「ふーっふっふwあーはぁーはぁーはーっwうあぁーはぁーはぁーはぁーはぁーはっwふぁっはっはっはっはぁーっwwひぁっはっはっはっww」
聖女様の試練をクリアした。
これで私は自由の身になったというわけだぁ!
嬉しさのあまり冒頭から呵々大笑する、イリスです。
「ふぁーっはっはっはぁ~…ゲホッ、えほっ、けほごぼ…オヴェ…くしょいっ!!」
カラン……コロン…
変な笑い方をしたせいか咽た。
咽た上に咳とえずきとクシャミが一度に襲来。
汚くてごめんなさいね。
えーと、ティッシュは・・・ん?
何か見慣れぬ物体が床に転がっている。
クシャミをした時、自分の口から何か飛び出た気がするけどアレがそうなのか?
謎の物体を拾い上げてみる。
鼻くそにしてはでかいな。
「…クオーツ?」
それはビー玉サイズの丸い塊だった。
一見すると、オーブメントにセットする結晶回路(クオーツ)に似ている。
だが、虹色のクオーツが存在するなど聞いた事がない。
じーっと観察してみると、虹色の色彩が揺らめく炎のように蠢いていた。
《【
《あなたの体内で虹霊子が結晶化したものです》
あ、解説のシステムさんチーッス。
へぇー、これ虹パワーが固まったものなのか。
結石みたいだね…
もしこれが尿管で生成されたら激痛どころでは済まなかっただろう。
んで?これはどう使えばいいのよ?
《血行促進、疲労回復、免疫力向上、精神の安定》
《所持していると気分が高揚し、僅かながら幸福感を得られます》
胡散臭いパワーストーンみたいだ。
危険物でないのなら、誰かにあげてもいいかもしれない。
私の体内から出た石で良ければの話だけど。
・・・・・・
無事に試練を終えたとはいえ、私にはまだお勤めが残っている。
日常の家事をこなしたり、法国内を観光したり、たまにケビンさんのお仕事を手伝ったりと。
まあいろいろあるのよ。
次の旅立ちへ向けての準備もあるからね。
今日も教会の研究施設で体を調べてもらう。
これも私の大事な仕事だ。
法王様からお願いされた重要任務なので協力は惜しまない。
研究所は大聖堂の地下に大掛かりなものがあり、街の中にも関連施設がたくさん存在する。
メルカバや騎士団員たち戦力を支える装備類もここで開発されているのだ。
空の女神への強い信仰心がありながら、その神秘を暴こうとする。
矛盾しているようだが、これも世界の安寧のためと思えば女神も『ちょとだけよ♡』と、お目こぼししてくれるだろう。
古代遺物、超常現象や異能、神秘に該当するアレコレを解析し実用化(もしくは封印)を目指す研究所は、重厚な雰囲気と慌ただしい活気に満ちていた。
何度も通っているうちに顔パスになってしまった施設内。
ここでの私は超VIP待遇である。
研究員の人たちはこれでもかってぐらい私を丁重に扱ってくれる。
毎回初めてお医者さんに来た幼児のような応対をされてしまう。
きっと、法王様直々に厳命されているからだろう。
電気ショックはない、体中に電極をブッ刺されることもない、よくわからない病原菌を植え付けられたりもない。
毒劇物の摂取を強要されたり、『ちょっと見たい』とかいう理由で解剖されたりしない。
耐久実験という名目で玩具にされたり、『気に入らない』から処分されたりもしないのだ。
私の知っている研究所とは随分違う。
そう言ったら、みんなドン引きしていた。
話を聞いたケビンさんブチ切れて『クサレ外道が…ぶっ殺したる』と怖い顔をしていた。
私以外の【知の庭園】出身者はもう全員殺されているので、ケビンさんの出番はないです。
毎日健康診断と体力測定ばかりで少々退屈だ。
ちょっと採血されただけで『頑張ったね』とか言われるの、居たたまれない。
もっと激しい検査してもいいのよ?
