救世の魔女フリーレン   作:Assassss

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設定説明多め回


十代の子供が廃村に隠れ住みつつ迫害された子供を助ける組織を作り上げるなんていくら何でも無茶だよね

結局、アルファはしばらくこの廃村に隠れ住むことになった。フリーレンとしては、10歳の子供をこんなところで生活させるなんて大丈夫なのか……と心配だったが、弱音を吐くこともなくテキパキ作業するアルファを見て、こんなにたくましいのなら大丈夫かと少し安心した。客観的に考えれば、10歳の子供がこんなところに一人で住むなど不安が絶えないはずなのだが、なんとなく大丈夫かと思わせるほどの手際の良さだった。

なお、フリーレンはアルファに魔法での手伝いを提案したが、「恩人にこれ以上手を煩わせたくない」、「そもそもいつかの段階で一人でできるようにならないといけないこと」などという理由で断られている。

 

(元気がいいな……エルフって感情が人間と比べて薄い傾向にあるはずだけど、この子はずいぶんアグレッシブなタイプなのかな。……まあそれでも、しばらくしたら現実的にどれほど自分がやろうとしていることが難しいかわかってくるだろうし、その時に手を貸そうかな。)

 

それとは別に、フリーレンにとって驚くべき事実が判明した。その魔法の手伝いを提案しようとしたときに、瓦礫を物を浮かせる魔法で浮かせたのだが、アルファが驚愕の表情を浮かべたのだ。

 

「フ、フリーレンさん、その瓦礫はフリーレンさんが浮かせているのですか?」

「そうだけど?」

「ど、どうやってそんな魔法みたいなことを?」

「どうって……よくある物を浮かせる魔法だよ。」

「す、すごい、その杖のアーティファクト無しに……やはりフリーレンさんは何年も未来の魔力技術を持っているのですね!」

「ん、んん?流石に過大評価じゃない???」

「そんなことはありません!少なくとも私はそのような技術を見たことがありません……」

「…………???」

 

フリーレンは、どうも魔法に関して重大な齟齬があるらしいと思い、より根本的な質問をすることにした。

 

「あのさ……アルファが使える……いや、アルファが見たことある魔法をなんでもいいから一つ言ってみてくれる?」

「え?いや……私も昔は魔法使いになりたいなんて思ったことはあるけれど、今更そんな夢を見ても仕方ありませんよ……」

「……つまり、魔法を見たことが無い?」

「もちろんです。」

「…………魔力って知ってる?」

「知ってますよ?」

「で、その魔力を使って色々なことをするのが私の言う魔法だよ。」

「うーん……国の研究機関で、魔力を扱うアーティファクトの研究がされているのは聞いたことがあります。」

「そういう話じゃなくて、私が物を浮かせたように、個人が魔力で何かをすることだ。」

「いや、どうするも何も……普通の人には、武器に魔力を纏わせて破壊力を増す、身体機能を向上させる、とか?」

「……それ以外は?」

「何かほかにあります……?」

「花を咲かせるとか。」

「そんな、御伽噺みたいなこと、実際にできる訳……」

 

フリーレンは軽く浮き上がり、魔力を杖に込めた。そして、綺麗な花畑を出す魔法を行使する。廃村の一角に、美しい花の群生地が現れた。

 

「とまあ、こんな感じのが、私の言う魔法なんだけれど……アルファ?」

 

アルファは、現れた花の一つを摘み取り、それをじっと見つめていた。よく見ると、手が少し震えていた。しばらくしたのち、フリーレンを見て言った。

 

「……実は女神様ですか?」

 

フリーレンは「あ、これ絶対面倒になるパターンだ」と直感ししょぼしょぼ顔になった。

 

 

その後、フリーレンはしばらくアルファと魔法や魔力について話した。

 

結論: この世界は魔法が発達していない。

 

フリーレンの元いたところと比較して、個人が魔力を使ってできることは殆ど無い、と認識されているのだ。唯一出来ることと言えば、魔力を剣に纏わせて破壊力を増大させるとか、そういったエネルギーの源として扱う原始的な方法だけだった。自分のイメージしたものを魔法で生み出す、という概念がこれっぽっちもない。フリーレンは、先ほどからのアルファの妙な驚き具合に漸く合点がいった。

