虹色イリス   作:青紫

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新武装と過干渉

 ティータさんに武器製作をお願いした。

 一週間後、完成した武器を受け取り、私はツァイスを後にするのであった。

 さあ、旅を続けよう。

 

「イリスちゃん早い!早いってば!」

 

 おや、出発を妨害する不届き者がいますね。

 なんだ、ティータさんでしたか。

 見送りは結構なので、仕事に戻ってください。どうぞ。

 

「武器開発のエピソードは?私たちの一週間の思い出は?」 

 

 いやぁ、別にそういうのいいです。

 自分が都合のいい実験体としてこき使われて、大変だったという感想しかない。

 

「そうだけど!そうなんだけど!一応振り返ってみて、お願いだよぉ」

 

 ヤレヤレ仕方ないですねぇ。

 では、回想シーンいってみますか。

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 武器開発は最初、私とティータさんの二人だけで始まった。

 しかし、日を追うごとに協力者が増えていき。

 終盤にはZCFに所属している多くの技術者たちが手を貸してくれた。

 その中にはティータさんのご家族も含まれている。

 優秀な技術者の皆さん、大変お世話になりました。

 私の武器開発と関係ない実験に『ついで』と称して何度も駆り出してくれた、ご恩(恨み)は忘れません。

 

 嫌な予感がしたので、事前にツァイスの滞在期日を一週間だけと決めておいて良かった。

 あのままだと、勢いとその場のノリで様々な危ない実験に付き合わされるところだった。

 武器が完成しなくても、私はツァイスから逃げ出していただろう。

 それぐらい引っ張りだこというか、いいように使われてしまったのだ。

 いや、ホント、開発とか研究に熱心な人たちのバイタリティってばすごいのよ。

 あんなにグイグイ頼み込まれたら、断り辛いってば!

 

「イリスちゃん、人気者だったよね」

「そのせいで私は心身共に疲弊しました」

「みんな言ってたよ。イリスちゃんにはずっとZCFに居てもらいたいって」

「絶対にNO!」

 

 検体扱いはもうコリゴリなんよ。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 この一週間、私はラッセル家で寝泊りさせてもらっていた。

 その過程でティータさんのご家族とも懇意にさせてもらったのだ。

 

 導力革命の父と謳われる『アルバート・ラッセル』

 通称ラッセル博士は、穏やかで優しい好々爺で私のことを大変可愛がってくれた。

 立派な技術者で、いい人なんだけど・・・

 武器のテスト中、爆発が起こる度にはしゃいでいたので『あ、やっぱりそっち系か』と思った。

 イカれた技術者や研究者連中ってのは、どこにでもいるのだなと呆れてしまったよ。

 

 爆発に巻き込まれているの私なんだけど?

 あなたの孫のせいでこうなってるんだけど?

 おいコラ、こっちを指差して孫とキャッキャしてるんじゃないよ!

 その前に消火作業と私の心配が先でしょうが!

 テストしたの私じゃなかったら、大ケガしていたの解ってんの?

 まあ、虹パワーのおかげで無傷なんですけどね!

 

 ティータさんご両親も優秀な技術者だ。

 母親の『エリカ・ラッセル』さんと父親の『ダン・ラッセル』さん。

 愛娘の友達ということで、私を好待遇で迎えてくれた。

 

 ティータさんを溺愛するあまり、娘の想い人であるアガットさんを快く思っていない。

 特に母親のエリカさんは自作の罠や兵器を駆使して、アガットさん痛めつけるのが趣味らしい。

 あの様子ではアガットさんも苦労しますね。

 

「素敵なご家族でしたね」

「うん。自慢の家族なんだ」

「ですが、あのご両親がいる限りアガットさんとの結婚は絶望的でしょう」

「……い、いざとなった駆け落ちする覚悟だって…」

「言うほど簡単ではありませんよ?何より、そんな状況になったらアガットさんは身を引くに決まってます」

「そんなぁ…」

「もしもの時は私がアガットさんを貰うので安心してください」

「これっぽっちも安心できないよ!」

 

 まあ、先のことはどうなるかわからない。

 希望を捨てず、両親の説得を続けるしかないのでは?

