虹色イリス   作:青紫

29 / 36
デビルメイクライ

 ケビンさんのお家で新生活のスタート。

 

 その新生活一日目。

 私は熱を出して寝込んでしまっていた。

 幸先悪くて泣ける。

 

 突然の体調不良、こうなった原因に心当たりはある。

 クミコを撃破した虹色ビーム、ルミナスブラスターを発射した影響だ。

 

 昨夜、眠りに就いた直後、例の空間に呼び出され『相棒』と話をする機会があった。

 話の内容はルミナスブラスターの説明と注意事項だった。

 

 『今のイリスじゃ、一日に三発が限度だね』

 

 それ以上撃つと頭がパーンッ!となってしまうらしい。

 そんなことだろうと思っていたので、特に驚きはない。

 

 他にも、一度撃ったら再発射まで数分間のインターバルを挟む必要があること。

 ブラスターの使用回数や威力は私の成長に合わせて強化されていくこと。

 放射能をまき散らしたりはせず、環境にやさしいビームであるから、安心していいことなどを説明された。

 

 一般人に向けて気軽に撃つなとも言われた。

 私ってそんなに野蛮な奴に見える?

 

 『ブラスラーは強力な切り札だけど、使いどころはよく考えて』

 

 了解了解、用法用量を守って正しく使いこなしてみせるよ。

 

『初回使用時の反動が朝には来ているはず。辛いと思うけど、半日だけ我慢して』

 

 頑張れ☆頑張れ☆と、自分と同じ顔の女に応援されながら対話は終了した。

 

 そんなわけで朝、気が付いた時にはもう体調不良真っ盛り状態。

 

 ガンガン響くような頭痛はするし、息苦しくて呼吸するのも大変。

 体が怠く力が入らない、起き上がるのも億劫だ。

 汗をかくほど暑いと感じているのに、なんだか寒気もする。

 筋肉や間接も炎症を起こしているようで、痛みと熱が絶え間なく襲って来る。

 まあ要するに全身が余すことなく辛い!

 

 こいつは、なかなかしんどいぞ。

 虐待児童だった昔、外に放置されて風邪が悪化した時も、確かこんな感じだったなぁ。

 あの頃は虚弱で栄養不足だったので、シスターが見つけてくれなかったら、野ざらしで死んでいたと思う。

 例によって、飲んだくれのババアは私が死にかけていた事にすら気付かなかったが・・・

 

 ベッドで唸っていると、私の異変に気付いたケビンさんとリースさんが即座に上へ報告。

 大聖堂より治療法術を使える医者と技術研究部の人たちが終結して私の容体を診てくれた。

 しかし原因は不明、法術も回復アーツも効果なし。

 話題沸騰中の【虹の御使い】が原因不明の体調不良、大人たちは随分と焦ったことだろう。

 

 よく覚えていないのだが、

 『心配ない、半日だけ、ご面倒をおかけます』と、言って私は眠りに就いたらしい。

 

 それから数時間後・・・ 

 私の容体はスッカリ安定し無事に目を覚ますことができたのだ。

 目覚めは気分爽快、辛かった時間が嘘のように体調は万全になった。

 

 私が目を覚ました時、リースさんはちょっと涙目で、ケビンさんも安堵の表情を浮かべていた。

 同居初日から多大なる心配をかけてしまったようで、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 その後、お医者さんや研究者の人に体を診察してもらい『すこぶる健康』だと太鼓判を押された。

 

 わざわざ出張してもらった白衣チームには丁寧にお礼を述べた。

 みんな『かまへん、かまへん』と、気楽に言って解散していった。

 彼らを派遣してくれた法王様にも後日、直接お礼を言いたい。

 

 心配かけてごめんなさい。

 そして、ありがとう。

 

「本当にもう大丈夫なんか?」

「はい。ご心配をおかけしましたが、この通りイリス完全復活です」

「良かった。あのままイリスが起きなかったら、誰が私のご馳走を作ってくれるの…」

「そっちかい!」

 

 ケビンさんのツッコミが決まり、三人で笑った。

 リースさんも素直じゃない人だ。

 私を付きっきりで看病してくれたこと知ってるんだからね。

 

 心配かけたお詫びも兼ねて、今からバリバリ働こう。

 ご恩には必ず報いる女ですから!

 

「病み上がりで無理すんやないで」

「イリスがやる気になってる。ご馳走期待できそう」

 

 レンねえさまに『家事代行サービスで生計立てられる』と、言わしめた腕前を披露する時だ。

 この家を居心地最高の居住空間に仕立て上げてやるぞ!

 

 ・・・・・・・

 

 家の掃除完了!

 フッ、この程度か。

 あまり散らかってないので歯ごたえがなかった。

 

「……家の中が輝いてる。塵ひとつ落ちてない」

「庭の草むしりに、壁の修繕まで終わっとるやんけ。作業スピードおかしいやろ」

 

 ご近所への挨拶回りもするぞ。

 私がケビンさんとリースさんの娘だと誤解されてしまったので、ちゃんと訂正しておいた。

 真実は『爛れた三角関係』なのです!

