ACVD ヴェニデの剣豪 REvolution   作:D-delta

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第七話 友

 補給線防衛から数時間後。空が夜に染まっている時間帯。

 第23支部特務隊の地下基地、格納庫にて。

 

「ほわぁぁ……」

「…………」

 

 あくびをするフレイドと黙って大人しくしている霧山。

 二人は格納庫の隅っこで、アルスの指揮下で整備されているACを見上げる。

 

「霧山」

「ん?」

「お前と機体、本当に強いよな」

「俺? 強い?」

「そうだよ。あれだけのUNACを撃墜して、しかもアルルドまで殺してしまうんだからさ。本当に強いよ」

 

 霧山に自分が強いという認識はない。ただシステムに従ったに過ぎないのだから。

 しかし事実として霧山と晴陽は強い。フレイドの目から見ても、今回の戦果から見ても、その強さは明白だ。

 

「だから、また頼りにしているよ。先輩としては失格だけど……」

「失格?」

「そうさ。俺、弱いもん。ACに触って一か月も経たないヒヨッコだから」

「じゃあフレイドは先輩じゃなくなる?」

「そうだな。もう先輩風も吹かせないよ」

 

 自分で言ってフレイドは傷心。

 霧山の活躍を思い出せば出すほど自分の力のなさを痛感している。

 

「フレイドのこと、なんて思えばいい?」

「なんて思う、か。戦友……友達?」

「友達」

 

 先輩と後輩という上下関係。それが対等な関係へと意識が変わっていく。

 

「でもこれでいいかもしれない。お前とは先輩後輩よりも友達という方がしっくり来る」

「……じゃあ、改めてよろしく」

「え、あぁ。改めてよろしくな」

「うん」

 

 改まって握手を求めるフレイドの手。

 霧山は応えて、フレイドと握手を交わす。

 

「お二人さーん!」

 

 友として握手を交わしているところにアルスが二人を呼んだ。

 二人が声の方を見れば、アルスが自分の仕事を終えて歩み寄ってくる姿が映る。

 

「なに、姐さん?」

「アタシの仕事終わったから、一緒に夕飯でもどう?」

「あ、食べる食べる! 霧山も行こうぜ」

「うん? うん」

 

 食事というものを理解してなさそうに霧山は夕飯を承諾。

 霧山はアルスとフレイドと一緒に移動し、格納庫を離れる。

 格納庫から数分の移動。到着するのは食堂だ。

 

「んぁぁぁ腹減ったぁ」

「姐さんたち整備班は今日だけで結構整備しているもんねぇ」

「ねぇー、ACいじり回すのは好きでも流石に数多いと疲れるわ」

 

 三人は食堂の短い列に並ぶ。

 それから少し待って順番が来ると一枚の皿に盛りつけられた料理、プレートランチを渡される。

 

「霧山、それ持ってこっちに来い」

「これのこと?」

「そうそう、それ。行こっ」

「あ、うん」

 

 初めて見る料理を不思議に思いながら言われた通りにして、霧山はフレイドと一緒にアルスの座るテーブルへと向かう。

 

「お隣失礼、マダム」

「フ、何言ってんのさぁ」

 

 アルスに言うフレイドの冗談と共に霧山も一緒に座った。

 三人揃っての食事が始まる。

 

「そういえば霧山、お前の身体のほとんどは人工物なんだよな?」

「たぶん?」

「腹はちゃんと空くの?」

「んー……」

 

 腹が空くという感覚はない。なにか食べたいという欲求も特になく、水分補給も頭にない。

 

「特にそういうのはない」

「マジか。タワーの技術で強化されたら、食事も必要ないのか」

 

 話しながら料理を口に運ぶフレイド。食事を一切しない霧山。

 そして会話に入らず黙々と料理を口に運び続けるアルス。

 生身の人間であるフレイドたちが食事して生きている一方、霧山は遺物の技術によって生かされている。

 

「でもまぁ食べてみろよ」

「お腹は空かないけど?」

「味だけでも楽しんでみればいいってこと」

「分かった」

 

 そこでフレイドに勧められて霧山も料理を口に運んで、咀嚼し、飲み込む。

 口の中に広がる味覚。食べ物が喉を通り、腹が満たされていく感覚。

 

「おいしい」

「だろ? 今日は当たりの料理だからな、ちゃんと食うんだぞ」

 

 霧山は食事というものを知った。

 そこからは生身の人間であるフレイドと同じく食事をする。

 そんなひと時が流れる。

 

  ※

 

