救世の魔女フリーレン   作:Assassss

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七陰説明会的な。
七陰の好感度は原作並みとしました。理由はその方が面白そうだったからです。

まるでハーレムもののような好感度がフリーレンを襲う!


仲間にした子供が全員才能があるなんて都合の良い話は普通あり得ないよね。

フリーレンはそれ以降も悪魔憑きを救い、その順にアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ゼータ、イータと名前を与えた。

彼女達は全員、アルファの仲間ということになり、共に生活することとなった。結局全員が、故郷へ戻ることは望まなかった。彼女達は自らの組織を、表舞台から退いた者たちという意味を込めてシャドウガーデンと命名し、自らの手で生き抜きつつ他の悪魔憑きを救出することが目的となった。

なったのだが、救出後しばらくは、フリーレンには当然だが彼女達のことを心配していた。他の助けた少女たちは、流石に全員アルファばりに優秀な訳ではなかった。仮にそうならばフリーレンも心配しなかっただろうが、助けた少女達の中には例えば体を動かすことが苦手なガンマ、イータ、頭を使うことが苦手なデルタなどがいた。人に不得手なことがあるのは当たり前と言えるが、アルファを見たフリーレンは、実はこの世界のエルフという種族が優秀なのではという期待が少しだけあったのだ。

……なのだが、しばらくするとそれとは別の認識が生まれる。彼女達はそれぞれ、その不得手さを補うかのように特定の方面にやたら才能があるのだ。

 

諸々の手伝いをした後に、補修が進んで廃屋とは呼べなくなった家屋でフリーレンは一息ついていた。するとそこへ、青髪眼鏡の少女のエルフ、ベータが近づいてきた。

 

「お疲れ様です、フリーレン様!いつもお手伝いしていただきありがとうございます!」

「手伝いというか……やるべき事をやってるだけだよ。私もここに住んでる身だからね。」

「なんて謙虚なお言葉……流石はフリーレン様です。『フリーレン聖典』に書いておかないと!」

「…………」

 

フリーレンとしては普通の応答のつもりだったが、これも書くつもりなのか……と、フリーレンは心の中で頭を抱えた。

ベータは、見た目は気弱そうではあるが、なんでも一通りこなせるタイプだった。流石にアルファほどではないが、ここでの生活での大きな力になっている。元々は割と良いところのお嬢さんのようで、本を読むことが趣味だった。

……なのだが、その趣味が最近妙な方向へ向かっていると、フリーレンは感じていた。ここへきて何日かは、ベータは夜泣くことが多かった。悪魔憑きが治ったとはいえ、突然親元を離れ生活するなど、この年齢の少女にとっては不安で当然のことだ。フリーレンは子守唄感覚で、元の世界にあった御伽噺や、ヒンメルとの冒険の話を聞かせた。ベータ、この世界の住人にとって全く知らない世界の話というだけあって、ベータはフリーレンに元の世界の話をよくせがむようになり、それとは逆に泣く事も無くなっていった。

初期は、そう言った話を書き留めるだけだった。この世界の人間からしたら物珍しいのはまあ当然かとフリーレンは理解し、その時は特に何も問題なかった。しかしあるとき、フリーレンはベータを含む少女達に花畑を出す魔法を見せた。アルファに「それを見せれば、みんなここで生活することにも希望が持てるでしょう」と言われるつもりで、フリーレンとしてはちょっとしたショーのつもりで魔法を行使した。いざとなったら私がいるから、ここでの生活を心配しなくても大丈夫、というような勇気づけの意味を込めてのものだった。しかしその時のフリーレンは、初めてアルファに見せた時の反応を失念してしまっていたと言う他ない。その効果は劇的で、その時から少女達のフリーレンを見る目が、まるで女神か何かを見るようになってしまったのだ。もちろん個々の反応に程度の差はあるが、ベータは最も感動したようだった。どうもフリーレンを、物語の中の存在が現実に飛び出してきたような何かだと解釈したらしく、以来フリーレンの言動をなんでもかんでも知りたがるようになった。そして、フリーレンの話す御伽噺を書き記すノートにフリーレン自身の言動が加えられるようになった。フリーレンからしたら気恥ずかしくて仕方がない話であり、とりあえずその書きものの名前を「フリーレン聖典」から「日記帳」などにランクダウンできないかと悩んでいる。