 知らんけど。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ティータさんひとりに任せておくと、全身重火器だらけになるのが目に見えている。

 どのような武器を造るのか、私もアイデアを出すことにした。

 

 うーんっと、そうだな。

 異世界知識も参考にさせてもらうとして・・・

 例えば、ガンダムが使っていた武装とかを再現できないかな?

 そう思い立った私は、何気なくスケッチブックに鉛筆を走らせる。

 お?こいつは・・・

 へぇ~、私って絵心あったんだな。

 

 数分後、画用紙には今にも動き出しそうなモビルスーツの姿が描かれていた。

 自分の意外な才能に気付いた瞬間である。

 そういえば、今まで絵を描こうとか考えた事も無かったな。 

 やってみると意外と楽しいかもしれない。もっといろいろ描いてみよう。

 ファーストからGQuuuuuuXまで、題材には事欠かないが、

 ここは私の好きなSEED系を・・・

 

「わぁ!何コレすごい!機甲兵?こんなデザインの機甲兵見たことないよ」

 

 スケッチブックいっぱいに描かれたガンダムたちを見て、ティータさんが歓声を上げた。

 夢中になって描いていたら、こんなことに・・・

 色鉛筆も使ったからフルカラーだよ。ガンプラの箱絵レベルの完成度だよ。

 

「これはMS(モビルスーツ)異世界の機甲兵たちです」

「異世界の…」ゴクリッ

「という、私の妄想です!」 

「妄想かぁ。イリスちゃんぐらいの年頃なら、そういうこともあるよね」

「文明の発展と共に人類が宇宙へと進出した未来、遺伝子操作で生み出された新人類コーディネーターと、無駄に数だけは多い旧人類ナチュラルとの間で戦争が巻き起こる。平和に暮らしていたコーディネーターの少年は、ひょんなことから新型MSのパイロットになり戦火に身を投じることに。だが、敵陣営にはかつての親友の姿が・・・」

「設定凄いな!イリスちゃんの妄想半端ないよ!!」

 

 ティータさんは目をキラキラさせながら話を聞いてくれた。

 気分の良くなった私は、絵を見せながら細かい設定や武器の解説もしてあげた。

 映像を見せてやれないのが実に残念だ。

 

「すごい、武装の設定も異常なほど練り込まれてる…秀逸な造形、理にかなったフレーム構造、この発想は天才的だよ…」

 

 スケッチブックを食い入るように見つめるティータさん。

 私の描いたガンダムたちは、彼女にカルチャーショックを与えたようだ。

 

「ティータさん。これは私の妄想なので、本気にしたらダメですよ?」

「今わかったよ。私はこの妄想を現実にするために、イリスちゃんと出会ったんだ」

「そんな運命的なものではなくてですね。ちょっと参考にするぐらいでお願いしようかな~と」

「私頑張るよ!思いだけでも力だけでも駄目なんだよね!」

「お、お手柔らかに…」

 

 勝手に盛り上がったティータさんのやる気スイッチが入ってしまった。

 もしかして私、やっちゃいました?

 このことがきっかけで、ゼムリアの大地にガンダムが立つとか、やめてよね。

 

 私、し~らね。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・

 

 そうして完成したのが、私専用の頑丈な剣、よく切れる二本のナイフ、連射可能な銃だった。

 

「足りない、武器の説明が足りないよ!」

「そういうのは道中の暇な時にでもやろうかと」

「今やってよ!」

「めんどいなぁ(´Д`)」

 

 めんどいけど、私の新たな武装を紹介しちゃうね。

 

 ・重斬刀

 

