虹色イリス   作:青紫

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悪魔と踊れ

「我輩を舐め腐ったことを後悔するがいい!さあ行け、忠実なる下僕どもよ」

 

 激おこプンプンしたクミコの号令にガーゴイルの軍勢が一斉に動き出した。

 元が石像だったとは思えない、機敏な動きに少しだけ感心する。

 

「うひー!うじゃうじゃウザいです」

「多勢に無勢、超めんどい」

 

 ガーゴイルは悪魔型と人型の二種類。

 悪魔型は鋭く尖った爪や牙を突き立てようと、邪教徒だった人型は石化した腕や手持ちの武器を振り回しガムシャラに突撃を敢行する。

 悪魔型の中でも有翼の奴は飛行しているので攻撃を当てにくいのが厄介だ。

 

 物量に押し潰されるつもりはない。

 背中合わせになった私とリースさんも果敢に応戦する。

 幸いにも、ガーゴイルたちにはクミコのように悪魔パワーによるバリヤ機能は備わっておらず、通常攻撃で十分対処可能だ。

 だが、如何せん数が多いので手間取ってしまう。

 

「そりゃ!……って?こいつら頭フッ飛ばしても動きます!?」

 

 痛みも恐怖も感じない石の軍勢は首を切り落とそうが、ヘッドショットを決めようが止まらない。

 頭や心臓、本来生物の急所である場所はガーゴイルたちに当てはまらないのだ。

 僅かでも動く部位が残っている限り、何度でも突撃を繰り返してくる。

 ひぃぃ!足や手だけになっても飛び跳ねたり床を這いずりながらこっちに来てる!

 

 こういう時は、高威力かつ広範囲のアーツで一網打尽!と、行きたいところなのだけど・・・

 限られた初級アーツしか使えない私にはそんな芸当は不可能だ。

 ここはリースさんに頑張ってもらうしかないね。

 クミコにぶちかました派手なヤツをもう一回お願いします。

 

「ごめん無理、アーツを練るだけの余裕がない」

「ですよねー」

 

 様々な奇跡を起こすことが可能な導力魔法(アーツ)だけど、何の準備も対価もなく行使できるわけではない。

 大前提として、アーツを使うには導力機器(オーブメント)と、そこに組み込む結晶回路(クオーツ)を事前に用意しておく必要がある。

 そして強力なアーツほど使用者の精神力と集中力を要求される上に、術の威力に見合った発動までの駆動時間がかかってしまう。

 便利で有用な術の行使には複雑で高度な演算処理のためチャージタイムがいるってことだ。

  

 この駆動時間、使用者の才能や技量により短縮可能らしく、最上級アーツをほぼ駆動時間零(ゼロ)で即行発動できる猛者もいるのだとか。

 中級アーツの発動すらまともにできない私には異次元の話だね。

 そういえば、麗しのレン姉さまや、褐色吞兵衛のシェラ姉さんも駆動時間がメチャクチャ短かったと記憶している。

 生まれ持った才覚の差に嫉妬とそれ以上の羨望を覚えちゃうわ。 

 

 リースさんも駆動時間は短い方で、アーツ戦もそこそこ得意なのだろう。

 だけど、四方八方を敵に囲まれ迎撃に手一杯なこの状況では、アーツ発動のための集中なんぞできるはずもない。

 チャージタイムに入っても邪魔が入ってキャンセルされてしまう。

 まいったね、こりゃ。

 

「な、ちょ!どこ触って!?」

「はわわ、リースさんが何かエロい目にあってます!」

 

 リースさんの体をよじ登った石の手たちが、彼女のたわわな胸を触って!?

 いいぞぉ!もっとやれ・・・じゃなかった!

 

 何しとんじゃワレ!!

 許さん!許さんぞ!このスケベハンドどもめ!

 私の体にはまるで見向きもしないのも、許さんぞ!

 つるぺたには需要はないんですか?

 私だって、そのうち立派なビッグボインになる・・・たぶん!

 

「くっ…しつこい…」

「エッチなのはダメ!死刑!」

 

 痴れ者がぁ!!

 リースさんに纏わりつくスケベハンドをちぎって投げを繰り返す!

 叩きつけ握り潰し踏み潰す!

