ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution   作:D-delta

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第三話 仲間と共に

 霧山の機体の整備が始まってから数時間後のこと。

 基地内のシャワー室にて。

 

「ちょっと、また連れ込んでいるの? 好き放題させ過ぎじゃない?」

「ここヴェニデよ? 彼女、この基地を復旧させた力の持ち主だもの。指揮官以外は誰も口出し出来ないってば……」

 

 女性用シャワー室での噂話。

 誰を差しての噂話か?

 その者はシャワー室の一角にいる。

 

「フレイド、今日は霧山と一緒に頼むね」

「アルス姐さんさぁ……今日も噂されているよ」

「させておけば? どうせ、この基地全般の整備を指揮してるアタシに逆らえる奴なんて全然いないもん。いたとしてもACのキャタピラでひき肉してやるよ」

 

 噂話が差していた人物はアルス・ノイン。

 本来男性が入れない女性用シャワー室に男子であるフレイドと霧山を連れ込み、狭い個室に裸体で集まっていた。

 もはや力がある故の無法。不満を抱えていても、アルスより下の者は逆らえない。

 ヴェニデという組織はそういうところである。

 

「はぁ……周りの目が痛いけど、とりあえずは洗うよ。霧山、背中の方を頼む」

「了解」

 

 フレイドはシャワーで一度全員を濡らして石鹸を泡立たせ始め、それを見よう見まねで霧山も石鹸を泡立たせる。

 二人の手は石鹸の泡だらけ。そこから前を担当するフレイドをお手本にしながら、霧山はアルスの背中に触れる。

 

「霧山、爪は立てないで撫でていくようにやっていくのがいいぞ」

「分かった」

 

 初めて触れる女性の柔肌。

 アルスの女体に若干顔を赤くするフレイドに対して霧山は機械的に異性への羞恥心など一切なく、ただ感覚を掴むように洗うことを実践していく。

 

「フフ、毎回やってくれるフレイドが上手いのはともかく、霧山も意外と上手くやれるじゃん?」

「うん。フレイドを手本にしているから」

 

 二人に洗ってもらって気持ち良さ気なアルス。

 

「へぇー良い手本になってるってよ、フレイド」

「そりゃ先輩だからね。当然の手本さ」

 

 褒められて調子を良くするフレイド。

 そこからアルスが思い出すように「そういえば霧山の機体さ」と話題を変える。

 

「俺の機体が、なに?」

「いやさぁ、晴陽って機体名まで珍しい名前なんだなぁって思い出してさ。なんか機体との思い出とかないの?」

「ない、と思う」

 

 自分の名前も把握出来てなければ自分の機体のことも把握していない。

 分かっているのは晴陽という名の自機を人機一体で自由自在に動かせることだけ。機体との思い出など霧山の記憶にはない。

 

「あれ、でも……」

 

 しかし洗う手を止めさせるほどに、記憶にはなにかある。

 機体との思い出ではない。違う別の思い出。

 微かに残っている遥か遠い記憶。

 

「なにかあるのか?」

「アタシにも聞かせてよ!」

 

 霧山の思い出に興味のあるフレイドとアルス。

 でも霧山は思い出せずに「ごめん。思い出せない」と告げる。

 

「なーんだ。なんもないの?」

「その言い方はダメだよ、姐さん。霧山はなんか記憶喪失っぽいから」

「……そうだね。ごめんね、霧山」

 

 二人の気遣いが向けられる。

 それに対して霧山は「気にしないで」と気遣いに気遣いを重ねたものではない、事実としてなにも感じていないことを告げる。

 

「あ……」

 

 そんな時、霧山は尿意を催す。

 

「おしっこ」

「ちょ、ここで!?」

「おいおい俺とアルス姐さんにぶっかけるなよ?」

 

 二人にぶっかけないように飛ばす方向をコントロール。

 壁に向けて霧山は出すものを出した。

 

「え、えぇ!?」

「お前、それどうなって……?」

 