 軍用警備艇の外装技術を転用した超硬度ブレード。

 私専用ということで耐久性を従来品の5割増しにしてもらった。

 そのため、切断力の低下と重量の増加を招いてしまう。

 華麗にスパっと斬るのではなく、重量で叩き斬る使い方をするので問題ない。

 耐久試験ではルミナスエンチャントにも10分以上持ちこたえた。

 これなら少々乱暴に扱っても十分活躍してくれるだろう。

 練習用に使っていた大剣よりサイズが小振りなので取り回しも良好。

 背中にくっつけて持ち運べば、一端の冒険者っぽく見えるかも。

 

 ・アーマーシュナイダー

 

 二振り造ってもらった対装甲用コンバットナイフ。

 こちらも超高度金属製で耐久性はバッチリ。

 グリップにあるスイッチを入れることで、導力式振動モーターが駆動する仕掛けがある。

 これにより刀身を高周波振動させて、触れた物体を裁断・貫通することが可能。

 振動は機器類の内部構造にダメージを与えるので、人形兵器等には高い効果を発揮する。

 モーターの駆動は内蔵された小型オーブメントで行っているため、エンチャントを使用する際は振動機能の故障を覚悟する必要がある。

 腰の両サイドに装備した専用ケースに収納するとイイ感じだ。

 

 ・重突撃機銃

 

 中距離戦に適したアサルトライフル。

 高初速徹甲弾を高速連射するマガジン式。

 精密射撃用のセミオートと連射用のフルオートを切り替える事が可能。

 私の体格に合わせて小型化したため、装弾数と射程距離が若干低下した。

 使わないときは背中か腰にプッピガン!

 

 この三つの武装は構造がシンプルで整備性がよく、一般的な町の武器屋で各種メンテナンスや部品交換が可能だ。

 ライフルの弾丸も共通規格の物を採用しているので、店で普通に購入すればいい。

 長旅を想定した装備として優秀だと思う。

 

「イーゲルシュテルンと専用シールドは?誘導弾発射筒、無反動砲、ビームガトリング…他にもいろいろあったはずだけど?」 

「必要ないので全部置いて来ました」

「と゛お゛し゛て゛た゛よ゛お゛お゛お゛!orz」

 

 その場に崩れ落ちたティータさんがむせび泣いた。

 うわぁ、みっともないからやめてください。

 

「イリスちゃんのために、一生懸命造ったのに…」

「ゴテゴテして邪魔だったもので」

 

 私は根無し草の旅人なので、なるべく身軽でいたいんだよ。

 ハードポイントのおかげで持ち運びに問題はないが、体中に多数の重火器をくっつけた状態はあまりに不審者すぎる。

 

「似合ってたのに…みんな褒めていたのに…」

 

 武器のテスト中、案の定ティータさんの趣味が遺憾なく発揮され、私はフルアーマー化した。

 フルアーマーというか、全身重火器満載のヘビーアームズ・イリスになった。

 W(ウイング)系の話はしていないのに、自力でヘビーアームズにたどり着くティータさんが怖い。

 全武装一斉発射はかなり気持ち良かったけど、あの状態で旅は無理だろ。

 腕にガトリングガン、両肩と脚にミサイルポッド、胸部にもガトリング、頭にバルカンとマシンキャノン、オプションパーツも追加可能・・・

 そんな危ない見た目の奴、子供だとしても軍警にしょっ引かれるわ!

 

 せっかくいろいろ造ってもらって悪いが、過剰な重火器類は遠慮させてもらう。

 いずれ、また機会があればその時はお願いします。

 今回は重斬刀、アーマーシュナイダー、重突撃機銃の三つで十分だ。

 

 ●

 

 回想はこんな感じか?

 あとは、アガットさんへの惚気話で耳にタコができたのと、

 一緒のベッドで寝たティータさんの寝相が悪く、夜中に顔を蹴られたことしか記憶にない。

 

「それで、いつまでついて来るつもりですか?」

 

 ZCFのスタッフと、ラッセル家の皆にはお世話になったお礼と出発の挨拶を既に終えている。

 私の武器開発は一段落したので、ティータさんは通常業務に戻って、また新たな開発なり研究なりをすればいい。

 だというのに、工房からここまでティータさんがグダグダ言いながらついて来ているのだ。

 

「やっぱり納得できない。イリスちゃんにはもっとすごい武器を使ってほしい!」

「そんなこと言われましても」

「一週間は短すぎるよ。イリスちゃん専用武器開発責任者として、まだまだ仕事がしたい~」

 

 年上の駄々をこねる姿に困惑。

 私にどうしろと?

