ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution   作:D-delta

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第二十三話 終局

 戦場に二つの戦いの音が鳴り響く。

 片方はUNACを連れたアルスと〝T〟の戦い。

 もう片方は霧山とフレイド、リーダー格の死神の戦い。

 

「……っ!」

「なんて攻撃だ!」

≪これで二対一になったか。誘導はこんなものだな≫

 

 ショルダーユニットのオートキャノンとキャノンから放たれる敵弾。追ってくる攻撃に対して霧山とフレイドは避け続け、その末に死神の狙い通りに誘導と分断は成功。

 望み通りの二対一の状況となった。

 

≪さて……霧山一刀と仲の良いお供≫

 

 そこで死神は攻撃の手を止めて呼び掛ける。

 

「うん?」

「戦闘中になんだよ、急に話しかけてきて」

 

 対して霧山とフレイドは動きを止め、呼び掛けに応じる。

 

≪ようやく戦えるな。この時をずっと待っていた≫

「変なことしてきても、もう効かないよ」

≪TとPが使ったコマンダーモジュールか。あんなものは使わん、つまらんからな≫

「つまらない?」

≪自らの意思で戦ってこその闘争。互いに全力を出し合ってこその戦い。お前たちの力の全てを見せてみろ、そして限界を超えてみせろ。まだ見ぬ戦いの高みを感じさせてくれ≫

 

 システムを跳ね除け、自らの意思を貫く霧山は死神に敵意の目を向ける。

 死神もまた自らの意思を貫くようにコマンダーモジュールを使用せず、ただ純粋な戦いの想いを霧山とフレイドに向ける。

 

「バーンズみたいなこと言うね」

≪バーンズとは違う。ただの処理で終わる、つまらない戦いをしたくない。たったそれだけだ≫

 

 霧山の発言に対して死神は淡々と否定。

 そこにバーンズほどの狂気はないが、淡々としていながらも思い描く理想的な戦いへの渇望がある。

 

「つまり全力で戦えってこと、だね」

「それを求められてるんなら、やってやろうぜ。なぁ、霧山!」

「あぁ、これで終わらせるためにもやってやる!」

 

 二人は死神の渇望を受け入れ、戦いに身を入れる。

 

――システム スキャンモード

 

 互いにスキャンモードに切り替える。

 戦いの前準備。

 死神は霧山たちを見透かし、霧山たちは死神を見透かす。

 

 2/R.I.P.1/A

 

 それが死神の機体名。

 死神〝A〟の意識が宿った中量二脚型AC。武装はスナイパーライフルにレーザーブレード、ショルダーユニットのオートキャノン、キャノン。

 

 晴陽

 ダンパー

 

 死神側が見る霧山たちの機体名。

 互いに互いの機体を見て、準備は整う。

 

≪最高のひと時にしよう≫

「来い!」

「いつでも来やがれ!」

 

 死神が望み、霧山たちが望んだ戦い。

 

――システム 戦闘モード

 

 互いに相手を見るのは終わった。

 自分の持つ武器の矛先を相手に向けて、戦いは再開される。

 

≪始めよう、イレギュラー共≫

 

 そう言った瞬間、オートキャノンとキャノンの発砲が始まった。

 タンク型AC並みの高火力な弾幕。

 

「フレイド、俺が前を張る」

「了解! 援護は任せろ!」

 

 二人はオートキャノンからの被弾を許しながらキャノンだけは確実に回避し、前衛後衛に分かれた。

 

「斬る!」

 

 前衛をする霧山機の突撃。グライドブーストとハイブーストを合わせた加速で一瞬にして〝A〟に接近し、武器腕ブレードを振るう。

 しかし〝A〟の機体から逆関節並みのブースター噴射が繰り出され、刃は何者もいないところを斬っていた。

 

「アイツ、中量二脚であんな跳躍するのかよ!」

 

 フレイドは驚いた。

 本来そこまで跳べない中量二脚で、逆関節並の跳躍を繰り出したのだ。

 

≪かの黒い鳥を殺すためのAC……霧山一刀のACが普通ではないように、こちらのACも普通ではない≫

 

 王者の如く二人を見下ろす〝A〟の発言。

 

「確かに普通じゃない」

「おいおい、だからって滞空までするのかよ!」

 

 構えて機体を固定しなければ扱えない武装をタンク型ACのように構えずに扱い、逆関節並みの跳躍を繰り出し、それだけでなく四脚並みの滞空までしている。

 まさにそれぞれの脚部の長所を一つに集約しており、スペックは明らかに通常のACを遥かに超えていた。

 