 

「近所のおばちゃんたちから白い目で見られるんやけど?」

「どっちが正妻になるかで噂されてる。イリスには負けない」

 

 お次は洗濯だぁ!

 ドラム式の導力洗濯機は初めて使うけど説明書を読んだので大丈夫。

 汚れもしっかり落ちるし乾燥機能まであるのか、時短になっていいね。

 洗濯機が使えない物は手洗でやってやる。

 

「衣類別の洗い分け、アイロンまで完璧。なんて手際の良さ」

「布団干してベッドメイクもやっとったで…分身でもしとるんかいな」

 

 よっしゃ!

 リースさんお待ちかねの料理を始めるよ。

 

 へへへ、L字型の対面キッチンだあ。

 出張が多く多忙なケビンさんは、あまり使う機会がないのだとか。

 調理器具と家電一式揃っているのに、なんともったいない!

 私がこの家に居るうちはちゃんと使ってあげよう。

 

 む!食材が足りない。

 野菜は市場で仕入れて、お肉は・・・

 せっかくなので、ちょいとひと狩りして来ますか。

 食える奴が見つかればいいけど。

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 できたぁ!魔獣肉のフルコース!

 さあ、おあがりよ。

 

「ヤバい、めっちゃ美味い。魔獣の肉とは思えへん」

「私の目に…もぐもぐ…狂いはなった…はむはむ…イリス天才」

「これは胃袋掴まれてもしゃーないな。あ、コラ!それはワイの皿や」

「イリスは…むしゃむしゃ…私の…むぐむぐ…専属シェフに認定…もっきゅもっきゅ」

「勝手に決めんなや。食うか喋るかどっちかにせい」

「…うめ、うめ、うめ、うめ」

「食うのを優先したんやな」

 

 リースさんが次々と皿を積み上げていき、ケビンさんも負けじと料理を平らげていった。

 二人とも私の料理を大層気に入ってくれたみたいだ。

 そんなに喜んでくれると、私も作った甲斐があるというものだ。

 料理人冥利に尽きる。

 二人の食べっぷりを見ていると、私もお腹が空いて来た。

 私も一緒に食べちゃおう。いただきまーす。

 

 ・・・・・・・・・・

 

「ふぅ……ちょい食べ過ぎたわ」

「満腹満足~。夕飯も楽しみ」

「こいつもう晩飯のことを…ホンマ底なしやな」

「はい、お粗末様でした。食後のお茶をどうぞ。胃腸の働きを助ける効能があるハーブティーです」

「至れり尽くせりやな」

「一家に一台イリスがほしい」

 

 久しぶりにいっぱい家事ができて私は大満足だ。

 

 さて、そろそろ聖女様からアクションがあるかな?

 

 ●

 

 予想通り、私は聖女様に呼び出され大聖堂へ向かった。

 ケビンさんリースさんも、同行している。

 

 謁見の間ではなく、聖女様が書斎として使っている部屋に通された。

 法王様はお仕事が忙しいので、今回はお会いできないみたい。

 部屋にはトマスさんもいて、私を見て頷いてくれた。

 

 ケビンさんたちに続き礼の姿勢をとり、聖女様と相対する。

 

「体調が優れないと聞きましたが、元気そうですね?」

「ご心配をおかけしました。今は万全の状態に回復しております」

「ならば結構。今から試練を発表しますが、よろしいですか?」

「はい。覚悟はできております」

 

 聖女様はちゃんと私の試練を考えてくれたらしい。

 それがいよいよ発表となる。

 

「【虹の御使い】イリス、あなたの力を証明するのに相応しい試練を与えます」

 

 なんだろうか?

 大聖堂の隅々まで掃除しろ、とかだったら超嬉しい!

 この街のイケメンを調査してレポートを提出しろでもいいぞぉ。

 なんだろう、ドキドキするなぁ。

 

「悪魔を狩って来なさい」

 

 狩り!しゃあ!得意分野キタぁーー!!

 

はいっ!喜んでぇぇーー!!(≧▽≦)

「うるさっ!?声が大きすぎます!」

 

 おっと勢い余って叫んでしまった。

 聖女様が耳を押さえてこちらを睨んでいる。

 

「失礼、試練を与えられた喜びが抑えられませんでした」

「あなたといると、調子が狂って仕方ありません」

 

 聖女様、説明の続きをどうぞ。

 そこら辺の、悪魔っぽい魔獣を倒して来いとか、ではないんですよね?

 

「試練は悪魔の討伐です。もちろん、ただの悪魔ではありません」

 

「標的は古の経典に記され、いくつもの都市を滅ぼしたとされる強力無比な高位悪魔」

 

「その力はあなたが倒した"石皇"と同等かそれ以上、きっと過酷な戦いになるでしょう」

 

「期限は今から一ヵ月、それまでに高位悪魔を5体、討ち取ってくるのです」

 

「あなた一人ではあまりに危険ですので、特別にグラハム卿と従騎士リースを同行させます」

 

「悪魔たちは【デモンズソウル】と呼ばれる古代遺物に封印され、各地に点在する邪教徒たちが隠し持っています。まずはそれ探し出し…」

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

「随分と無茶な試練を課してくれたもんや」

「これでも譲歩して頂いたんですよ。最初は『執行者を1人倒して来い』だったんですから」

「鬼か!あの聖女様、奴らの危険性理解しとらんやろ」 

 

 執行者って、マクバーン君やパネ様たちのこと?

