【SAO】 †ネトゲの姫が開幕爆死した件† 作:数門(かずと)
だいぶ時間がたった
あれから……チャレンジャーのリーダーを屠ってから、1週間が経つ。
この一週間、俺はひたすらぶっ通しで【隠しダンジョン】を探し続けた。
下は1Fから、上は51Fまで。ひたすら……だ。
ゴーストのごーくんのテイマー能力を駆使し、
マップ全体を透視しまくること一週間。
この間、ほとんど俺は眠ってはいない。
飯もろくにとっていない。
これは俺への罰のようなものだ。
いくら俺が苦しかろうが、漆黒はさらに苦しいはずなのだから。
しかし……結果は……
無残なものだった。
全く見つからない
影も、形もない
薄々、そうじゃないかとは思っていた。
見落とした記憶なんて、なかったからな。
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―――――
――
このゲームには隠しダンジョンというものが稀にある。
その名の通り、隠されたダンジョンだ。
ダンジョンの中から隠し通路を通って行くこともあれば、
ダンジョン自体が入り口が巧妙に隠されていることもある。
当然、それらはとても見つけにくい。
だが、だからこそ見つけた時のリターンはでかい。
俺の装備にもそういうレアダンジョン経由のものがあったりする。
……探そうと思ってすぐほいほい見つかるものではないだろう。
それらは滝の中にあったり。藪の中にあったり。
崖の下にあったり。
あるいは、なんでもないところに落とし穴があり入口だったりと。
「奇跡的な偶然がないと、一生みつからないんじゃないか?」
と思うものがいくつもある。
普通のプレイヤーには、文字通りSAOに一生を捧げても見つかるまい。
普通ならな。
だが、俺は別だ。
特別だ。
このゲームで、俺以上に隠しダンジョンを知ってる奴はいまい。
何故そういえるのか?
なぜなら、俺にはゴーくんがいる。
ダンジョンがいるところは敵がいる。
ゴーくんは壁や土すらもオブジェクトを超えて敵を探知できる。
決して、見落とすことはない。
なんせ、俺は……俺たちはありとあらゆるところをチェックして回ったからな。
最前線に限らない。それこそ、一番下……第一層。
地面の中から空の上。それこそ外壁を超えたさらに先までもだ。
普通のやつなら絶対探さないであろう、町中すらも隅から隅まで探したことがある。
だから断言できる。現在は51Fが攻略の最高層だが……。
50Fより下には「階層レベルを遥かに超えるような、高レベルモンスターのいるダンジョン」はないと。
この一週間、すべてのフィールドを駆け巡り、改めて探したが、やはりなかった。
つまり、あるとしたら……。
「高レベルモンスターのいる場所につながっている通路」のようなものがあるということだ。
上層部へのショートカット。これならゴーくんの目には入らない。
だが、そんなものがあるとしたら。
いまの俺には見つけられない。
どうすべきか。
……何を置いても、必要なのは情報収拾だな。
そうなると、真っ先に思いつくのは情報屋だが……。
だが、情報屋には頼りたくない。
持ってると思えない……というのが1つ。
そんな高LVボスやモンスターがウロウロしてるダンジョンがあれば、
俺ですら無理と感じるんだから、一般の奴らなら瞬殺もんだろう。
警告ぐらいでていそうなものだ。全くどこも見かけないってのはなさそうな気がする。
もう1つは、確かに何かしらの情報を得れるかもしれない(得れないかもしれない)。
だが、確実に、俺の情報も渡さねばなるまい。
そして、その情報を誰かが欲しがれば、そこは情報屋。
あっさりと売られてしまうだろう。
それは許可できない。
その、漆黒がいる隠しダンジョンは、もしかするとPKギルドどもが「共用」で使ってる可能性もあるのだ。
複数のPKギルドが知ってるのかもしれない。
アギトは元々別ギルドからきたといってたしな。
俺が知らないダンジョンとなれば、相当根堀り葉堀り情報屋に質問しなければいけないだろう。
話題と判断が複雑で他人を間に挟むこともできない。俺が行くしか無い。
だが、そこまで聞けば当然、聞いてる奴は目立つだろう。
そして、その「隠しダンジョンに異様にしつこい奴」をPKギルド共がマークしてたとしたら……?
「殺された仲間を助けたがるやつを、刈り取るための罠」だとしたら……?