「でも、ACはACだ。斬れば壊れる」

≪その意気だ。楽しくなってくるよ≫

 

 滞空してからのスナイパーライフルでの狙撃。

 狙われた霧山機は避け切り、その間にフレイド機がライフルとプラズマミサイルの援護を撃ち放つ。

 もちろん霧山同様に〝A〟も攻撃に当たる気はなく、ライフルを装甲で受け流してプラズマミサイルを回避し切った。

 

「ライフルの回避はしなかった。プラズマミサイルは避けた。流石に装甲は見た目通りという感じだな!」

 

 フレイドは〝A〟の挙動から装甲には特別な改造がないことを察し、武装変更。

 ライフルとハンドガンからバトルライフルとヒートマシンガンに切り替えて攻撃を送り込んでいく。

 

≪よく見ている。それでこそだ≫

 

 中量二脚にとって弱点足り得るCEとTEの攻撃で〝A〟に回避行動を強要。

 どれだけスペックが普通のACを超えていようとも装甲は中量二脚の域を超えない。

 当たれば手痛い損傷を与えられるだろう。だから〝A〟は狙撃から回避に集中する。

 

「流石においそれと当たってくれねぇな!」

 

 回避に集中しているだけあってフレイド機の攻撃は〝A〟にヒートマシンガンがほんの少し当たる程度で、全く当たらない。

 

「フレイド、高度を上げて踏み台になって。決着を付けに行く」

「それなら俺の跳躍とタイミングを合わせろ! アイツと同じ高度に行けるはずだ!」

「了解」

 

 このままでは有効打を与えられないまま弾切れになる。そうなれば一方的に高火力の雨を浴びて二人が死ぬだけ。

 そうなる前に霧山機とフレイド機は動く。

 フレイド機の攻撃で〝A〟の回避行動の強要を継続しつつ、二機はハイブーストを重ねて隙を見せずに周辺の建物に移動。ブースターの推力で可能な限り高度を上げ、建物に機体の足裏を接した瞬間に一気にブースターを噴かす。

 

「高度を上げる」

「このまま行くぞ!」

 

 建物から建物へと飛び移って上がっていく高度。

 息を合わせ、二機はぶつかることなく〝A〟と同じ高度に迫る。

 

≪面白い。ここまで昇ってくるか≫

 

 もちろんただ黙って見ている〝A〟ではない。

 回避行動を強要されながらも一瞬の一斉射撃を何度も放ち、霧山機が昇ってくるのを阻止しようとする。

 

「当たってはやれない!」

≪いいぞ≫

 

 軌道予測して放つスナイパーライフル、オートキャノンとキャノンの一斉射撃。

 それを霧山機は空中で軌道を変えながら回避。阻止を避けて、高度を上げ続ける。

 

「霧山、来い!」

「あぁ!」

 

 そして次の一蹴りで周辺の建物以上の高度へ達した。

 タイミングを合わせて、フレイド機が踏み台になる位置に来た。

 後一歩で〝A〟と同じ高度に行ける。

 

≪高みへ上って来い≫

 

 そこにキャノンでの妨害。踏み台となるフレイド機に直撃した。

 

「ぐっ!?」

 

 凄まじい衝撃力。機体が硬直し、強制的に高度を下げられ始める。

 

「霧山!」

「間に合う……!」

 

 霧山機はハイブーストを重ねて一気に加速し、建物より下の高度へ行く前にフレイド機を踏み台にして跳躍。

 タイミングを間に合わせて〝A〟と同じ高さに達した。

 

≪やはり見込みは間違っていなかったか≫

 

 装甲に覆われて隠された単眼と剥き出しの単眼。

 互いに機体の目を合わせる。

 

「今度こそ斬る」

≪誰のために?≫

「二人のために」

≪君は?≫

「俺は二人と一緒に生きたい」

≪薄い答えだ。人形として薄められた感情には、人間の温もりは気持ち良いだろう≫

 

 戦いの目的の問いと答え。

 

≪だからこそお前の魂を感じる。その魂、ぶつけてみせろ≫

「言われなくても!」

 

 言い、聞き、放つ。

 霧山機はブースターの噴射角度を調整して高度を下げないようにハイブーストで加速、対して〝A〟は接近を許すまいと一斉射撃を放った。

 

「俺は二人ともっと仲良くしたいから!」

 

 オートキャノンの弾幕。装甲を貫通するスナイパーライフル。機体を硬直させるほどの衝撃力を持つキャノン。

 脅威となるのはこの内のスナイパーライフルとキャノン。

 