さらにその中身をチラ見したところ、例えば花畑を出す魔法を使った時は「次の瞬間、フリーレン様の杖から福音のごとき光が放たれ、私たちを楽園へ誘う花々が咲き乱れ……」だの、フリーレンが何か発言した際は「女神の如き美貌を持つフリーレン様の清らかな声が響き……」だの、とにかく言動の一つ一つが一周回ってふざけてるのかと言いたくなるほど誇張されていた。流石にこれにはフリーレンもクレームを入れたのだが、ベータに「そ、そんな!せっかくフリーレン様のお役に立てるかと思ったのに……」と拝まれながら超うるうる顔で言われ、フリーレンは「え、いやまあやめてくれと言うわけじゃ……」と、曖昧すぎる否定しか返せなかった。そのままズルズルとキッパリ止めさせられないまま今日に至る。

 

「その……ベータはいつも頑張ってるね。」

「ありがとうございます!フリーレン様のお役に立てて嬉しいです!」

「……うん、その、ベータは頑張ってるから、もう少し肩の力を抜いてもいいんじゃないかな?」

「なんて慈悲深いお言葉……『フリーレン聖典』に書き加えておかないと!」

「えー……いや、そういう感じじゃなくて、えーと……」

 

別に慈悲ではなく、単なるアドバイスに近いのだが、ベータによるフリーレン美化フィルターを通すと、どんな発言も聖典に記述するに値するものになってしまうようだ。

このような相手に今まで出会ったことがないフリーレンは、どうしたら穏便な形で止められるのかが分からず、モニョモニョしたお願いしか出来ないでいる。

するとそこへ、別の少女が近づいてきた。

 

「ベータ、フリーレン様をあんまり困らせるんじゃありまぺぎゃ!」

「………………大丈夫?鼻血出てるよ?」

「い、いつもありがとうございます、フリーレンしゃま……」

 

止めてくれそうな存在が転んで発言を中断してしまった事をとても残念に思いながら、フリーレンはガンマを助け起こす。

ガンマは、黒髪のエルフの少女だ。彼女は頭がとても良く、シャドウガーデンの会計管理を任されている。盗賊達から手に入れた(シャドウガーデンのメンバーはそう表現するが、フリーレンとしては奪ったのではないかと思っている)金銭を管理し、無駄がないように管理しているのが彼女だ。その他、大口の買い物をしたり、王都の衛兵に身元を尋ねられた際のための、身元の偽造をしているのも彼女だ。元悪魔憑きである事を隠して生きるつもりの彼女達には必要な行為ではあるが、それをするにはその都市の法律や歴史等に精通する必要があり、普通10代の子供に可能なものではないだろう。しかし実際、ガンマは王都で手に入れた法律に関わる分厚くて細かい字の本を理解して読み解いて実行している様子であり、フリーレンが今まで出会った中で一番頭が良い人物なのではと彼女は感じている。

がしかし、彼女は一つ重大な欠点を抱えている。運動神経がとにかく悪いのだ。走るのが遅いとか、物を投げるのが下手というレベルではなく、普通に歩くだけで突然転ぶ。日常生活に支障が出ないか心配になるレベルだ。当然だが、剣や弓などの武器も全く使えない。

……そんなガンマも。

 

「ベータ、フリーレン様を困らせちゃダメでしょ!」

「うう……すみませんフリーレン様。」

「フリーレン様は日々ご多忙です!そうやってまた御伽噺をせがみにきて……せめて1日一回にするべきよ!ベータなら、それ抜きでも『フリーレン聖典』は十分書けるはずでしょ?」