有り得る話だ。
そして、ここが一番だが。そのくせ肝心のダンジョンは……
ショートカットは、情報屋が知ってるとは限らんときたもんだ。
聞くだけ聞いて、リスクはあがりリターンがゼロ。こうなったら最悪だ。
強いギルドやPTに所属してるならまあいいだろう。
バレたところで、強力なバックボーンが身を守ってくれる。
情報収集ごときで、一々PKギルドも喧嘩をうりにはいかないだろう。
総力戦になったらPKギルドに勝ち目はない。
だが、ソロの俺となると事情は全く変わる。
俺の情報公開という行為が、かなり危険なリスクへと跳ね上がる。
ならば、どうするか。
歩きながら俺は考える。
これでいいか?いや、いいはずだ。
……何度考えても、情報屋ルートでリスク・リターンが釣り合ってるとは思えないな。
やはり、情報屋には頼れない。
……正確には、信頼出来る情報屋がいないので頼れない。
……となると、だ。
……となると、やはりここに来るしか無いのか。
ザッ
俺はそこにたちどまると、目の前の巨大な建物を見上げて思う。
来たさ半分、来たくなさ半分といったところだが……。
だが、きっと手がかりはここにある……。
第一層。
漆黒を「死亡確定」とやらの場所に送ったという、アギト。
あいつが、元々いた場所。
そう。
アインクラッド解放軍本部……。
通称 『 軍 』 の本拠地のある街。
『 始まりの街』のその入口の前に、俺はいた
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さて、まずはどうするか……。
入隊するか、しないかだが……。
今回、軍に入るにあたって、目的はおおまかに2つある。
一番の目的は、隠しダンジョンへ道の情報を得ること。
理由は当然、漆黒を一刻もはやく助けるためだ。
漆黒が失踪してからすでに8日……。もはや、飢餓のラインは超えている……クソッ!
二番目は、PKギルドについて詳しくなること。リスト入手などできればなお良い。
こちらの理由はいうまでもないな。
漆黒とは別口で、ゴミは掃除しなきゃいけないだろう?それだけの話だ。
PKギルドをのうのうと見逃していた俺の甘さが、今回の事態を引き起こした。
誰かが、誰かがやらなきゃいけなかったんだ。
それを命が惜しいからと、存在を知りながら……
そして解決する力がありながら、我関せずを貫いた結果が、これだ。
PKは許さない。存在を、許さない。
罪には罰を。死には死を。
誰もやらぬというならば、俺がやってやる。
例えいつかレッドに落ちようとも……。 ※レッド=殺人犯罪者
同じ過ち、二度と繰り返してなるものか。
それに副次的な理由もある。件の「ショートカット」は、PKギルドのほうが詳しいんじゃないかという推察だ。
PKギルドの<<チャレンジャー>>共が知ってたから、というのも根拠の一つ。
もしかすると、PKギルドだけの横のつながりや情報網があるのかもしれない。
蛇の道は蛇というやつだな。まあ、ここらへんは余り期待はしてないけども。
だが、これらの情報を調べる際に、気をつけなくてはいけないこともある。
それは……これらの情報を探してる事を、軍には【絶対に知られてはいけない】ということだ。
なぜならアギトに関しての話を推察すると、だ。
・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「軍の内部にPKギルド並みの暗部」
があるのはほぼ確定といっていいことだからだ。
確か、あの時……そう、タゴンだったか。俺に情報提供したあいつはこういった。
>(なんか上がミスって、責任を引き受ける……スクープゴートっつーの?
ああいう形で出てきたみたいだぜ)
>(軍は一応は口だけでもねえみてえでな。オレンジっぽいギルドは目星をつけてるらしい。
そういうリストもあるらしいぜ。そっから、俺たちを見つけてきたんだ)
>(その結晶は、90層以上クラスのボスがいるダンジョンにつながってるって)
> (上司ともども、そのために(MPKのために)マークしたって何度も言ってたし)
90層以上クラスのボスにつながってる回廊結晶(ワープポータル)?
じゃあ、そのポータルは【いつ開いた】?