 

「……じゃ、じゃあ魔力を適切に使えば、私もあの花を出す魔法が使えるようになるのですか?」

「何年か修行する必要はあるけどね。」

「な、なら例えば、花を生やせるならば、木も生やせますか!?」

「それはもうちょっと高度な魔法になるけれど、実在する魔法だよ。」

「す、すごい、世界を一変させる技術ですよ、フリーレン様!」

「あー……うん……」

 

フリーレンは、予想以上に世界の構造が根本から異なる世界に来てしまったのだなと感じた。

ついでに、アルファからの呼び名が様付けになってしまった。おそらく、先ほどの魔法により神聖のようなものをフリーレンから感じるようになったのだろうが、フリーレンとしてはむずがゆく感じている。

 

「とりあえず、目立ちたくないから言いふらさないでほしいな?」

「分かりました。……あの、フリーレン様……」

「まあ言いたいことは分かるよ。魔法を教えて欲しいんでしょ?」

「そ、そうです。」

「……私自身は良いんだけれど、今はやめておいた方が良いと思うな。」

「それは……どうしてですか?」

「単純にやることが多すぎる。私のいたところでは、魔法使いは誰でもなれる職業じゃなかったよ。ある程度才能があるうえで、何年も努力を重ねないといけない。それにアルファは、これから悪魔憑きを助ける組織を作るんでしょ?いくら何でも忙しすぎる。」

 

フリーレンとしては、そもそも悪魔憑きを助ける組織をこの10歳の少女が作るということ自体が相当な難題だと思っていた。少なくとも、同じ年齢の頃のフリーレンならば無理だったことである。

 

「で……でも。仮に魔法が使えるようになれば大きな助けになります。そもそもこのままだと資金がありません。でも、今みたいな魔法……もっと規模が小さくても……一輪の花を咲かせるだけでも、色々な活用方法がありますよ。」

「い、いや……そもそも、天涯孤独の子供が一から組織を作ることが無理があると思うよ……?誰か助けてくれる大人を探した方が……」

「……なるほど、融資や投資ですね。……でも、融資を得るにしてもまず事業内容や収益状況を明確に出せるようにしなければならないし……身寄りの無い私に投資してくれるよう説得するならまず悪魔憑きを治せることを公にしなきゃいけなくて、でもそうすると……」

「え……?」

 

融資だの投資だのといった、子供に似つかわしくない単語がアルファの口から出てきたので、フリーレンは戸惑った。フリーレンのいたところでは、そう言った話は王都などの一定以上の規模の街ではあったが、それ以外のところでは一般的ではなかった。そのような人の多い場所に定住していた期間が長くないフリーレンは、そういったものは存在は知っているが詳しくは知らない。が、ひとまずは今そんなことを考えていても仕方がないだろうと思った。

 

「……とりあえず、明日のご飯のことを考えたら?ここにはあの野党が持っていた食べ物しかないよ。」

「あ、そうですね。あの分だと1日程度しか持たないですよね。でも確か、仮にここがカゲノ―領ならイノシシが生息しているはず。水は……あの井戸が使えるかしら。それと植生は確か……」

「……アルファって物知りだね?」

「まあ、自分で言うのもなんですけど、小さいころからよくそう言われていましたから。」

 

 

これから隠れ住む廃屋の片づけを一通り終えたフリーレンとアルファは、ミドガル王国の王都に来ていた。アルファは一応フードで顔を目立たなくさせ、フリーレンは杖を布で隠している。アルファ曰く、傍目にはフリーレンの杖は高価なアーティファクト(この単語もフリーレンはよく知らなかったが、どうも魔力を扱う高度な技術による道具のことを指すらしい)とこの世界の住人には見なされるらしく、そのためにジロジロ見られるであろう事を嫌ったためだ。

この王国に来た目的は、それぞれ異なる。アルファは、必要な物品の買い出しが主だ。フリーレンは、先日の野党や商隊の遺体、荷物を引き渡すことに加え、この地域が元居たところとどのように異なるかを確認するためだ。

引き渡しが済んだフリーレンは、アルファと共に王国内を歩いていた。その途中で、とある仮説が徐々に確信へ変わっていった。フリーレンは、アルファに質問する。

 

