邪教徒の館を華麗に襲撃!
今日も元気にお仕事頑張るぞぉ!
「我らは神の代理人、神罰の地上代行者、我らが使命は我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅すること…イェェェェメェェェンンン(Amen)!!」
どこぞのつよつよ神父さんを見習って進撃あるのみだ!
「イリス、すごい気合入ってる」
「どこで覚えたんや?あんなセリフの総長でも言わへんで」
最近の私は、守護騎士たちに可愛がられているからね!
ホント、可愛がりという名のスパルタ教育受けてるからね!
思い出すわ~ブライト家でやられた集団リンチ・・・
聖痕Sクラ連発を『愛のムチ』と言ってのけたワジ君はドS。
きっと彼はサディスティック星からきた王子様だったんだ。
今日はその憂さ晴らしも兼ねて邪教徒諸君を殲滅します。
死にたくなければ抵抗するなよ!
本音は、捕虜とか面倒なので抵抗してくれた方が後片付けが楽!
「おのれぇ!女神の走狗どもが、生かしては帰さん」
「この命、惜しくはない。アレを使うぞ」
「我々の崇高なる目的を邪魔する者に死を!」
出やがったな雑魚共が・・・( ,,`・ω・´)ンンン?
あれれ~あいつらが手に持っているのって・・・
邪教徒の握った筒状の物から、光の刃が伸びているではありませんか!?
ビームサーベルじゃね?
アレって何処から見てもビームサーベルじゃないか!
待て待て、アレが実用化されたとか聞いてないよ。
ティータさん曰く、ジェネレーターやバッテリーの小型化と軽量化が難しくて燃費も最悪じゃなかったっけ?
「阿呆が、あいつらハナから死ぬ気かいな」
「ケビンさん、あのビームサーベルについて知っているんですか」
「【魂喰らい】言うてな。アレは古代遺物の一種や」
【魂喰らい】とは使い手の生命力を燃料にして刃や弾丸を形成する古代遺物。
世界中にある遺跡から出土する割とポピュラーな遺物であるが、その危険性故に情報は伏せられ、星杯騎士団が優先的に回収をしている物だ。
少なくない数が裏社会や闇市で取引され、安易に使用したものの命を奪っているとか。
アルテマウェポンかよ。
ケビンさんから説明を受けている最中も、邪教徒たちが光の武器を手に襲い掛かってくる。
私たちの敵ではないので適当にいなしつつ【魂喰らい】とやらの観察をする。
刃は短いな、光の色も美しくない、切れ味の方はどうだろう?
うーん、邪教徒たちが弱すぎるせいで、イマイチ性能が把握できない。
「ハァ…ハァ…ぐはっ!」
「こ、ここまでか…」
「無念…」
何もしてないのにバタバタと邪教徒たちが倒れていく。
ケビンさんとリースさんはこの結果がわかっていたようで、やれやれとため息をつく。
死んではいないようだけど、衰弱して皆息も絶え絶えだ。
「これが武器に命を吸われた結果ですか?」
「せや。【魂喰らい】の使い手は遅かれ早かれこうなる。粗悪品やと一気に吸われて即行でご臨終や」
「技術部でも利用できないか研究してるけど、使ったら死ぬ武器なんていらないよね」
使ったら死ぬ?
そんな武器がこんなにたくさん量産されているのおかしくない?
《霊子兵装は生命力を消費する武器ではありません》
来た。システムさん解説よろしく。
《生物が本来持っているはずの、霊子エネルギーを武器に変換するモノです》
《この時代の人類は、旧人類に比べ内包する霊子量がほぼ
《従って変換するエネルギーの代替に生命力を消費しているだけです》
なるほどね。
つまり、昔の人より弱くなった現代人には過ぎた玩具だってことか。
だったら、私が使ってあげよう。
邪教徒の手から離れた筒【魂喰らい】に手を伸ばす。
「それに触ったらアカンて」
「いいや触ります!これは私の物です」
「イリスのおバカ!」
止めようとするケビンさんたちを振り切り、筒を握り込む。
ブオンッ!・・・
「うん。なかなかいいじゃないですか」
「こ、これは!?」
「虹色の刃……」
握られた【魂喰らい】からは光の刃が伸びていた。
邪教徒が使っていた時よりも遥かに長く大きな剣が形成される。
色は例によって虹色だ。
【魂喰らい】が私の虹霊子を刃に変換しているのだろう。
ブオンッ!ブオンッ!