……当然、ギルド<<チャレンジャー>>に来る前だ。つまり、軍にいるときだ。軍の上司やなんやらと、一緒にいる時だ。
その軍の上司は【何のためにそんなとこに結晶を開いた?】
……決まってる。アギトと同じ目的……。
そう、「MPK用に使うため」だ。
その可能性が最も高い。
そして、かなり率の高い推測として、アギトと同類であるはずだ。
そうでなくば、そんな場所にゲートは開かないし……
そもそも、真っ当なやつが上司で、アギトの本性を知ってるなら、
アギトを追放なんかの「ヌルい」手段で放置しないだろう。
有名なPKどもの軍の管理下の『牢屋』に放り込むはずだ。
それに、アギトも元々の上司をかなり恐れてたようだった。ダンジョンの詳細を言ったら殺されるとかなんとか……。
つまり【本当にPK経験がある】上司だったんじゃないか?
そうじゃなきゃ、同じPKのアギトが恐れたりなんてするまい。
PKするような人種ってのは基本的には、PKしないプレイヤーを、まず見下してるからな。
そこらへんの理由を統合すると、「上司も同類」で間違いあるまい。
つまり、アギトがチャレンジャーにきた流れはこうじゃないか?
頭の中で仮定のストーリーを組み立てていく。
まず、軍の暗部が、隠しダンジョンを見つける。MPKにちょうどいい場所を見つけ、
そこをアギトなり上司なりがマークする。1つか2つかマークしたんだろう。
こいつらはPK的活動をしてる奴ら。
で、何かヤバイ出来事があり、悪事がバレそうになったんじゃないか?
だから、スケープゴートとしてアギトに罪をかぶせ、切り捨てた。
で、行き掛けの駄賃か口止め料かなんかで、アギトが結晶をもらってきたか盗んできたかした。
そして、後は見てのとおりというわけだ。
アギトはチャレンジャーに入り、そこで同類共と手を組んで、漆黒をハメた。
すでに落とし前はつけてやったが……。
まあ、この推理が正しいとは限らない。
だが、アギト……PK野郎との同類がいるのはほぼ間違いないはず。
そいつらが隠しダンジョン情報を独占してる、これも間違いないはず。
つまり、隠しダンジョンへのショートカットを堂々と探せば……
PK集団に、PKして下さい、と言ってるに等しくなる。
俺もこれで高LVだし、簡単に負ける気はないが……。
ないが、単に高LVというだけなら仕留める方法なんて五万とある。戦わなければいいだけだからな。
俺でもいくつかは思いつく。
特に、味方の振りして近づけるとなればなおさらだ。
楽観的に考えるのはやめたほうがいいだろう。
しかし、そうなると、だ。
……チッ。
やはりこれを考えると、入隊はしないとダメか……。
外から質問して、マークされないのはまず無理だろう。
ついでにいうと、マークされるだけならまだいいが、結局答えも見つからんだろう。
方法は2つ。
1.入隊して、こっそり調べる。
2.あるいは、こっそり調べる事ができる、絶対に裏切らない仲間を見つける。
目立つ手段は取れない。これでいくしかないかな。
入隊はしたくなかった。
本気でしたくなかった。
あれをしたくないし。
……が、そうも言ってられないか。
……。
……。
…………。
……はあ。
名前、やっぱ全部公開しないとダメだよな……。
軍に向かう足取りは重かった。
色んな意味で。
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————
——
「止まれ!……見かけない顔だな。所属と名前をいってもらおう」
「大人しくしとけよ」
軍ギルドに入るため、ギルドの門までたどり着いた俺だが……。
そこにたっていた門番らしき2名に止められた。
フルフェイスすぎだろ、顔がわからねえ。
まあ俺もマントフード被ってるからお互い様ではあるが。
いや、あそこまで完全に隠れちゃいないが。
しかしギルドにわざわざ門番なんておくか?受付ならともかく。
一々ご苦労なことだ。
軍てのはかなり見栄えというかそういうのにこだわるらしいな。
何もたたずに、座ってりゃいいのに。
まさに「軍」だな。
「……名前は『天』。所属はない。ソロだ。ちと軍に用があってきた」
……ささやかな抵抗で、本名は言わない。
まあギルド入ればバレるけどどうせ。
なお、天といったのは、天使からとった。
何故猫じゃないって?