 いくらなんでも、そりゃあ無理ってもんだ。

 あの人たちに比べたら、クミコレベルの悪魔は可愛く見える。

 

「イリス、本当にやるの?」

「やります。今日から私はデビルハンターイリスです」

 

 私は鼻息荒く、やる気に満ちている。

 遊撃士をしていた時、手配魔獣の討伐任務は得意だったのだ。

 ターゲットが悪魔になっただけ、今の私なら十分こなせる試練だ。

 

「そう簡単な話やないで、経典に記された悪魔はどれも危険度A以上やからな」

「石皇を撃破したイリスさんでも、油断すれば命取りになります」

「クミコと同じぐらい強いのが相手とか、ものすごくめんどい。副長もついて来て」

「残念ながら別件の任務が入ってまして、同行できません」

 

 トマスさん来てくれないのか。

 彼の(はこ)があれば悪魔の攻撃を防げたり、逆に閉じ込めたりと、戦闘が楽になったろうに。

 

「ケチ臭いハコメガネ」

「ハコメガネって初めて言われましたよw」

「仕方ない。ケビン、私とイリスの分まで頑張って」

「頼りにしてます、ケビンさん。守護騎士の力を見せつけてください」

「これイリスちゃんの試練なんやけど?」

 

 クミコには苦戦したけど、今回は守護騎士のケビンさんも一緒だ。

 いざとなったら、聖痕パワーで蹴散らしてくれるのを期待しよう。

 

「さっそく伝説のスーパー悪魔を征伐しに出かけます!後に続いてください!」

「はーい。面倒だけど、これもご飯のため」

「待てって、闇雲に出かけるのは危険や!もっと情報を集めてからでも!」

「臆病なネギは着いて来なくていいです!」

「誰がネギや!?」

 

 頼みの綱のケビンさんを置き去りにはできないので、少し進んでチラッっと後ろを振り返る。

 おいネギ、はよ来んかい。

 私とリースさんが悪魔にやられてもいいのか?

 

「ああもう!ライサンダー卿すんまへん、ちょっくら行ってきます!」

「ぐれぐれも気を付けるんですよ~」

 

 トマスさんに見送られ、私たちは悪魔退治に出かけるのだった。

 

 ●

 

 聖女様の試練『悪魔退治』を承ってから早くも1週間が経過した。

 

 過酷な戦いで疲れた心身を休めるため、自宅へと帰還した私たちはそれぞれ休養を取っていた。

 頑張って働いた分、しっかり休むのも大事だよね。

 

 私のストレス解消法は家事全般に男性とのスキンシップである。

 そして今、新たな料理に挑戦中の私は機嫌が良い。

 ふんふんフーン♪と、適当な鼻歌を歌うぐらいにはご機嫌だ。

 

 だし汁と卵で溶いた小麦粉を、丸いくぼみのある鉄板に流していく。

 熱せられた鉄板からジュウジュウと音がして、香ばしい匂いが漂って来た。

 ここにぶつ切りにしたゆでダコを投入。

 天かすに、薬味も少々加えてまして・・・

 

 何を作っているのか、おわかりいただけただろうか?

 そう!異世界の大阪という都市のソウルフード『タコ焼き』である。

 

 ケビンさんの訛りがアレなもので、食べてみてーなと思っていたところ、

 タコ焼き作りにピッタリの鉄板を、雑貨屋で偶然見つけたのだ。

 運命を感じちゃったよね。

 これはもう神が『タコ焼き作れ』と、言ってるよね。

 

 そんな感じでタコ焼き作りに挑戦中だ。

 鉄板に合うサイズの導力コンロと、ついでに竹串も見つけたので買っておいた。

 

 表面が少し固まり、縁がキツネ色に焼けた。

 竹串でそっと触るとクルッと軽く回る状態、ここだ!

 一度に全部ひっくり返すのではなく、形を整えながら数回に分けて丸くしていく。

 何度か失敗したけど、だんだんと慣れて来た。

 失敗作は私が責任もって食べるか、リースさんの胃袋へ投棄しよう。

 

 いい感じに焼けたみたいだ。

 焼き上がったまん丸を皿に映して、どろっとした濃厚ソースをかける。

 このソースと青のり、鰹節は東方系の食品市場で試食しながら購入したものだ。

 鰹節と青のりを散らして、マヨネーズはお好みでいいだろう。

 

 おお、見た目は完璧なタコ焼きだ。

 これは映える!

 食べる前に写真を撮って記念に残しておこう。

 

 さっそく出来立てを味見だ。

 はふはふ……もぐ…もぐ…

 うむ、外はカリッ中はふわトロッとしていて、うまい!