虹霊子の解析は難航している。
『何かわかった?』と聞いても『よくわからない事が解った!』と元気よく返答されて困る。
この力の謎を理解するには100年見積もっても足りないらしい。
古代ゼムリア人のオーバーテクノロジーはとにかく凄いのだろう。
今朝吐き出したばかりの【虹霊石】を調べてもらった。
システムさん、説明が足りないところがあるから一応ね。
オーブメントにセットできたので、その状態でアーツを発動させる実験。
アーツの威力、効果共に変化なし、ただし、アーツが発動する直前にキラキラと虹色の光が舞うエフェクトが入る。
・・・いらないなあ。
あとは、暗闇でほのかに光って綺麗なことが判明した。
うん、アクセサリーに加工するのがベストだね。
この【虹霊石】第1号は後日、リースさんにあげたら大層喜ばれた。
お守りとして大事にしてくれるらしい。
「決めた。これはイリス玉と名付けよう」
「虹霊石という名称があるのですが?」
「イリスの体から出た、だからイリス玉でいいの。はい決まり~」
・・・別にいいけどさぁ。
●
【虹の御使い】という存在が守護騎士の監視下に置かれている事は既に周知されている。
しかも、私は虹色というカラーリングなので嫌でも目立つ。
どこに行っても『アレじゃね』『アレだわ』と気付かれてしまうのだ。
これはもはや虹色の業である。いつものことなので気にしてはいけない。
対人関係を良好にする術は心得ている。
礼儀正しく愛想よく、元気に笑顔で接しておけば何とかなると学習済みだ。
法王様やケビンさんの顔に泥を塗らないために、いい子でいよう。
大聖堂と研究施設を出入りしていると顔見知りが自然と増えた。
今ではみんな気軽に挨拶してくれるし、運が良ければお菓子をくれたりもする。
撫でてもらったり抱きしめられたりすることもある。
人に触れられるのは好きなので満更でもない。
大聖堂の中庭は大きな花園になっていて、季節に合わせた色とりどりの花が咲き誇っている。
法王様や聖女様の好きな植物が植えてあるんだってさ。
一般公開はされていないが、大聖堂で働く人たちは自由に散策していい場所だ。
私にも許可が下りたので、お気に入りの昼寝スポットとしてよく利用している。
天気のいい日はここで本を読みながらウトウトしたり、意味もなくボーっと過ごすと気持ちいいのだ。
最近、中庭を訪れる人が増えた気がする。
よく手入れされた花壇や植物の緑に癒しを求める人が多いのだろうか。
お邪魔にならないよう静かに過ごしていたのだが、なんか向こうから話しかけて来る事が多い。
お喋りは嫌いではないので雑談に付き合う。
男女年齢問わずいろんな人と話ができて嬉しい。
「聞いておくれ、イリスちゃん」
「なんでしょうか?」
「若いシスターを見るとムラムラする、この気持ちは恋じゃろうか?」
「欲情しているだけですね。捕まらない内にどこかで発散するのをおススメします」
「そうしたいのは山々じゃが…隠し持っていた『エッチな本』を燃やされしまったんじゃ。プレミア本じゃったのに…」
初老の男性が肩を落として嘆いている。
職場にエロ本を持ち込んだのがバレて上司に燃やされてしまったらしい。
それは上司が正しいと思う。
「残念でしたね。よしよししてあげます」
「おほっ!イリスちゃんは今日も天使じゃのう。それに比べてあのババアは魔王じゃよw」
「魔王?教会の総本山であるここに魔王がいるのですか?」
「ここだけの秘密じゃよ。実は法王とかいう偉そうなババアの正体こそまお……カヒュ!?」
突然、後ろから伸びて来た手が男性の頸動脈を絞めた。
余程的確だったのか、数秒も経たない内に男性は気絶して崩れ落ちた。
見事な手際である。
「ここにいたのですね、イリス。時間があるなら私とお茶でもいかがですか?」
「法王様!…お茶は是非ご一緒したいのですが、今落とした男性は?」
「この男は存在が異端なので成敗しただけです。あなたが気にする必要はありません」
「でも、魔王がいるって言ってました。彼は教会内部に獅子身中の虫がいるという重大な情報を握っているはずです」
「まあ!それは一大事です。この者はすぐさま拷問にかけ口を割らせましょう」
『連れて行け』と法王様が命令すると、どこからともなくゾロゾロ人が現れて男性を何処かに連れて行った。
『抜け駆けしようとするからだ』『ナデナデ羨ましい』『とりあえす殴ろうぜ』
などと聞こえた気がするが、あの初老の男性は何者だ?