「そ、そうですね!」

 

ガンマも、フリーレン聖典の執筆自体を止める雰囲気がなく、むしろ良いことのように捉えている。誇張された表現に関しても、「まあこんな感じでしたね!」とほぼ肯定してしまうのである。

ついでに言うと、フリーレンは大して忙しくない。「恩人に自らの生活の世話までさせるなんて恥ずかしい」などと言った調子で、シャドウガーデンの少女達が気を使っているために大して仕事が回ってこないためである。むしろフリーレンから手伝いを提案する場合が大半だ。

 

「まぁ、この件はこれくらいにして……」

「ガンマ?」

「『フリーレン聖典』の執筆の方はどう?ベータ。昨日まで王都にいたから、その間のフリーレン様の言動を知りたいの。」

「もちろん!まずガンマが出発した後の翌日、寝起きの時の半目で垂れ眉で口を結んでいるフリーレン様がとてもかわいらしくて……」

 

その後、ベータがフリーレンの言動を正確に再現し始め、フリーレンはものすごく居た堪れなくなったために、何も言わずにその場を離れた。自分の行動が記録されることがこれほどむず痒いことなのかということを初めて知った。自分を慕ってくれるのは嬉しいが、それ以上にあのような態度を取られると何も言えなくなってしまうフリーレンなのだった。

 

そうしてフリーレンがその場を離れ、村の外れの方に来た。しばらくすると、フリーレンは自身に向かって高速で突っ込んでくる物体を察知した。そして、それがぶつかる直前で拘束魔法をかける。光の輪のようなものが、その物体を拘束した。

 

「がうーーー!!!ボ、ボスの魔法はズルいのです!これじゃ動けないのですー!」

「デルタ……いつも言ってるでしょ。抱き着くにしてもせめて突進しながらはやめてって。」

「で、でも、デルタはボスと一緒に居たいのです!今日はイノシシ2頭狩ってきたので褒めて欲しいのです!」

「よしよし。よくやったデルタ。偉いぞ。」

 

フリーレンはそう言って拘束魔法を解き、デルタの頭をなでる。

 

「~~~!えへへへへ~~~」

 

ちぎれんばかりの勢いで尻尾をブンブンブンブン振るデルタを見て、フリーレンはまだこっちの方がベータより扱いやすいななどと思ってしまうのだった。

デルタは獣人の少女だ。フリーレンの世界に居なかった獣人というのは、人間と動物の中間のような種族らしい。デルタの場合は人間の耳に加え頭に犬の耳のようなものがあり、尾もあり、歯の犬歯は鋭い。頭はお世辞にも良いとは言えないが、身体能力が抜群に高い。フリーレンの世界だと戦士にとても向いているであろう特徴だった。体を動かすことが大好きなようなので、普段は近隣の森でイノシシなどの野生動物を狩っている。ちなみに、最近の盗賊退治ももっぱらデルタの仕事となっている。殺しをなんとも思っていないらしく、むしろこのデルタをやりすぎないように制御することがフリーレンの盗賊対峙における役割となっている。

なお、獣人というのは自分より強い存在に対し従属し、弱い相手には従わないという習性があるらしく、今のところデルタはアルファとフリーレンにしか従わない。そういうところも含め、デルタと接しているときはなんとなく番犬を飼っている気分になるフリーレンなのだった。

 

「今日はどのあたりまで歩いてきたの?」

「うーんと、あの山のてっぺん!」

 

デルタが指さす場所は、シャドウガーデンの行動許容範囲外だった。この範囲は、シャドウガーデンの居場所であるこの村の存在を知られないためにとアルファが設定したものだ。それを初めて聞いた時には、そこまで表社会が信用できないのかとフリーレンは少しあきれたものだが、一応フリーレンも集団生活をしているつもりでいるので、しばらくはその範囲を勝手に出ないようにしている。

 

「そう。……でも、あそこはアルファが行っちゃダメって言ってたよね?多分怒られるよ。」

「え?……うーん、アルファ様は……多分あのくらいなら大丈夫って言ってたと思うのです!」

 