音がいい!これだよコレコレ。
私が求めていたのはこういう武器だよ。
調子に乗って剣技の型を披露していると、握った手に違和感。
魂喰らいからバチバチ音がして、焦げたような臭いがしている。
内部構造の回路が焼き切れてしまったみたいだ。
短時間しか虹霊子に耐えられなかったのだろう。
「イリス、何ともないの?」
「平気です。魂喰らいは壊れてしまいましたが」
「無事ならええわ。報告せなアカンことも増えたし今日は帰るで」
大変いいものを見つけてしまった。
法王様におねだりしてみよう。
気絶した邪教徒をふんじばり、魂喰らいを回収。
応援に来た騎士団員たちと後片付けをして、私たちは帰還するのだった。
●
「イリスちゃん、ありがとぉぉぉ!感謝!圧倒的感謝ぁぁ!」
開口一番、ティータさんは私にお礼を言った。
通信特化のオーブメント、エニグマに着信があったので出てみたらコレだ。
元気そうだなぁ。
「ちょっとティータ、話しが進まないわよ」
今はZFCにレンねえさまも来ているようだ。
久しぶりのお声が耳に心地いいです。
「七耀教会からね、いっぱい物資が届いたの、優秀な人員も来てくれてウハウハだよぉ」
「誓約書山ほど書かされていたわよ。もし破ったら、異端者認定されて騎士団に狩られるわ」
「そんな細かい事はいいの!これでイリスちゃんフルアーマー計画が進むんだから」
頼んでないんだよなぁ。
武器を作れとは言ったけど、全身凶器にしてくれとは言ってない。
法王様の力でZFCと七耀教会の技術提携はうまくいったようだ。
その代わり、悪用しようとすれば思い罰則があると念押しされたようだが、当のティータさんは気にしていない。
おねだりしてゲットした例の物も無事届いているはずだ。
近況報告をして、私の身に何が起こったかを大まかに伝えた。
そしてクミコ戦でティータさんに造ってもらった武器をダメにしたことも謝罪する。
重斬刀も既に限界だし、アーマーシュナイダーも壊れた、重突撃機銃は石になって放置だからな。
「そんなのいいよ。武器は使い手のためにあるんだから、イリスちゃんが生きてるなら万々歳」
「強い悪魔と戦ったのね。飛び道具なしでどう仕留めたのかしら?」
あー、それは後ほど報告書と映像データも送ったので見て下さいな。
口で説明しても理解されないと思うので、今は言わないでおこう。
「【魂喰らい】届きましたか?」
「うん!これはすごいね、まさにイリスちゃんのために古代遺物だよ」
「耐久性に不安があります。内部構造を解析して私用の物を造ってください」
「簡単に言うわね。でも、念願のビーム兵器まであと一歩ってわけか」
「本当は遺物に頼りたくなかったけど、導力機器も元を正せば全部遺物だし、私はコレを使うの賛成だよ」
【魂喰らい】をティータさんが調べ上げ、私の虹霊子をビームに変換する武器を造ってもらう。
このプロジェクトにはZFCと七耀教会も協力してくれるのだ。
どんな武器が出来るのか、今から楽しみである。
「アルテリア法国かあ、ケビンさんとリースさんもいるんだよね。私も会いたいなあ」
「二人は私の保護者です」
「エステルが聞いたら嫉妬に狂いそうねw」
いくつか雑談をして通信を終えた。
クロスベルに着いたら、エステルたちとも話をしよう。
大きな導力端末があれば、みんなの顔を見て話せるんだけど、あるかな?
●
ケビンさん宅での生活もスッカリなれた頃、私は行きつけの雑貨屋に出かけた。
このお店は店長の趣味で変わった商品を仕入れることで有名なのだ。
あのタコ焼きをプレートもここで買い揃えた。
「おうイリスちゃん。買い出しかい?」
「日用品を少々。今日は何か面白い物はありますか?」
「そうだな…コレなんてどうだい」
店長がカウンターの上に見慣れぬ物を置いた・・・何だコレ?
「『アクトレスマスター』?トレーディングカードですか」
「おうよ。対戦ゲームはできねぇから、ブロマイドって言ったほうがいいかもな」
1パック5枚のカードが封入され、カードにはゼムリアの各地で活躍している俳優たちの肖像写真がプリントされているらしい。
映画産業の盛んな共和国で売り出されたのもを店長が仕入れたんだと。
レアな物はコレクターの間で高額な取引がなされているというが、生憎と私は興味がない。
「女優限定というのがネックですね」
「はははは、こいつが売れたら男優版も出るかもな」
女優のみのカードはいらん。
イケメン俳優のカードならちょっと欲しいかも。
これ売れているのだろうか?
そもそもこんな商品がある事自体みんな知らないんじゃ?