 丁寧に一匹残らず粉砕してやったぜ。

 塵芥となり消えていく奴ら、なんだか満足そうに見えたのは気のせいか?

 

「ありがと、助かった」

「ご無事で何より。まったく!リースさんのお胸は揉んでいいのは私だけですのに…」

「初耳なんだけど!?私の胸はイリス専用じゃないよ」

「へぇ…じゃあ誰専用なんですか?」

「…えっと…別に…」

 

 少し頬を赤くしてゴニョゴニョと言いよどむリースさん。

 おやおやこれは・・・

 『自分用』と即答できなかった時点で判決は下りまーす。

 

「リースさん、あなた…有罪(ギルティ)です」

「何が!?なんで?」

「好いた男性……彼氏がいますよね?」

「や、ちが、ケビンとはそんなんじゃなくて…」

 

 ほほぅ…お相手はケビンさんというのか。

 腹ペコキャラの癖にやる事やってんなぁ!

 ん?なんかその名前、少し前にも聞いた気がする。

 まさか、星杯騎士団の同僚?

 職場恋愛か?神聖な教会組織内でイチャイチャか?

 これには空の女神様もニッコリ。

 妬ましい!そして羨ましい!爆発したらいいのに。

 

「卑しい~、このシスターいやしい!そしてやらしい!」

「違うって言ってる!ホントに違うから、彼とは、そう、家族みたいな関係で…」

「はいそれもアウト!」

「理不尽!?」

 

 弟みたいに思っていたとか、兄貴みたいな存在で~とか、しゃらくさいわ!!

 世間は騙せてもこのイリスちゃんラブセンサーは誤魔化せぬぞ。

 だいたい、家族内恋愛はエステルとヨシュアさんの前例があるんだってばよ。

 あの二人はプラトニック過ぎて逆に心配になる。

 カシウスおじさまが孫の顔を見るのはいつになるやら・・・

 まあいい、今はリベールの健全カップルより性職者たちの方が気になる。

 

「それで?愛しの彼はどんな人ですか?洗いざらい白状しなさい」

「教えない」

「本当は惚気たくてウズウズしているんでしょ?私がじっくり聞いて差し上げますよ。ほらほら~は~や~く~」

「うぅ、ここに来てイリスが物凄くウザい子に…」

 

 これでも私、女の子なので下世話な恋バナ大好物です!

 素直に祝福してあげたい気持ちと、散々弄り倒してやりたい気持ちで胸がいっぱい。

 

「今はそんな場合じゃない、戦闘に集中して。じゃないと私たち死ぬ」

「どうせ死ぬなら恋バナしてから死にましょう」

 

 問い詰めてもなかなか口を割らないリースさん。

 敵に囲まれた状況で場違いな話をしているけど、この間も迎撃の手足を止めていない。

 止まったら死ぬからね。

 少しでも明るい話題を出して気を紛らわせないとやってられないつーの。

 

「色恋沙汰を語る余裕があるとは、どこまでもふざけおって!」

「クミコも参加しますか?悪魔の恋バナとか興味ありますねえ」

「そもそも悪魔って、誰かを好きになることがあるの?」

「愚問だな。愛などという不確かな感情に一喜一憂することに何の意味がある」

 

 高みの見物を決め込んでいたクミコがトークに参加して来た。

 私のこと嫌いとか言っておいて、いろいろ話してくれる奴だ。

 はっはーん。なんだそういうことか、まったく素直じゃないなぁ。

 嫌よ嫌よも好きの内ってね!

 

「察してあげてください、リースさん。クミコはきっと私のことを好きになってしまったのですよ」ポッ

 

 どうも悪魔すら虜にした女、イリスです!(*´▽`*)

 

「「それはない!!」」

「ないかぁ…(´・ω・`)」

 

 クミコとリースさんに全力で否定されてしまった。

 何ハモってるんです?二人ともいつの間に仲良くなったの?

 ちょっと言ってみただけなのに、そんなに否定されるとツライわ~。

 

「今からクミコの好感度を上げる方法ってあります?」

「大人しく死ね。お前に出来ることはそれだけだ」

「それはできない相談です」

 

 結局、クミコとは解り合えない運命だったようだ。

 戦わなければ生き残れない!