普通に言っていない。デルタは頭が弱いので、残念ながらアルファの作ったシャドウガーデンの行動規則をたびたび悪気無く破ってしまう。

するとそこへ、軽い悪意を含む声が入ってきた。

 

「主、そうやってバk……デルタを甘やかすから記憶に残らないんじゃないかな?」

「メス猫は黙っているのです!次からはちゃんと覚えてから狩りに行くのです!」

「それ多分過去に2、3回くらい言ってたよね?その分だけ主に迷惑が掛かってるって自覚はあるのかな?」

「キーーー!ボスに撫でられないからって、嫉妬は見苦しいのです!」

「なっ……!い、いやそんなことは……」

 

デルタと口喧嘩をする少女はゼータだ。彼女も獣人で、猫と人間の中間のような種族だ。獣人の中では頭の良い方であるらしく、少なくともフリーレン的には自分と同程度の賢さがあるとは感じている。またゼータは、新しいことを吸収することがアルファ並みに早いが、飽きっぽいという欠点がある。フリーレンが魔法も教えた際も、1週間もすれば飽きを見せるようになった。今は、フリーレンとアルファの指示で渋々訓練を続けているような状況だ。

そしてこのゼータは、デルタと折り合いが悪く、よく喧嘩をする。

 

「ボスはメス猫よりデルタの方が好きなのです!」

「拘束されることを愛情表現と勘違いしてるだけじゃないの?そういうのマゾって言うんだよ。」

「はぁ?なんでそうなるのです?捕まえられて嬉しいわけが無いのです。そんなことも分からないなんて、やっぱりメス猫はバカなのです!」

「少なくとも、範囲内で活動している分バカ犬よりは馬鹿じゃないつもりだよ。」

「この近所で動き回るだけで満足するなんて、メス猫は体力が無いのです!」

「バカ犬は頭の体力がなさそうだけどね?」

 

ヒートアップしそうな空気を感じたフリーレンは、ため息をつきつつ二人の口を魔法でふさぐ。

 

「そこまで。これ以上は喧嘩はやめるんだ。」

「んぐぐぐぐ……」

「まず、他人のことをメス猫とかバカ犬って呼んじゃダメ。ここで暮らす以上、もっと仲良くしないと。アルファはただでさえすごい忙しいんだから、これ以上喧嘩して迷惑かけるんだったらお仕置きするよ?」

 

アルファはこの村でのリーダーとして活動しているが、少なくともフリーレンならばすぐに嫌になるようなレベルの仕事量をケロッとこなしている。そんなアルファに迷惑をかけるべきではないというのは、当然の発想であろう。

ちなみにメス猫とバカ犬呼ばわりもフリーレンが普段から禁じているのだが、デルタはそもそもその命令自体を忘れてしまい、ゼータも感情が高ぶるとその呼びになってしまうようだ。

 

「うぐぐぐ……わ、分かったのです。」

「……分かったよ、ごめん主。」

 

そう言って二人は、互いににらみ合いながらも去っていった。それを見ながら、フリーレンは、

 

(まあ子供が集団生活をしていたらあんな感じの喧嘩も起こるもんだよね。アルファとかがやたら大人びているせいでちょっと感覚が麻痺していたけれど、やっぱりこの子たちはちゃんと私の世界いたような子供なのか。)

 

と、彼女たちが子供らしい側面を見せることに少しの安心を覚えるのだった。もし彼女たちまでアルファのように大人びていたら、フリーレンはこの世界の子供への接し方を一から学びなおさなければならないところであった。

 

そうしてフリーレンが村の中央あたりまで戻ると、何やら怒っているような声が聞こえてきた。

 

