第八艦隊の『知将』ハルバートン提督の乗ったシャトルがアークエンジェルへと到着した。士官一同とキラ君たちヘリオポリスの学生一同に温かい声をかけると、ラミアスん艦長らと共に艦長室へと向かった。今後の方針などについての話し合いがあるのだろう。
その後、民間人はメネラオスのシャトルへ移るための身支度を始めた。リカルドもまた民間人ではあるのだが、MSやOSの開発・調整に嚙んでいる以上は他の民間人と同じようにシャトルで地球へ降下というわけにはいかない。
地球連合軍のいずれかの基地に着くまではアークエンジェルと行動を共にすることになるだろう。
リカルドが先の戦闘データの解析とフィードバック、MSの修理と忙殺されている中、第八艦隊から物資の補給が開始される。受領する物資の一覧を見てマードック軍曹が驚きの声を上げた。
「スカイグラスパー二機!? おいおい、大気圏用の機体じゃねーかよ」
データを見るとスカイグラスパーはストライクの大気圏内支援戦闘機に位置付けられている。本機はストライカーパックをノンオプションで装備可能となっており、スカイグラスパーの武装としても使用できるほか、ストライカーパックの兵装運搬機としての役割も果たせるとのことだ。
一機はMA乗りのエース、フラガ大尉が乗ることになるのだろうがもう一機はパイロットがいない。予備機となるか、もしくは補充のパイロットが来るのだろうか。
しかし、ということはアークエンジェルは月本部を目指すのではなく、地球へ降下することになるのだろう。目的地はおそらく地球連合軍本部アラスカ基地だ。最新鋭の機体と戦闘データを本部へ持ち帰れ、ということだ。
「ジンDPの修理は間に合いそうですか?」
「艦隊からも人手を借りられるってんで、俺らは大尉のゼロを仕上げちまってからDPの修理にかかりやすぜ」
「頼みます。これまでの動きから察するにザフトが第八艦隊を見て、アークエンジェルとストライクを諦めるとは考えにくい。大尉が落ち着かない気持ちがよくわかりますよ」
クルーゼ隊と四機のG。因縁の相手であり、こちらに強く執着しているように思える。中でもイージスとデュエルは度々ストライクと直接相まみえており、デュエルからは強い敵愾心を感じる。一方でイージスからは執着心のようなものを感じ、戦闘行動はやや控えめなように感じる。ラウ・ル・クルーゼとフラガ大尉には浅からぬ因縁もあるようだ。
厄介な相手に目を付けられたものだ。やれやれと頭を振り、リカルドは作業に意識を切り替えた。
メネラオスに向かう民間人を乗せたランチにほぼ全員が乗り終えようとしたしたところで、第一次戦闘配備の報が届く。やはり、簡単に地球には降りられそうにない。
敵はナスカ級1、ローラシア級2からなる艦隊でMSも多数出撃しているとのことだ。勿論、四機のGも出撃している。地球連合軍のMAとジンの彼我の戦力差は1:5、Gが相手となれば更に差は広がる。おそらく倍以上。艦隊の規模は地球軍が少なく見積もっても5倍以上だが、実際の戦力差はザフトが上回ると見ていいかもしれない。
第八艦隊は即座に迎撃を開始する。MAを発進させ、艦隊は防御陣形を取り対空砲火を密にする。
しかし、ザフトのMSとGのもう光は凄まじく、戦闘開始たった6分で四艦の地球軍艦艇が撃沈、あるいは沈黙した。
未だにアークエンジェルには出撃命令は下されていない。
ハルバートン提督はアークエンジェルを何としても守り切り、アラスカへ降ろすつもりなのかもしれない。だが、ザフトの精鋭部隊かつG兵器を備える最強の布陣相手に、戦場において旧式化したMA群と戦艦では全滅も時間の問題だ。
辛抱しきれなくなったフラガ大尉がブリッジへ通信を繋げる。
「おい! なんで俺は発進待機なんだよ! 第八艦隊だってあれ四機じゃやばいぞ!」
「フラガ大尉……」
「ってまぁ俺が一機出たところで大して変わんねぇだろうがさぁ!」
「本艦への出撃指示はまだありません。待ってください」
「しかし――」
フラガ大尉が尚も言い募ろうとしたところで通信が切られる。
「チッ!」
フラガ大尉は舌打ちすると、向き直ってメビウス・ゼロの発進準備を整備班に指示する。修理がようやく完了し、推進剤や武装の補充が開始される。命令無視で出撃ということは流石にするとは思えないが、こんな状況で何もせずにただじっと待っていることなど出来ないのだろう。せめて、命令があればすぐさま発進出来るように手筈を整えておきたいのだ。
もうキラ君は艦を降りたのだから、ストライクを戦力に数えることは出来ない。いざとなればOSを入れ替えてでも俺が――。そう考えていた中、艦内に通信が響き渡る。
「総員、大気圏突入準備作業を開始せよ」
「えっ!」
「降りる!? この状況でか?」
アラスカへの降下にはまだ時間がかかる。ここは艦隊を守る為にもアークエンジェルは艦隊を離脱して、Gをこちらに惹きつける方が得策だと判断したのだろうか。
「俺に怒鳴ったってしゃーねーでしょう! まぁ、このまんまズルズルよりはいいんじゃねーですか?」
「いやぁ・・・けどさぁ!」
「ザフト艦とジンは振り切れても、あの四機が問題ですね」
言い合う二人の声を遮った主はパイロットスーツに着替えたキラ君だった。
「キラ君!? どうして!」
「ストライクで待機します。まだ、第一戦闘配備ですよね」
「あいつ、船を降りたんじゃあ・・・」
「あんな若いころから戦場とか戦争なんかに浮かされちまうと、後の人生きついぜ……」
退艦する筈だったキラ君が戻った。戦力的には喜ばしいことではある。
だが、やりきれない思いが三人の胸中に湧いてくる。
「時代が、世界が、悪いのかな――」
リカルドは小さく呟くとジンDPの応急処置を整備班に急がせた。
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