あれは友人用だ。
「へえ。この時期になってもソロとは珍しい。
……ここでは、軍の受付や門番のようなものをしているが……軍に何のようだ?」
「何、ソロじゃ流石に辛くなってきてね。ご高名な軍に入らせてもらえればと思ったまで」
「ほうなるほどな。だが残念だったな。今、我が軍はソロからの入隊は許可していないのだ」
「……なんだと?」
「軍も大きくなった。だが、ここまで大きくなると、甘い蜜を求めて入ってくる輩が多い。
権力も大分つくようになった。
大きくなるまでのつらい時期は他人任せのくせに、大きくなってから入ろうなんて甘すぎるわ。
ゆえに、ある程度歴史や名のあるギルドや紹介なら別だが、基本新規はいまは渋っておる。
特に、ギルド運営の苦労を知らんソロは完全にお断りだ。
ギルドから追い出されたソロはもっとお断りだ。
ま、そういうわけだ。
ソロはいままでの事例からして、トラブルを起こす率が高すぎるんでな。
足手まといはいらんというわけだ」
「む……」
なるほど、筋は通ってるな。だが……。
「……要するに、足手まといじゃなきゃ入れるってことだろ?
俺は条件を満たしてると思うよ」
LVの高さには自信がある。
それに、内部にPKがいるようなギルドだ。
どうせ、中に入っちまえば、規律だのなんだのザルなんだろう。
「ほう、自信満々だな。じゃあ聞かせてもらうが、LVはいくつだ」
所詮ここまでソロでやって、泣きつくような輩だ。
どうせ大したことないんだろう?
そんな目をしてるな。
だが、俺は事実をつげるまでだ。
どうせギルド入れば、ばらさざるを得ないだろうし。
一呼吸おいて、相手の目を見据えて俺は告げた。
しっかり答えないとな。
「俺のLVは——72だ」
そういった瞬間だった。
「……」
「……」
奴らは一瞬、だんまりになった後……。
「……プッ」
「……お、おいおい。笑うなよ。失礼だろ……クックク」
「てめーも人の事いえねーじゃねーか……プハハッ」
顔を見合わせて、なんか笑いだしはじめた。なんなんだ。
「……何がおかしいんだ?」
「何がって……ププププハハハ……まだわかんないのかよ!あーダメだ、腹痛えええええ!」
「72?72だと?クハハッ。アーハハッ!
ないない、流石にそれはないな。
入隊時にフカす奴は珍しくないがな、
ちっとは常識ってやつも知っておいたほうがいいと思うぞ?
トップの攻略組でも60そこそこぐらいだろうに……。
フフフ……それにしても、72って。
嘘つくにしても、もうちょいマシな嘘があるだろうに……プフフッ」
「しかも、そんだけ高くてソロ主張とか……せめてさあ、血盟騎士団に入ってたとかさ。
聖竜連合に入ってたとかさ、それぐれーならまだわかるけどさ。
ソロはねーだろソロは……ククク。
ソロ狩りの狩場確保の難しさ、しらねーのかよ」
「ヒー……ハハッ。その上、そんだけあって【辛くなってきたから】とか。
どこで辛くなるんだよ!なる場所がねえよ!」
「なんで軍に入るの?入る必要あるの?」
「俺らの倍ぐらいあることになるし。
つか軍で一番LV高いグループよりも遥かにたけーし」
「軍でぶっちぎり最強になっちゃうじゃん。一人で無双できるわ。俺ワンパンで死ぬわ」
「そもそも知らないし。天とかいう名前。聞いたことねえ!」
「あとさ、そんだけ強けりゃどう考えてもボス攻略とか名前でるだろ。
見かけるだろ。話題にならねーわけねえし!ププッ」
「しかもなんか、すげードヤッって感じだったし。
それがまた……あ、ダメだ思い出したら笑いが……アハハハ」
「無表情でいうんだもんなあ……あーヤバイぜ。腹筋が」
「こんな短いワードでこんなに突っ込ませれるなんて……悔しい!ビクンビクンッ!」
「……」
なんかすげーバカにされてる……。
LVは嘘じゃないし、辛くなったのは戦闘的な意味じゃなくて、情報収集的な意味なんだが……。
何がおもしろいのか、やたらツボに入ったのかはしらんが、
突然大爆笑しだす門番。
そんなに面白いのか俺のLV。
あんまり人と話さんからわからん。