 食事から数分後。

 すっかり皿の上の料理をさらえた三人は兵舎に移動していた。

 

「で、今日も同じ部屋?」

「もっちのろん。あ、霧山も一緒でいいからね」

「んぇ?」

 

 なにを話しているのか、霧山は首を傾げる。

 

「あ、えっと、俺と姐さんは一緒の部屋で寝ているんだよ」

「告白されちゃったからねぇ。だったら同じ部屋でいいしょって感じ?」

「へぇー」

 

 説明されて話が見えてくる。

 つまりフレイドとアルスは一緒の部屋で寝ているということ。そんな男女二人の部屋に霧山が追加で入ることになる。

 

「それで部屋はどこ?」

「そこだ。来いよ」

 

 フレイドが指差す方向にある部屋。

 そのままフレイドとアルスは部屋へと入り、霧山は付いていく。

 

「ここが二人の部屋」

 

 部屋の室内。中は特別広くも狭くもない質素な作りの個室。

 机と椅子、ベッドは一人用と二段ベッドがあるなど家具は一通り揃っており、その上で二人の私物などが室内を彩っていた。

 

「あんまり面白味もないけど、自分の部屋だと思って使ってよ」

「霧山、お前のベッドは二段ベッドの上の方。下は俺が使っているからな」

「うん、上の方ね。分かった」

 

 これからはこの部屋が霧山の自室となる。寝る時はみんなと一緒に、である。

 

「霧山のベッドも決まったし、今日はもう疲れたからパパッと寝よ」

「ちょっと姐さん……寝支度もしないでベッドに入ろうとしないで」

「いやん」

 

 アルスがそのままの格好でベッドに直行するのをフレイドが引き留める。

 

「霧山、ちゃんと寝支度してからだぞ」

「うん。やり方は?」

「あ、俺がちゃんと教えてやるぜ」

 

 もちろん霧山も例外じゃない。

 アルスと霧山はフレイドに連れて行かれ、寝支度が始まる。

 

「さて本日の二度目のシャワーだ。まずは姐さんから」

「んー、好きに触っていいから手早く終わらせちゃってぇ」

 

 シャワー室に移動。

 疲れ気味のアルスをフレイドと霧山で前後に挟み、上から下、異性が触るには抵抗のあるところまで洗う。

 そうして数十分を要し、アルスを洗い終わる。

 

「よし、オッケー」

「んじゃ先に上がってるねぇ」

「歯磨きと着替え! 姐さん、忘れないでよ!」

「はいー」

 

 シャワー室の個室から出るアルス。

 残るは霧山とフレイド。女性用シャワー室で裸の男子二人である。

 

「さて、次は俺たちだ」

「うん」

「自分でどこをやるかは分かるな?」

「見てたから大体分かる。背中は?」

「そこも俺がやってやる。その代わり、俺の背中は霧山がやってくれよ」

「任せて」

 

 一つの石鹸を使い回し、まずは自分の手の届く範囲を洗う。

 そこから手の届かない範囲を二人で洗い合って、全てをシャワーで流す。

 これで体はスッキリである。

 

「ふぅ……俺たちも上がるか」

「うん」

 

 二人も個室から出る。というところで、扉を開けようとしたフレイドの手は止まった。

 

「あー疲れた。出撃した度に整備に駆り出されるの面倒くさいわ」

「今日は楽だったから良かったけど、雑用だからって整備までやらせないでほしいよね」

 

 愚痴を言う女性の声。

 ここは女性用のシャワー室。

 アルスがいない今、ここにいるのがバレた場合、ただでは済まないだろう。

 

「マズい。どうしよう」

「どうしたの?」

「えっと、出られなくなった」

「ふーん」

「お前なぁ……」

 

 霧山にはいまいち分からない。男女の意識など特に関心もなく、不思議に思って首を傾げるだけだ。

 

「バレない内に出ていくのがベストだけど……なにかないか――」

「えっ……」

 

 フレイドがどうするか思考している時、個室の扉が開かれた。

 二人の視界にアルスではない裸の女体が入る。

 

「あ、あの、違うんだ! 俺たちは……!」

 

 裸体の女性と目が合い、フレイドは必死に言い訳。

 もちろん相手が言い訳を聞き入れてくるはずはなく――

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」

「違うんだぁぁぁぁっ!」

 

 悲鳴を発した。こうして何人もの女性が助けに駆け付け、見つかった二人は何人もの女体に揉まれて拘束。アルスがすやすや寝ている自室へと連行されて一日が終わった。

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