えて、弾数が許す限り当てられるだけ当てる。

 

≪ならば終わらせてやる!≫

「後は……!」

 

――稼働限界まで僅かです 回避してください

 

 この警告を聞いた直後にアルスは一気に機体を接近させ、距離減衰がなくなるラストアタックを決めに行った。

 

≪ふん、死んだな≫

 

 至近距離まで近付きながらの両者のフルバースト射撃。

 これで〝T〟の機体も稼働限界に近くなるほどのダメージを負うが、それよりも早くアルス機は稼働限界となる。

 

「まだ!」

 

 コックピットハッチが開く。

 

≪しぶとい≫

 

 すかさず脱出。自機の車体部分に飛び降り、そのまま〝T〟の車体へと飛び移って懐に入った。

 

「さぁ、上手くいってよ!」

 

 向かい合う機体の目と人間の目。

 アルスを焼き殺そうと〝T〟はパルスキャノンを自機の車体に向ける。

 

≪イレギュラー排除――≫

 

 死ぬ。焼き殺される。

 

 その直前、突然のブーストチャージがパルスキャノンの発射を中断させた。

 

≪バカな! このUNACは豆鉄砲を撃つだけでは!≫

「オペレーションパターン2……誰かやられた時のために仕込んでおいて良かったわ」

 

 味方機の減少がトリガーとなってオペレーションが切り替わった。

 その戦術思考は高機動射撃型からブーストチャージを積極的に使用する近接機へと切り替わり、再び〝T〟の背部にブーストチャージが直撃。

 

≪イレギュラー共が――≫

 

 死神の上半身が蹴り飛ばされた。アルスの上を通って、死に伏せるように上半身が大地に捨てられる。

 これで稼働限界に達し、ジェネレーターの破損で爆発。死神の声は途切れ、機体の上半身は大炎上する。

 

「じゃあね、アタシたちは生きるから」

 

 死神〝T〟は死んだ。

 そしてアルスは生き残った。

 

 決着のために殺し尽くすまで後一機。

 霧山たちと死神の戦い。その最後の一機で全て終わる。

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