 

 接近してきたガーゴイルに短剣を根元深くまで差し込む。

 アーマーシュナイダーの振動機能を全開にしてやれば元石像だった奴らは簡単に崩れ去った。

 数が多いだけで一体一体はそんなに強くない。

 リースさんも法剣を巧みに使い複数の敵を巻き込むようにして戦っている。

 猪突猛進だけの敵を、私たち二人の連携で何とか凌いでいる状況だ。

 

「リースさん真面目な話、お仲間の救援は期待できそうですか?」

「位置情報は既に知らせた。今、こっちに急行していると信じたい」

 

 私が牢に入れられる前に、リースさんは隠し持っていたオーブメントで仲間にSOSを送っていたらしい。

 ただ、ここは邪教徒連中が巧妙に隠していた地下に存在する秘密のアジトだ。

 救援部隊がここにたどり着くまで、私たちが持てばいいが・・・

 

「私が時間を稼ぐ、だからイリスは…」

「一人で逃げろ、だなんて言ったら怒りますよ」

 

 今リースさんを一人にしたら彼女は確実にデッドエンドしてしまう。

 そうなったら私は自分を許せない。

 見捨てたことがトラウマになって一生引きずる自信がある。

 

「大人は子供を守る義務があるの。お願いだから言う事を聞いて」

「知ったことではありません。子供だって大人が心配なんです」

 

 そんな義務を背負っている人ばかりじゃないんですよ。

 子供を守るどころか痛めつける奴、実験動物ぐらいにしか思ってない奴を散々見て来た。

 

 だからこそ・・・

 ブライト家の皆やアガットさん、お世話になったたくさんの人たちの優しさが、私には眩しくてとても尊いものに感じられのだ。

 短い付き合いだけど、私を守ろうとしてくれるリースさんもそんな尊い人たちと同類だと思う。

 彼女はこんなところで死んでいい人ではない。

 これからもっと幸せになって、自分以外の誰かに幸せを分けてあげられる人なのだから。

 

「ごめん、私がイリスを巻き込んだから…」

「勝手に首を突っ込んだのは私です。気にする必要は皆無ですよ」

「それでもごめん、あなただけでも先に逃がすべきだった」

「あーもう!ウジウジするの禁止です!」

「うごぁ!?」

 

 ガーゴイルどもを薙ぎ払いながら、ウジウジしているリースさんにの額に愛の頭突きをヒットさせた。

 私に教育的制裁をした時のヤツを真似てみたんだけど・・・

 がぁ…やはりというか、これ、私もめっちゃ痛い。

 絶賛ピンチの戦闘中に何やっているんだろうね私は!

 二人で涙目になっているとクミコが『バカか?人間の中でも最上級のバカなのか?』と普通に困惑していた。

 空気読めクミコ!今はそっとしておいて!

 

「謝罪も懺悔も不要です。つべこべ言う暇があったら戦いなさい!私たちまだ生きています!まだ何も終わってません!」

 

 こうしている間もガーゴイルが突っ込んで来ている。

 ライフルをフルオートで掃射、ルミナスエンチャントされた弾はかすっただけで石像に風穴を穿つ。

 ここまで結構な数のガーゴイルを倒して来た、雑魚の殲滅まであともう少しなのだ。

 観戦モードに入ったクミコにも弾丸を撃ち込んでやりたいが、雑魚の掃除を優先しよう。

 

「二人で生きて帰りますよ。リースさんには彼氏を紹介してもらわないと」

「イリス、そればっかり」

「それに、私の手料理も食べてくれるのでしょう?」

「料理…フルコース……悪魔肉」ジュルリ

 

 リースさんのために腕を振るうのはやぶさかではない。

 しかし、何故クミコを見て物欲しそうな顔をしたのだろう?

 もしかしてクミコを食材とみなしている?

 いや、いくらなんでもそれは、ないよね?

 

 リースさんの目に闘志の火が燃え上がっていく。

 やはり色気より食い気だったみたい。

 それでこそ、発破をかけた甲斐があるってものだ。

 

「星杯騎士団の従騎士として人に害なす悪魔は許せない!イリス、悪いけど付き合ってもらうよ!」

「はい。最後の最後まで足掻いてやりましょう」

 

 不利な状況は変わらないが、覚悟を決めた私たちのやる気は十分だ。

 あれだけいたガーゴイルも残り数体まで数を減らした。

 いける!クミコまでもうすぐ手が届く。

 

 私とリースさんのコンビネーション攻撃が最後のガーゴイルを滅した。

 邪魔する雑魚が消えた今なら!

