アルテミスへの入港は結果的に最悪の一手となった。
地球連合軍の認識コードを持たないという理由でアークエンジェル及び乗組員と民間人を拘束。ストライクのデータを抜き取ろうと画策したりなどの内輪揉めの挙句、ザフトに奪われたブリッツのミラージュコロイドによる奇襲でアルテミス要塞は甚大な被害を受けた。
その隙を突いて拘束を逃れ脱出したアークエンジェルだったが、碌に補給を受けることが出来ず広大な宇宙へ放り出される羽目になった。
唯一、アークエンジェルにとって幸運だったのがザフトの追跡から逃れられたことだ。壊滅的な被害を受けたアルテミスの爆発が上手く隠れ蓑になったのだ。
「不完全な出航から始まり、敵の執拗な追撃を受け、ようやくたどり着いた味方からは不当に拘束される。大天使様は余程運に恵まれないようですね、軍曹?」
「勘弁してほしいもんですよ、まったく」
リカルドはマードック軍曹と大天使様の不運を嘆きながら、組みあげられていく鉄の巨人を見つめていた。ザフトのMSジンを素体にデュエルの予備パーツで改造された継ぎ接ぎのキメラ、ジン・デュエルパッチワーク……略称、ジンⅮPだ。
ジンからの変更点は大きく分けて二つ。
一つ目は、デュエル予備パーツによってコクピット周りと頭部をPS装甲で覆うことで生存性の向上とメインカメラの損傷リスクを低下させること。ちなみにメインカメラはジンのモノアイを継承している。ベース機体のジンの頭部を丸ごとデュエルの頭部に差し替える互換性がないため不可能だからだ。
二つ目は前述した頭部の防御力向上に伴い、ジンの特徴的なトサカ状の通信アンテナをオミットし、デュエルと同様の角のようなブレードアンテナへ差し替えた。
防御力と通信機能の向上に重点を置いたのは孤立無援のアークエンジェルの護衛として安定した牽制が出来る遊撃力と連携力を欲した為である。また、パイロットの予定者がキラ・ヤマトのようなコーディネーターでもなければ、ムウ・ラ・フラガのようなエースパイロットでもないのだから。
「しっかし、肝心のリカルドさんはMSに乗れるんですかい?」
「少しテストパイロットもやっていたし、肝心のOSもキラ君のおかげでかなり進歩したんだ。マニュアルの操作だけでなく、ある程度はオート操縦で補助してもらえば対空砲座よりはマシな活躍が出来るさ」
そう言ってのけるリカルドも不安がないわけではない。が、技術者としてもOSの開発はかなりの進展があり、自信もあった。ここまで来たら後は実践と調整を繰り返してブラッシュアップしていくしかない。
充実した開発環境とまではいかないが、最新鋭のMS運用母艦に優れたコーディネーターのキラの協力と実戦データがある。前線の真っ只中にいることを思えばかなり上等な環境と言えよう。
「それにこれからデブリ帯での船外活動だろう? こいつの試運転にはちょうどいい。いきなり実戦に放り込まれて、あっけなく撃墜されることもないしな」
リカルドは冗談を飛ばしつつ、ジンDPを見つめる。
彼の任務とは別にナチュラル用MS開発の先駆者として働く自分の仕事に誇りを持っているのもまた彼の持つ一側面なのだ。
『各員に告げる。これより調査と補給のための船外活動を開始する。作業員は速やかに持ち場に就くように』
バジル―ル少尉からのアナウンスが艦内に流れる。
生き延びるために……ゴミの山と死者の墓を掘り起こしてでも我々は抗い続ける。
ジン・DP(デュエル・パッチワーク)
アークエンジェル内で現地改修されたMSジン。
防御力向上の目的でコクピット周りと頭部にデュエルの装甲が増加装甲として使われておりPS装甲を展開できる。PS装甲展開箇所を絞ることにより省電力化を実現している。
頭部の変化は大きく、特徴的だった頭部のトサカのようなアンテナはオミットされ、デュエルのブレードアンテナに差し替えられている。メインカメラはザフト製のモノアイを使用しているが、ベース機体となったジンとの互換性がないため通信機能の向上のためにブレードアンテナのみが追加された。モノアイ部分以外を覆うヘッドギアのようにデュエルのマスクが増加装甲として装着されている。
OSはキラの操縦するストライクの戦闘データを参考にしており、日々性能が向上していっている。火器管制と四肢とスラスターの操作などを同時に行うことがナチュラルに取って難しいため、一部をオートにすることにより複雑な操縦を簡略化している。
現在の装備はジンの標準装備であるMMI-M8A3 76mm重突撃機銃とデュエルの対ビームシールドのみ。重突撃銃による弾幕とシールドによるアークエンジェルの直衛機としての働きが期待されている。