 

「わがままは、ビーム兵器を実用化させてからにしてください」

「う…それを言われると…」

 

 ビーム兵器・・・

 導力光線銃や導力光波刀なるものは既に形が出来上がっている。

 しかし、実戦に投入できるかといえば少々難がある。

 ビーム兵器は燃費がすこぶる悪く、使用回数や使用時間に大きな制限がかかるのだ。

 導力バッテリーの大型化や、燃料装置と有線式にすることで対処可能だが。

 そうすると、今度は使い勝手が極端に悪くなる。

 しかも、ビーム兵器の導力バッテリー、お値段がメチャクチャ高いのも気掛かりだ。

 無理してビーム兵器を運用するより、既存の導力兵器や導力魔法を使った方が賢い選択だと普通なら考える。

 でも、ビームライフルにビームサーベル、いつか使ってみたいよなぁ。

 

「ビーム兵器の実用化、諦めてないから」

「期待していますよ」

「イリスちゃんのフルアーマープランも、私は諦めないよ!」

「それは諦めてほしいのですが、情熱だけは評価します」

 

 ティータさんはこれからも私専用装備の開発と続けるつもりらしい。

 ありがたいけど、本業に差し支えない範囲でお願いします。

 

 次に私がツァイスを訪れる日が、いつになるかはわからないけど。

 その時は、ティータさん自慢の新装備を堪能させてもらおう。

 

「イリスちゃん、これを持って行って」

「これはオーブメント?」

「うん。第五世代戦術オーブメント【ENIGMA(エニグマ)】を通信機能のみに特化した改造品」

 

 ティータさん自らが改造したオーブメントをプレゼントされた。

 既に武器も頂いているのに、なんだか申し訳ないな。

 この【ENIGMA(エニグマ)導力魔法(アーツ)は一切使えないが、通信機能は現行モデルのオーブメントより上なんだってさ。

 いざという時の連絡手段がほしかったので有難い。

 でも、これを持っていると、セールスなどの迷惑通信や、知り合いからバンバン連絡が入ってしまったりするの?

 

「それは心配ないよ。登録している認証番号以外の通信は自動でブロックする機能があるから」

「なら安心ですね」

「私の番号は登録済みだから、いつでも連絡してね」

「あはは、考えておきます」

 

 通信とか苦手なんだけど・・・

 でも、せっかくだから面倒臭がらず、定期連絡ぐらい入れようかな?

 レグナートみたいに疎遠スパイラルに陥っても嫌だしね。

 

「それとね、レンちゃんの番号も登録してあるから」

レン姉さまともお話できるんですね!最高ですわ!

「私の時と喜びようが違う…」

 

 【ENIGMA(エニグマ)】を私に渡すこともレン姉さまの発案だったらしい。

 しかも、エステルたちには内緒だそうだ。

 たしかに、あの過保護お姉さんたちが私の番号を知ったら、四六時中着信が鳴り止まなくなりそうで困ってしまう。

 そういう配慮ができる点が、さすがレン姉さま『さすレン』である。

 仮にもしエステルにバレたとしても、レン姉さまなら上手く誤魔化してくれるだろう。

 

 何だかんだで結構話し込んでしまい、町の出入り口までやって来ていた。

 さあて、今度こそ出発しよう。

 

「イリスちゃん。絶対また会おうね、約束だよ」

「はい。お互いまた元気に再会しましょう」

「コズミック・イラの世界を二人で実現しようね♪」

「それは絶対に断る!!」

 

 ティータさん、私の共同開発者にして、大事な友達だ。

 新たな武器に新たな友を得た。ツァイスの町に来て良かったな。

 再会を誓い合う私たちは、ギュッと抱きしめ合う。

 町の人たちが『あら~』と微笑ましいモノを見る目をしていた。

 ロリコンのアガットさんならきっと鼻血を我慢してくれた光景だ。

 

 ここからは一人だけど元気よく行ってみよう!