「アルファ。この世界に、別の世界からの人間が迷い込んだなんて話、聞いたことはある?」

「いえ……少なくとも伝承などを除けば、聞いたことがありません。」

「そう……」

「フリーレン様は、自分が別の世界に迷い込んだと?」

「どうもそうみたいなんだよね……」

 

王国に来る前までは、フリーレンは自分が物理的に元居た場所からとても遠い場所に来たのかと思っていた。だが実際はおそらく、別の世界というレベルの移動現象だと結論せざるを得なかった。魔法を使った技術は発展していないのに、この王国は人が多すぎる。仮にこのミドガル王国がフリーレンと同じ世界に存在するならば、これほど人が多ければ、どこかから魔法に関する情報が入り込んでいないと不自然なのだ。

ただ別世界だとしても、こうして言葉は通じている。文字も普通に読めるので、完全につながりが無いわけではない気もするが、今のフリーレンにそれ以上のことを考察することはできなかった。

 

「……フリーレン様からしても不思議な事象なのですね。」

「一応言っておくと、魔法でなんでもできるわけじゃないからね。死者を生き返らせるとかは無理だよ。」

「なるほど……。」

「……ところでアルファ。何買ったの?」

 

フリーレンが野盗の引き渡しをしている間にアルファは買い物をしていたようだったが、その買ったものがフリーレンの想像していたものとかなり違った。

 

「ええと、これは狩猟用の弓です。これは剣、帳簿、筆記用具……」

「剣とか弓とか多くない?あと帳簿とか要る?」

「今後、組織のメンバーが増えたときのことを考えてです。」

「……服とか食糧とかは?」

「それは別の場所で買います。」

「……でも、そういうの買ったら、お金殆ど残らないよね?」

 

アルファは、野盗の持っていたお金をそのまま使っていたようだった。ちなみに、それは倫理的にどうなんだとフリーレンは思わないでもないが、アルファ曰くこの世界では野盗を勝手に殺しても何も言われないらしい。

 

「これからは野盗の持ち物も重要な収入源です。そのためにも武器は必要です。」

「え……ちょ、ちょっと待って。これから盗賊狩りをするつもりなの?」

「悪魔憑きが救われる世界のために、フリーレン様の恩に報いるために……多少の汚れ仕事は覚悟の上です。それに、盗賊狩りはあくまで手段の一つ。組織がある程度の規模になったら、もっと安定的な収入源を確保するつもりです。」

 

そういうことを聞きたかったのではない。10歳の少女が盗賊狩りなど危険すぎる。

 

「ダ、ダメだよそんなこと。危険すぎる。」

「それでも……やらなくてはいけません。先ほど、少し剣を振ってみたのですが、悪魔憑きの発症前よりも魔力をより強固に練ることができました。どうも……この肉体が、魔力により適合したような感じなのです。これなら……私の故郷にいた、剣の師と比べてではありますが、十分な勝算があります。」

「あのねアルファ……」

 

フリーレンは、現実での戦闘というものが如何に危険かを説得した。剣の腕ではどうにもならないことがある、どんな卑怯な手を使ってくるか分からない、と。フリーレンとしては、子供特有の全能感からそのような無茶苦茶な計画を考えているようにしか思えなかった。フリーレンのいた世界でも、見習い魔法使いの死亡率は3割を超えるのだ。

 

「……だから、野盗狩りで生計立てるなんて馬鹿なことを考えちゃだめだ。他の方法を探すんだ。」

「でも、でも……そうしたら私はどうやって生きていけばよいのでしょう……。」

「それは……」

 

「そもそも子供が誰の手も借りずに生活しようとするのがおかしい、例えば孤児院に入るとか」とフリーレンは言おうとしたが、思いとどまった。そもそもフリーレン自身、この世界の事を良く知らないことに気が付いたからだ。もしかしたら、この世界の孤児院に入れることでアルファの身元がばれ、それによりもっと厄介なことになる可能性がある。大人に頼るといっても、この王都の大人が、外からの来訪者であるアルファを助けてくれるとは限らない。アルファが妙に大人を頼ろうとしないが、もしかしたらそれは正しい態度なのかもしれない。