笑顔の法王様がなんか怖いので聞いてはいけない気がする。
「イリス、付き合う人は選びなさい。先程のような愚者を相手にしてはいけません」
「悪い人ではないと思ったのですが?」
「アレはあたまが悪い人です。おまけにスケベで救いようがありません」
お茶をしている最中『アレは仕事ができるから余計に始末が悪い』と、法王様が愚痴っていた。
法王様にアレと言われた男性が教会の№2、枢機卿だと判明するのは翌日のことである。
七耀教会…本当に大丈夫か?
●
守護騎士と言うのは第一位から第十二位まで、全部で12人の聖痕保持者がいる。
それぞれが世界中で様々な任務を当たっており、全員が揃う事など滅多にないらしい。
普通に生きていれば守護騎士に会う機会はない。
仮に会っていたとしても、向こうはおいそれと身分を明かさないので気付かない。
そんな守護騎士に私は会っていた。
なんとケビンさん、トマスさん以外の新たな守護騎士である。
「やあイリス。今日のお勤めは終わったのかい?」
「ワジきゅーん!」
「はは、コラコラ、いきなり飛びついたら危ないよ」
そう言いながら難なく私を受け止めたのは、中性的な美貌を持つイイ男であった!
うわーい!文句なしのイケメンだぁ!(´▽`*)
爽やかなフレグランスの香りが堪りませんわ。
「検査も実験も終わりました。ビームコーティングされた装甲板をブラスターでぶち抜いたら、みんな大はしゃぎです」
「今日も派手にやってたみたいだね」
このイケメンさんは〖守護騎士第九位、ワジ・ヘミスフィア〗
私はワジ君と呼ばせてもらっている。
淡い緑色の髪、細くしなやかな肢体に柔らかな物腰、そして男女問わず魅了する美しさ。
もう一体どこの王子様ですか?
婚約破棄された私を迎えに来てほしいですわよ!
ホストとかやったら、即行でナンバー1になれそうな逸材だ。
同じく王子様系のヨシュアさんとセットで指名して侍らせたい。
ワジ君とは大聖堂でバッタリ会って以来、仲良くさせてもらっている。
ケビンさんたちが不在の時は遊んでくれたりするので嬉しい。
イケメンとは仲良くなって損はない。
ワジ君レベルのイケメンなら、お金を払ってでもお近づきになりたいわ。
「この後、予定がないなら訓練場へ来てくれないかな?」
「む、デートのお誘いじゃないんですね」
「ヴァルドがキミに会いたがっていてさ。組み手に付き合ってあげてよ」
「またですか。もう、ヴァルド君ったら」
ヴァルド君、〖ヴァルド・ヴァレス〗はワジ君の従騎士だ。
インテリメガネをかけている癖に、やたらオラついた従騎士なのよ。
騎士団入りする前はやんちゃをしていたらしい。
ある日、騎士団の訓練場で日課の修行をしていたら、急に難癖付けて来たんだよね。
『ここは子供の遊び場じゃねーぞ』とか言われた気がする。
そこからまあ、ちょっと口論になって気付いた時には、私がヴァルド君を見事にノックアウトしていたのだ。
騒ぎを聞いて駆けつけたワジ君が、腹を抱えて爆笑していたのは覚えている。
「いや、だってねwwあのヴァルドがwバックドロップされてww体格差何倍あるとwww」
「あの時のヴァルド君白目むいてましたねw」
気が付いたヴァルド君に『勝ったと思うなよ』と捨て台詞を吐かれ、それ以降何回も勝負を挑まれている。
油断していないヴァルド君は結構強い。
昔取った杵柄なのか、ステゴロでのケンカ殺法は中々に侮れないのだ。
彼からも学ぶことはたくさんある。組み手に付き合うのはやぶさかではない。
私とヴァルド君の組手試合、最初は二人だけだったのに、危ないからと審判がつき。
面白いからと観客が増え、今では騎士団内のちょっとした見世物になってしまっている。
最初こそ私が勝っていたが、最近はヴァルド君の動きが洗練されてきて黒星を付けられることもしばしば。
この間は、リングアウトさせられたっけな。今日は私が完封してやる。
「私が勝ったら、ヴァルド君にはご飯を奢ってもらいましょう。リースさんの分も」
「なんて酷い罰ゲームだ」
「ワジ君とも戦いたいです。勝ったら1日デートしてもらいます」
「フフ、いいよ。僕もイリスの成長が気になるからね」
ワジ君と手をつないで訓練場へ向かう。
勝った時のご褒美に胸が躍りますなあ。
●
ケビンさんの聖痕が気になる。
聖痕が二つ重なっているように見えるのだけど?
