第八艦隊と合流したアークエンジェル。ようやく味方と合流できたことで艦内では穏やかな空気が流れていた。
民間人も旗艦メネラオスに移り、シャトルに乗り換えて地球へと降下する予定だそうだ。ヘリオポリスからずっと一緒で戦闘に巻き込まれ続けた民間人もようやく安心出来るというものだろう。
「艦隊と合流したってのに、なんでこんなに急がないと行けないんです?」
「不安なんだよ! 壊れたままだと……」
メビウス・ゼロの整備を手伝っていたキラ君がコクピットから飛び出してそう言うとフラガ大尉がそう答える。リカルドもまたそれを尻目にジンDPのOS修正を行っている。
「第八艦隊つったって、パイロットはひよっこ揃いさ。なんかあった時はやっぱ大尉が出れねぇとなぁ」
マードック軍曹がそう言うのも無理はないだろう。月のコペルニクス回戦で連合軍は多くのベテランパイロットを失っている。どこも優れたパイロットは喉から手が出るほど欲しいはずだ。
「それより、ストライクは? 本当にあのままでいいんですか?」
「ん〜、まぁ分かっちゃいるんだけどねぇ……。わざわざ元に戻してスペック下げるっつーのも、なんかこう……」
「かと言ってまだ未完成のこちらのOSに書き換えるって言うのも違いますしね」
フラガ大尉とリカルドが考えていることは同じで、キラ・ヤマトの発揮したストライクのフルスペックを見たあとで、OSを初期化もしくは未完成のナチュラル用のOSに書き換えるのは、勿体ない気がしてならないのだ。
それを使いこなす彼がここで船を降りることになるとしても、だ。
「出来れば、あのまま誰かが……って思っちゃいますよね」
「艦長!?」
「あらら、こんなところへ」
「ごめんなさいね。ちょっとキラくんと話したくて」
「え?」
キラ君は怪訝な表情を浮かべる。わざわざ艦長がここまで。これまでやむを得ず民間人に様々な無理を強いてきた過去を思うと疑ってしまうのも無理はないだろう。
だが、ラミアス艦長はそんな人ではない。本来、とても優しい人だ。
「そんな疑うような顔をしないで〜。ま、無理もないとは思うけど」
「はぁ……」
ラミアス艦長はキラ君を連れ立ってストライクの方へ向かっていく。それを見て残された男三人は好き勝手予想する。
「こりゃご褒美だな。これまでの活躍に対する労いってやつさ。ひゃ〜羨ましいねぇ!」
と冗談を言うフラガ大尉。
「いやいや、もしかしたら軍への志願願いに合わせて勲章授与の打診ですぜ」
とこちらも冗談めかして言うマードック軍曹。
「ふたりとも冗談ばかり……。本当は皆さんだって分かってるんでしょう?」
と真面目なリカルドが二人の冗談を諌める。
「これまであいつは本当によくやってくれたさ。ここまで来れたのはあいつのお陰だ。俺達は本当に感謝してもしきれないよな。礼と詫びだろうなぁ」
「ですねぇ。こんな戦争に巻き込んじまって申し訳ねぇんだけどよ。それでも、引き止めたくなる気持ちも少しだけあるんだよなぁ」
彼が優れたパイロットだけだからではない。民間人でコーディネーターとはいえ、一緒にここまで戦い抜いたキラ君とはもうすっかり戦友だ。背中を預けた絆があり、彼と別れるのは寂しいのだと各々の表情に現れている。
「それでも、彼は民間人でまだ15歳の子供なんです。まだまだ世界の情勢は不確かで不安定ですが、戦いに巻き込まれた分、彼のこれからは平和で穏やかな日々になるといいですね」
リカルドは二人の気持ちを代弁するかのようにそう口にすると、二人は頷きストライクの前に立つキラとマリューの背中を見上げる。
「それはそれとして……、艦長のご褒美興味ないか? とんでもないぜ? きっと」
フラガ大尉は両手でたわわな胸を表現しニヤニヤと笑った。
「フラガ大尉!」
「台無しですぜ、ほんと」
せっかくいい雰囲気だったのに、本当にこの人は……。
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