 もう1個口に運ぶ。うん、さすが私だ、ちゃんと美味しく出来ているぞ。

 ソースの味が濃いので、アッサリ目が好きな人には、醤油やポン酢で食べても良さそう。

 

 異世界情報には料理関係のものを多いが、味に関しては推測するしかない。

 もしかしたら、このタコ焼きはオリジナルとは似て非なる味だったりして・・・

 こればかりは確かめようがない。

 

 よっし、次の分を焼いていこうかな。

 材料はまだたくさんあるので、今日のお昼にしてしまおう。

 

「ただいまー。ん?なんかええ匂いがするなあ」

「これは!我が家のシェフ(神)がまた素晴らしいモノを創造なされた!」

 

 ケビンさんとリースさんが帰って来た。

 私に胃袋を掴まれたリースさんは、言動がおかしくなっている。

 気にしたら負けだ。

 

「お帰りなさい。ちょっと待っててくださいね、今お二人の分を…」

 

 よっ!はっ!それ!

 うん、ひっくり返す作業も上達して来たな。

 

「あ、キンタマだ」

キンタマやんけ、懐かしいなあ」

「ブフォッ!?!?( ゚∀゚)・∵」

 

 吹いた。吹かざるを負えなかった。

 顔面偏差値の高い二人がいきなり『キンタマ』とか口走ったら吹くわ!

 二人とも品性をどこに捨て去って来たのだろうか?

 

「何なんですか?下品なバカップル始めたんですか?性職者ですか?」

「え、だってイリス焼いてるの、キンタマだよね」

「姉さんも好きやったな。キンタマ

 

 この二人『タコ焼き』のことを『キンタマ』と、言っている!?

 まさかアルテリア法国の常識なのか?動揺している私の方がおかしいのか?

 『キンタマ』と『金玉』は違うとでもいうのか?

 じゃあ、男性の股間にぶら下がっている玉は、なんと呼ぶのが正解なんだ!

 

「ねえねえ、イリスのキンタマ早く食べたい」 

「美味しそうやな~、イリスちゃんのキンタマ

「ちょwwやめてくださいwww!!」

 

 わざと言ってない?この二人確信犯じゃない?

 『イリスのキンタマ』って言うの今すぐやめて!!

 

 一応断っておくが、私の性別は女、純然たるメスである。

 男の娘でもないし、穢れたバベルの塔が生えてもいない。

 当然!キンタマも存在してはいないのだ!

 そこのところ、重々承知の上でヨロシク!

 

「これはタコ焼きです。タコ焼きなんです!タコ焼き以外の何物でもないのです!」

「それってイリスの感想だよね?」

「なんかそういうデータあるんか?」

 

 ウッゼェェェ!!(゚Д゚)ノ

 

 『はい、論破』とか言い出しそうな二人が激しくウザい。

 私を論破したいのなら『キンタマ』について説明してもらおうか?

 

 ・・・・・・・・・・・

 

 あるところに商魂たくましい男がおりました。

 男は故郷のアルテリア法国に新たな名物料理を作り、一儲けしようと企んでいました。

 東方を旅行した際、男は屋台で売られていた不思議な形の食べ物を発見します。

 奇妙な形の鉄板で作る丸い食べ物、男はこれを故郷で販売することにしました。

 完全にパクりでしたが、男は『これは自分が考案したオリジナル料理』だと言い張ることに決めました。

 虚栄心と承認欲求の塊、それが男の本性でした。

 店舗を構え、いよいよ販売開始となった時、男は料理を元々の名称から変更しようと言い出します。

 今頃になってパクりがバレるのを恐れたのかもしれません。

 『キンタマ焼き』と名付けられたその料理は、物珍しさから最初こそ売れていましたが、販売から半年を待たず世間から飽きられてしまいます。

 それから数年後、細々と営業していた店はいつの間にか閉店し、男も姿を消してしまいました。

 

 以上、キンタマに夢を見て、キンタマに夢破れた男の話でした。

 めでたしめでたし。

 

 みんなでタコ焼きを食べながら、世知辛いキンタマの由来を聞いた。

 私の感想は『しょーもな』の一言だ。

 商売がうまくいかなかった理由は下品な名称のせいだと思う。

 宗教国家で『キンタマ焼き』は攻めすぎだ。

 

 しかし、このインパクトある商品名は当時の人々の心に根付いてしまい今に至る。

 ケビンさんたちも店が潰れる前はよく食べていたらしい。

 

「うま!イリスのキンタマ美味しい~最高~」

「次に私のキンタマとかほざいたら…リースさんにはもう何も作ってあげません」

「ごめんなさい!イエス・タコ焼き!ノー・キンタマ!」

「それでいいんです。はい、おかわりどうぞ」

「わーい!イリス大好き~タコ焼きはもっと好き」

 

 それだと私、タコ焼きに負けてない?

