空から落ちて来た少女はイリスと名乗った。
自分のことを普通の女の子だと言っているが、とてもそうは見えない。
「いりす…イリスだね。よろしく」
「キーアさんでしたよね。こちらこそよろしくです」
「ねえ、どこから来たの?なんで武器持ってるの?今いくつ?私より小さいね!」
「グイグイ来ますね。順番に答えますから落ち着いてください」
「その髪と目は、ひょっとしてギャグでやってるの?」
「ギャグではありません
キーアはさっそくイリスと仲良くなったようで、和気あいあいと話をしている。
その様子を見ていた周りの人々が『あら可愛い』と、毒気を抜かれた状態になる。
「高レベルの美少女二人が交流を深めている!?…ティオちゃん解ってるわね?」
「抜かりはありません。キーアたちの姿はバッチリ録画しています」
「「……はぁ…尊い…(*´▽`*)(*´▽`*)」」
「君たちは何をやっているんだ…」
可愛いものに目がないエリィとティオが暴走し始めた。
こういう時は『二人も負けないぐらい可愛いよ』と言うべきだったか?
どうすればいいんだ、教えてくれランディ!
うっとりしている二人は置いておいて、今は虹色の少女・イリスをどうにかしなければ。
聞きたいことが山ほどあるのだ。
なぜ空から落ちて来た?なぜ無傷なのか?クロスベルへ来た目的は?その髪と目は一体?
そもそも彼女は何者なのか?
問い質さなければならない。
ロイドが彼女に質問をしようとしたところで、大きな怒声が響き渡った。
「お前か!お前がやったんだな!」
声のした方を見ると、額に青筋を浮かべたマジーデがイリスに向かって唾を飛ばしていた。
「ルーファス閣下の黄金像を壊したのはお前だろ!どう責任を取るつもりだ!」
除幕式を邪魔された上に像を破壊されたマジーデは、それはもうキレ散らかしていた。
「おい!何をしている!今すぐこいつを引っ捕らえろ!」
「落ち着いてください、ザイデス議員」
「離せ!どこのどいつか知らんが、ただで済むと思うなよ」
数人の警官に制止されてもマジーデの興奮は収まらない。
ルーファスの前で顔に泥を塗られたことが許せないのだろう。
「怪しい奴め、大体なんだそのふざけた色は?どこの美容院で失敗したらそうなる!」
「正真正銘の地毛です」キリッ
「そんなわけあるかぁ!」
「残念ながらあるんですよね(´・ω・`)」
子供相手に大人気ないマジーデ、イリスへの罵声は止みそうにない。
イリスは自分がなぜ起こられているのか理解していないようである。
「あの~、私…何かやっちゃいました?」
「やっちゃっとるわい!盛大にやらかしとるわい!アレが見えんのか!」
マジーデがビシッ!と指差した先にあったのは、首から上を失った黄金像の成れの果てだった。
「ほう、金色の
「首から上は元々あったんだ!お前が!ぶっ壊したんだぞ!」
「…………え?」
マジーデの言葉にイリスが固まった。
そして彼女は一番近くにいる、キーアにそっと耳打ちした。
「この人の言ってること、本当ですか?」ヒソヒソ
「うん。落っこちて来たイリスがぶつかったんだよ」ヒソヒソ
「うえぇ~マジですか…」ヒソヒソ
「マジだよ」ヒソヒソ
次に彼女は周りにいる大人たちに視線を向けた。
ふしぎなおどりにしか見えないジェスチャーで『マジですか?』と問いかける。
支援課メンバーを含む聴衆たちが『マジだ』と頷いて見せた。
イリスの表情が『マジっすかぁ(´Д`)』になった。
やっと彼女は自分のやらかしに気付いたのだ。
「す、すみません!これは大変申し訳ないことを…」
「謝ってすむ問題か!」
「直します!とりあえず頭を探せばいいんですね………あっ!ありましたよ」
「待て、何をする気だ」
何かを発見したイリスはマジーデの横を風のようにすり抜けた。
はやっ!?とんでもなく足の速い子だ。
『あったあった』と呟きながらイリスは頭部を拾い上げる。
それは黄金像のものではなく・・・
〖みっしぃ〗の頭部だった。
忘れていた!?