 アサルトライフルを構えエンチャント開始、リースさんもアーツの駆動に入る。

 

「クミコ!勝負です」

「雑魚を散らした程度でいい気になるなぁ!」

 

 狙いをつけ虹の弾丸を発射!

 一度ダメージを受けたクミコは油断なく回避行動をとる。

 『見てから余裕だわい!』とか言って回避するの激しくイラッとした。

 そりゃあ体の殆どが目玉なんだから良く見えるでしょうね!

 ぐぬぬ・・・当たらねぇ!

 だったら、当たるまで撃ち続けるのみ。

 

 ・・・カチッ、カチカチ

 引き金を引く手に違和感、マズっ!

 

「弾切れ!?こんな時に」

 

 予備弾倉はとっくの昔に空だ。

 チィッ!ガーゴイル相手に使い過ぎた。

 飛び道具を失い焦る私、そこを見逃すほど敵は甘くなかった。

 

「隙を見せたな。そら!石になってしまぇーー!!」

「のわぁーーー!?」

 

 クミコの目玉からオレンジ色の怪光線が照射された。

 あ、ヤバい、石化ビーム来た。

 アレ食らった死ぬ!石になって死ぬ!

 即死攻撃使って来るとか卑怯じゃね?

 この鬼!悪魔!・・・正真正銘の悪魔でしたねw

 

「させない!」

 

 石になるぅ!と思った瞬間、リースさんの法剣が私の胴体にぐるりと巻き付いた。

 そのまま引き寄せられ、私は間一髪難を逃れた。

 へぇ、蛇腹剣ってこういう使い方もできるんだ。

 私を傷つけないよう絶妙な力加減で剣を操作したリースさんに感謝。

 

「大丈夫?」

「お陰様で平気…あ、銃が」

 

 体は無事だったが、携えていたライフルは石化ビームの照射を受けてしまったらしい。

 手の中でみるみる石化して行くライフルから慌てて手を放す。

 そのまま持っていたら、私も石化するかと思ってビックリした。

 床に落ちたライフルはゴトリと音を立て、銃の彫刻となってしまう。

 マジかぁ・・・せっかく造ってくれたティータさんに申し訳が立たない。

 

「ふん!運のいい奴だ。だが、そう何度も幸運が続くかな?」

 

 落ち込んでる暇もなく、クミコが体の突起物(クミコニードル)を飛ばして来る。

 ん?どうして石化ビームを連射しない?

 当たれば勝負の決まる一撃必殺を使わない理由・・・

 

「チャージタイムですか」

「うん。こっちの上級アーツと同じ理屈だね」

 

 ニードルの雨あられを走りながら回避しつつ、私たちは同じ結論にたどり着いた。

 強力無比な石化ビームだが、ニードルに比べ使い勝手がよろしくないのだろう。

 一度撃てば次弾の発射まで一定時間のチャージが必要となる。

 その上、動き回っている目標には当て辛いと見た。

 ガーゴイルとの戦闘中に撃って来なかったのはそういう理由か。

 雑魚との戦闘で疲れたところを石化ビームで仕留める。

 それがクミコなりの必勝パターンだったのではと推測してみた。

 

「チャージが終わる前に倒せばいいんですね」

「やらせると思うか!」

「やらせて見せる!イリス!行って!」

「はい!イリス突貫します!」

 

 リースさんがアーツを発動させる。

 風属性アーツ、エアリアルダスト。

 突如として現れた暴風の渦がニードルの軌道をずらし、私の突貫を後押しする。

 

 危険な役目を私に任せてくれたことに、リースさんの信頼を感じる。

 背中を預けて戦ったことで、私の力も覚悟も理解してくれたのだろう。

 子供だからって気を遣わないでいい。

 できる奴ができる事をする。そして勝つ、それだけだ。

 

