機動戦士ガンダムSEED 白夜の守護者   作:椎名伊織

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 自分を労わって折り紙の花をくれた女の子の乗るシャトル撃墜で情緒がボロボロ。フレイの夜伽でなんとかメンタルをギリギリに保つキラ。
 もうやめて! キラのライフは0よ!


PHASE-10:燃える砂塵②

 

 デッキで三人は夜通し作業を行っていた。スカイグラスパーとジンDPの調整だ。データを打ち込んでいたマードック軍曹は額の汗を拭うと溜息をついた。

 

「少佐ぁ、今日はこれぐらいにしときましょうや。後の調整は実際に飛ばしてみないと分からねぇですよ」

 

 声を掛けられたフラガ少佐は大きく伸びをする。疲れがかなり溜まっている様子だ。

 

「そうだなぁ。キラも元気になったし明日は移動するかもしれんからなぁ。とっとと仕上げたいところだが……」

「ここまで休みなしで働いてるんです。休める時に休みましょう」

 

 リカルドもマードック軍曹に同意する。ジンDPを重力下の仕様に変更したかったが、右腕の修理が終わって機体のバランスをようやく整えたところだった。ここから仕様変更するにはまだかなりの時間が必要だった。

 

 一同はデッキを後にし、それぞれの部屋へと帰っていった。途中、リカルドは一人の女性と顔を合わせた。

 

「ラミアス艦長、お疲れ様です。交代ですか」

「ヨハンソン主任、お疲れ様。ええ、ブリッジはナタルへ任せて、これから仮眠よ」

 

 同じG兵器――ガンダム開発に携わっていた二人だ。片やPS装甲、片やOS。担当は違えど二人は顔を合わせることも多く、それなりの知己となっていた。アークエンジェルが出航してからはあまり話す機会に恵まれなかったが。

 

「まさか、あなたがMSのパイロットになるなんてね。あの頃は想像もしなかったわ」

「そうですね。テストパイロットとして搭乗することは少しありましたが、あの頃はまだまだ動かすので精一杯でしたからね。まさか実戦に出るなんてとてもとても」

 

 キラ君が組み上げたOSとストライクの戦闘データのフィードバックにより、ナチュラルであるリカルドでもかなり立派に戦うことが出来るようになっていた。地球軍のMS開発の最大の障害であったOSがこうも劇的に解決していくのを肌で感じていると、戦争による技術革新の凄さを思い知らされる。

 

「キラ君、それにあなたも。艦を助けていただいて、本当に感謝しています」

「いえ、彼もそして私も出来ることをしているだけです。我々は一蓮托生なのですから」

 

 礼を言われることではない、お互い様だ。それぞれ助け合い、ここまで生き残ってきた。そして、それはこれからもだ。

 長々話し込んでお互い貴重な休憩時間を削るのもよくない。ラミアス艦長に別れを告げると、リカルドは素早くシャワーを浴びてベッドへ潜り込んだ。ほどなくしてリカルドの意識は落ちていった。

 

 

 

 

 

 けたたましいアラートが敵襲を知らせる。深い眠りに落ちていた筈のリカルドは飛び起きて着替え始める。この船は呪われているんじゃないか?

 リカルドは心の中で呪詛を吐き散らしながら、デッキへ向けて駆けだす。

 爆発音、艦が揺れる。敵のミサイル攻撃でも迎撃したのだろう。幸い直撃はしなかったようだが、アークエンジェルのエンジンの暖気はまだ済んでいない。このままではただの的だ。

 

「とにかく飛べるようにしてくれって!」

「それが無茶だって言ってんでしょうが。弾薬の積み込みも間に合わねぇし」

「チッ……」

 

 デッキに着くと少佐と軍曹が揉めていた。スカイグラスパーの整備はつい数時間前の状態から進んでいないし、そんな状態で出撃させるわけにはいかない。

 

「俺が出ます! 砂漠の接地圧の設定はまだですが、艦の上で迎撃するくらいなら出来ます」

 

 そう言って機体に向かおうとすると一足先にキラ君がストライクに乗り込み、通信回線をオンにする。

 

「敵はどこだ! ストライク発進する!」

「キラ! 待って、まだ!」

「早くハッチ開けて!」

 

 怒鳴りつけるように言うキラの様子にミリアリアもそしてリカルドも驚く。

 やけに好戦的というか焦燥感と苛立ち……?

 そんなキラを諫めるようにバジルール中尉が口を開く。

 

「まだ敵の位置も勢力も分かっていないんだ。発進命令も出ていない」

「なに呑気なこと言ってるんだ! いいから早くハッチ開けろよ! 僕が行ってやるから!」

 

 豹変、と言っていいだろう。キラ君の様子は明らかにおかしい。だが、実際ここで手をこまねいていてもどうしようもないのも事実だ。

 

「艦長!」

「言いようは気に入らないけど……、出てもらう他ないわね。艦の方では小回りが効かないわ。ストライク、発進させて!」

「ハッチ解放、ストライク発進。敵戦闘ヘリを排除せよ。重力に気を付けろよ」

 

 艦長の許可が出てバジルール中尉より命令が下される。ストライクはランチャーストライカーを装備してカタパルトから発進する。続いてジンDPが出撃準備に入る。

 

「ヨハンソン殿、甲板で敵機を迎撃して下さい。可能ならば、ヤマトのフォローをお願いします」

「分かりました。ジンDP出ます!」

 

 カタパルトを徒歩で出てアークエンジェルの甲板に上がる。機体に掛かるGで操作が重い。リカルドは火器のロックを解除、迎撃態勢を取った。

 

 こうして地球での初めて戦闘の火蓋が切って落とされた。




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