そういえば、着ぐるみの中の人が顔を晒した挙句、頭部が行方不明だったのだ。
『違う!それ違うから!』と誰もがツッコミを入れたかったに違いない。
だが、勘違いしたイリスの行動は迅速だった。
素早い動きで人混みを抜け黄金像の前にたどり着く。
「この像の名前は、なんと言いますか?」
「え?……ルーファス総督の像だが…」
「ルーファス、なかなか勇ましい名前ですね」
近くにいた男性に名前を聞いたイリスは黄金像の背中に飛びついた。
プッピガン!
今の音はなんだ!?
ロイドはすごく嫌な予感がした。
しかし、止める間もなくイリスの蛮行は行われてしまう。
「ルーファス新しい顔ですよ…パイルダーオン!」
あろうことかイリスは、首を失った像にみっしぃの頭部を置いたのだ。
黄金に輝く貴公子の体に、みっしぃの頭を持つ奇妙なオブジェが完成した。
タワー前広場の空気が凍り付いたのは言うまでもない。
●
「これでよし!ですね。あーよかった」
よし!じゃない。全然よくないよ。
ヤバいって、マジーデが口を金魚みたいにパクパクさせながら青ざめている。
誰も動けないよ。どうすることもできないよ。
像のすぐ横にいるルーファス総督が笑顔なのが逆に怖いよ!
静まり返る広場、どういう反応をしても薮蛇になりそうで、全員が一言も発せないでいる。
その緊張した空気を破ったのは、やはりイリスである。
リアクションがないことを不信に思った彼女は、更なる追撃をかけた。
「るししっ、クロスベルのみんな~元気かーい?」
「「「「………………っ!?!?!?」」」」
ヤベェよ。
みっしぃ声真似だよ。
超似てるよ。
『るししっ』ってなんだよ?
像の背中に張り付いたままのイリスが突然みっしぃの声で喋り出した。
その声は、ルーファス像と合体したみっしぃの頭部が話しているように聞こえる。
みっしぃをよく知るクロスベル市民たちにとって、今の状況は耐えがたい。
笑いたい。笑ってしまいたいのだが・・・
ルーファス総督本人がね、すぐ横におるんですわ。
無理だ。
今笑ったら不敬罪で逮捕される。
突如として始まった『笑ってはいけないクロスベル』
顔を伏せて堪える者、瞑想で心を落ち着けるもの、目を背けて肩を震わす者、呼吸を止めて我慢している者。
市民の反応は様々だが、どれも『つらい!』の一言に尽きる。
ロイド自身も歯を食いしばりこの状況を耐えていた。
キーアは『すごい似てる!』と目をキラキラさせて喜び。
エリィは真っ赤な顔で天を仰いでいる。
ティオは『あの子、できる!』と謎の感心を示していた。
「……ん?間違えましたか?」
思ったような反応がないことに、イリスが首を傾げる。
間違ってるよ。何もかも間違ってるよ。
もう余計な事をしないでくれ。
その願いは叶わなかった。
「ぷるぷる、いじめないで。ボクわるいルーファスじゃないよ」
「「「「~~~~~~ッッ!!?!?!?」」」」
やめてくれーー!!
本当に勘弁してくれ。
今ので広場にいる市民の半数が吹き出した。
エリィも耐えられなかったのか、目に涙を浮かべ笑ってしまっている。
ティオは『やはり似ています』と声真似を評価していた。
『ルーファスにも種類があるんだねえ』とはキーアの感想だ。
ヤバいって。
悪いルーファス…じゃなかった、ご本人がすぐ傍で聞いてるから!
絶対後で怒られるからやめなさい。
ほら、ご本人様も怒りでプルプル……あれ?
ルーファス総督、笑ってない?
手で口押さえてるけど頬が緩んでるんじゃね?
ツボにハマったんじゃね?
「ふむ。もう一息ですね」
耐え切れなかった人たちを見て、イリスは手ごたえを感じている。
お前はさっきから何と戦ってるんだよ!
この場の全員笑わせたら勝ち!みたいな勝負がいつから始まったんだよ!
この茶番まだ続くのか?
「るししっ、クロスベルの民たちよ。今日もあくせく働いて我輩に税金を貢ぐがよいぞ!るっしっしっ!」
悪いルーファスが出て来ちゃった!?
税金とか、生々しい発言やめろ。
「貴様らから吸い上げた税金は余が愉悦するために使わせてもらうザマス!」
一人称と語尾が安定しないなあ。
うわ、こいつ最低だ。メッチャ悪い奴じゃん。
「手始めに、教育と福祉に力を入れるでやんす!学校と病院をいっぱい建てて、クロスベルを誰もが健康で文化的な生活を送れる、恒久平和都市に作り替えてやるじゃんね!るーしっしっしっしっ!!」
急にまともな事を言い出したwww
税金の使い方が物凄くクリーン!?