 再び放たれたクミコニードルが私を串刺しにせんと迫り来る。

 数は多いけど、小柄な体の私には早々当たらない。

 当たりそうになっても二振りの短刀でいなして走り抜ける。

 自分はまだまだだと思う。

 この体捌きを教えてくれたヨシュアさんはもっとずっと速かった。

 

「ええい!ちょこまかと鬱陶しい!」

「それが取り柄なものでして」

 

 数アージュの距離まで迫った私に苛立ったクミコが大きな腕を叩きつけた。

 あっぶなッ!潰される前に飛び退く。

 少しでも反応が遅れていたら、ペチャンコイリスのできあがりだったぞ。

 

 振り下ろされた巨腕を私は躊躇なく駆け上がる。

 本体に刃を届かせるために悪魔の体を登って行くのだ。

 クミコからすれば、自分の体を目障りな害虫がよじ登っていく様は非常に不愉快なのだろう。

 ギョロギョロと動く巨大な目玉が私を睨みつけ、嫌悪の感情を露わにした。

 

「こ、このゴミクズがぁ!!」

「そのゴミに負けるあなたは、ごみ以下ですねw」

 

 もう片方の腕で私を払い落そうとするクミコ。

 残念、そうは問屋が卸しません。

 

「インフィニティスパロー!」

 

 力強いシスターの声が響き渡る。

 リースさんの法剣、その刃が分割され自らワイヤーを引きちぎる。

 連結部を断たれた刃は地に落ちることなく空中に浮遊。

 複数の刃各々がクミコへ向け猛スピードで突っ込んで来た。

 

 そんなこともできるの!?

 アレはやっぱり斬魄刀なのでは?

 

 刃の接近に気付いたクミコは私への対処が遅れる。

 私はクミコの肩であろう部位まで登ると勢いをつけて跳ぶ。

 元々跳躍力に自身がある私、そこに虹霊子の力が乗ると髭の配管工もビックリなスーパージャンプとなるのだ。

 悪魔の翼で羽ばたくクミコより更に高い空中に身を躍らせる。

 体を回転させるとクミコの背後をバッチリとった状態になった。

 下を見れば意思を持つかのように浮遊する法剣の刃がクミコを囲み足止めしている。

 リースさん、いい仕事です!

 

 背中にマウントしていた重斬刀を引き抜き両手で構える。

 走り出した時から既に虹霊子の力は全開にしてあった。

 もっと!もっとだ!

 体から溢れ出た虹色の粒子、その勢いはさらに強く激しくなる。

 エンチャントを施された刀の刀身も眩い虹色に染まっていった。

 

 いくよ!

 私の全力を込めた一撃、味合わせてあげる!

 

「覚悟しなさい、クミコォォーーッ!」

「舐めるなぁ!!」

 

 クミコの背が蠢き新たな突起物が生成される。

 重斬刀を振り下ろした姿勢の私へとニードルが射出される。

 死角までカバーするとは、敵ながらあっぱれな奴。

 だけどもう私は止まらない。

 

「…っう!?……」

 

 ニードルが私の頬をかすめ鮮血が吹き出した。

 重斬刀に力を込めているため、私の防御障壁に割く力が減衰している。

 ここまで来たら行動不能になる部位に当たらないことを祈るしかない。

 服の所々が裂け、脇腹と肩にもニードルがかすり、出血を伴う傷が増えていった。

 うわー!本当にギリギリだ。

 なんだコレ?こんなスリル求めてないんですけど!

 って!?私の脳天をぶち抜く軌道上にニードルが・・・

 

「イリス!負けないで!」 

 

 法剣の刃が間一髪でニードルを弾いてくれた。

 リースさぁん!本当にナイスアシストですよ!

 

 これでもう私を邪魔するものはない。

 重斬刀を握る手に更なる力を込め、虹霊子の力も限界まで高める。

 この武器を造ってくれたティータさん、そして剣技を教えてくれたアガットさん。

 戦う術を、生きる力を与えてくれた人たちの顔が浮かんでは消える。

 私は悪魔なんかに負けない。

 皆に恥じない自分になるんだから!

 

スラァァーーシュッッ!!!!

ぐぉ、がぁぁぁぁーー!?!?

 

 私の咆哮とクミコの絶叫が重なる。

 虹の斬撃が悪魔の背を深く切り裂いた。

 

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