OS開発やジンDPの整備等の関係でリカルドの主な生息地がMSデッキになっちゃいました。
キラが拾ってきた救命ポッドの中から現れたのは一人の可憐な少女だった。プラント現最高評議会議長シーゲル・クラインの娘、ラクス・クラインその人だ。民間人とはいえ地球連合の敵対するプラントの最重要人物の身内である彼女は、地球軍の艦であるアークエンジェルに救出されたはいいが、どう扱っていいものかと困り果ててしまう。
民間人として返還しようにもアークエンジェルは最重要機密を乗せて逃げ惑う立場であり難しく、またアークエンジェルが地球軍に無事辿り着いた先で彼女の身柄の価値を思えば素直に返還されるとも思えない。
大天使に救われた、うら若き乙女の行く先が地獄行きにしか思えないとはなんと因果なことか。
リカルドは保護されたラクス・クラインの今後は明るいものではないかもしれないと、やるせない気持ちになりながら作業を続ける。
「先の戦闘のフィードバックに加え、強行偵察型ジンの肩部レドームの装備。デブリベルトで回収したジンの各種武装のテスト。やることが山盛りで俺達はいつ休めるんですかねぇ」
マードック軍曹のぼやきに肩を竦めると、ジンDPの姿を見上げる。左肩部にジン強行偵察型のレドームが装着され、腰には重斬刀が装備されている。両脚部にはM68パルデュス 3連装短距離誘導弾発射筒を装備した。
先の強行偵察型との不意の遭遇はアークエンジェル一行の偵察力の無さが原因と言える。その為、ジンDPにレドームを追加することで偵察力とレーダーを強化し、アークエンジェルが後手を踏まずに済むようにしたい。
それにリカルド自身も先の戦闘で先手を取り有利な局面を作ることの重要性を身を以て感じている。あの時、敵に発見された味方を庇うために動いたことにより主導権を握らせてしまった。先にこちらから仕掛けていれば、味方を逃がすことも敵を撃破することも、もう少し上手く進んだ筈だ。
戦いはやはり先手を取って主導権を握ることが大事だ。特にコーディネーターのような同格以上の技術を持つ者が相手ならば尚更だ。
「シュミレーターで訓練してきます。後の調整はお任せしても?」
「仕方ねぇなぁ……。その代わり、次も俺達を守ってくださいよ!」
「ああ、そのつもりだ」
リカルドはマードック軍曹に手を上げて応えるとシミュレーターの訓練に向かう。すっかりアークエンジェルクルー達に馴染んでしまって、地球連合軍側の立場に立っているが自分はスカンジナビア王国の人間だ。オーブと同様に中立を宣言してはいるが、ヘリオポリスでの任に就く前からも連合から日々圧力を掛けられていた。
アークエンジェルの逃避行を終え、国へ帰るときには地球連合との同盟を締結させられているかもしれない。その時、自分はどうあるべきなのだろうか。
リカルドは自問する。スカンジナビア王国のスパイとしての自分、モルゲンレーテ社の技術スタッフとしての自分、そしてアークエンジェルのパイロットとしての自分。
混迷する世界の中、自分はどうすべきか、どうあるべきか、どうありたいのか。まだ、答えは出ていない。ただ、自分の故郷が戦禍に呑まれるようなことだけはしたくない。
だから、力が必要だ。中立を宣言し続けられるほどの大きな力。振るうためではなく寄せ付けない為の威光としての力。
それは今最前線にいる自分こそが手に入れ、国へ持ち帰るチャンスがある。リカルドは己の置かれた立場を今一度確かめ、奮起する。
パイロットとしても技術スタッフとしても、今アークエンジェルで全力を尽くすことがいずれ国の為になるのだと信じて。
シミュレーターでの訓練に明け暮れるリカルドの耳に、第八艦隊の先遣隊がこちらへ向かっていると届いたのはそれから二日後のことだった。
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