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『砂漠の虎』との激戦を終える頃にはすっかり夜が明けて日が昇り始めていた。ストライクとアークエンジェルを助けた謎の部隊は現地のレジスタンス『明けの砂漠』と名乗った。『砂漠の虎』の支配に抵抗している、とのことだ。
現地の武装勢力など正規軍にとってあまり歓迎されるものではない。が、敵地のど真ん中で孤立無援のアークエンジェルと、抵抗するにはあまりに力に乏しいレジスタンス、互いに手を取る利点は十二分にあった。
その後、アークエンジェルは『明けの砂漠』のキャンプへと招待された。切り立った断崖の狭間に隠れて作られたキャンプはレジスタンスとは思えないほど設備が充実しており、その資金源に一同は疑問を抱いた。
しかし、リカルドはその疑問に対する答えを一人だけ得ていた。レジスタンスの中に紅一点、一人の金髪の少女がその答え。少女の正体はカガリ・ユラ・アスハ。オーブ連合首長国代表ウズミ・ナラ・アスハの娘だ。要人とその周辺人物のことは情報部なら当然知り得ることだ。
その隣に控える大柄な男はおそらくその護衛でオーブの軍人だろう。首長の娘がお忍びでレジスタンスごっこか。どこまで本気なのかは分からないが、その様子を見るにむやみに彼女の正体を明かすべきではないだろう。リカルドはカガリの正体を胸の内に秘め、アークエンジェル一行には明かさないことに決めた。
リカルドはストライクが砂漠の接地圧に合わせたOSのデータをフィードバックし、ジンDPを砂漠戦仕様にチューンアップしていく。砂漠で改修型のジンがバクゥに敵う筈もなく、基本的にはアークエンジェルの援護が仕事になると思われるも、いざ砂地に降りて戦うことになってまともに歩けませんでは話にならない。
防塵仕様にも出来ないので後の整備を考えるとなるべく砂漠に降りたくないのが本音だが、昨晩のようにストライクが窮地に陥った際に援護に行く必要がある。
だが、下手な援護は彼の足を逆に引っ張らないかと思う気持ちもある。昨夜の戦闘では戦闘中に砂地に対応し、荒々しいながら隙のない格闘戦と艦砲射撃を迎撃した狙撃能力を見せ付けられた。序盤の苦戦でパワーダウン寸前まで追い込まれ窮地に陥ったが、それがなければ一機で敵部隊を全滅させかねない勢いだった。その底知れぬセンスと能力に言いようのない畏怖を感じてしまう。彼はいったいどのようなコーディネートを受けて生まれたのだろう。ヘリオポリスのカレッジに通う学生だった彼が初陣からこれまで軍人でもなし得ない戦果を挙げ続けている。その出自は本当にただのコーディネーターなのかと疑わしくなる。戦闘用に調整された、或いは特別な実験体? それともまた別の……?
疑問は尽きることがない。だが、現状それを解き明かす手段もなし。結果的に今、彼の力で我々は助かっているのだから感謝だけをしていればいい。艦を降りれるその日まで戦い通せるように手助けすればいい。リカルドはキラを見る目が「戦争に巻き込まれた少年」から「驚異的な力を持つコーディネーター」に変わりつつあった。
仲間を守る為に一生懸命な彼のひたむきさ、それを利用する自分たちに嫌気が差してくる。だが、もはやアークエンジェルは彼の働きに依存している。彼なしではこの先も生き残れない。いかに不健全な状況であろうとも頼らざるを得ないのが現実だ。こちらに出来ることは精々戦場での援護と彼のメンタルケアだ。もっとも一人で抱え込む気質に見える彼が自身の感情を吐露したり、うまく処理できるか正直怪しいところだが。
「とにかく、彼に必要なのは休暇だな」
リカルドは一眠りしようと部屋へと戻る中ひとりごちる。碌に休む間もなく戦い漬けの日々だ。地球は宇宙とは違い少し走らせれば人が住む街がある。リフレッシュに出かけてくればいい。生活空間がずっと戦艦の中かコックピットの中なんて、軍人だっていずれ心を病む。一段落したら、彼の休暇の提案をしよう。
戦いに明け暮れる日々に、リカルド自身も辟易している。いつまでこんなことが続くのやら。せめて今夜くらいはゆっくり眠りたいものだ。
リカルドのそんな甘い考えは叶うことはなく、その夜、レジスタンスたちの家族が住むタッシルの街が『砂漠の虎』によって焼かれた。
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