 

「元々、東方では『まん丸焼き』とか『コロコロ焼き』って言うてたらしいで」

「それがどうしてキンタマに?」

「さあな。ウケ狙いか、創業者なりの拘りか、今となっては知りようがない」

「イリス!イリス!大変、これタコじゃなくてチーズ入ってる!」

「変わり種も焼いてみました。ソーセージやベーコン、チョコやあんこを入れても美味しいですよ」

「天才か!やはりイリスは神!」

「『キンタマ焼き』とは最早別もんやね。ワイもおかわりもらおうかな」

 

 ケビンさんたちが知っている『キンタマ焼き』は具は入っておらず、黒糖やシナモンシュガーがまぶしてあったらしい。

 それはそれで美味しそうだけど、やっぱりタコと濃厚ソースの組み合わせが最高だ。

 

「一応聞いてみるのですが『金玉』という単語が、男性の睾丸や精巣と同義だと理解されてます?」

「なっ!?いきなり何を言い出すんや!女の子が、そないなこと言うたらアカン!」

「食事中だよイリス?お下品な子は、めっ!!」

「先にキンタマ言い出したのはそっちじゃないですか!!」

 

 何故か私が怒られた、解せぬ( ゚Д゚)

 

 ●

 

 三人でタコ焼きに舌鼓を打っていると、ピンポーン!と玄関のインターホンが鳴った。

 

「はーい。どちら様ですか?」

 

 玄関扉を開けると、眼鏡をかけた優し気な男性トマスさんが立っていた。

 わざわざ家に来るなんて、何かあったのだろうか?

 

「やあイリスさん。突然の訪問、申し訳ありません」

「いえいえ、トマスさんならいつでも歓迎しますよ。今日はどうされました?」

「私は付き添いです。イリスさんたちに用があるのは、こちらの方でして…」

 

 トマスさんが視線を送った先、もう一人誰かが立っている。

 修道服に身を包んだ若い女性?どこかで見たような。

 

「もう私の顔を見忘れましたか?大した記憶力ですね」

「あなたは…」

 

 いつもの神秘的な服装と違うので気付くのが遅れた。

 シスターの格好は彼女なりの変装なのだろう。

 この、残念なモノを見るような目は忘れようがない。

 

()()()()()聖女様!?

「人をダメ人間みたいに言わないでください!終わりです!お・わ・り!」

 

 あーはいはい。

 貴方様は『終わりの聖女』でしたね。

 1週間ぶりなんで、ちょっと間違えた。

 

「とりあえず中へどうぞ。トマスさん…オワリンコ様も」

「オワリンコは却下したはずでしょ!」

 

 聖女様、毎回キャラが崩れて大変そうだなあ。

 

「なぜ会う度に私を不愉快にさせるのです?」

「そんな、滅相もありません」

 

 私のようなクソガキが、偉大なる聖女様に無礼を働くなどと、あろうはずがございません。

 

 上目遣いでちょっと瞳をウルウルさせてみた。

 買い物中の値下げ交渉でこれをすると店員さんが『仕方ねぇなぁ』と、言って安く販売してくれるんだよね。

 私の交渉テクニックの一つだ。

 

「心にもない世辞は結構、くっ…そんな顔をしてもダメです」

「( ´゚౪゚`)」

「変な顔をするのもやめなさい」

 

 変な顔って酷くね?

 聖女様と比べたら私はブスなんだろうけどさ。

 

「聖女様がこんなに生き生きするとは、さすがイリスさんですね~」

「ライサンダー卿の目は節穴ですか?私は腹を立てているだけですが…」

「その割には楽しそうに見えましたけど」

「そういう事ですか、好きな子に意地悪しちゃうお年頃なんですね」

「違います」

 

 もう照れ屋さん☆

 私と仲良くしたいなら、素直にそう言えばいいのに。

 

 玄関前でずっと会話するのもアレだ。来客を家の中へ招き入れよう。

 はーい、2名様ごあんなーい。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 突然来訪した聖女様とトマスさん。

 トマスさんはともかく、聖女様が直接来たことにケビンさんはビックリしていた。

 この聖女様、大聖堂から出ることは珍しいのだとか。

 引きこもりかな?

 

 彼女の私生活を知る者は法王様とごく一部の教会幹部だけらしい。

 普段何をしているのか、どういう出自の人間なのか、ケビンさんも詳細は知らされていない。

 トマスさんは何か知っていそうだけど、聞いても『それは秘密です』とか言われそう。

 

 【終わりの聖女】彼女は一体どんな終わりを告げるというのか?

 謎は深まるばかり・・・でも今はタコ焼きを焼こう。

 

 せっかくなので、聖女様とトマスさんにもタコ焼きをお出しする。

 大したものではありませんが、どうぞ召し上がってくださいな。

 

「これはこれは、美味しそうなキンタマですね~」

「タコ焼きです」 

「うっ、いい匂い……ですが、き、キンタマぐらいで私を懐柔できると思わないことですね」 

「タコ焼きですってば!」

 

 聖女様とトマスさんも『キンタマ』と、恥ずかし気もなくぬかしおる!

 この分だと法王様もキンタマと言っちゃうんだろうか?