なんだよこいつ、メッチャいい奴じゃん。
最低とか言ってごめんよ。
ちょっと拍手している市民もいるじゃないかw
エリィも『やるわね、悪いルーファス』とか言わないでくれ。
ちょっと楽しくなってきたイリスの声真似ショー。
それを中断させたのは、なんとルーファス総督ご本人だった。
「フフッ、なかなか楽しませてもらったよ。お嬢さん、ちょっといいかな?」
「わっ!すごくカッコイイ人です!」
「ありがとう。キミの方こそ、とても愛らしいよ」
「お上手ですね。よろしければ、この後お茶でもいかがですか?お付き合いを前提とした、お試しデートを希望します」
ナンパしたぁ!?
初対面のルーファス総督をナンパしちゃったよ。
あの子もうやりたい放題だよ。
「その話はまた後で、とりあえずそこから降りて来たまえ」
「はいです。金髪王子様とデート…ぐふふ」
だらしない笑みを浮かべたイリスは大人しく黄金像の背から降りた。
今までどうやってくっついていたのかは謎である。
「私はイリスと言います。あなたのお名前は?」
「ルーファス・アルバレアだ。クロスベル州の総督をしている者だよ」
「ルーファスさんですか。どこかで聞いたような………そうとく??」
イリスが『?』を浮かべた。
今、彼女の頭でパズルのピースが組み合わさっているのだろう。
黄金像と自分が置いたみっしぃの頭部を見て、周囲の顔色も伺ったイリスはひとつの結論に至った。
「謎は全て解けた……あなたは、みっしぃの中の人ですね!」
「「「「ちがーうッッッ!!!!」」」」
「ふえぇ…総ツッコミ(´Д`)」
その場にいる全員からツッコミを受けたイリスは悲しそうな顔をした。
●
「残念ながら、私は中の人ではないよ。総督というのは…」
「閣下!お下がりぐださい、そいつは危険です」
イリスの誤解を解こうとしたルーファスを遮る者がいた。
放心状態から復活した、マジーデである。
「この怪しい子供は閣下のお命を狙う逆賊に違いありません!」
「ザイデス議員、いきなり何を言い出すんだ?」
「姿を消すことが可能な飛行船があると聞きます。おそらくこいつはそこから降下して来てのでしょう」
「ステルス航行船か…仮にそうだとして、彼女はまだ子供だぞ」
「侮ってはなりません。子供に特殊な訓練を受けさせ、工作員に仕立て上げる組織の一員だったらどうするのです?」
「話が飛躍しすぎている、君はスパイ小説の愛読者かな?」
マジーデの発言に周囲が再び騒めき始める。
イリスは確かに怪しい、怪しすぎる存在だ。
だが、キーアは彼女を悪いものではないと言った。
それに、ロイド自身もイリスに悪意があるとは思えない。
「テロリストめ!どこの所属だ?共和国の過激派か?それとも、結社とか言う奴らの…」
「そんな
「エロじゃないテロだ!この馬鹿テロリストがぁ!」
「え?……あなたテロリストだったんですか?ヤバいです怖いです!」
「ワシじゃない!お前だ、お前!」
「この人うるさいです。張り倒していいですか?」
「急に物騒な!?」
マジーデは警官隊を呼び寄せイリスを包囲させた。
大人たちに囲まれたイリスはアワアワしている。
傍から見ると可憐な少女を大勢で追い詰めているみたいだ。
「仮にテロリストでなかったとしても、こやつが閣下の像を破壊したのは明白な事実!子供だからといって許される行いではない!逮捕されてしかるべきでしょう」
そうなんだよなあ。
像を壊したのはイリスである。
未成年ということで彼女を保護し警察で話を聞く必要があるとは思っていたのだ。
『逮捕だ逮捕!』と叫ぶマジーデにルーファス総督はやれやれと首を振った。
「致し方なしか……いいだろう。彼女の身柄は警察預かりとする」
「いいご判断ですぞ閣下!……フンッ!きっと取り調べでボロが出るはず、覚悟するんだなテロリストめ」
「はぃぃ!?ちょっと待ってください、逮捕だなんてそんなぁ…」
事態に収拾をつけるためだろう、ルーファス総督はイリスの逮捕を許可した。
イリスはイヤイヤと首を振りながら『やめてー(>_<)』と訴えている。
「はぁ……まさかこんな事態になろうとは」
「堅物そうなイケメンさん。助けてください、公僕たちが私を拉致監禁しようと…」
「自分もその公僕だ」
「ふぁ!?」
「器物破損及びテロ未遂の疑いで逮捕する」