そして、生活のことを考えなければならないのはそもそもフリーレンも同様だった。フリーレンにもお金は必要だ。長い旅生活の経験から、やろうと思えばずっと野宿でも問題ないのだが、この世界の人々と関わる中でお金が必要になる機会は沢山発生するだろう。しかし、通貨は違うもののようであるため持っている路銀は使えない。日雇いの労働か何かをしようにも、フリーレンの扱う魔法はこの世界では異質なものであるらしいので、それの使用は慎重にするべきだろう。そして、この世界のことを良く知らないことによるトラブルの発生も予想される。アルファとの出会いがかなり強烈だったために失念していたが、そもそもフリーレンはこの世界で大人の顔をできるような存在ではないのだ。

 

「……いや、そもそも私もここのことを良く知らないからね。あんまり口出ししていい問題じゃないか……。仕方ない。盗賊狩りは私も手伝うよ。」

「え?ほ、本当にいいのですか?ご迷惑では……」

「今まで大人面しておいてアレだけど、そもそも私だってこの世界のお金はある程度必要になるだろうしね。というか、危ないから私に任せておいてよ。」

「え、それじゃ私、何もしていないことに……」

 

フリーレンとしては、種族のために見た目から子供と判断されることもままあるが、基本的には自身は大人のつもりである。大人が身近な子供にそんな危険な手段で生活させるなど恥ずかしいという思いがあった。甘やかすつもりがあるわけではないが、10歳のアルファは賢い子供という見方が基底にある。

 

「い、いやいや。10歳の頃の私だってそんな感じだったし。気にしなくていいよ。とりあえずアルファは、しばらくは自分があの廃村でちゃんと生活できるようになるかを心配した方が良いと思うよ。」

「何から何まで……本当にありがとうございます。私、一刻も早くフリーレン様の魔法を習得して、役に立てるよう頑張ります!」

「うん……うん?」

 

フリーレンは、「あれ、いつの間に魔法を教えることになったんだっけ?」と一瞬疑問に思ったが、まあいいかとスルーした。

 

 

今日はブシン祭という闘技大会があるらしく、フリーレンとアルファはそれを無料の立見席から見ていた。フリーレンが、この世界の魔力による戦闘がどのようなものなのかを見ておきたかったからだ。

闘技場に、2人の男が立っている。彼らは体に魔力を纏わせ、常人には出せない威力で打ち合っている。彼らは一般的に魔剣士と呼ばれているらしく、フリーレンはまさに見た目の通りだと思った。今は本選の第一試合であり、どちらも優勝候補ではないが、相応の実力の持ち主という扱いらしい。

だがフリーレンは、なんとなく残念に思っていた。魔力の使い方が、不自由すぎる。フリーレンのいたところでは、魔法はイメージの世界と呼ばれるほどに、様々な使い方があった。火を吐く、水を出すといったものをはじめ、精神魔法、幻影魔法など、目に見えないものに作用するものまでさまざまであった。そのような、様々な魔法を探すことはフリーレンの旅の楽しみの一つであったのだが、残念ながらこの世界ではそういうものは期待できない。

ふとアルファが、フリーレンに聞く。

 

「フリーレン様……彼らには勝てそうですか?盗賊と戦うとなると、あの魔剣士を倒せる程度には強くないといけないと思います。」

「まあ……あの程度なら遅れは取らないかな。魔力量は中々だけれど、魔力の使い方が私にとっては一辺倒すぎる。……というか、さっき盗賊と戦うって言ってたアルファはどうなの?」

「うーん……楽に、とは言いませんが、なんとか勝てると思います。一対一なら。」

「勝てるんだ……」

 

魔力量的には立派なので、フリーレンの世界でも、少なくとも見習い魔法使いは勝てないという印象だった。

 

「昔から剣に関しては教えられてきましたからね。」

「アルファって……割といいとこのお嬢さん?」

「まあ……今改めて考えてみると、恵まれた環境でした。」

 

フリーレンは、悪魔憑きになったときの嫌な思い出があるだろうと考え、アルファの過去に関する詳しい話は聞いてこなかったが、どうも育ちが良いとは感じ取っていた。同時に、そんなお嬢さんでも悪魔憑きになった途端に捨てられるという現実に、なぜそこまで扱いがひどいのかを疑問に思った。