 法国に暮らしてる者のミーム汚染は根深い。

 

 タコ焼きは二人の口に合ったようだ。

 トマスさんには絶賛され、聖女様はぶつくさ文句を言いながらも完食してくれた。

 お腹が満たされたことで聖女様の機嫌は多少持ち直した模様。

 

 二人とも私の調理スキルを認めてくれたみたい。

 何故かリースさんが後方師匠面をしていたので、ケビンさんが呆れていた。

 

「ほんで?今日は何の御用ですか?」

 

 全員分のお茶を提供し私が席に着いたのを見計らってから、ケビンさんが話を切り出した。

 ティーカップを置いた聖女様が姿勢を正して口を開く。

 

「イリス、あなたに試練与えてから1週間が経過しました」

 

 そうですね。もう1週間経ちましたね。

 

「その後どうですか?キン…タコ焼きを作る暇があるなら、既に悪魔を1体ぐらい倒しているのでしょうね?」

 

 どうやら聖女様、試練の進捗状況を聞きに来たらしい。

 担当編集者みたいな真似をしおってからに。

 

「聖女様はイリスさんを心配していたんですよ。ここ1週間ずっと『試練、難しすぎたかも』『…大丈夫かな、ケガしてないかな』と、独り言ちながらウロウロと…」

「ライサンダー卿!お黙りなさい!ていうか、独り言を聞かないで!バラさないで!」

 

 赤くなってトマスさんをポカポカ殴る聖女様。

 全然痛く無いようで、トマスさんは『はっはっはっ可愛いですね~』と笑っている。

 

 聖女様いい人じゃん。

 彼女のことを少々誤解していたようだ。

 最初に会った時、

 『なんだぁこの意地悪女は?イボ痔なれ(゚Д゚)ノ』

 と、思っていたことを反省する。

 

「オホンッ!……それで、試練は?あなたがどうしてもと頭を下げるなら、難易度を下げることも…」

「試練は滞りなく完了しています」

 

 試練はちゃんとクリアしているのだ。

 タコ焼きを食べた後、ケビンさんたちと報告に行くつもりだったけど。

 聖女様の方から来ちゃったんだよね。

 

「仕方ありません。別の試練を考えて来ましたので変更を………今、なんと言いましたか?」

「聖女様から与えられた試練はクリア済みです。悪魔共は私がキッチリ懲らしめておきましたのでご安心を」

 

 私の言葉に聖女様が固まった。

 そのまま、ケビンさんの方を見て『マジで?』という顔をするが、

 ケビンさんが『マジやで』と頷き返したのを見て、余計に混乱したようだ。

 

「…いや、ちょっと待ちなさい。危険度A以上の高位悪魔5体ですよ?それを一週間で、3人しかいないのに…」

「ふむ。グラハム卿、聖痕を全力でぶっ放したりしましたか?」

「そんなことしてへん。ワイもリースもほぼ出番なしや」

「イリスが1人で全部やっつけた。一方的な殺戮、スカッとした」

「ホンマにひどかったなぁ、悪魔を可哀想に思ったのは初めてや」

 

 やれと言ったのは聖女様だ。

 一兵卒の私は命令に従ったに過ぎないのだよ。

 哀れな悪魔たちよ、恨むならこの聖女様を恨んでね☆

 

「証拠は?その話が本当だという証拠はあるのですか?」

「こちらどうぞ、悪魔が封印されていた玉の残骸です」

 

 私は布に包まれていた物を聖女様に差し出す。

 黒い水晶玉に似た物体は割れていたり、ヒビが入っていたりと原型を留めていない。

 悪魔を倒した後、粉々になっていない欠片を回収してきたものだ。

 

「【デモンズソウル】……微かですか、まだ力の残滓を感じます。本物みたいですね」

 

 トマスさんが本物の遺物であると認めた。

 ダメ押しで更に証拠を提出しよう。

 

「悪魔を倒す決定的瞬間の映像もありますけど、見ます?」

「そんなものが!?」

「主演イリス、背景ケビン、撮影したの私、初めてのカメラマンなかなか楽しかった」

「背景言うな。せめて端役って言うて」

「録画する余裕があったんですね。これは是非、拝見させていただきましょう」

 

 ケビンさん所有のノート型導力端末をテーブルの上に置き起動させる。

 映像のファイルは…確かここに保存してあったはず。

 慣れた手つきで端末を操作する私を見てトマスさんが感心していた。

 

「イリスさん、導力端末も使えるんですね」

「ああ、ワイなんかよりずっと達者で驚いたわ」

「これぐらい今時の子なら普通ですよ」

 

 端末の扱いは庭園の授業では必修科目だったし、ドクターの助手として仕事中もよく利用した。

 レンねえさまやティータさんにも教えてもらったので人並みには扱えていると思う。

 

 画面がよく見えるよう聖女様たちには私の両サイドに来てもらった。

 

 映像を再生する。

 私と悪魔が向かい合っているシーンが映し出された。

 聖女様が『っ!』と息を呑む。

 悪魔は私の何倍も大きく、見る者の恐怖させる異形の姿をしていた。

 まあ初見はビックリするよね。

 私はこの時『こいつクミコより迫力ないな』とか思っていたけど。

 

 導力カメラを使うのは初めてだとリースさんは言っていたが、手振れもなくちゃんとして映像が撮れている。

 ここから激しい悪魔との戦いが始まると思ったのか、聖女様が少し身を乗り出した。

 期待させて悪いけど、そうはならなかったんだよなあ。

 

『がははははっ!俺様が復活したからには、この大地を地獄へと塗り替えてやるわ』

『ルミナスブラスターッ!!』

『ほげぇぇぇぇ!!』

 

 偉そうに高笑いを上げていた悪魔が虹色の光線を浴びて消し飛んだ。

 聖女様だけでなくトマスさんも『は?』と、言って唖然とする。

 

 見ての通り、先手必勝の瞬殺劇です。

 だって隙だらけだったんだもん。撃ってもいいよね?