 

 ●

 

 一人旅だと、そう思っていた時期が私にもありました。

 

「あなたがイリスね。へぇ~…本当に虹色だわ」

 

 ツァイスを出てすぐの事だ。

 街道を歩いていると、やたら色っぽいお姉さんが声をかけて来た。

 

 褐色の美人来たァァァーー!( ̄▽ ̄)

 

 彼女の名前は『シェラザード・ハーヴェイ』

 【銀閃】の異名を持つ高位遊撃士だそうだ。

 心中で叫んだように、色気のある褐色美人である。

 武器が鞭ってのも、なんかやらしいわぁ。

 大人になったら、私もあんな感じのスタイルになりたいね。

 

「噂の【小鬼(ゴブリン)】がこんなに可愛いとは思わなかったわ」

 

 虹色が欠けて、ただのゴブリンになっとるやんけ!

 その異名、私は認めていないからやめてほしい。

 で?銀閃さんが何の御用でしょうか?

 

「今しがた依頼を終えたばかりでね、たまたま、偶然にも、あなたを見かけて、つい声をかけたってだけよ」

 

 偶然と言うのを強調してないか?

 なんだか隠し事があるような。(T_T)

 

「そんな顔をしないで、次の町まで行くんでしょ?良ければ、ご一緒してもいいかしら?」

 

 こうしてシェラザードさん・・・シェラ姉さんとの旅が始まったのだ。

 最初、次の町までと言っていたはずが、気付いた時にはアガットさんと同じぐらいお世話になってしまった。

 そしてなんと!シェラ姉さんもエステルたちと冒険したメンバーのひとりだと判明した。

 あはっ!作為的な運命感じちゃう。

 

「だからぁ!リュートを奏でる軽薄男には近寄っちゃダメなの!わかる?ちゃんと聞いてる?」

 

 シェラ姉さんは酒豪であらせられた。

 本当にこの人、めっちゃ飲む!

 体内の水分、ほとんど酒じゃないかってぐらい飲む。

 

 ババアことがあるので、私は基本的に酔っ払いが嫌いだ。

 嫌いなんだけど、シェラ姉さんは別に暴力は振るわないし暴れたりもしない。

 ちょっと饒舌になって笑ったり甘えたり、とある男性についての愚痴が多くなったりするだけだ。

 酒臭いシェラ姉さんに抱き着かれて眠る日々にも慣れてしまった。

 お酒を飲むと何だか可愛い人になる。それがシェラ姉さんだった。

 

 酒や酔っ払いを忌避していた私だが、その考えを改めようと思う。

 本当に悪いのは酒に飲まれて悪事を働く愚かな人間だ・・・

 酒は飲んでも飲まれるなってね。

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 いくつかの町を経由して、シェラ姉さんと別れた頃。

 また新たな出会いがあった。

 

「お前さんだな、イリスってのは?はっはっは、こりゃあ見事な虹色だ」

 

 熊みたいな大男だぁぁぁーー!!( ̄▽ ̄)

 

 このでっかい男性は『ジン・ヴァセック』と名乗った。

 【不動】の異名を持つ、カルバート共和国の遊撃士なんだってさ。

 なんで共和国の人がここに?

 もしかして、国を跨いだ大仕事をしている最中とか?

 

「だだの観光だよ観光。誰かに頼まれてここに来たわけじゃないから、安心しろ」

 

 素直に安心できないよ。

 めっちゃ怪しいんだよ。(T_T)

 シェラ姉さんに続いてまたしても高位遊撃士、そして当然のごとくエステルたちの知り合い。

 偶然と片付けるには少々苦しい。

 

「細かいことは気にするな。そうだ、良ければ道案内を頼めるか?リベール王国は久しぶりでな」

 

 全然良くないんだが。

 私だって初めての旅なので道案内とか無理なんだが!