警察官を代表してダドリーさんがイリスに手錠をかけた。
そこまでしなくてもと思ったが、武装しているのが見えちゃってるからな。
「手錠!?こんなのされたの久しぶりです!」
「なんで嬉しそうなんだ?」
「少し昔を思い出して……それより誤認逮捕ですけど?冤罪なんですけど?」
「それは署に着いてから調べる」
「うわーん!ルーファスさんの像を壊したのは謝りますから、許して~」
パトカーが到着しイリスが連行されていく。
「わぁパトカー初めて!でも乗りたくなかった」
「コラ、大人しくしろ」
「わざとじゃないんです!全部あの犬が!犬が悪いんです!あいつ見つけたら剥製にしてやります!」
「おい、暴れるな」
「いやぁぁぁ!いたいけな私がなんでこんな目にぃ!横暴です!圧制です!これがクロスベルの洗礼なんですかぁぁ!」
「うるさいぞ。くっ、こいつなんて力だ」
「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!私は国家権力には屈しません!カツ丼食べさせてくれるまで何も喋りません!」
「ああもう!いいから、早く乗れっ!」
「ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ん゙! 。゚(゚´Д`゚)゚。」
ダドリーが無理やりイリスをパトカーへ押し込んだ。
泣きながら無罪を訴える彼女は悲壮感に満ちていながらも、少し余裕がありそうだった。
「なんだったんだ……」
いきなり現れ嵐のように過ぎ去っていった少女、イリス。
人々はしばしの間、呆然とするのであった。
その後、スッカリ場は白けてしまい。
ルーファス総督によって式典の中止が宣言された。
人々はイリスについて様々な憶測を語りながら解散して行った。
残ったのは、頭部を失った黄金像とイリスが地面に空けた穴だけだった。
「ロイド、イリスが可哀想だよ」
「イリスちゃんがテロリスト?そんなはずないわよ。だって可愛いから!可愛いは正義だから」
イリスが像を壊したのは事実だが、アレは故意ではないと思う。
少しでも罪が軽くなるよう、支援課として何かしてやりたが、どうしたものか?
「ロイドさん。私にいい考えがあります」
「ティオ、何か思いついたのか?」
「『るっしぃ』というはどうでしょうか?」
「あー、うん……怒られるからやめような」
先程の"みっしぃもどき"の名前をずっと考えていたのか・・・
『るっしぃ』はたぶん流行らないよ。
●
イリスの登場で混乱した除幕式は中止になった。
マジーデたち帝国派の議員たちは憤慨していたが、今回のトラブルを歓迎する者たちもいた。
その多くはマスコミ関係者である。
今日の事件はニュースとして大々的に取り上げられ、謎の少女イリスに対して様々な憶測が飛び交った。
生放送の視聴率もよく、イリスが出所した暁にはインタビューをしようと各社が企画している。
帝国に併合されて以来、抑圧された空気が漂うことになったクロスベル。
その雰囲気をぶち壊した存在に、マスコミたちは期待をしたのだ。
あの子は何かを変えてくれるのでは?という、ほんの僅かだが確かな期待を・・・
現場を直接目撃した人のみならず、ニュースや動画サイトでイリスの存在を知った人々の反響は大きかった。
たった一日でイリスはクロスベル中で有名になってしまったのだ。
『なにコレ?フェイク映像?』
『本物だよ。俺現場で直に見たもん』
『生中継されてんだよなぁ』
『ルーファス像wぶっ壊されたwww』
『ざまぁwwww』
『正直スカッとしたよなw』
『ウザデブがマジギレしとるwww』
『ヤベェ…犯人の子、クッソかわいい!!』
『それな!』
『いやマジで可愛い!こんなん1000年に1人の美少女だろ』
『髪の色ヤバくね?どこで染めたんだ?』
『目も綺麗だったぞ。宝石みたいに光ってた』
『なんつーかアレだな。派手だけど優しくて落ち着くような色…ふつくしい』
『わかるー。ずっと見ていられる』
『みっしぃのモノマネ超うまいwww』
『悪魔合体しとるw』
『ご本人笑ってるじゃんw』
『悪いルーファスがいい奴で吹いたw』
『おい、総督閣下をナンパたぞ。すげぇなこの子』
『逮捕されてるー!?』
『泣き顔もカワイイ』