気になって仕方がない。
システムさんによると、聖痕は原則としてひとりの人間にひとつ宿るもので、複数の聖痕保持など前例のない未知の現象らしい。
だとしたら、ケビンさんの聖痕は他の物とは違うのか?
私も虹霊子という無茶苦茶な力を使う身として、ケビンさんの体が心配なのだ。
《でしたら、調整を施しましょう》
お、そんなことができるのかい。
《30分ほど接触していれば施術は完了します》
《その際はなるべく楽な姿勢で、リラックスして頂けると作業効率が上がります》
難しいことはシステムさんがやってくれるらしい。
接触?前みたいに抱っこしてもらえばいいか。
そうと決まれば、さっそくやってみよう。
・・・・・・・・・・・
ケビンさんの聖痕は表と裏の二面性を持っているらしい。
ひとつの聖痕に二つの違う力が備わっていたのだ。
二つの聖痕が宿っているわけではなかったが、このままでは体の負担は増える一方だったはずだ。
表と裏がケンカしないよう、うまく調整しないとね。
結果としてケビンさんの聖痕調整はうまくいった。
私はその結果に満足して、ケビンさんも新たな力に目覚めたのだった。
光と闇が合わさり最強に見える。
・・・・・・・・・
「【虹の御使い】ってのはお前だな。ちょっと面貸せよ」
大聖堂内にある大図書館、そこで私は絡まれている。
何だこのヤンキー女は?スケバンか?
おかしいな、ここは神聖な教会の大聖堂だぞ?
なんでヤンキーがおるねん?
真っ赤なロングヘアで目つきの悪い女が、行く手を阻みながら見下ろして来る。
「どちら様ですか?」
「あぁん?誰だっていいだろ、それより付き合えって言ってんだよ」
「すみません。私は男の人が好きなのでお断りします」
「交際を申し込んだ訳じゃねーよ!」
ここ図書館ですよ?少しは静かにしないさいよ。
やれやれ、こういう輩は雑魚魔獣と同じでどこにでも湧くから困るよ。
殴って黙らせたいところだが、さすがに相手が悪いか。
だってねえ、見えてるもん。
残念な事にこの女…聖痕持ってるんだよなあ。
守護騎士どうなっとんねん。
「セリスさん。さっきから何をやっているのですか?」
うひょ!イケメンのご登場だ!
しかも、彼も聖痕持ってるー。
水色の髪に涼し気な眼差しのイイ男だ、このタイミングでの登場、紳士に違いない。
よし、助けてもらおう。
「助けてください。このヤンキーが無慈悲なカツアゲをして来るんです」
「こんな小さい子に……セリスさん、見損ないましたよ」
「ばか野郎!カツアゲなんてしてねぇよ。アタシはただ、こいつが…」
「付き合えって言いました!私の体目当てです!レズです!クレイジーサイコレズヤンキーです!!」
「セリスさん!?さすがの私もドン引きです」
「待て待て待て!武器を構えるな。おいチビ、てめぇデタラメ言ってんじゃねー!」
「ぎゃー!レズヤンキー怖いです!犯されます!」
「こいつ!!」
騒ぎが大きくなって人が集まり出した。
私は爽やかイケメンに抱っこされてその場を逃走。
なぜかレズヤンキーもついて来た。
「だからレズでもヤンキーでもねぇって。この格好見ろよ」
「コスプレ?」
「違うわい!」
カフェテリアで一息ついた私たちは、誤解だと言うヤンキーの弁明を聞いていた。
ここの支払いはイケメンがしてくれるらしいので、私は飲み物とパフェも頼んじゃった。
ヤンキーは改造された修道服らしき物を身に着けいていた。
このデザインはおそらく、守護騎士の戦闘法衣だ。
イケメンさんも服もその類だと思う。
「私に何か用があったと、そうい事ですか?」
「そうだよ。なあ、お前……ネギ野郎の聖痕いじったって話は本当か?」
ネギ野郎……ケビンさんのこと?