 

 私は端末を操作して早送り、ここからは戦闘シーンだけダイジェストでお送りしよう。

 

『愚かなる人間どもよ。絶望に沈みながら我が贄となるがいい!』

『ブラスター発射しまーす!』 

『ほげぇぇぇぇ!!』

 

『光栄に思うのだな。貴様の死を皮切りに俺の覇道がはじま…』

『あ、そういうのいいです。ブラスターッッ!!』

『ほげぇぇぇぇ!!』 

 

『おーほほほほっ!弱き者よ、その目に焼き付けなさい。私という偉大な存在があなたに死を与え…』

『はいはい、ブラスター撃ちますね』

『ほげぇぇぇぇ!!』 

 

 場面や悪魔の姿形は違っているが、やっている事は大体同じだ。

 私がブラスターを発射して悪魔が断末魔を上げる。

 ワンパターンな映像が続いていく。

 断末魔が毎回一緒なのはなぜだろう?

 

 お、ここからはちょっとだけ記憶に残る奴らの登場だ。

 

 鷲の上半身にライオンの様な下半身、グリフォンという魔獣に似た悪魔が映る。

 しかもこいつ、二足歩行して棘付きの鉄球を肩に担いでいた。

 

『笑わせるねえw君みたいなチビガキが僕を倒すつもりなのかい?』

『私を甘くみた奴ら、全員死にましたよ』

『そいつらが雑魚だっただけでしょ。エリート悪魔の僕と一緒にしないでほしいなあ』

『へぇ、悪魔ランキングの上位者ですか?』

『ランキングを知っているのか。いいよ、特別に教えてあげる。後悔して泣き叫ぶんだねぇ!』

 

 鉄球を地面に叩きつけ、悪魔はランキングの順位を誇らしげに告げた。

 

『僕のランクは〖1045位〗1000番台はエリートの中のエリート!選ばれた一握りの…』

クミコより下じゃないですかぁ!ヤダァーーッ!!

『はぁ?誰が誰の下だってぇ!お前、僕のこと舐めすぎだろ、グチャグチャにしてやるぞ』

さよなら『トシコ』ブラスターッ!!

『トシコってなんだ!?まさかそれ僕のな……ほげぇぇぇぇ!!』

 

 悪魔ランキング〖1045位〗トシコ、命名直後に死亡。

 偉そうにしていた癖に、やっぱりクミコより弱い。

 クミコは〖935位〗だったんだよ、バーカ!

 

 次の悪魔も妙な姿をしていた。

 こいつは人間サイズだけど、頭がクラゲみたいになっていて触手が髪の毛のように伸びている。

 手には死神を思わせる大鎌を装備していた。

 やめてよね、大鎌はレンねえさまの武器なんだから真似すんなよ。

 

『うふ、うふふふふ。おチビちゃん、あなたのこと知ってる。私の同類いっぱい殺した…ふふ、うふふ…』

『おや?仲間を殺されて悲しいと思う心があったのですか?』

『そんなのない。弱いバカが勝手に死んだ…それだけ。でも…ふふ……あなたに興味が…出て来た…』

『友達になりますか?悪さをしないのであれば、教会に口利きしてあげてもいいですよ?』

『そのキラキラ髪ほしい、頭皮ごとちょうだい…目玉も抉って私のもの…ふふふ…内臓もきっとキレイなんだろうなぁ・・・へへ』

『あー、はい。相容れませんね。死んでください』

『うふ…ビーム吐く?……それ、私に効かない…ふふ残念…』

『なんですって?』

 

 これまでの奴らと違い、クラゲ悪魔は余裕の笑みを見せる。

 見れば頭部がグルグルと回転し、悪魔の正面に空間の歪みの様なものを発生させていた。

 

『この楯…光学兵装を弾いて無効化する…あなたに、ふひ…勝ち目ない……ふひひ』

『私への対抗策を考えてきたとは、相当な手練れと見ました。戦う前に悪魔ランキングを聞かせてください』

『いいよ…ひひ…冥土の土産……私〖828位〗これまでの雑魚とは…違う……わかった?…わかったなら諦めて…ふふひ』

ハニワ幻人めっ!死ねぇっ!!

『『ハニワ?』…ちが…私は…え?ちょ、ま…うそ……ぐがっ…ほげぇぇぇぇ!!』

 

 悪魔ランキング〖828位〗ハニワ、ブラスターの効かない強敵だったはず。

 しかし、私のイリスブリーカー(ベアハッグによる締め付け)で上半身と下半身が分断、粉々になってしまったとさ。

 人間サイズなのが仇となったな。

 

 映像はまだ続いている。

 ハニワを倒した後、それまで戦いを遠巻きにしていた邪教徒の残党が怒り狂って攻撃して来たのだ。

 雄叫びを上げながら突撃してくる数十人の邪教徒、全員がまともな倫理観を持たない犯罪者である。

 ハニワを復活させるため、散々悪事を働いていた事は既に調査済みだ。

 