「イータ!料理は冷めないうちに食べてって何回も言っているでしょう!」

「うぅぅ……実験……終わったら食べる……」

「その実験、一体何時間かかるのよ?」

「えーと、あと、6時間くらい……」

「は、はぁ!?それじゃ累計22時間くらい飲まず食わず寝ずになるわよ!?」

「イプシロン……食べさせて……手がふさがってる……」

「……もう。今回だけよ?しょうがないわねえ……」

 

そこへ、フリーレンが近づいていく。

 

「……あ、フリーレン様!いつもお疲れ様です!」

「やあイプシロン。……イータがまた実験に取りつかれているのか……」

「あ……マスター……魔法……教えて……」

「教えるのは一日一個って言ったでしょ?今朝教えたじゃん。」

「あれは……前に教えてくれた……爪を割れにくくする魔法と魔力操作方法が類似してたから……ノーカン……」

「……驚いた。その類似性に気付くのか。……でもダメなものはダメだよ。」

「ううう……ケチ……」

「こらイータ!フリーレン様にケチとか言ったら失礼でしょう!?」

「……ごめんマスター……」

 

この会話を経て、少ししおらしくなってしまったエルフの少女はイータ。彼女は……人生の全てを研究に賭けていると言えるほど、研究にのめりこんでおり、それ以外のことに対してほとんど興味を示さない。フリーレンが助けた際も、悪魔憑きが治ったことよりも研究がまたできることに対して喜んでいた。フリーレンがシャドウガーデンの中で一番将来を不安視しているのがイータであり、とにかく自活能力が無い。食事や睡眠を取ることがおざなりになりやすいため、このように他のメンバーに身の世話をさせることが多々ある。

がしかし、そのマイナス分は全て研究の能力につぎ込まれているようだった。このシャドウガーデンの中で最も魔法をフリーレンに教えてもらい、最も魔法に詳しくなっているのがこのイータである。学術的なものに対する学習能力が異様なほど高く、自身の興味のある対象ならば平気で何十時間も作業するタイプのエルフなのだ。肉体的かつ魔力的負荷の少ない魔法ならば、イータは速攻で覚えてしまう。一般攻撃魔法の仕組みをフリーレンが教えたところ、翌日には完璧に行使できるようになっていた事件は、感情の薄いフリーレンをして腰を抜かせるほどに驚かせた。イータの現状の仕事は専ら、フリーレンの魔法を吸収してそれを他のメンバーに分かりやすく伝えることとなっている。

 

そして、今イータを介護している青髪ツインテールのエルフはイプシロンだ。彼女には大きな欠点はない。その分大した才能がある分野もないとイプシロンは時々自虐するが、彼女には努力の才能がある、とフリーレンは感じていた。フリーレンが魔法を教える際、一番愚直にフリーレンの教えることを聞き、練習し、フリーレンの想定するプロセスで身に着けていくのがイプシロンだ。特に最近は魔力コントロール技術に関して重点的に練習しているようで、その分野においてはシャドウガーデンの中でも現状ピカイチであると言える。フリーレンが人格面において特に好感を持っているのがイプシロンなのかもしれない。さらに他者への面倒見も良く、イータに対してはまるで妹のように世話を焼いているのが通例となっている。

……ただ、最近イプシロンはやたらベータの胸を自身のものと比較している様子で、将来変なコンプレックスを抱えるのではとフリーレンは感じている。自身も身に覚えがある話なのでなおさらだ。

 

「……イータ、スライム素材の研究はどうかしら?」

 

アルファが、イータの様子を見に来たようだ。

 

「……うーん、ぼちぼち……かな……?」

「私のいたところと違って、この世界の魔物は死んでも消えないみたいだからね。イータのスライム研究がどうなるかは私も楽しみにしているよ。」

「そ、そう……?え、えへへ。マスターがそういうなら、私……頑張る……。」

「フリーレン様。これから新しく見つけた盗賊団の討伐に向かうので、同行していただいてもよろしいでしょうか?」

「ま、また盗賊がいるの……?まあ、分かったよ。」

 