「ええ。いじったというか、ちょっとメンテナンスさせてもらっただけです」
「マジで言ってんのか?聖痕を外部から操作できるなんて話、聞いたことがねえ」
「信じなくても結構です。嘘は言ってませんから」
話はそれだけか?
だったらパフェだけ食べて帰らせてもらおう。
「セリスさん。さっさと本題に入った方が良さそうですよ」
「ちっ!こういうのはお前がやれよな。【虹の御使い】お前に頼みがある」
「頼みの内容によります。すぐに頷くことはできません」
「慎重ですね。なるほど噂以上に聡明なようだ」
イケメンに褒められた。嬉しい。
「お前に会ってほしい奴がいるんだよ。そいつも守護騎士だ」
「正確には守護騎士になったばかりの新人です」
ほう、新人とな。
守護騎士は常に12人、前任者が死亡するなどした場合、別の人間に聖痕が現れる。
ここの図書館で読んだばかりの本に記されていたことだ。
「その新人に何かトラブルでも?」
「ああ、そいつ確かに聖痕を受け継いだはずなんだがよ…」
「力を発動できないのです。その事もあって、彼は酷く落ち込んでしまっています」
それを私に何とかしろってか?
単なる修行不足なんじゃねーの?
それとも、精神的な何かが力にブレーキをかけている、とか?
「あいつは少し訳アリでよぉ。ここに来る前から、精神的に弱ってるのは確かだ」
「ですが、聖痕自体に何らかの異常があった場合…」
「私の力を当てにしたいということですね」
二人が揃って頷く。
要はカウンセラーの真似事をして、聖痕に異常がないか確かめる。
異常があったら直せということか。
「法王様の許可は?」
「取ってある。やるかどうかはお前次第とも言われてる」
「枢機卿には『イリスちゃんに迷惑かけたら処す』と脅されました」
既に上の許可が出ているのならいいか。
ケビンさんの同僚になるわけだし、助けてあげたい気持ちもある。
ここはいっちょやってみますか。
「わかりました。やるだけやってみましょう」
「ありがとうございます。良かったですね、セリスさん」
「ああ、恩に着る」
話も一段落したのでパフェに集中しよう。
うまーい。甘くて美味しい~。
「こうしてると、色が変なだけのガキだな」
「失礼ですよ。こんなに美しい髪と目をしているのは、世界中探してもイリスさんだけです」
イケメンさん。見る目がありますね。
「なあ、お前今も聖痕が見えてるのか?」
「何となくですが見えてます」
「へぇ、じゃあアタシとリオンの聖痕がどんな感じかわかるか?」
お前の力が本物ならわかるよな?
と、挑発されているみたいだ。
頼み事しておいて疑われるとは心外である。
「ヤンキーさんのはメラメラ燃えて暑苦しいです。イケメンさんのはキンキンに冷えて寒々しいです」
「ヤベェこいつ本物だ」
「ええ、法王猊下がお認めになるのも納得です」
即答してやったら、二人とも感心していた。
ヤンキー女〖守護騎士第四位、セリス・オルテンシア〗
爽やかイケメン〖守護騎士第十一位、リオン・バルタザール〗
それぞれに自己紹介してもらい。
この日は解散となった。
●
私は猛禽類に縁があるらしい。
だって今、あたまに鷹が止まっているからね!
鷹だよ、タカ!翼広げたらメッチャでかいのよ。
そいつが私の頭に我が物顔で止まってる!なんでさ?
クローゼさんの親友である白ハヤブサのジークも私の頭に止まってたなあ。
二人とも元気にしているだろうか?
それで、私の頭には鷹が止まっているのだが、この子は何がしたいのだろう。
虹色の頭は鳥たちの休憩場にしていいという暗黙の了解でもあるの?