 

 

アルファが誇張抜きで何でもできる。フリーレンは少しビビッていた。

アルファと出会って数日経過した。フリーレンとしては、廃屋で子供が一人ぐらしするということの過酷さをそろそろ思い知り、フリーレンに助けを求めてくるだろうと予想していた。しかし実際はそうならなかった。

 

(なんか自力でイノシシ狩ってくるし、必要な家具とか自分で作っちゃうし。昨日の盗賊狩りだって、私の出番ほとんどなかった。最近は私に野草と肉で作った簡単な食事とか出してくれるし。何もかも順調だ……)

 

個々の仕事に関しては、常人がとても頑張れば遂行できる事ばかりだ。盗賊も、大して強い連中ではなかった。だが、人間何かしらできないことはあるというもの。頑張ればできることがあるように、頑張ってもなかなかできないこともあるのが普通だろう。しかし、アルファは今のところそれが無い。冗談抜きで欠点が見当たらない。

出会ったときからやたら利口だとは思っていたが、しばらく共に生活してみて、フリーレンは実感した。生まれもよさそうだが、それ以上にアルファは優秀過ぎる。今も、流れで教えることになった魔法をアルファに教えているところだが、上達速度が半端ではない。今は、杖(フリーレンお手製)を使って初歩的な魔力コントロールをさせてみているのだが、まったく躓く様子が無い。

 

「……こんな感じでしょうか?フリーレン様。」

「う、うん。そんな感じ…………」

「……フリーレン様、どうされました?」

「いや、上達速すぎない?」

「そうでしょうか?確かに昔から飲み込みが早いとは言われていました。」

「……常人なら一月かかるところを3日で越えた。アルファは打ち込みすぎだ。過労で倒れないか心配だよ。」

「うーん、無理をしているつもりはないのですが……」

 

実際、フリーレンは魔法でアルファが疲労を過剰に抱えていないか調べたことがあったが、無問題だった。

 

「……なんでもできる人っているんだね……」

「……私の目指す世界の為に、こんなところで立ち止まる訳にはいきませんから。」

「が、頑張ってね。」

 

あと50年程で1000年魔法使いをした自分を超えそうなほどのスペックを持つアルファに内心ビビりつつ、彼女ならば悪魔憑きを助ける組織が作れるかもしれないとフリーレンは感じていた。頑張って、というのもあながちお世辞ではなく、夢に向かって頑張る子供に対し応援するような気持ちもフリーレンには少なからずあった。

 

「……あ、反応が。」

「反応?……新しい悪魔憑きを見つけたのですか?」

「そうだね。行こう。」

 

フリーレンは、アルファに頼まれ、魔力過活性型多臓器不全病……もとい、悪魔憑きの放つ魔力を感知する簡単な装置を、廃村の周囲の森の中に設置していた。今回、それに初めて反応が出た。

フリーレンとアルファがその地点に近づくと、スライムのような体を持つ物体が動いているのが見えた。まだギリギリ人の形を保ってはいるが、肉の腐敗のせいでまともに歩行できていない。

そしてそれは、うめき声のようなものを上げながら2人を見た。

 

「ァ゛……アアア゛…………」

「……もう大丈夫。いままでよく頑張ったね。」

 

フリーレンがそう言って魔法をかけると、それは光に包まれる。しばらくすると、腐敗した肉は引っ込み、元の人型に戻った。

 

「……え、あ、あれ?私……」

「こんばんは。私はアルファ。こちらはフリーレン様よ。このフリーレン様が、悪魔憑きを治してくださったの。」

「あ、悪魔憑きが、治った……!?」

 

驚く少女に、アルファは抱きしめつつ言う。

「もう大丈夫よ。誰もあなたを蔑んだりしない。これからは一人のエルフとして生きていけるのよ。」

「ひぐ、う、うわあああああ!!!!!」

 

後にベータと名付けられる、泣きじゃくるこの少女の頭を撫でながら、泣きようからしてアルファの言う悪魔憑きの扱いのひどさは本当なのか……と暗い気持ちになるフリーレンであった。

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