この世界の盗賊がまるで『俺達の資金でガーデンを成長させてやってくれ!』とでも言わんばかりに湧いて出てくるので、フリーレンは少し不気味に思っている。

それに向かう道すがら、アルファがフリーレンに話題を振った。

 

「フリーレン様。シャドウガーデン設立からそろそろ二ヵ月が経ちますが、この村の居心地はどうでしょうか?」

「良い……というか、思っていたより良すぎる。まさかここまで立派な村に出来るなんて……」

 

森の奥で村開拓など普通に考えれば苦労の塊であるはずなのだが、フリーレンがいることを加味しても順調すぎるほどで、ここに永住することも常人ならば選択肢に入れられるほどには設備がもう整っている。シャドウガーデンに才能あるものが異様に多いためであろう。

 

「ふふ、ありがとうございます。せっかくフリーレン様に助けてもらったのですから、せめてフリーレン様には居心地よくなってもらわないといけませんからね。」

「いやあ、いつも言ってるけど、そんなに私に気を使わなくてもいいって。」

「……フリーレン様は、私達との生活は……どうでしょうか?前の場所に、やはり戻りたいとお考えでしょうか?」

「うーん、そうだね……」

 

アルファ達のことをどう感じているかとフリーレンは自問し、悪くないという結論を得た。

シャドウガーデンのメンバーはとにもかくにもクセが強い者たちばかりで、最初は大いに戸惑った。ヒンメルパーティのメンバーもクセは強かったが、ここにいる者たちはインパクトで言えばもっと上かもしれない。それに加え、とにかくフリーレンへの好感度が高い。好感度が高ければ嬉しいというのが普通だろうが、シャドウガーデンの場合、好きを超えて神格化しているのかというレベルである。そこまでされると、初期のころはフリーレンは嬉しいというよりなんとなく怖く感じてしまっていた。悪魔憑きを治したことがこの世界で画期的であるためにこのような反応なのであろうが、憎しみは愛情の裏返しとよく言われるように、ひょんなことから自分が期待していたほどすごい存在ではないと彼女たちが知ったときにどう接し方が変わるのか不安、という考えだ。

がしかし、二ヵ月も共に生活していれば情が湧いてくる。今のフリーレンは、シャドウガーデンの中で母親のようなポジションにいる。夜不安に駆られる者がいればあやしてやり、喧嘩したり悪さをする者がいれば諫める、という役割は今のところフリーレンが筆頭、次点でアルファという様相だ。フリーレンはこの中でぶっちぎりの年長者であるので当然と言えば当然のことかもしれない。(ちなみにフリーレンが自身を約千歳と言った時に、この世界のエルフは数百歳が寿命である事を教えられ、フリーレンはこの世界のエルフは自分と別種族だと認識し、この世界に同種族はいないのかと少しだけ寂しい気持ちになった。)

もともとフリーレンは子供のお守りなどに興味はなかったが、実際にやってみると、彼女たちがかわいく見えるようになった。(ただしアルファは、あまりにも有能で大人びすぎているのでフリーレンはそう見れていない。)子供は言いすぎだが、妹がいればこんな感じなのかとフリーレンは思った。加えて、あと10年もすれば彼女たちは大人と見なされるほどに成熟を迎えるらしいので、たったそれだけの間なら親代わりをしてもいいか……とフリーレンは考えている。

 

「別にいいよ。この世界が元居た世界と違うってことは、そもそも同じ時間に戻れるかも怪しいし。それに……どうせ親代わりなんて10年もすれば終わるんだ。アルファたちがここまで私を慕ってくれるんだから、私も相応のものを返さないとね。」

「皆、フリーレン様のことが大好きなんですよ。あなたがいるというだけで、生きる希望が湧いてくるんです。お嫌でなければ、これからも是非ここに居てくださいね。」

「……う、うん、ありがとうね。」

 

元の世界の元の時間に帰れるならば300年ここに居ても構わないフリーレンだが、直球でそう言われるとさすがに恥ずかしくて、顔をそらしつつ感謝を述べるのだった。

 

 