「ピーピー」
「ピーじゃありませんよ。あなたどこの子ですか?」
「ピー?」
「ちょ、痛っ!突くな。干し肉あげるから突かないで(>_<)」
まったく、私は用事があるってのに。
今日は、セリスさんたちに頼まれた例の新人と面談する日なのだ。
その新人さんは、大聖堂近くの裏山にある展望台で黄昏るのが日課らしい。
偶然を装って接触し、まずは話を聞いてみる予定だったのだが。
道中、急降下して来た鷹が私の頭に…
「ピー」
「美味しかったなら何より。私は人に会う予定があるのですが?」
「ピーピー」
「あ……どこに?」
干し肉を食べ終えた鷹はピーピー鳴きながら飛んで行った。
鷹が飛び去った方向には展望台。
まさかね・・・
そのまさかだった。
見晴らしのいい天文台に到着すると、先に着いていた鷹が私を見て『ピー』と鳴いた。
『遅かったな』とでも言いたげな鳴き声だ。
そのふてぶてしい鷹のすぐ横に誰かいる。
展望台の手すりに寄りかかるようにして立っていた人物は鷹の鳴き声に気付き顔を上げた。
「ゼオ?どうした……?キミは…誰だ?」
おほっ!
褐色の長身イケメン来たァァァーー!!
ええやん、ええやん、エキゾチックやん。
私の脳内イケメン図鑑がまた充実しちゃうなあ。
聖痕の力を感じる。
彼が守護騎士の新人で間違いないだろう。
「私はイリスと言います。そこの鷹を追いかけて来たのです」
「そうか、ゼオが何かしてしまったのだろうか?」
鷹の名前はゼオと言うらしい。
私は頭に止まられた事を話し、干し肉を勝手にあげた事を謝罪した。
「ゼオが人の頭に?俺以外から食べ物を……キミは風に愛されているのだな」
風?
よくわからないが、猛禽類には好かれるのは二回目です。
褐色のイケメンは〖ガイウス・ウォーゼル〗と名乗った。
こんなところで黄昏ちゃって、何か悩みがおありかな?
ほらほら遠慮せず、この私に話してみなされ。
大丈夫、こう見えて私聞き上手ですよ。
法王様や枢機卿の愚痴も聞き慣れていますからね。
・・・・・・・・・・・・・・・・
ガイウスさんの話を聞いて、思った事を素直に喋った。
それだけで、彼は元気になったようだ。
聖痕の方も特に重大な異常は見受けられない、サービスで軽くメンテしておこう。
結局、彼が聖痕を発動できなかったのは精神的な理由だったようだ。
今後は〖守護騎士第八位〗として精進すると決意を固めてくれた。
いや~良かったね~。
ガイウスさんが元気になったと報告するとみんなに褒められた。
セリスさんたちだけでなく、ケビンさんにも『よくやった』って褒められた。
お役に立てれば幸いです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「イリス、暇なら僕とお出かけしようか?」
「オカマは引っ込んでろ。おうイリス、今日は狩りに行くぞ。隣町で魔獣が暴れてやがるんだ」
「おやおや、イリスさんは私と優雅に読書する予定ですよ?」
「先輩方、子供に無理強いするのはやめて頂きたい。イリス、遠乗りをしてみないか?馬はいいぞ」
どうしてこうなった?
最近、ワジ君、セリスさん、リオンさん、ガイウスさんとよく会うようになった。
みんな暇なの?お仕事は?
構ってくれるのは嬉しいけどさあ。
守護騎士たちで私を取り合うのは正直やめてほしい。
あー!体を四方向に引っ張らないで!
らめぇぇぇ!千切れる!四分割される!
イリス千切れちゃうのぉぉーーー!!!
「ぐぬぬ、いつの間にかイリスがモテモテに…私のなのに」
「お前のでもないわ。でもアレやな、我が子の成長が嬉しい反面、寂しいみたいな気持ちや」
「イリスさんは人たらしの才があるようですね~」
私の取り合いにリースさんが参加してしまい、五分割されそうになった。
ケビンさんとトマスさんが止めてくれなかったらマジで危なかったよ。
遊びも訓練も付き合うから、順番を決めてケンカしないで!