「俺もネタで仕入れたんだけどよ。売れるんだよコレが」
「マジですか。どんな人が買うのでしょうか?」
「お、噂をすれば影だ」
店に誰かが入って来た。
店長の『らっしゃっせー』という声に反応もせず、その客はツカツカと一直線にこちらへ来た。
邪魔にならぬよう、私はそっと横にずれる。
ジロジロ見るのは失礼だけど、新たな客は妙な格好をしていた。
サングラスにハンチング帽子、口にはマスクをして首元は季節外れのマフラーでグルグル巻きだ。
服装は地味な色合いのコートにジーンズ、目立ちたくないけど怪しさは隠し切れていない。そんな格好だった。
「…あの、いつものやつ…」
「はい。こちらですね。いつもありがとうございます」
「……どうも」
な!?
お、大人買いだとぉ!
あの客、さっきのトレカをボックスで買ったぞ。
1ボックス30パック、それを4つも・・・なんかすげぇ。
ボソボソと小声で喋る客はトレカを購入すると、そそくさと退店していった。
「今のがお得意様だ。うちで仕入れたトレカはあの客が大体買ってくれるんだよ」
「へぇー、コレクターという人種なのですかねえ」
「イリスちゃんも、1パックどうだい。これで今月仕入れた分の在庫はゼロだ」
「じゃあ、せっかくなので」
残り物には福がある、かもしれない。
最後の1パックを買い、在庫処分に協力してあげた。
・・・・・・・・・
何件か店を巡り、日用品と食材を買い揃えた。
帰宅する前に、ちょっと休憩していこう。
オープンテラスのあるカフェで甘いソーダ水を頼んだ。
シュワシュワなのに甘いのが癖になる。そしてゲップも出る。
喉を潤しながらふと隣の席を見ると、見覚えのある格好をした人物がいた。
あれ?この人、雑貨屋で会った大人買いの・・・
マフラーとマスクを外した姿は女性だとわかる。
それも若い女性だ。色白でかなりの美人だと思われる。
女は大人買いしたカードパックを開封していた。
ここで!?
家まで待てなかったの?
持参したハサミを使って丁寧に開封、ゴミはちゃんと持ち帰るため袋にまとめている。
育ちがいい人なのかもしれない。
何となく見守っていると、最後の1パックを開封し終えた女はテーブルに頭を打ち付けた。
なんだろう、今のヘッドバッドどこかで見た気がする。
「だ、ダメだった。今回も出なかった。物欲センサー働きすぎよ……もう最悪…」
机に突っ伏したままブツブツ呟き始めた。
お目当てのカードが出なかったみたいだ。
アレだけ買っても出ないのとは、余程レアなカードを狙っているんだな。
そういえば1パック購入していた。
私も今ここで開けてみよう。
ポケットから取り出したカードパックを開封する。
1枚目、2枚目、3枚目、4枚目・・・
うん。全然知らない女優さんたちだ!
これならレンねえさまの写真を持っていた方がいい。
レンねえさまのカードなら喜んで買わせて頂く!
これが最後、5枚目のカードは・・・お?
何かコレ、普通のヤツと違うよ。
私の髪みたいにカードの表面がキラキラしてる。
カードには若く健康的でスタイルのいい美人がセクシーなポーズを決めていた。
しかも、本人のサイン入りだ。
この人も全然知らない人だけど、何か他の女優さんと違う。
カッコイイのに可愛い、そして女としての色気もある。
彼女ならどんな役でもこなす、そう思わせる何かを秘めてた強い眼差し。
カードからもこの女優の凄みというか強烈な魅力が伝わって来る感じがする。
きっと、名のある売れっ子女優に違いない。
名前はえーっと・・・
「〖ジュディス・ランスター〗……やっぱり知らないな」
ガタッ!
「な、な、ななななな!なんでそれを!」
「はい?」
隣のテーブルで突っ伏していた女が立ち上がり、私の持つカードを指差して震えていた。
ずいっと顔を近づけてカードを覗き込んで来る。
なんだなんだ、距離感のわからない人ですか?
「間違いない、幻のウルトラシークレットレア!それもサイン入りの数量限定版!」
「いや、ちょ、近い!近いです!」
「あ……す、すみません。取り乱しました」
いきなり何をするんだ。
ビックリして殴りかけたぞ。
「このカードそんなに凄いのですか?」
「凄いなんてものではありません。そのカード欲しさにどれだけのコレクターが路頭に迷ったことか…」
そんなにぃ!?
綺麗なカードだと思うけど、カードだぞ?ただの写真をプリントした物だぞ?
この中から女優が実体化してデュエルできるわけじゃないんだぞ?
「それだけの価値があるのです。特に、その〖ジュディス・ランスター〗は人気がありますので」
「確かに、このお姉さんは凄いです。エロかっこいい!」
「わかりますか!そうなんですジュディスはもうカッコイイのなんのって」
この人ジュディスという女優の大ファンなんだろうな。
止めなかったら、ずっと語っていそうだ。
「ちょっと聞いてみるんですが、あなたはそのカードを、どうする気ですか?」
どうしようかな?