夜、アルファが珍しく夜遅くまで起床して机に向かっているフリーレンに気が付き、声をかけた。

 

「フリーレン様、この時間に起きているとは珍しいですね。どうされたのですか?」

「悪魔憑きの治療方法を書いているんだよ。この世界の人たちにもわかるようにね。もうすぐ書き終わるかな。」

 

机の上には、本と呼べるレベルで紙が積まれていた。この世界では、フリーレンのいた世界と比べて魔法が未発達、というより非常に限定的な使い方しか発見されていない。なので、この世界の人々の魔力に対する認識に合わせて治療法を書かなければならず、そのせいで説明の量がかなり膨大になってしまった。

 

「これが世の中に出れば、もう悪魔憑きで苦しむ人はいなくなるだろうね。」

 

フリーレンはドヤ顔をしながらアルファにその原稿を見せた。アルファがざっと読んだ限り、確かにこれを読めばこの世界の人々は確実に悪魔憑きを治療できるようになるだろうと思えるほど、気合の入った内容だった。

フリーレンは悪魔憑きを助ける過程で、悪魔憑きにこの世界の人々がどう接するのかを少しだけ垣間見た。それはフリーレンの想像を超えるレベルでひどいもので、伝染するわけでもないのに穢れるとか言いながら悪魔付きになった子を蹴り飛ばしていたのだ。このような実態を見せられれば、悪魔憑きを救うという使命感が出るのは人の心があれば当然だろう。

 

「しばらくは悪魔憑きに対する差別や偏見は残るだろうけれど、100年もすれば消滅するだろうし。やっぱりこの件は一刻も早く解決した方が良いよね。」

 

しかしこれに対して、アルファは不安そうな顔をした。

 

「……本当に大丈夫でしょうか?それは、社会の大きな変革を起こすものになるでしょう。どこにそれによって既得権益を得ている者がいるか分かりません。それに、かつて悪魔憑きを追放した人々がどう反応するか……それに聖教も異端認定があるかもしれませんし……」

「いやいや、それでも、多少のトラブルを被っても一刻も早く知らしめたほうが良いんじゃないの?アルファも、自分みたいな境遇の人が減ってほしいでしょ?」

「そうですが……フリーレン様は、そもそもそれをどうやって公開するつもりなのでしょうか?」

「そうだね……とりあえず研究機関のお偉いさんにでも匿名で送りつけようかと思っているよ。」

 

フリーレンの書いた内容は、この世界の人間に理解できる内容とはいえ、さすがに魔力に対する一定以上の知識は要求する内容となっている。そして、フリーレンはこの件で目立ちたいとは思っていない。なので、匿名の魔力研究者Fとでも名乗り、悪魔憑きの治療法を内容が理解できる誰かに送りつけたいというのが大筋の計画だ。

 

「それですと……距離と規模を考えて、ミドガル魔剣士学園が一番適しているでしょうか?」

「確かあそこには魔力の研究機関があったよね?うーん、そこにコッソリこれを置いておけば誰かが読んでくれるかな。イタズラだと思われて捨てられない対策も魔法でしておくよ。アルファ、多分そっちの方が私より地理や常識に詳しいだろうし、コッソリ学園の中の良い感じのところに置いてもらってきてもいい?」

「それは構いませんが……嫌な予感がします……」

 

アルファは渋々と言った様子ではあるが、フリーレンの頼み通りアルファはミドガル魔剣士学園に侵入し、研究者の多いと思われる場所に悪魔憑きの治療法の記述を置いてきた。

いくら大人の世界は汚いとはいえ、悪魔憑きを治せる方法などという広めれば人類にメリットしかもたらさない情報を握りつぶしたりはしないだろう。アルファの無事の帰還を確認して、これで悪魔憑き問題はもう大丈夫だろうと、フリーレンは満足げに日常を再開するのだった。




可哀そうな悪魔憑きを欲しがる邪悪な組織なんて実在するわけないじゃないかHAHAHA
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