 そう言ったのだが、ジンさんは私に同行した。

 明らかに私より王国の地理に詳しい足取りで、一度も迷うことなく同行した。

 

 そして、ジンさんとの旅が始まった。

 またこのパターンかよ!

 なんやかんやで、ジンさんにも大変お世話になってしまうのである。

 

 ジンさんは東方三大武術のひとつ、泰斗流の使い手だった。

 【気】を体内で高め解き放つことにより、攻撃力と防御力を向上させて戦うスタイル。

 私の虹パワーにも似通ったところがある。

 【虹霊子】と【気】は別物だが、扱いを覚えておいて損はないと思った私は、ジンさんに指導をお願いした。

 

「そうだ。もっと気を高めろ!あとは考えるな感じろ」

 

 快く引き受けてくれたジンさんの指導により、私は少しだけ武術の何たるかを理解した気がする。

 【気】を練り高める訓練はこれからも継続しよう。

 同じ要領で【虹霊子】も操作できるようになれば、戦力アップ間違いなしだ。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 素手で魔獣を殴り殺す快感に目覚めた頃、ジンさんとはお別れした。

 そして・・・

 

「きゃぁー!かわいい!かわいい!くぁわぁぅいいよぉぉ~!」

 

 変な女の人だぁぁぁーー!!( ̄▽ ̄)

 

「イリスちゃん可愛すぎるぅ!お持ち帰りしたいぃぃ~」

 

 出会い頭に私を抱きしめ頬ずりしている女性は『アネラス・エルフィード』

 三度の飯よりかわいいものが大好きなお姉さんだ。

 

 この人も遊撃士でエステルの知己だった。

 別にもう驚いたりしない。

 代わりにため息が出てしまう。

 

 『かわいいものは正義』が座右の銘のアネラスさんも私について来た。

 私をこのままお持ち帰りしたいと何度も言うので、誘拐されないよう注意しながら旅をするハメになった。

 

 なんだか足運びや戦闘時の呼吸が、カシウスおじさまに少しだけ似ている?

 

「ああ、それはカシウスさんも八葉だからじゃない」

 

 八葉・・・【八葉一刀流】のことか。

 確か、おじさまが【剣仙】と呼ばれる方から学んだ剣術だったはず。

 私もおじさまから、八葉の歩方をちょっとだけ教えてもらったんだよね。

 

「実はその【剣仙】が私のお爺ちゃん。ただのスケベジジイだと思うんだけどなぁ」

 

 アネラスさん【剣仙】の孫娘だったよ。

 ティータさんといい、お爺ちゃんヤバすぎですね?

 【八葉一刀流】憧れのカシウスおじさまの使う剣術・・・

 私なんかには畏れ多いけど、八葉のいいところはたくさん取り入れたおきたいな。

 そんな訳で、アネラスさんにも教えを乞う。

 

「私は全然大した事ないんだけどね。期待しないでよ?」 

 

 教える代わりに毎日、朝昼晩の数分間ハグを約束させられてしまった。

 ぐぬぬ、この程度の対価で八葉の技が学べるなら安い物だ。

 

 謙遜していたが、アネラスさんの教え方はとても分かりやすく上手だった。

 スケベジジイの意味不明な教えを彼女なりに噛み砕いた結果らしい。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 アネラスさんと別れた後、予想通り新たな遊撃士が私を待っていた。

 その次も、またその次も、またまたその次も・・・

 

 私の行く先々に遊撃士が立ち塞がり、一緒に旅をする流れになる。

 そんなことがもう何回も続いてしまっているのだ。

 このままだと王国中の遊撃士と知り合いになる勢いだ。

 

 おかしい、絶対におかしい。

 間違いなく、これは誰かが仕組んだことだ。

 私をひとりにしないよう、過保護包囲網が王国中に張り巡らされている!