私は興味ないので欲しい人が持っているのが1番だと思う。
・・・そうだ!
「枢機卿にプレゼントします!これだけエロい女優ならきっと枢機卿のムラムラも発散され…」
「やめてぇぇぇ!!あのエロジジイに渡すなんて絶対ダメよ!!!!」
急に大声出さないでくださいよ。
耳がキーンとなったわ。
つーか、あなた枢機卿の知り合いか?
「あんなエロジジイに物になるぐらいなら、私が貰い受けます!私が持っているカード全部と交換してください」
「えー、私カード別に欲しくないです」
「交換がダメなら言い値で買います!言ってください、いくらなら譲ってくれますか?」
そんなにこのカードが欲しいのか?
必死過ぎてちょっと怖いぞ。
金の力で3枚集めて、4枚目は破り捨てたりしそうだ。
「わかりました。どうぞ」
「売ってくれるんですね。おいくらですか?」
「ただでいいですよ。持って行ってください」
「そうですかただで………………へ???」
カードを差し出すと女は放心したまま受け取った。
うん。これでいい。
この人ならこのカードを誰よりも大事にしてくれるはずだ。
その方がこの女優さんも嬉しいだろう。
「ただ?ホントに、ホントに本当?何の見返りもなく、私にこの宝を譲ると言うの?」
「はい。きっとあなたの手に渡る運命だったんですよ」
良かったですね。と、笑顔で告げると女はプルプル震え出した。
「…………あなたが、神か?」
「違います」
リースさんみたいなこと言うな。
「いえ!あなたは神よ、そうに違いない。その虹色も神の威光に他ならない!」
「そういうのいいです。あ、そろそろ夕飯の支度をしないと、失礼します」
「ちょっと待って!お礼を、何かをお礼をさせてください!虹色の神ィィィィ!!」
うわっ怖っ!ヤバい人だったみたい。
これ以上関わると面倒なので、私はすぐさま会計を済ませてカフェを後にした。
世の中いろんな人がいるんだなあ。
●
大聖堂、法王の私室。
扉を乱暴に開き現れたのは、終わりの聖女と呼ばれる存在だった。
「なんですか?ノックもせずに騒々しい……ニナ、その恰好はなんですか?」
「お婆様聞いてください。今日、私はとても重大なことに気付きました」
映画を見た後、興奮のあまりおかしくなることがあったが・・・
今日の聖女、自分が『ニナ』と呼んでいる少女はいつにも増して様子がおかしい。
イリスとまた何かあったのだろうか?
「イリスは【虹の御使い】ではありません」
「あなたはまた、どうしても彼女をここに縛る気ですか…」
ニナは出会った当初からイリスに対し、当たりが強い傾向にあった。
それは彼女が持つ異能により、未来の光景を垣間見た事に原因があるのだろう。
イリスが悪魔退治をしてからは態度が軟化したと聞いていたが、結局この始末か。
「イリスは神です【虹色の神】なのです」
「ニナ、頭でも打ったのですか?」
「私は正常です!あの子は、途轍もなく価値ある宝を無償で譲り渡す高潔さと慈愛に満ちた神!七耀教会は空の女神ではなく【虹色の神】を崇めるべきなのです!さあ、お婆様!今すぐイリスに全ての権限を譲渡してください、彼女こそが現人神として七耀教会の、いえ、世界の全てに君臨するに相応しい御方です!」
「頭が終わってしまったようですね」
一晩経って、冷静になった終わりの聖女は語る。
『あの時の私はどうかしていた。でも、イリスはめっちゃいい子、異論は認めない』
聖女が【虹の御使い】を認めた噂は公然の事実として教会中に広まったという。
・・・・・・・・・・・
数日後、ケビンの家。
「最近よく遊びに来ますね?暇なんですか?」
「勘違いしないでください。あなたが悪さをしないか監視しているだけです」
「機嫌もいいですよね?何かいいことがあったのですか?」
「質問ばかりしていないで、早く隣りに座りなさい。今日は一緒に見たい映画があるんです」
「またジュディス主演のヤツですか、私はイケメン俳優のアクション物がいいのに」
聖女様がお忍びで遊びに来るようになった。
法王様に『新手の罠ですかね?』と聞いてみたけど、そうではないらしい。
嫌じゃなければ付き合ってあげてほしい、とのことなので今日も聖女様と過ごしている。
これは、友達だと思っていいのかな?
「あ、濡れ場です!エロい!これは後学のためによく見ておかないと」
「子供にはまだ早い!はわわ、さすがジュディス、こんなシーンでも美しいわ」
二人でキャーキャー言いながら見る映画は面白かった。