 途端、フレイドとアルスは霧山から出た液体に驚く。

 尿とされる液体の色が健常者の出す色ではなく、真っ黒だったのだ。普通の人間が出す色ではない。デザインドであるが故の液体の色。成分はナノマシンだ。

 

「シャワーで流す?」

 

 霧山がそう言うとアルスは即座にシャワーで真っ黒な液体を流した。

 

「霧山、お前は一体なんだ?」

「分からない。でも、俺を格納庫に案内してくれた人に遺物と言われたのは覚えている」

 

 フレイドの問いに霧山は答える。

 もちろん自分が何者であるかも把握しておらず、ただ心当たりのあることしか答えられない。

 

「姐さん、霧山を案内したのって……」

「バーンズ指揮官だよ。洗った後にアイツに聞きに行かなきゃだね、これは」

 

 霧山のことを聞きに行くという新たな用事が出来る。

 こうして三人の洗う時間は過ぎていく。

 

  ※

 

 シャワー室での一件から数時間後。

 基地内の指揮官室にて。

 

「バーンズ、霧山のことで聞きに来たんだけど」

「アルスとフレイド、それと霧山か。霧山のなにを聞きに来た?」

 

 アルスを筆頭にして三人は、バーンズに霧山のことを聞きに来ていた。

 

「霧山の全部。教えてよ、バーンズ。黒いおしっこ出す得体の知れない子の世話は、大変以上の問題なんだから」

「分かった」

 

 その要求にバーンズは応じて話を始める。

 

「まず彼と彼のACはタワーで発見した遺物だ」

「遥か昔の人間とACってことですか?」

「そういうことになるだろう。発見時、霧山はタワー下層の奥深くにあった冷凍カプセルの中で眠っており、ACは霧山を見守るように冷凍カプセルの近くに放置されていた」

 

 フレイドの疑問に霧山をタワーで発見したこと、発見時の様子を語るバーンズ。

 

「そして彼をタワーから引っ張り出し、検査した結果……内臓、骨格、血管、身体のほぼ全てが人工物に置き換えられた強化人間とでも呼ぶべき存在だと分かった。だが、それ以外は分からないことの方が多い」

 

 続けて語られることは霧山の素性。強化人間――デザインド。

 霧山の外見は普通の人間と同じだが、身体内部のほとんどを機械に置き換えられ、通常の兵士よりも凄まじく高い戦闘能力を発揮出来る。

 

「だから感情が少なくて、おしっこも黒かったりするんだ?」

 

 その力の代償に人間らしさを失う。

 霧山が人間という体を保っていても人間らしさをどこか失っているのは、このためだ。

 

「分からないことの方が多いと言った。ACもACで霧山以外に動かせず、解析が難しい特殊システムを使っているのだからな」

 

 遥か遠い昔のシステム――AMSというシステムを組み込んだ霧山のAC、晴陽。

 ヴェニデも含めた今の三大勢力には霧山共々晴陽を解析、再現することは出来ない。

 

「だから実戦投入しているという訳だ」

 

 解析も再現も出来ないなら、どういうものか分からないながらも使うしかない。

 その結果が霧山と晴陽の実戦投入。そして今の状況である。

 

「なるほどね。とりあえず力こそ優先って訳だ」

「それこそがヴェニデだ、アルス。無力なのも、力を使わないのも、意味がない」

「あーはいはい、分かってるよ」

 

 ヴェニデは力で成り立ち、また力を欲する。

 それを今一度、口で示して霧山に関する話は終わった。

 

「さて、私からこれ以上語ることはない。次は任務について話す。今から十分後に作戦を伝える。格納庫で待機していろ」

「あーいよ」

 

 次にあるのは任務。

 バーンズは三人に格納庫での待機を命じて指揮官室を出ていった。

 

「んじゃ、格納庫に戻っていよっか」

「久々の出撃か。緊張するなぁ……霧山、遺物だかなんだかで強いみたいだから頼りにしているからな。まぁ逆に頼ってくれてもいいけどよ」

「うん」

 

 三人も任務のため、バーンズに続いて指揮官室から出ていく。

 フレイドに肩を組まれて一緒に行く霧山にとっての二度目の出撃が迫る。

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