「二人を殺す敵を斬る!」

 

 被弾してはいけない攻撃を選定し、迫る弾幕の中からスナイパーライフルの弾丸とキャノンの砲弾を見極めて確実に回避。距離を詰めていく。

 

≪まるで自分の力を相手にしている気分だ≫

 

 霧山機との距離が詰められると〝A〟のレーザーブレードが発光。青い炎が迸り、月光の如き青白い輝きを散らす。

 

≪楽しくなってきた。ならばこちらも!≫

「望むところだ……っ!」

 

 彼我の距離は100m内。斬り合う気で〝A〟は発砲を止める。

 そこから先は読み合い。どう斬るか、どう相手の斬撃を(さば)くか。

 

「斬る!」

≪斬る!≫

 

 互いに斬る動作を取った。

 霧山機は左から振るって〝A〟も左から振るう。

 武器腕ブレードの刃。レーザーブレードの炎刃。

 読み合いの末、互いに些細な動作で一撃必殺を避けながら互いの装甲に攻撃を届かせ、斬撃を振り切る。

 

――機体が深刻なダメージを受けています 回避してください

 

 晴陽のCOMが警告を促す。

 それが示すように霧山機はレーザーブレードで右腕部を斬り落とされ、頭部とコアの装甲が一部焼けていた。

 同時に〝A〟の機体は武器腕ブレードで右腕部を斬り落とされ、頭部が破損していた。

 

「やるな!」

≪そうだ、これだ!≫

 

 互いの攻撃で互いに硬直して、両者は地に落ちる。

 

「うっ……!」

 

 落ちた衝撃、機体からコックピットにいる霧山に伝わる。

 

「霧山!」

「……大丈夫!」

 

 霧山も遺物たる兵器。デザインドだ。

 常人なら苦しい衝撃を受け切り、すぐにフレイドの心配に応えて機体を立て直す。

 

≪この感覚、初めてだな≫

 

 対して〝A〟もすぐに機体を立て直す。

 戦いはまだ終わっていない。

 

≪今まで戦いを一方的に終わらせてきた。ただの処理で終わる、つまらない戦いを続けてきた。ようやくだ……ようやく身を削る本気の戦いに巡り合えた!≫

 

 直後、最後の力を放つ。

 機体のリミッター解除。各部の装甲を排除し、排熱の炎が機体から溢れ出る。

 オーバードウェポン発動時と同じく機体の出力が飛躍的に増していく。

 

「アイツ、燃えてる……こんな隠し玉まで持っているのか!」

「普通じゃない。だけど俺も……!」

 

 霧山は求める。相手と同じ力を。

 そしてAMSを通して機体が応える。

 

――リミッター解除

 

 歪んで、警告だらけになるコックピットモニターの表示。

 

――稼働限界に注意してください

 

 ノイズ混じりで晴陽のCOMが告げる。

 そして〝A〟と同様に出力が飛躍的に上がっていき、装甲で閉じていた単眼を表に晒す。

 

「これで終わらせる!」

≪締めくくりも最高にしよう!≫

 

 最後の攻撃。

 霧山はダメージを負っている左腕部の武器腕ブレードに全てを賭ける。

 

≪斬る!≫

「斬る!」

 

 桁外れのブースター出力で両者は飛び出す。

 200mの距離を一度のハイブーストで詰めて、一気に至近距離へと飛び込んだ。

 

≪この戦いのために!≫

 

 高揚した勢いでレーザーブレードを振るう。

 

「二人のために!」

 

 レーザーブレードの刃が近付き、焼ける装甲。

 斬り溶かされる前に武器腕ブレードでレーザーブレードを破壊する。

 

≪この一瞬のために!≫

 

 これで〝A〟の武装はキャノンのみ。それを至近距離で撃ち放つ。

 

「これから……」

 

 コックピットハッチを兼ねた頭部が吹き飛び、コックピットから生身の目で〝A〟を見る。

 

「生きていくために!」

 

 互いに繰り出す最後の一撃。

 振るった刃が機体を斬り裂き、撃ち放たれた砲弾が機体を吹き飛ばす。

 

「ぐっ――」

≪死と引き換えにして良かった……最高だった、剣豪――≫

 

 両者の声は途切れ、倒れた。

 

「おい、霧山!」

 

 機体が爆発の連続で炎に包まれ、残骸となっていく。

 

「霧山!!」

 

 戦いは終わった。

 炎上する機体から上がった煙が、戦いの終わりを示す。

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