しかし、最前線みてるとトップ中のトップ中のトップはこれぐらいありそうなオーラだしてたけどな。
まあ、いうて1人2人ぐらいだし、本当のLVは隠してるっぽかったけどさ。
そんなことを考えていたら、前の二人はやっと笑いが収まったようで
ようやく、抱えた腹を元にもどしながら、声をかけてきた。
「ククク……あー笑った笑った。
久々に笑かしてもらったわ。
いやあ、おもろいなお前。狙ってたとしても狙ってなくても」
「いやいやほんと。こんな中だと笑うこと減るからねえ。
いやーいいもん聞いたわー。しばらくはネタに困らんわー」
「いや、本当なんだが……」
「いやいや、そういうのいいから。もういいから。また笑っちゃうからやめて。
それにお笑いは引き時大事よ。うん」
「そうそう。やめてくれそこらへんで。
あ、なんだっけ。そうそう、入隊だっけ。
いやいいよ。とりあえず面接までは通す。俺の権限で通すわ。
万一入隊したらさんざ弄くるけど、まあ自業自得だろ。
一生ネタにしといたげるわ」
「名前、名前なんだっけ。72でいいか」
「あーそれでいいな。あーじゃあ、案内するからこっちこいよ。
あー笑った笑った。あーいくぞ。72よ」
あーあー言いすぎだろう。
つか人の名前適当に変えるなよ。
やっぱり管理適当すぎんかここ。
いや、本名で覚えられるよりマシだし、管理ザルだと想定はしてたが。
まあいい。適当についていくか……。
結果的には中に入れるみたいだし……。
——
————
——————
「さて、ここで待っててくれ。ここは事務室みたいなもんでな。
普段はここに入隊管理の権限もった人がいるんだが……。
今ちょっと席外してるみたいだな。
呼んでくるからちょっと待っててくれ。72よ」
「……」
72が定着してしまった……。
誰かのバストサイズでもあるまいに。
しかし、道すがら観察してみたが、この建物、思ったより入り組んでるな。
結構隠れたりなんたりできるのかもしれない。
まあいい。とりあえず、いささか想定してた流れとは違うのと
なんか凄いコケにされた感があるが、目的は果たしつつあるといっていいだろう。
後は……そうだな。協力者を見つけることかなあやっぱ。
何にせよ、結構上の人とのコネを作らないと……。
実力を信用してもらえればいきなり上と話せそうだけどな。
どうしたもんか……。
いうて暗部を考えると深入りしたくなさもあるからな。
入隊せずにつながりだけもてるなら、それはそれでいい。
俺は、そんならちもないことを考えながら、ふっと……。
本当に気まぐれで、机の上を見た。
……なんかのデータファイルがそこにあった。
書類の形をしたデータファイル。
(ふむ?不用心な)
中身はなんだろう。
マナーとしてはあまり良くないが、せっかくだし見てしまおう。
俺は、本当に軽い心持ちで、そのデータファイルを開いた。
そして、固まった。
なぜなら。
事務机に置いてあったソレ。
その書類の形をしたデータファイル。
そこにあったのは……。
◆レッドギルド(確定)
ラフィン・コフィン(メンバー:PoH、ザザ、ジョニー・ブラック……)
・・・・・・・・
◆レッドギルド(推定)
チャレンジャー(メンバー:グリフィス、タゴン……)
・・・・・・・・
◆オレンジギルド(確定)
・・・・・・・・
◆オレンジギルド(推定)
・・・・・・・・
(これは……!!!!!!)
犯罪者ギルドのリスト……!?
しかも、殺人を犯したギルド(レッドギルド)と
犯罪はしても殺人はしてないギルド(オレンジギルド)と
分けて記録してるのか。
実に分かりやすくて結構だ。
(ちょうど、リスト整理してたとこだったのか!)
これはいい。ツイてるぞ。
まあ、もしかすると新聞にも一部載せてるし、
ギルド内なら大した規制のない情報だったのかもしれんがな。
いや、そっちのほうがあるか。全体共有しない理由もない
だが、このチャンスを逃す手はない。
ファイルを一気にめくり、各々のページデータを鮮明にスクリーンショットとして
自分のデータBOXに保存していく。
(素晴らしい。素晴らしいぞ!)