『な、何ということを!貴様ぁぁ自分が何をしたかわかっているのかぁ?』

『新たな神となるはずだった、我らの希望をよくも!』

『七耀教会許すまじ!女神の走狗め、まとめて血祭に上げてやるわ!』

うるさいです!邪魔台王国のクズどもが、お前たちこそ全滅DA!(゚Д゚)ノ

『じゃま?なんだこいつ、動きが見えな…』

『こんなバカな、強すぎ…る‥‥』

 

 虹色が動く度、ダース単位で人間が宙を舞い吹き飛んでいく。

 罪深い者どもは悲鳴を上げるのが精一杯であった。

 

『『『『ぎゃぁぁぁぁぁァァァッッッーーー!!!!』』』』

 

 この日、邪教徒たちは理解した。

 本物の悪魔は、生贄も儀式も必要なく既に限界していたのだと。

 理解するのが遅すぎた。

 

 映像はここで終わっている。

 自分の戦闘シーンを見るのは、何だかちょっと恥ずかしいな。

 

「イリス強すぎw笑うしかないww」

「何度見ても冗談かと思うぐらい酷いわww」

「鋼鉄イリスは悪党の許さないのです」キリッ

 

 この映像は後で法王様にも見て頂く予定なのだ。

 頑張ったから褒めてくれるといいなあ。

 

 先程から聖女様とトマスさんが静かだ。

 ブラスターの光で目がチカチカしたのだろうか?

 誤解無きよう言っておくが、これはフェイク映像ではないのであしからず。

 データ渡すので信じられないなら調べてもらって構わない。

 

「私、言いましたよね。5体の悪魔を倒して来いって?」

「言ってましたね」

「映像では5体以上の悪魔が『ほげぇぇぇぇ!!』していたのですが?」

 

 気付きました?

 ノルマは5体でしたが、探したら結構いたので余分に狩っておきましたよ。

 頼まれた以上の成果を出してこそ、できる女ですからね。

 

「グラハム卿、イリスさんは何体の悪魔を?」

「18体や」

 

 18体と聞いた聖女様が額をテーブルに打ち付けた!?

 ど、どうした急に?聖女特有の発作か?

 あれ?トマスさんもプルプルしながら下がった眼鏡を直している。

 

「じゅ、18体の高位悪魔を単独撃破!?それも1週間で???」

「正確には6日ですね。1日3体づつ倒していったので」

 

 トマスさんの眼鏡にヒビが入った。

 なんで?

 

「……はは…これは、もう、何と言いいますか……言葉もないです」

「敵に回さんで良かったやろ?ワイもあのまま戦っとたら…おお怖っ!」

「イリス、ネギの悪魔が残ってるよ?」

「え?倒していいんですか?ブラスターとブリーカー、どっちがいいですか?」

「やめて!死んでまうわ!」

 

 証拠映像もあるので、私が悪魔を倒したことは証明された。

 さて、これで試練はクリアしたわけだけど。

 聖女様は私を認めてくれるのかな?

 

「【虹の御使い】その力は本物…それだとあのビジョンは…まだ確定していない未来?」

 

 聖女様が机に突っ伏したまま、ブツブツごにょごにょ呟いている。

 この人どうしちゃったんだろうか?

 隙だらけなので、今なら乳を揉んでもいいだろうか?

 

「イリスっ!!」

「ひゃっ!ひゃい!」

 

 突然ガバッと起き上がった聖女様にビックリ。

 お茶がこぼれるからやめて。

 

「試練を達成したこと、褒めて差し上げます」

「ありがとうございます。では私の処遇は?」

「あたなを危険だという意見は変えません。ですが、此度の働きを見るに少なくとも人類の敵ではないようです」

「はい。私は人に優しい存在でありたいです」

 

 もっとも、人の皮を被った外道には容赦しないけどね。

 

「あなたの自由を認めます」

 

 やった!

 聖女様のお許しが出たぞ。

 言質取ったからな。後で無しとか言っても遅いからな。

 

「ただし!あなたが悪に染まることがあれば、我々は…」

「はい、その時はちゃんと殺してください」

「……」

「聖痕持ちの守護騎士なら私を殺せます。出来れば複数人で跡形もなく消してくれると…」

「やめなさい。……はあ…もう、殺せとか簡単に言わないでよ……そんなことしたくないのに…」

「聖女様?」

「バカな事を言ってないで、これかも精々『いい子』でいなさい。わかりましたか?」

「え、は、はい」

「返事が小さい!」

「はい!聖女様の期待を裏切らないよう、いい子でいます」

「よろしい」

 

 聖女様が私の頭を乱暴に撫でたかと思ったら、乱れた髪を今度は梳いていくように丁寧に優しく撫でてくれる。

 あ、聖女様笑ってる。

 この人の笑顔初めて見たかも。美人は笑顔も眩しいね。

 

 デレた?デレたんか?

 少しは心を開いてくれたのなら嬉しい。

 ケビンさんたちも『良かったね~』と微笑ましいモノを見る目をしている。

 その後、嫉妬したリースさんが乱入して、聖女様と私の取り合いをしていたのはご愛嬌。

 

 こうして、私は無事試練の乗り越えたのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。