『いいのかよ、未成年だろ?』
『ウザデブがテロリストとか言うから、マジあいつウザいわ』
『カツ丼食べたら自供するんだww』
『ちょっと警察にクレーム入れて来る』
『それいいな!俺もやるぜ』
『名前判明『イリス』だってさ』
『イリスちゃん最高!』
『イリスかぁ…いいよなあ。頭撫でたい』
『結婚したい』
『結婚しよ』
『このロリコンどもめ!』
『イリスちゃんと家族になりたい人生だった…』
『パパって呼んでほしい』
『どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!!』
導力ネット上で意見交換ができる「電子掲示板(BBS)」では、イリスをネタにしたコメント(レス)で大いに賑わっていた。
掲示板はしばらくこの話題で持ちきりだったとさ。
●
『いやぁぁぁ!いたいけな私がなんでこんな目にぃ!横暴です!圧制です!これがクロスベルの洗礼なんですかぁぁ!』
『退かぬ!媚びぬ!省みぬ!私は国家権力には屈しません!カツ丼食べさせてくれるまで何も喋りません!』
『ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ん゙! 。゚(゚´Д`゚)゚。』
リベール王国、とある街の遊撃士協会ロビーにて・・・
壁際に設置された大型テレビには、パトカーに押し込まれる少女の姿が映し出されていた。
泣き喚きながら連行されていく少女、その髪と目は虹色をしていた。
『この少女はクロスベルで行われた除幕式に乱入し、器物破損及びテロ未遂容疑で逮捕されました』
『取り調べでは『犬に撃ち落とされた』などと意味不明な供述をしており』
『カツ丼のおかわりを要求するなど、ふてぶてしい態度で……』
ニュースキャスターの告げる内容に、ヨシュア・ブライトは頭を抱えた。
「何をやっているんだ…イリス」
いつか何かをやらかすとは思っていたが、逮捕って・・・
金色の像にみっしぃの頭を乗せてモノマネをしたのも意味が解らない。
「……行くわよ、ヨシュア」
「一応聞くけど、どこに?」
「クロスベルに決まってるでしょ!イリスが逮捕されたのよ?助けに行かないでどうするの!」
一緒にニュースを見ていたエステルがこうなるのはわかっていた。
エステルはしばらく共に暮らしたイリスを、実の妹、ブライト家の大事な末っ子として認定しているのである。
姉として妹のピンチには駆けつけないといけない、その使命感に今のエステルは燃え上がっているのだ。
ハッキリ言って非常に厄介である。
「気持ちはわかるけど待ちなよ。今から僕たちが行っても、もう逮捕されてしまった後なんだからさ」
「じゃあ脱獄プランを考えてよ!あの子に刑務所暮らしなんてさせないんだから!」
無茶苦茶言い出した。
このままでは本当にクロスベル警察署を襲撃しかねない勢いだ。
なんとか説得しなければ。
「過保護は我慢するんじゃなかったの?」
「う……でもでも、あの子泣いてたし…」
「僕には余裕があるように見えたけどね。イリスはアレで賢い子だ、ちゃんと今回も容疑を晴らして出所するよ」
「器物破損の方は?」
「うーん、ちゃんと罪を償うんじゃないかな?」
「くっ!もどかしいわ。こうなったら…権力には権力で対抗よ」
エステルはオーブメントを操作して誰かに通信入れた。
権力?ちょっと待て、まさか・・・
「あ、もしもしクローゼ?今大丈夫、うん、忙しいのにごめんね。ちょっと相談が……そう!イリスのこと、ニュース見たなら話が早いわ、それでさぁ……なんとかなる?ホント!…ありがとう。ええ、うん……さっすがぁ!」
やっちゃったよ。
お姫様とのコネを使っちゃったよ。
クローゼもエステルの頼みをホイホイ引き受けないでほしい。
確か、彼女もイリスと面識があったらしいけど・・・
きっとクローゼもイリスを気に入ったんだろうなあ。
やれやれと首を振りながら、ヨシュアは自分のオーブメントで通信を入れる。
「エマージェンシーだよ、父さん。エステルがクローゼを味方につけた。うん、そう、イリスが逮捕されて……」
イリスが逮捕されたニュースは広く外国にも知れ渡った。
虹色の少女をよく知る人たちは『マジで何やってんの!?』と呆れつつ、彼女のために出来る事を模索するのであった。