 

 誰だ?一体誰が・・・

 思い当たるのやはり、あの女しかいない。

 遊撃士協会に顔が利き、知り合いが多く、過保護になるあまり、異常なまでの行動力を発揮した女。

 得意げな笑顔と、トレードマークのツインテールがすぐさま思い浮かんだ。

 やったな。やってくれたな!

 

「やってくれましたね、エステル・ブライト!!」

 

 過干渉は子供に悪影響を及ぼすことを知らんのか?

 心配してくれるのは嬉しいけど、限度ってものがあるだろう。

 そっちがその気なら、こっちにも考えがあるぞ。

 早めの反抗期ってのを見せてやるんだから。

 

「グレてやりますからね!」

 

 私はリベール王国脱出を決意した。

 

 ●

 

「そうい事なので、お知恵をお貸しください」

「急に連絡して来たと思ったら、国外脱出の方法を教えろですってww」

「エステルお姉ちゃん。ちょっとやりすぎだよぉ」

「遊撃士協会に悟られない方法でお願いします」

 

 改造ENIGMAで通信しているのは、レン姉さまとティータさんの二人だ。

 オーブメントの画面に、二人の顔をデフォルメしたようなアイコンが表示されていて可愛い。

 

「一応、私もブライト家なんだけど?エステルにチクるとは思わなかったの?」

「レン姉さまは以前、エステルから逃げ回った前科があると聞きます。今の私が置かれている状況を理解してくださると思いました」

「本当に痛いところ突くのが上手い子ね!仕方ない、可愛い妹分の頼みだもの協力するわ」

「私も協力する。過保護で困っちゃう気持ち、わかるもん」

「二人とも、ありがとうございます」

 

 持つべきものは頭のいい友人知人である。

 レン姉さまがすぐさま脱出プランを構築、ティータさんがどの交通機関が最適かを割り出してくれた。 

 そうして、とんとん拍子に話は進み・・・

 

 ・・・・・・・・・・・・・

 

 生まれて初めて乗る飛行船のブリッジで、私はこれまでの経緯を語っていた。

 話を聞いた船長は目に涙を溜めて笑っている。

 

「あはははは!それで逃げて来たんだぁ。いや、ごめんごめん、おかしくってさあww」

「笑ってもらって結構ですが、ちゃんと私を送り届けて下さいね」

「任せて。どんな荷物でも迅速丁寧に運ぶのが『カプア特急便(わが社)』のモットーだから」

 

 船長は『ジョゼット・カプア』という女性だ。

 高速巡洋艦【山猫号】を用いてカプア特急便という運送会社を家族で経営している。

 近々、山猫号の二号機が完成するので、商売の手を国外にも広げる予定なのだとか。

 景気が良さそうで何よりである。

 

「人を運ぶとは聞いていたけど、まさかアンタみたいな子供とはね」

「今更ですね。お金を出せば何でも運ぶのでしょう?」

「うちは堅気だよ。犯罪まがいの仕事は受けないって決めてんの」

「あの、一応聞いておきますが・・・エステルには」

「わかってる。エステルにもヨシュアにもアンタの行く先は内緒ね。こっちもプロだ、お客の秘密は厳守するよ」

 

 ティータさんが手配した脱出用の船がこのカプア特急便だったのだ。

 ご覧の通り、この人もエステルの知り合いである。

 どんだけ顔見知りがいるんだよ。

 

「それにしても、虹色の子供か…また変な事件が起こる前触れなのかね?」

「人を諸悪の根源みたいに言わないでください。私は普通の善良な旅人です」

「普通ねぇ…ま、いいや。で?クロスベルに行く目的は?『みっしぃ』』目当てだったり?」

 

 みっしぃ???

 なんだそれは?

 クロスベル固有の魔獣か何かだろか?

 とりあえず、出会ったらぶん殴ろう。

 

「私はクソでかい犬に会いに行くのです」

「犬?ミシュラム・ワンダーランドに、そんなキャラいたっけ?」

 

 ジョゼットさんはでかい犬に心当たりがないらしい。

 【幻の聖獣】本当にいるのかな? 

 

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