ツイてる。明らかに波が来てる。
漆黒が居なくなって以降、下がりっぱなしだったテンションが戻ってくる。
(どうやら件のダンジョンは表のメンバーより、PK共にしれてるみたいだったしな。
これがあれば、各自に尋問していけば誰かはダンジョン知ってるはず……)
そして、ページをある程度写し終えたちょうどその時だった。
事務室のドアに、音が響いたのは。
俺は、とっさに机から離れ、身構えた。
…………………………………………。
…………………………。
………………。
…………。
……。
……あれ?
「……誰もはいってこんな」
……。どうも、誰かが扉にぶつかって、通り過ぎただけだったらしい。
人騒がせな。
どこまで呼びに行ったんだろう。あの門番。
ふむ。
ただ待ってるのも退屈だし……。
そうだな、ゴーくんにみてもらうか。
軍の規模も知りたいしな。
あとそういえば、地下に牢屋があるんだっけか。
PK共は何人捕まってたりすんのかね……。
一度気になると止まらない。
俺はさっそく、ゴーくんを地中から呼び出し
視界ジャックをして、軍の建物を眺めた。
ほう、結構な人数がいるな。
上のほうが上層部か?なんか会議室ぽい配置で人が座ってるな。
同じ階層は……広いな。訓練場っぽいところもある。
寝泊まりしてるのかな?なんか宿舎か、寝てる人もみえるな。
ふむ。地下もあるのか。
どれ、地下は……
そう思って、地下をみた。何気なく。
——その瞬間
「な、なんだと!!!」
俺を、かつてない衝撃が襲った。
まるで強烈な電流を流されたかのごとく
体中にしびれが走る。
その目から入った視覚情報は、驚愕と疑問を俺に叩きつける。
「なんだこれは……!」
なぜなら、そこには……。
そこには……。
地下に、【赤い無数のオーラ】がうごめいていたのだから……。
しかも、圧倒的な高レベルな強いオーラで、だ。
これが意味することはただひとつ。
(ここに……ここにあったのか!!!)
(あのPKのアギトが訪れたという 【隠しダンジョン】 は!!!!!!)
(街の中!いや、地下!しかも一番最初の!
どうりで……!どうりでフィールドを探しても見つからんわけだ!)
(ダンジョン上層部へのショートカットじゃなかった!
高レベルダンジョンそのものがここにあったんだ!)
(ここか!軍の地下!ここが、ここがそうなんだな!)
そして、これがあるということは……つまり。
(焦るな……はやるな……落ち着けよ。
落ち着けよ。焦っても結果は変わらない……)
つまり
【漆黒が、いる可能性がある】ということだ。
この……軍の本拠地の、地下奥深くに。
(ついに…………ついに見つけたぞ!)
(いるのか……ここにいるのか!)
(漆黒が……ここに!)
心臓の鼓動が一気に高まる。
安堵と興奮という矛盾をはらんだため息を俺は大きく吐いた。
……ふぅーーーー。
落ち着け……落ち着けよ俺。
まだ確定してない。漆黒がいないってことも、ワンチャンあるかもしれないんだ。
状況からいって、ほぼ確定だが、100%の確定ではない。
あらゆることを、想定して進むんだ。
このところ、予想外のことばかり立て続けに起こっている。
いい方にも、悪い方にも。 予想外のことばかりだ。
だから、焦ってはいけない。
しかし、勿論ゆっくりなんかしない。
ダンジョンの最奥地にいく。
それはもう、確定事項なのだ。
(……待っていろよ……漆黒)
(必ず、助けに行くからな)
そうと決まれば、もはやここに用はない。
面接?入隊?知らん。どうでもいい。
念願の情報は手に入れた。
むしろ、これ以上は変に監視され、
自分の情報が広まったり、拘束気味になるほうが面倒だ。
予想外の事態の連続だったこの道中も、それもこれで終わりだ。
今度こそは……。
先ほどまで、人をまっていたのとは一転。
【是非帰ってくるな】と念じながら……。
俺は、建物用のスニーキングスーツに身を包むと
音もなく扉を抜け出し、歩き出した。
システム的な隠密スキルと、プレイヤースキルとしての隠密スキルの両方を、盛大に発揮しながら移動する。
磨きに磨いた屋外引きこもりスキル、なめんなよ。
目指すは、地下。
そこに、漆黒がいる。
今度こそ……今度こそ。
ハッピーエンドで、終わらせてやる。
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第21話 「トントン拍子」 終わり
第22話 「ハッピーエンドvsバッドエンド」 へ続く
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